2017年版開発協力白書 日本の国際協力

開発協力トピックス1

インドの広大な大地を、日本が誇る新幹線が駆け抜ける

ムンバイ・アーメダバード間高速鉄道計画

ムンバイ・アーメダバード間高速鉄道計画は、インド最大の都市であるムンバイと商業・金融センターとして栄えるアーメダバードとの間を結ぶ、インド初となる高速鉄道を整備する計画です。このインド初の高速鉄道に、日本の新幹線システムの導入と、ODAによる支援が組み合わさり、「日印新時代」を象徴する旗艦(きかん)事業となっています。

2009年にインドで高速鉄道構想が発表されて以降、日本は官民を挙げて精力的にインドへの新幹線導入に向けた取組を続けてきました。2013年5月、東京で行われた日印首脳会談では日印共同調査を行うことに合意し、2015年12月のデリーでの日印首脳会談では、日印両国政府間で高速鉄道計画に関する協力覚書に署名がなされ、新幹線システムの導入が決定されました。

こうした取組が結実し、2017年9月の安倍総理大臣の訪印に際して、日印両首脳立ち会いの下、本事業に対する最初の円借款として、1,000億円を供与するための交換公文が署名されました。また、同鉄道の終着駅となるアーメダバードのサバルマティ駅付近において、本事業の起工式典が盛大に行われ、両首脳、インドの関係閣僚や大勢の鉄道関係者、日本企業関係者等、約1万人が見守る中、この歴史的な大事業の第一歩が踏み出されました。

ムンバイ・アーメダーバード間高速鉄道イメージ図。(写真提供:インド高速鉄道公社(NHSRCL))

ムンバイ・アーメダーバード間高速鉄道イメージ図。(写真提供:インド高速鉄道公社(NHSRCL))

ムンバイ・アーメダバード間高速鉄道が完成すれば、日本のE5系をベースとした高速鉄道車両が、最高速度時速320キロで、ムンバイ・アーメダバード間の約500キロの距離(東京・大阪間の距離に相当)を疾走します。日印共同調査によれば、現在、在来線特急で約7時間、飛行機で約1時間半かかっているムンバイとアーメダバード間を、高速鉄道では2時間で移動でき、また、その料金は航空運賃の約半額で済むと予測されています。50年以上の歴史の中で、日本の新幹線では乗車中の旅客が死亡に至る列車事故が一度も発生しておらず、様々な面で技術的優位性を誇ります。日本政府は、高速鉄道研修施設の建設のための円借款供与や、インド高速鉄道公社や鉄道省職員の訪日研修の実施等技術協力を通じ、将来高速鉄道の運営にかかわる人材育成においても、インド政府に協力しています。新幹線システムの導入により、インドにおける鉄道技術や人材全般の底上げが期待されます。さらには、こうした鉄道網の発達や駅周辺整備に伴う経済・社会的効果を通じて、インドのさらなる経済発展と雇用創出、それに伴う貧困削減が期待されます。

また、2017年の日印共同声明において、両首脳はインド国内およびインド太平洋地域のその他の国との連結性強化のために協働するという力強いコミットメントを表明しています。今後も、日本は、「自由で開かれたインド太平洋戦略」の下で、インドの「アクト・イースト政策注1」とも連携を進めるなど、日印特別戦略的グローバルパートナーシップの下、本高速鉄道事業等を通じて、インドを含む地域の経済的繁栄に積極的に貢献していきます。


  1. 注1 : インドのモディ首相が進める、首脳間の交流を活発化させ、南アジア域内やASEAN各国との関係強化に努め、東アジア・東南アジアとの関係を重視する政策。
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