2019年版開発協力白書 日本の国際協力

国際協力の現場から 03

「サッカー選手として、ユニセフの親善大使として」
~長谷部誠 日本ユニセフ協会親善大使からのメッセージ~

2011年12月、南三陸町を訪問した長谷部誠選手。日本ユニセフ協会の支援活動が終了した16年末以降も被災地への訪問を続けている。(写真:日本ユニセフ協会)

2011年12月、南三陸町を訪問した長谷部誠選手。日本ユニセフ協会の支援活動が終了した16年末以降も被災地への訪問を続けている。(写真:日本ユニセフ協会)

2016年6月、バングラデシュのクトゥパロン難民キャンプを訪問した時の様子(写真:日本ユニセフ協会)

2016年6月、バングラデシュのクトゥパロン難民キャンプを訪問した時の様子(写真:日本ユニセフ協会)

Jリーグでプロサッカー選手としてのキャリアをスタートして3年目か4年目だったと思います。海外遠征で様々な国を訪れるようになり、そこで、日本とは異なる様々な状況に接するたびに「何かしなければ」という思いが募っていました。そんな時、飛行機の中で手に取ったパンフレットをきっかけに、まずは、一個人として、ユニセフを通じて世界の子どもたちへの支援を始めました。

みなさんもご存知のとおり、海外では、多くのプロスポーツ選手が様々な社会貢献活動をされています。ご本人たちも社会も、プロの世界で成功した者としてそれを「当然のこと」のように捉えていらっしゃいます。世界の舞台に立つことを目指していた私自身も「いつかは」と思っていたのですが、2010年、ご縁あって日本ユニセフ協会にお声がけいただき、広報活動をお手伝いさせていただくようになりました。それから半年も経たないうちに起こった東日本大震災では、日本ユニセフ協会も被災地で支援活動を展開されたので、私の呼びかけに応えてくださった多くの方々とともにその活動を応援しました。みんなの思いが、どのように子どもたちに届けられているか。自分自身の目で確かめ報告できるよう、支援現場にも何度も伺いました。

海外のユニセフの現場を初めて訪れたのは、2014年、大地震と大津波から10年が経とうとしていたインドネシアのバンダ・アチェでした。「第3回国連防災世界会議」(詳細は「防災協力」を参照)の開催を翌年に控え、ユニセフとして、「子どもにやさしい復興」のメッセージを発信したいとのことだったのです。これをきっかけに、ユニセフの様々な海外の「現場」にも伺うようになりましたが、その皮切りは、世界中のユニセフの現場に様々な支援物資を送っているコペンハーゲンの物資供給センターを訪れたことでした。この直前に、サッカー人としての私を応援してくださっている方々とともに、世界の子どもたちにはしかのワクチンを贈る活動も始めていたので、全世界で使われるワクチンの4割を調達し、現場に送る役割も果たしているこのセンターから、「ワクチンの旅」を辿ってみようと思ったのです。

2017年は、エチオピアで「旅」の後半を辿りました。首都アディスアベバの中央保冷庫から標高3000メートルを超える山々に囲まれたガシュ・アンバ村まで、実際にワクチンを運ぶ作業に参加させていただいたのです。コールドチェーンはもちろん、保健センターのスタッフやボランティアのトレーニングや、地域の人々の間の予防接種に対する警戒心や迷信を取り除くための働きかけなど、本当にいろいろな活動や支援、そして多くの方々のチームワークがあって初めて「ワクチン」が子どもたち一人ひとりに届くことを学びました。

2018年には、ロシアW杯に合わせ、ユニセフが世界的に「難民・移民」の子どもたちへの支援を呼びかけられたので、私もビデオなどで参加させていただきました。この問題には、10年来仕事と生活の拠点としているドイツでも日常的に接しておりましたので、やはり「何か出来ないか」と思っていたのです。このことをきっかけに、この年の暮れにギリシャの難民キャンプを、そして2019年夏にバングラデシュにある世界最大の難民キャンプを訪ね、命を繋ぐ支援と同じように、この先が見えない子どもたちだからこそ、自らの未来を切り拓く力を育てる教育こそが重要な支援ではないかと強く感じました。子どもが子どもでいられる時間は限られていますし。

サッカー選手として、ユニセフの親善大使として、世界の様々な場所で子どもたちに出会い、多くのことを学び、感じてきました。特に日本と世界の未来を担う若い世代の方々には、私たちの日々の生活が、そうした方々が置かれている状況と無関係ではないということに気が付いていただければと思います。そのために、これからも、この活動を続けてゆきたいと思っています。

日本ユニセフ協会大使

長谷部誠


※長谷部誠選手は2016年12月に日本ユニセフ協会大使に就任。その活動はユニセフのホームページ(https://www.unicef.or.jp/partner/hasebemakoto/)に掲載されています。

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