2017年版開発協力白書 日本の国際協力

巻頭言

今日の国際社会は、紛争やテロ、難民、貧困、気候変動、感染症といった国境を越える様々な地球規模の課題に直面し、世界各地のあらゆるリスクが、日本を含む世界全体の平和と安定及び繁栄に直接的な悪影響を及ぼし得る状況になっています。また、新興国・開発途上国の経済成長が世界経済全体の安定的成長にとり不可欠になっています。

こうした背景の下、日本が国際社会の責任ある一員として、国際協調主義に基づく積極的平和主義の旗を高く掲げ、国際社会の平和と安定及び繁栄に一層貢献し、それを通じて国益の確保を追求していくことの重要性は論を待ちません。その実現の手段として、ODAを主体とする開発協力は日本の重要な政策ツールの一つです。言い換えれば、ODAを使って、貧困の撲滅や世界の平和構築等の地球規模の課題の解決できちんと成果を出し、最終的には日本にもその効果が及ぶような取組を行うことが重要です。

世界が抱える開発課題は大きく変化しつつあります。例えば、開発途上国における開発がある程度進展したとしても、政治経済的不安定や国内格差、「中所得国の罠」等の課題が生じている場合が少なくありません。また、世界では膨大なインフラ需要が発生しており、これに対応するため、国際スタンダードに則った質の高いインフラ整備の推進や、開発資金の需給ギャップに対応するために民間資金の動員を後押しする取組が求められています。さらに、国内紛争や地理的、気候的諸条件等に起因する様々な脆弱(ぜいじゃく)性のために成長から取り残されている国々もあり、そのような国々においては、人道支援に加え、法の支配や民主化といった安定的な開発の基盤を確保する必要があります。このように、世界が直面する課題は多様化・複雑化し、さらにグローバル化の進展とも相まって、国境を越えて広範化しています。このような困難な挑戦に直面する世界として、これまで以上に智恵と行動が必要とされています。また、現在の国際社会では、民間企業、地方自治体、NGOを始めとする多様な主体が、開発課題の解決、そして開発途上国の持続的成長及びその先にある「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成を実現する上で、ますます重要な役割を果たすようになってきています。国際社会の平和と安定及び繁栄の確保のためには、これらの多様な力を結集することも必要です。

一方で、厳しい財政状況と少子高齢化という課題を日本が抱えている中、国民の皆様方からODAに対して大変厳しい目が向けられているのも事実です。外務省には、国民の皆様に対し、ODAの取組や意義をしっかりと説明し、御理解・御支援を頂きながら、ODAを一層戦略的・効果的に活用していく責任があります。

今回の白書では、日本が提唱し、推進する「自由で開かれたインド太平洋戦略」を具体化していく上での開発協力の意義・役割とともに、2015年に国連で全会一致で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」を達成するための日本のこれまでの取組について紹介しています。また、あわせて、ODAを通じて日本の中小企業を支援する取組も紹介しています。

本書が、日本の開発協力をめぐる様々な課題に対する国民の皆様の御理解を深めることに役立つことを祈念するとともに、外務省として国民の皆様の御支援を頂きながら、共にある外交を目指してまいります。

2018年2月

外務大臣 河野太郎

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