3 開発協力の適正性確保のための取組
ODAを中心とする開発協力は、開発途上国の開発、成長だけでなく、日本と途上国との間の友情と信頼関係の確かな絆を築くとともに、国際社会における日本の地位の向上や、日本自身の平和と繁栄の確保のためにも大いに貢献してきました。その一方で、ODA事業に関連して不正が行われたことや、不測の事態によって十分な援助効果が上げられなかったり、遅れが生じたりしたこともあります。
日本政府は、こうした経験を将来への教訓とするため、評価制度の整備、透明性の向上、事業管理プロセスの改善、受入国や市民社会を含む幅広い関係者との対話の実施など、様々な努力を続けてきました。日本政府は、今後もより効果的で適正な開発協力の実施に向けた不断の努力を行っていきます。
また、JICAが実施するODAの無償資金協力案件の資金のうち、JICAに交付された後、JICAから先方政府に支払われるまでの間、独立行政法人国際協力機構法に基づき、JICAが管理している資金(以下、「支払前資金」)の扱いにつき、2021年10月20日に財務省の財政制度等審議会で指摘があったことも踏まえ、外務省は、同年11月25日に、この支払前資金を減らし、適正化を図るための改善策を発表しました。
この改善策に則り、プロジェクトの決定から一定の期間が経過したものを精査の上、見通しが立たないものについては、打切り・国庫返納を行うことを検討し、被援助国政府との協議を行うことも含め、今後、適正かつ効率的な無償資金協力予算の執行に一層努めていきます。
なお、JICAは、開発協力の適正性を確保する一環として、環境社会配慮ガイドラインを導入しており、人権、環境および社会への影響に配慮したODAの実施に努めています。
(1)不正行為の防止
ODA事業に関連した不正行為は、適正かつ効果的な実施を阻害するのみならず、国民の税金を原資とするODAへの信頼を損なうものであり、絶対に許されるものではありません。
外務省およびJICAは、過去に発生した不正行為の教訓を踏まえつつ、これまで、監視体制の強化(不正腐敗情報に係る窓口の強化、第三者検査の拡大など)、ペナルティの強化(排除措置期間の上限引上げ、違約金の引上げ、重大な不正行為を繰り返した企業に対する減点評価の導入など)、および排除措置の対象拡大(措置対象者の企業グループや、措置期間中の者から事業譲渡等を受けた者も対象に加えるなど)を行い、不正行為を防止するための取組を強化してきました。
日本は、ODA事業に関連した不正行為は断じて許さないという強い決意のもと、引き続き、不正行為の防止に向け、しっかりと取り組んでいきます。