2022年版開発協力白書 日本の国際協力

国際協力の現場から 05

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インドの聖地に文化・人的交流の拠点となる国際会議場を建設

ヴァラナシ国際協力・コンベンションセンターの外観(写真:JICA)

ヴァラナシ国際協力・コンベンションセンターの外観(写真:JICA)

完成式典に出席するモディ・インド首相(右から3番目)とビデオメッセージを送る菅総理大臣(当時)(写真:JICA)

完成式典に出席するモディ・インド首相(右から3番目)とビデオメッセージを送る菅総理大臣(当時)(写真:JICA)

インドには世界中の人々を引き付ける魅力的な観光スポットが数多くあり、観光分野は同国の経済成長を牽引する産業の一つです。ウッタル・プラデシュ州ヴァラナシ市は、約3,000年の歴史があり、巡礼や観光を目的として国内外から年間約700万人が訪れる都市です。同市では、観光・文化イベントなどが多数開催されていましたが、大人数を収容できる施設がないことが課題となっていました。

2015年の日・インド首脳会談において、モディ首相より「ヴァラナシ市でのコンベンションセンター開発」への期待が表明されたことを受け、無償資金協力によりヴァラナシ国際協力・コンベンションセンター(VCC)の建設計画が進められることになりました。

2018年に開始された建設工事では、現地ならではの苦労がありました。「インドの人たちは時間の感覚が私たちとは異なっています。一つの工程が終わってから、初めて次の工程の準備や段取りを行うなど、作業効率の点で改善の余地がありました。そこで、常にモニタリングし、先手を打って次の工程の段取りを始めるなどが必要でした。」と、現場で作業の指揮を担当した株式会社フジタの田畑貢(たばたみつぐ)氏は当時の様子を語ります。また、新型コロナウイルス感染症の拡大も工事に大きな影響を与えました。「ある日突然、町全体がロックダウンされました。いつ解除されるかも分からず、長期間現場にも近づけない時期がありました。」

こうした様々な課題を克服しながら、2021年にVCCは無事完成に至りました。完成したVCCは、1,200人を収容し、最新の舞台・音響機器を備えたメインホールのほか、会議室や楽屋も備えています。デザインには、ヒンドゥー教のシンボルをモチーフにした美しい曲線が取り入れられ、これまでにないユニークかつインドの文化を取り入れた象徴的な建物となりました。「曲線を多用した難易度の高い建造物の建設に日本の高い技術力がいかされたと思います。」と、同社の太田正孝氏は語ります。また、本協力では、舞台装置の操作方法や文化行事の企画などを含めた運営面全般のノウハウも提供しました。

2021年7月に行われた完成式典にはインド側からモディ首相やウッタル・プラデシュ州首相らが出席し、日本側からは菅総理大臣(当時)のビデオメッセージが寄せられました。モディ首相は、完成したVCCがインドの叡智の象徴となるよう願いを込め、このセンターに「ルドラクシャ(=「菩提樹の実」の意)」の愛称を与えました。

インドは2023年にG20の議長国を務め、各地で様々な会合が予定されています。VCCではそのような国際会議の開催のほか、文化交流・市民交流のための大規模な行事の開催が可能です。これにより、従来の観光客とは異なる目的で市を訪れる人々も増え、国際交流やさらなる観光振興を通じて市の発展に寄与することも期待されています。

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