4 開発協力の日本国内の実施基盤強化に向けた取組
(1)情報公開、国民の理解と支持の促進に向けた取組
開発協力大綱(2015年閣議決定)は、持続的に開発協力を実施していくために国民の理解と支持を得ていくことの重要性を強調しています。
外務省およびJICAは、開発協力に関する議論や対話の促進、開発教育の推進、開発協力の現状についての情報公開、地方や幅広い層への発信など様々なレベルや形で国民参加を強化しています。外務省およびJICAは、幅広い層の国民が実際の開発途上国支援に直接参加でき、ODAの現場を体験できる機会も提供しています。同時に、外務省およびJICAは、開発課題の多様化・複雑化に適切に対応していくためには、人材育成と研究協力、官民連携も重要と認識しています。国際社会において日本の開発協力に関する考え方への理解を広めることも重要であり、大学をはじめとする教育・研究機関やNGOとの連携もますます重要となりつつあります。
また、日本国内のみならず、開発途上国において日本の支援について多くの人に知ってもらうことはODAの実施において欠かせないプロセス(過程)であり、在外公館とJICA現地事務所が連携して、現地でのODA広報に力を入れています。
ア.広報・情報公開・情報発信の強化
外務省とJICAは、それぞれODAに関するウェブサイト注14を相互にリンクさせながら正確な情報の公開と発信に努めています。また、外務省はODAメールマガジンを発行し、海外の日本大使館や総領事館の職員やJICA関係者、NGO職員、民間企業の駐在員などによる実際の開発協力の現場での体験談やエピソードなどを紹介しています。
1993年から外務省は、国民が国際協力について関心を持ち、理解を深められるよう、テレビ番組の放映にも取り組んでいます。2017年は、テレビ東京系列6局ネットで特別番組「宇宙船オリエンタルの地球スマイル探査隊」と、テレビ東京でミニ番組「MA-SAの発見★ スマイルアース」が4回放送されました。番組では、地球に広がる「笑顔」の理由が調査され、その背景にある日本の開発協力が紹介されました。日本が世界各国で実施する開発協力の現状のほか、2015年国連で採択されたSDGsや「日本が開発協力を実施する意義」などについて解説されました。外務省はテレビのほかにも開発協力をテーマにしたマンガを制作し、ホームページやソーシャル・ネットワーキング・サービスなどを通じて、配信しました。

外務省が発行しているODAメールマガジン。様々な国々への日本の支援を紹介している。(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/mail/index.html)

マンガで知る開発協力「ODAガール&主夫ボーイ」(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/ebook/odagirl/html5.html#page=1)
毎年「国際協力の日」(10月6日)注15の前後には、日本国内最大級の国際協力行事として「グローバルフェスタJAPAN」が開催されています。2017年は、東京・お台場のシンボルプロムナードで9月30日(土)、10月1日(日)の2日間にわたって外務省、JICAとJANIC(国際協力NGOセンター)が共催し、NGOや国際機関、在京大使館、企業、関係する省庁など266社・団体が参加し、120,861人が来場しました。

「グローバルフェスタJAPAN2017」で、スタンプラリーを通してSDGsを学ぶ子どもたち。

東京お台場で開催された「グローバルフェスタJAPAN2017」において、堀井巌外務大臣政務官がオリエンタルラジオと共に国際協力について紹介。

また、海外においても、在外公館はODAを通じた日本の積極的な国際貢献について理解を深めてもらうための広報を行っています。具体的には、開発協力にかかわる署名式や引渡し式に際してプレスリリース(報道機関に向けて紹介する文書)を出すなど現地の報道機関も活用しつつ情報発信をしています。ほかにも、在外公館では、現地の報道機関に対して日本の開発協力の現場の視察を企画し、現地の報道において日本の協力が取り上げられる機会をつくるように努めています。また、在外公館は様々な講演活動、英語・現地の言葉によるホームページや広報パンフレット等の作成も行っています。
イ.ODA見える化サイト
2010年に、JICAはODA事業の概要や成果等を分かりやすく説明し、ODAに対する国民の理解と支持をさらに高めていくため、「ODA見える化サイト」をJICAホームページ上に設けました。全世界で展開しているODA事業のうち、有償資金協力、無償資金協力、および技術協力の各案件について、写真や事前・事後評価などの情報を随時掲載し、情報の拡充に努めています。
また、外務省のホームページにおいては、草の根・人間の安全保障無償資金協力および文化無償資金協力で実施された案件について効果が現れている案件や十分な効果が現れていない案件などを含む具体的な達成状況や教訓をとりまとめたリストを公表しており、より効果的なODAの実施に努めています。
ウ.開発教育の推進

