2016年版開発協力白書 日本の国際協力

開発協力トピックス 04

アジアにおける連結性

アジアにおける持続的発展には、成長の果実が国から地域に広がっていくように、「点」から「面」で成長をとらえていくことが重要です。その鍵となるのが「連結性」です。

連結性の強化に当たっては、インフラ整備等の①物理的連結性のみならず、通関円滑化等の②制度的連結性、人材交流・ネットワーク構築による③人的連結性を三位一体で進めることにより、国と国がつながり、地域全体としてモノやヒトの活発な流れが生まれる「生きた連結性」にする必要があります。

ただ道路や橋を作って終わりというような協力ではなく、インフラ整備を通じてヒトやモノの流れを生み出し、国境の通関手続等の改善を通じた物資輸送の円滑化や経済回廊の周辺地域開発等により、その流れを一層活発化させ、その国の経済発展を後押しする協力を日本は行っています。

たとえば、2015年4月に日本の支援で開通したカンボジアの「つばさ橋」は、プノンペンとホーチミンを結ぶ経済回廊の要衝(ようしょう)にあります。この橋の開通によって、メコン川を渡る際に従来のように7、8時間もフェリーを待つ必要がなくなり、周辺地域の経済活動の活性化に大きく貢献しました。また、インドでは、2015年にムンバイ・アーメダバード間高速鉄道に日本の新幹線システムを導入することが決定され、日本は、高速鉄道の運用や保守、運営に係る人材育成や技術移転を行うこととしています。これにより、インド第二の都市であるムンバイと、商業都市アーメダバードの間の所要移動時間を従来の約3分の1に短縮することが可能となる予定です。

また、日本の技術を活用した通関システムの導入に向け、JICAによる協力が行われているミャンマーのヤンゴンの港では、これまですべての貨物について少なくとも2時間弱かかっていた審査時間が、最速で1分以内にまで短縮され、その結果、適切な関税徴収を確保しつつ、ミャンマーにおける貿易円滑化に貢献することが期待されます。

さらに日本は、インフラの維持管理を担う各国の人材への支援を通じて連結性の向上を支援しています。たとえばベトナムにおいては、「道路維持能力強化プロジェクト」と呼ばれる技術協力等を通じて運用保守管理能力のための人材育成を行い、連結性を補完するような取組も行っています。

こうした連結性向上への取組に関し、2016年5月、岸田外務大臣は、特にメコン地域を念頭に、訪問先のタイのチュラロンコン大学でのASEAN政策スピーチにおいて、「生きた連結性」という言葉を使って表現しました。こうした生きた連結性を実現する枠組として、同スピーチで岸田外務大臣は「日メコン連結性イニシアティブ」を提案し、その後7月の日メコン外相会議において、同イニシアティブはメコン各国からの賛同を得て正式に立ち上げられました。9月の日メコン首脳会議では、このイニシアティブのもとで優先的に取り組むODAプロジェクトが公表されました。

連結性強化は、経済面のみならず、政治、安全保障の観点からも重要です。国際社会の平和と安定及び繁栄の鍵を握るのは、アジアとアフリカの「2つの大陸」と、太平洋とインド洋の「2つの大洋」の交わりにより生まれるダイナミズムです。安倍総理大臣の打ち出した「自由で開かれたインド太平洋戦略」は、インド太平洋を介してアジアとアフリカの連結性を向上させ、地域全体の安定と繁栄を促進するものです。この地域の経済的、戦略的な重要性は極めて大きく、日本として、地域の安定と繁栄に一層貢献していきます。

2016年5月、タイのチュラロンコン大学でASEAN政策スピーチを行う岸田外務大臣

2016年5月、タイのチュラロンコン大学でASEAN政策スピーチを行う岸田外務大臣

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