国際協力の現場から 05
帰国研修員が促進させた自国の発展と日本との関係
~ネパールで活躍するJICA帰国研修員のネットワーク化と貢献~
ポーデル・ネパール大統領を表敬訪問するJAAN執行役員一同(左から4番目がシュレスタ氏、左から7番目がブサル氏)(写真:JAAN)
2024年9月に発生した洪水被災地域で食料援助を行うJAAN(写真中央がブサル氏)(写真:JAAN)
伝統的な親日国であるネパールは、南西アジアで最も所得水準の低い国です。主要産業である農業の生産性が低く、内陸国という地理的制約や自然災害、社会インフラの未整備、ガバナンスにおける課題等を抱えています。
日本は、JICAを通じて実施する研修員受入事業に、ネパールから多くの行政官や技術者を長年にわたり受け入れており、自国の課題解決に必要な知識や技術の習得に貢献しています。そして、日本での研修や学業を終えて帰国した元JICA研修員等が参加するネパールJICA帰国研修員同窓会(JAAN)注1は、日本での学びを自国の発展のためにいかすと同時に、日本とネパールの二国間関係の強化にも寄与しています。
JAANは1973年に創設された組織で、現在1,100人近くが所属しています。政府や国内の主要な公的・民間機関の要職に就いている会員も多く、幅広い人脈を有しています。帰国生同士のネットワーク強化を目的としながら、多様な分野で様々な立場から、日本での経験をいかして自国の発展に貢献しています。
例えば、エネルギー分野では、現在は国家電力庁の長官を務めるクル・マン・ギシン氏の尽力の下、計画停電が問題だったネパールで、国民への電気の安定供給が実現されました。教育分野では、ネパールの高校で副校長を務めるビバ・カリカ・マラ・シュレスタ氏が活躍しています。「1996年と2018年に来日したが、板書中心で教師が一方的に教える教育を受けた自分は、実践を通じて学ぶ日本の初等教育における指導方法に感銘を受けた。教育が国の発展につながるのだと感じた。教育者として、日本の指導方法をネパールにも取り入れるなど、関連機関と連携してこどもたちの学びに力を入れている。」と意欲を見せています。
JAANの現会長であるラム・チャンドラ・ブサル氏は、1997年にJICA研修員として来日し、農業分野の研修を受けました。もっと日本で学びたいという思いが膨らみ再び来日し、7年をかけて、愛媛大学大学院農学研究科で博士号を取得しました。帰国後は、国際NGOや主要国の援助機関で農業分野の研究開発事業に従事し、日本で培った専門性を存分に発揮し、新しい農業技術と高付加価値作物の生産で農家の増収を図り、貧しい人々の生活を改善しようと取り組んでいます。ブサル氏は、「人間の健康と植物の健康を一体として考える重要性と、農業技術だけではなくマネジメントの重要性も学んだ。」と語ります。
JAANの活動の特徴の一つとして、ブサル氏は、「JAANは時代のニーズや状況に応じて、常に柔軟に活動を行っている。」と語ります。例えば、JAANは2024年、ネパールの伝統的な祭り「ダサイン」に際して例年実施するイベントのための資金を、急遽(きょ)、洪水の被災者に配布する支援物資に充て、自国の復興に貢献しました。また、近年では国内向けの人材育成セミナーのほか、南アジアの国々が参加する国際的なセミナーを開催するなど、国を越えてネットワークを広げています。
さらに、JAANは、在ネパール日本国大使館、JICAネパール事務所や日本から派遣されるJICA専門家、JICA海外協力隊等との連携や親睦を深め、定期的に意見交換を行うなど、日本とネパールの二国間関係、友好関係の発展にも寄与しています。東日本大震災の際には、ネパール政府やJAANが日本に支援を寄せ、また、2015年にネパールで発生した大地震の際は日本政府やJICAが支援するなど、相互に協力し合う関係が築かれています。
今後もJAANがネパールの発展にさらに貢献するとともに、ネパールと日本、そして各国をつなぐ架け橋となり活躍することが期待されます。
注1 JICA Alumni Association of Nepalの略称。
