2023年版開発協力白書 日本の国際協力

匠の技術、世界へ 2

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福岡発のごみ埋立て技術でエチオピアの廃棄物管理を改善
~現地の人々と一緒に作業~

現地に指導に入った日本人専門家3名と、作業を共にしたウェイストピッカー(後列左から3人目が松藤名誉教授)(写真:UN-Habitat)

現地に指導に入った日本人専門家3名と、作業を共にしたウェイストピッカー(後列左から3人目が松藤名誉教授)(写真:UN-Habitat)

福岡方式によって改善されたアディスアベバ市のコシェ処分場(写真:UN-Habitat)

福岡方式によって改善されたアディスアベバ市のコシェ処分場(写真:UN-Habitat)

エチオピアでは近年、都市人口の急増と生活様式の変化でごみの量が増加していますが、廃棄物処理施設の整備が追い付かず、廃棄物管理が大きな課題となっています。特に、エチオピアの首都アディスアベバ市にある国内最大の廃棄物埋立地コシェ処分場では、2017年、高さ50メートルにまで積み上げられていたごみが崩落して200人以上が亡くなる事故が発生し、課題の解決が急務となっていました。

この事故を受けて、日本は2018年、国連人間居住計画(UN-Habitat)への支援を通じ、コシェ処分場に、固形廃棄物管理において実績のある日本の埋立て技術「福岡方式」を活用した緊急改善を行いました。

「福岡方式」として知られる埋立て技術「準好気性埋立構造」は、1970年代に福岡市と福岡大学が共同で開発し、福岡大学名誉教授の花嶋(はなしま)正孝氏と松藤康司(まつふじやすし)氏らによって考案・実用化された日本独自の環境保全型のごみ埋立て技術です。埋立地の底部に浸出水集排水管を敷設して外気を取り込み、土壌の好気性微生物を活性化させて廃棄物の分解を促進する技術ですが、これにより排水も浄化でき、温室効果ガスの一つであるメタンガスの発生も抑えられます。竹やドラム缶など現地の資材を活用して、低コストで導入が可能な点も特徴です。

松藤氏は、重機も道具もなく、ゴミ拾いを生計手段としている人(ウェイストピッカー)がいる場所で福岡方式を導入するためには、技術を伝えるだけではうまくいかないと自身の経験から語り、ウェイストピッカーの協力を得ながら導入を進めるために、自ら廃棄物処理施設に入って技術指導を行います。「世間から眉をひそめられているウェイストピッカーも、見方を変えれば、ごみの分別と削減に貢献しているパートナーです。ウェイストピッカーの協力を得ることで福岡方式の導入が早く進むとともに、ごみ処分場が安全な場所になって彼らにとっても仕事がしやすくなります。一緒に作業をして、ごみ処分場が改善されるに従い、彼らの顔つきも穏やかになり、協力的になります。」と語ります。

アディスアベバ市での成功を受けて、エチオピア国内のほか、国外21か国からも、福岡方式による廃棄物管理の導入を求める声が高まりました。エチオピア国内では2019年にバハルダール市に展開され、2021年からはハワサ市で、「アフリカのきれいな街プラットフォーム」注1の取組の一つとして継続しています。

松藤氏の下には、多くの国々から廃棄物処理施設の改善のための協力依頼が寄せられています。今後の他国への展開について、「一つの国の中にも廃棄物処理施設は何十か所もあり、予算も限られています。私自身が全ての場所に赴くことは難しいため、正しい技術と知識を伝えられる人材を育成し、福岡方式を広く伝えたいと思っています。」と展望を語ります。現在、松藤氏の指導の下、東南アジア、南米、アフリカなど地域ごとにオンラインも活用した研修センターを作る構想も進んでいます。日本の技術が、各地の廃棄物処理施設の改善につながることが期待されます。


注1 用語解説を参照。

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