2022年版開発協力白書 日本の国際協力

(2)不正腐敗対策などのガバナンス支援

公務員が関与する贈収賄や横領などの汚職事件は、開発途上国の健全な経済成長や公平な競争環境を妨げる要因にもなります。そこで、ドナー国は、公正かつ安定した社会の実現のため、途上国における不正腐敗対策を含むガバナンス支援にも取り組む必要があります。

●日本の取組

第24回汚職防止刑事司法支援研修の様子(写真:UNAFEI)

第24回汚職防止刑事司法支援研修の様子(写真:UNAFEI)

第16回GGセミナーにおける集合写真(写真:UNAFEI)

第16回GGセミナーにおける集合写真(写真:UNAFEI)

日本は国連腐敗防止条約の締約国として、同条約の事務局である国連薬物・犯罪事務所(UNODC)への協力を通じ、腐敗の防止および取締りに関する法制度の整備や、司法や法執行機関などの能力構築支援に積極的に関与してきました。

また、日本は、国連アジア極東犯罪防止研修所(UNAFEI)注37を通じて、法制度整備支援および不正腐敗対策を含むガバナンス支援の一環として、アジアやアフリカなどの途上国の刑事司法実務家を対象に、毎年、研修やセミナーを実施しています。

具体的な取組の一例として、1998年から「汚職防止刑事司法支援研修」を毎年1回実施しています。同研修は国連腐敗防止条約上の重要論点からテーマを選出して実施しているもので、各国における汚職防止のための刑事司法の健全な発展と協力関係の強化に貢献しています。2022年11月には、参加者の訪日による対面方式で、「汚職犯罪収益の特定、追跡、保全、没収及び財産回復における課題と対処」をテーマとする第24回汚職防止刑事司法支援研修を実施しました。

ほかにも、東南アジア諸国におけるガバナンスの取組を支援するとともに、刑事司法・腐敗対策分野の人材育成に貢献することを目的として、2007年から「東南アジア諸国のためのグッド・ガバナンスに関する地域セミナー(GGセミナー)」を毎年度1回開催しています。2022年12月には、「汚職を巡る新たな犯罪類型及びその効果的な対策について」をテーマとする第16回GGセミナーを参加者の訪日による対面方式で開催し、ASEAN加盟国のうち9か国(インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、ベトナム、ブルネイ、マレーシア、ラオス)と東ティモールの合計10か国から17名の刑事司法実務家が参加しました。

UNAFEIの活動は腐敗防止にとどまらず、国際社会での犯罪防止・刑事司法に関する重要課題を取り上げ、それらをテーマとした研修やセミナーを広く世界中の途上国の刑事司法実務家に対して実施することにより、変化するグローバル社会への対応を図ってきました。例えば、2022年においては、1月から2月にかけて「再犯防止のための多機関連携と官民協働」をテーマとする第177回国際高官セミナーを、6月から7月にかけて「サイバー犯罪-電子証拠が問題となるあらゆる形態の犯罪」をテーマとする第178回国際研修を、9月に「少年司法とその展開-非行少年及び若年犯罪者に対する効果的な諸方策」をテーマとする第179回国際研修を、それぞれオンライン方式で実施しました。


  1. 注37 : 国連と日本政府との協定に基づいて1962年に設立され、法務省法務総合研究所国際連合研修協力部により運営されており、設立以来、142の国・地域から6,300名を超える卒業生を輩出している。
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