(2)不正腐敗対策などのガバナンス支援
公務員が関与する贈収賄(ぞうしゅうわい)や横領などの汚職事件は、開発途上国の健全な経済成長や公平な競争環境を妨げる要因にもなります。そこで、援助国は、公正かつ安定した社会の実現のため、途上国における不正腐敗対策を含むガバナンス支援にも取り組む必要があります。
●日本の取組
日本は国連腐敗防止条約の締約国として、同条約の事務局であるUNODCへの協力を通じ、腐敗の防止および取締りに関する法制度の整備や、ガバナンスが脆弱(ぜいじゃく)な国における司法や法執行機関などの能力構築支援に積極的に関与してきました。
また、日本は、国連アジア極東犯罪防止研修所(UNAFEI)注29を通じて、法制度整備支援および不正腐敗対策を含むガバナンス支援の一環として、アジアやアフリカなどの途上国の刑事司法実務家を対象に、毎年、研修やセミナーを実施しています。
具体的な取組の一例として、1998年から「汚職防止刑事司法支援研修」を毎年1回実施しています。同研修は国連腐敗防止条約上の重要論点からテーマを選出して実施しているもので、各国における汚職防止のための刑事司法の健全な発展と協力関係の強化に貢献しています。2021年には、9月から10月にかけて、オンライン方式で、「高度情報化・国際化社会における汚職の新たな脅威とその対処」をテーマとする第23回汚職防止刑事司法支援研修を実施しました。
ほかにも、東南アジア諸国におけるガバナンスの取組を支援するとともに、刑事司法・腐敗対策分野の人材育成に貢献することを目的として、2007年から「東南アジア諸国のためのグッド・ガバナンスに関する地域セミナー(GGセミナー)」を毎年度1回開催しています。2021年12月には、「汚職に対する効果的な国際協力」をテーマとする第15回GGセミナーをオンラインで開催し、ASEAN加盟国のうち9か国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイおよびベトナム)と東ティモールの合計10か国から18名の刑事司法実務家が参加しました。
さらに、UNAFEIの活動は腐敗防止にとどまらず、国際社会での犯罪防止・刑事司法に関する重要課題を取り上げ、それらをテーマとした研修やセミナーを広く世界中の途上国の刑事司法実務家に対して実施することにより、変化するグローバル社会への対応を図ってきました。たとえば、2021年には、10月から12月の間に、オンライン方式で、「女性犯罪者の処遇」をテーマとする第175回国際研修および「包摂的な社会に向けた刑事司法」をテーマとする第176回国際研修をそれぞれ実施しました。
- 注29 : 国連と日本政府との協定に基づいて1962年に設立され、法務省法務総合研究所国際連合研修協力部により運営されおり、設立以来、140の国・地域から6,100名を超える卒業生を輩出している。