2017年7月、福岡市の中村学園女子高等学校で開催された外務省職員によるODA出前講座。
外務省は、職員を中学校、高校、大学、NGOなどに派遣し、国際協力やODAについての説明や解説を行う「ODA出前講座」を実施しています。また、JICAでも開発教育を支援するため、学校教育の現場などの求めに応じて、JICAボランティア経験者などを講師として紹介し、開発途上国での暮らしや経験談を伝えて異文化理解・国際理解の促進を図る「国際協力出前講座」や、東京、名古屋、札幌にある展示施設「地球ひろば」や国内拠点で学校などの訪問を受け入れる「JICA訪問」への対応を行っています。また、中学生・高校生を対象に「JICA国際協力中学生・高校生エッセイコンテスト」を実施しています。さらに、JICAは教員に対して、「開発教育指導者研修」や、開発途上国に派遣し、その経験を授業に活かすことを目的とした「教師海外研修」などを実施しています。
エ.ODAの現場体験
できるだけ多くの人に開発協力の現場を体験する機会を提供し、ODAの実情に触れていただくことは、ODAを理解するために最も効果的な方法の一つです。JICAはスタディツアー(大学のゼミ等)によるODA現地視察、教師や地方自治体関係者などの現地視察への派遣支援にも力を入れています。一般から参加者を募集してODAプロジェクトの現場を実際に視察する機会を提供する「国際協力レポーター」事業では、2017年にガーナへ派遣しました。
オ.議論や対話の促進
日本政府は、ODAを活用した中小企業支援等、ODAに関する取組について国内各地で説明会を行うなどの取組を行っています。また、日本政府は国際協力をめぐる動きや日本の取組を紹介する講演やシンポジウムも開催しており、外交やODAのあり方について関心をお持ちの国民の方と対話する場を随時設けています。
さらにJICAでは、地域にあるセンターや支部などの国内拠点を活用して、地域の産業界や行政関係者あるいは有識者や地元の大学や学校関係者との懇談や講演を行いながら、国際協力を地域から発信するとともに地域の活性化を目指しています。
(2)開発協力人材・知的基盤の強化
外務省は2015年度から、平和構築・開発人材の発掘・育成・キャリア構築を包括的に実施するため、従来の事業を刷新し、「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業」を開始しました。この事業では、平和構築・開発分野で今後キャリアを形成していく意思を持つ方を対象に国内外での研修を行う「プライマリー・コース」、および平和構築・開発分野における実務経験を有する方のキャリアアップを支援する「ミッドキャリア・コース」を実施しています。さらに、日本政府は平和構築・開発分野の国際機関やNGO等での就職を希望する方を対象に、ポスト獲得に必要なスキル・知識を提供する「キャリア構築支援」を実施しています。
JICAは、開発協力にかかわりの深い研究を行い、将来同分野において活躍する意思を持っている大学院生などに対しインターンシップを1997年から実施しており、2017年度は119人を開発コンサルタントの協力現場を含む様々な職場で受け入れています。また、2002年の第2次ODA改革懇談会の提言に基づいて、省庁、JICAやNGO、国際機関といった様々な専門的な知識や多様な経験を持つ人材に活躍してもらうため、JICA内の「国際協力人材センター」では国際協力キャリア総合情報サイト「PARTNER」(http://partner.jica.go.jp/)を通じて国際協力に関する求人情報、人材の登録、各種研修・セミナー情報の提供、そしてキャリア相談(進路相談)なども行っています。またJICAは、国際協力人材の養成確保のため、ジュニア専門員、能力強化研修などを実施しています。
さらに、日本政府は国際協力専門員制度により、高い専門的な能力と開発途上国での豊富な業務経験を持つ人材を確保しています。JICA研究所は、開発途上国の政府や国際援助のコミュニティへの発信を行いながら、国際的に通用する方法論を用いて、政策について実際の開発協力経験に基づいた研究を進めています。
日本政府は、日本が持つ強みを活かして、日本と開発途上国側の関係者間での政策研究や知的ネットワーク形成を図るなど、大学・研究機関と連携しつつ、開発協力を立案・発信するための知的基盤強化に努めていきます。
- 注14 : 外務省ODAホームページ :http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda
JICA:http://www.jica.go.jp ODA見える化サイト:http://www.jica.go.jp/oda - 注15 : 1954年10月6日、日本はコロンボ・プラン(第二次世界大戦後最も早く1951年に組織された開発途上国援助のための国際機関)への加盟を閣議決定し、経済協力を開始した。これにちなんで、10月6日は1987年の閣議了解により「国際協力の日」と定められた。