2 普遍的価値の共有、平和で安全な社会の実現
2-1 公正で包摂的な社会の実現のための支援
(1)法制度整備支援・経済制度整備支援
開発途上国の「質の高い成長」の実現のためには、一人ひとりの権利が保障され、人々が安心して経済社会活動に従事でき、公正かつ安定的に運営される社会基盤が必要です。こうした基盤強化のため、途上国における自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値の共有や、グッド・ガバナンス(良い統治)の実現、平和と安定、安全の確保が重要となります。
この観点から、法令の整備や司法関係者(法曹および矯正・更生保護に従事する職員を含む)の育成などの法制度整備支援、および税制度の整備、税金の適切な徴収・管理・執行、公的部門の監査機能強化、金融制度改善など、人づくりも含めた経済制度整備支援が必要です。
●日本の取組

京都コングレスの特別イベントにおいて宇都外務副大臣(当時)によるビデオ・メッセージが放映されている様子(2021年3月)

知的財産権保護の体制強化のためインドネシアに派遣された日本人専門家が協議を行っている様子(写真:JICA)
日本は、法制度・経済制度整備支援の一環として、法・司法制度改革、法令の起草支援、法制度運用・執行のための国家・地方公務員の能力向上、内部監査能力強化、制度整備(民法、競争法、知的財産権法、税、内部監査、公共投資など)に関する支援をモンゴル、ベトナム、ラオス、カンボジア、インドネシア、バングラデシュ、東ティモール、ネパール、ウズベキスタン、スリランカ、コートジボワールなどの国々で行っています。特に、ラオスでは、日本が20年以上にわたり法制度整備支援に一貫して取り組んだ結果、2020年5月には同国初の民法典が施行され、現在はその運用支援が行われています。このように、途上国の法制度・経済制度が整備されれば、日本企業がその国で活動するためのビジネス環境が改善されることにもつながります。法制度・経済制度整備への支援は、日本のソフトパワーにより、アジアをはじめとする世界の成長を促進し、下支えするものです。
2021年3月には、京都において、日本がホスト国となり、事務局である国連薬物・犯罪事務所(UNODC)と協力し、第14回国連犯罪防止刑事司法会議(「京都コングレス」)が開催されました。「2030アジェンダの達成に向けた犯罪防止、刑事司法及び法の支配の推進」という全体テーマの下、テロや新興犯罪を含むあらゆる形態の犯罪を防止し対処するための国際協力および技術支援などを議題として議論が行われ、成果文書として、犯罪防止・刑事司法の分野における国連と国連加盟国の中長期的な指針となる「京都宣言」が全会一致で採択されました。
ほかにも、人材育成の強化などを目的として、国際研修や調査研究、現地セミナーを実施しています。2021年には、2020年に引き続き、新型コロナの世界的流行に伴う海外渡航の制限により対面での実施が困難であったことから、オンライン方式を用いて、スリランカ、ウズベキスタン、ラオス、インドネシアなどの国から、司法省職員、裁判官、検察官などの立法担当者や法律実務家の参加を得て、各国のニーズに応じて、法案の起草や法曹育成などをテーマとして研修を実施したほか、現地で開催された会合やワークショップなどに参加しました。
さらに、日本は、途上国のニーズに沿った支援を積極的に推進していくため、その国の法制度や解釈・運用などに関する広範かつ基礎的な調査研究を実施して、効果的な支援の実施に努めています。2021年3月には、調査研究の成果を発表する場として、第10回国際民商事法シンポジウム「東南アジア4か国のジョイントベンチャー法制と実務対応~インドネシア、マレーシア、タイ、ベトナム」をオンラインで開催しました。