2016年版開発協力白書 日本の国際協力

開発協力トピックス 02

OECD開発センター復帰

2016年6月、グリアOECD事務総長へOECD開発センター復帰の書簡を手渡す濵地前外務大臣政務官

2016年6月、グリアOECD事務総長へOECD開発センター復帰の書簡を手渡す濵地前外務大臣政務官

OECD開発センターとは、1961年5月、ケネディ米大統領が構想を提案し、1962年にOECDの下部組織として設立された機関です。OECDは先進国を中心とした集まりですが、OECD開発センターはそれとは異なった特色を持っています。OECD開発センターは、開発途上国、新興国、OECDメンバー国が同等の立場で参加し、開発問題に関する知見共有、事例に基づいた政策対話を行う「シンクタンク」です(OECD加盟国27か国、OECD非加盟国24か国が参加)。近年、世界経済は大きな変容を遂げ、新興国の世界経済に占める割合が飛躍的に増加しています。また、開発課題が多様化・複雑化し、開発をめぐる環境も変化しています。開発センターは開発途上国と先進国、伝統的ドナー国と新興ドナー国との間をつなぐ重要な役割を果たしています。

日本は、OECD開発センターに設立当時から参加していましたが、同センターのガバナンス等の問題により、2000年に一度脱退しました。しかし、近年、同センターのガバナンスの改善に進展が見られ、新規参加国が増加し、同センターの分析・提言に対する評価も高まるなど、その影響力が増しています。また、開発をめぐる環境が変化する中で、先進国、新興国、途上国が対等な立場で活発に意見交換をすることができるOECD開発センターは、様々な開発課題に対処する上で重要な機関であると考えられるようになりました。そこで、2016年、日本は再びOECD開発センターに復帰することを決定しました。そして、同年6月、フランス・パリで開催されたOECD閣僚理事会の機会に、濵地外務大臣政務官(当時)からグリアOECD事務総長に対して岸田外務大臣からの書簡を手交し、日本は、最大の拠出国としてOECD開発センターに16年ぶりに復帰を果たしました。

さらに、同年12月には、日本のOECD開発センター復帰後、初めてのイベントとして、OECD開発センターと外務省の共催で、国際セミナー「グローバルな開発潮流と新興アジアの課題 開発センターの知見を生かして」が開催されました。このセミナーには、OECD開発センター関係者、有識者、民間企業、市民社会、在京大使館関係者、関係省庁・機関職員など約140名が参加しました。同セミナーには、共催者を代表して小田原外務大臣政務官、ペッチーニOECD開発センター所長が出席し、二階俊博自民党幹事長および北岡伸一国際協力機構理事長が基調講演を行いました。このセミナーでは、コメンテーターによるプレゼンテーション、有識者を含む参加者を交えた活発な意見交換が行われ、OECD開発センターの取組、アジアとOECDの関係強化の必要性、日本の果たすべき役割等について理解が進むとともに、今後OECDとアジアがさらに関係を強化していく上で、重要な一歩となりました。

日本は政府開発援助(ODA)を通じてだけではなく、民間部門、NGO、市民社会といった様々なアクター(主体)と連携することも通じて、開発の課題に対処すべきと以前から主張してきており、これまで開発を取り巻く潮流の最前線に立ってきました。日本がOECD開発センターに復帰を果たしたことにより、アジア諸国の発展の経験を開発センターを通じて世界と共有し、今も貧困に苦しむ世界各国の発展に寄与することが可能になります。また、開発センターが有する知見や分析、政策提言は、日本を含むアジアが様々な課題に対処し、質の高い成長を遂げる上で有用なツールです。今後OECDとアジアとのつながりが強化されることで、相互にとって大きな利益をもたらすこととなります。

2016年12月19日東京で開催された国際セミナー「グローバルな開発潮流と新興アジアの課題 開発センターの知見を生かして」の様子

2016年12月19日東京で開催された国際セミナー「グローバルな開発潮流と新興アジアの課題 開発センターの知見を生かして」の様子

日本は、世界の成長センターであるアジアとOECDとの「橋渡し役」として、OECD開発センターの活動に積極的に関与し、協力して、OECD開発センターとアジアとの関係をさらに強化していきます。特に成長著しい新興アジア諸国において、日本と開発センターは手を携え、質の高いインフラ投資の推進や地域統合の促進などの課題に対応していきます。なお、2016年7月には、上田奈生子(うえだなおこ)前国際民間航空機関(ICAO)日本政府代表部理事会代表が、OECD 開発センターの次長に就任しています。

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