2022年版開発協力白書 日本の国際協力

(3)ODAの管理改善と説明責任

日本はこれまで、ODAの管理改善と説明責任を果たすために、(ⅰ)PDCAサイクル(案件形成(Plan)、実施(Do)、評価(Check)、フォローアップ活動(Act))の強化、(ⅱ)プログラム・アプローチの強化、(ⅲ)「見える化」の徹底を進めてきました。

PDCAサイクルの強化について、日本は、(ⅰ)全ての被援助国における国別開発協力方針の策定、(ⅱ)開発協力適正会議の開催、(ⅲ)個別案件ごとの指標の設定、(ⅳ)評価体制の強化といった取組を進めています。

より効果的・効率的なODAを行うためには、事業レベルだけではなく、政策レベルでPDCAサイクルを強化していくことが必要です。そのため、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」に基づいて経済協力に係る施策などについて政策評価を実施注25するとともに、客観性や公平性を確保するため第三者によるODA評価を実施し、評価の結果から得られた提言や教訓をODA政策にフィードバックすることで、ODAの管理改善を図っています注26

第三者評価は、被援助国の開発に役立っているかという「開発の視点」に加え、日本の国益にとってどのような好ましい影響があるかという「外交の視点」から実施しています。

「開発の視点」では、ODA政策が日本の上位政策や国際的な優先課題、被援助国のニーズとの整合性(政策の妥当性)、実際にどのような効果が現れているか(結果の有効性)、政策の妥当性や結果の有効性が確保されるようなプロセスが取られていたか(プロセスの適切性)の3つの評価基準に基づいて評価を実施します。「外交の視点」では、日本の国益にどのように貢献することが期待されるか(外交的な重要性)、日本の国益の実現にどのように貢献したか(外交的な波及効果)の2つの基準に基づいて評価を実施しています。

2023年前半を目処に、新たな開発協力大綱の策定を予定していることに鑑み、2022年には、過去のODA評価案件を対象に開発協力大綱の主要項目に即してレビューを行い、今後のODA政策およびその実施に際して考慮すべき事項や新たに盛り込む視点などについて提言を示すことを目的として、「過去のODA評価案件(2015~2021年度)のレビュー」を実施しました。

評価結果は、外務省ホームページ注27で公表し、国民への説明責任を果たすとともに、ODAの透明性を高めてODAに対する国民の理解と支持を促進しています。

また、JICAも無償・有償資金協力および技術協力の各プロジェクトについての評価やテーマ別の評価を実施しています。JICAは、各プロジェクトの事前、実施中、事後まで一貫した評価を行うとともに、それぞれの援助手法に整合性のある評価の仕組みを確立しています。なお、一定金額以上の案件については、JICAは外部評価者による事後評価を実施しています。事業の効果を定量的に把握することも重要であり、インパクト評価注28の強化にも取り組んでいます。

外務省およびJICAが実施するODA評価は、主に経済協力開発機構(OECD)開発援助委員会(DAC)の評価基準注29を踏まえて実施しています。

図表Ⅳ-4 PDCAサイクル

  1. 注25 : 施策レベル以外にも、交換公文(E/N)供与限度額150億円以上の有償資金協力プロジェクト、およびE/N供与限度額10億円以上の無償資金協力プロジェクトについて事前評価を実施している。また、「未着手・未了案件(未着手案件とは、政策決定後、5年を経過した時点で貸付契約が締結されていない、あるいは貸付実行が開始されていない等の案件。未了案件とは、政策決定後10年を経過した時点で貸付実行が未了である等の案件を指す。)」の事後評価を行っている。
  2. 注26 : 政策レベルのODA評価(第三者評価)に加え、2017年度からは外務省が実施する無償資金協力についても、交換公文(E/N)供与限度額2億円以上の案件については内部評価を、10億円以上の案件については第三者評価を実施し、その結果を公表するとともに、これらの事後評価結果が次のODAの案件形成にいかされるよう努めている。
  3. 注27 : http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/kaikaku/hyoka.html
  4. 注28 : 開発事業の効果を、統計学や計量経済学の手法を用いて検証する評価方法のこと。
  5. 注29 : DAC評価基準:1991年から活用されてきた妥当性(Relevance)、有効性(Effectiveness)、効率性(Efficiency)、インパクト(Impact)、持続性(Sustainability)に、2019年12月に整合性(Coherence)が追加された。
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