国際協力の現場から 05




日本の技術や知見を活かしボリビアの環境改善に取り組む!
~JICA帰国研修員が結成したECO-TOMODACHIの活躍~

ECO-TOMODACHIのロゴマーク(写真:JICA)

ECO-TOMODACHIの廃棄物処理専門メンバーが集合し、コンポストの技術を共有する様子(写真:JICA)

ウユニ市で観光業に取り組む市民向けのコンポスト研修を実施する帰国研修員のエンシナス・エドイン氏とコンポストコンサルタント(元JICA海外協力隊員)の様子(写真:JICA)
ボリビアでは、標高3,000メートルを超える高地にあるウユニ塩湖などの観光地において、観光客が持ち込んだごみが散乱していたり、利用可能なトイレが不足するなど、環境や衛生状況の改善が喫緊の課題となっています。JICAボリビア事務所は、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大で停滞した観光業の活性化を目指し、これらの環境改善に向けた協力を行っています。具体的には、ラパス県庁とともに観光事業者を対象とした衛生管理研修を実施するなど、観光資源を守り、持続的に発展していくための基盤づくりをサポートしています。
こうしたサポートの一環として、日本でJICAの研修を受けた6名のボリビア人が、2017年に「ECO-TOMODACHI」というグループを結成しました。ECO-TOMODACHIは、地方公共団体、民間企業やNPOなどと協力して、ボリビア各地で廃棄物管理や衛生環境の改善、環境教育の促進など様々な活動を行っており、持続可能な観光開発も進めています。
JICAの課題別研修で廃棄物管理と有機ごみのコンポスト注1(堆肥化)を受講した彼らは、日本で習得した技術や知見をボリビアで実践し、現地の環境に適した形での実用化と普及に取り組んでおり、JICAがその活動を支援しています。ECO-TOMODACHIには、JICA帰国研修員でなくとも加わることができ、今やそのネットワークは大きく広がり、廃棄物管理や衛生環境の改善に関する日本の技術がボリビア各地で活かされています。
廃棄物管理とコンポストの普及活動を積極的に進めているECO-TOMODACHI結成メンバーの一人であるエンシナス・エドイン氏は、「ボリビアの地方公共団体レベルでの廃棄物処理に関する法律は2015年にできたばかりで、当初は国内での意識が低く、住民の協力を得るのも難しい状況でした。それでもJICAのサポートもあり、地道な活動を進めることで、ごみの処理と削減に取り組む地方公共団体や住民が増えてきました。」と語り、次のように続けます。「廃棄物管理とコンポストに関する日本の技術は、手間と時間はかかりますが、技術としては簡単で、自然環境への適用性が高いことが特徴です。循環型のコンポストによって、ごみを資源として野菜がつくれることを知ってもらうのはとても嬉しく、楽しいです。」
また、JICAボリビア事務所職員の渡辺磨理子(わたなべまりこ)氏は、「私たちは環境改善のための普及活動や技術協力、観光戦略の立案を行う中で、地域住民との意見交換を通じて、適切なサポート体制を築けるよう取り組んでいます。環境教育の一環として、日系企業、地方公共団体、ECO-TOMODACHIが共同で、コンポストの作成方法を学べる携帯アプリも開発しました。今後も各地域の声に耳を傾けながら、日系企業との連携スキームを進めていきたいです。」と、今後の活動について語ってくれました。
このほかにも、ECO-TOMODACHIとJICAの協力を得て、ボリビア登山・トレッキングガイド協会とアンデス登山救助隊が、国内外からの登山客の増加に伴う観光ルートのごみ処理やトイレ状況の改善に取り組んでいます。協会および救助隊は、登山ガイドや麓(ふもと)の住民への環境教育を通じて、排泄物をコンポスト化することで農業に役立てて循環させることを目指しています。観光地化が進む地域の高地住民の意識も高く、「ポスト・コロナの観光開発を見据えて、積極的に協力してくれます。」と、ECO-TOMODACHIメンバーとしてJICAとともに観光地の環境改善に取り組むAVENTURA観光専門学校のサコネタ・ダニエル学長も期待を寄せています。
中南米地域のJICA帰国研修員同窓会会長も務めるボリビアJICA帰国研修員同窓会会長のプリエト・パトリック氏は、「ボリビアには6,000人ものJICA帰国研修員がおり、日本での学びや経験を各地で共有しています。地方公共団体とともに推進している廃棄物管理や衛生環境の改善に係る取組に続き、観光地においても、その経験を活かして環境改善を進めていきたいと思います。また、約7万人ものJICA帰国研修員がいる中南米地域へも、将来的にボリビアのECO-TOMODACHIの経験を共有し、他の国でもECO-TOMODACHIのような活動が展開されればと思います。」と展望を語ってくれました。JICAとともに、日本の技術を活用して循環型社会を目指すECO-TOMODACHIの今後の活躍が大いに期待されています。
注1 Compost(堆肥)。生ごみや落ち葉、下水汚泥などの有機物を微生物の働きを活用して発酵・分解し、有用な堆肥をつくること。