2016年版開発協力白書 日本の国際協力

(3)農林水産業の振興とフードバリューチェーンの構築

世界の栄養不足人口は依然として高い水準にとどまっており、人口の増加等によるさらなる食料需要の増大も見込まれています。このような中、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中の「持続可能な開発目標(SDGs)」では、目標1で「あらゆる場所のあらゆる形態の貧困の撲滅」、目標2で「飢餓の終焉(しゅうえん)、食料安全保障と栄養改善の実現、持続可能な農林水産業の促進」等が設定されました。これらを達成し、開発途上国における質の高い成長を実現していくためにも、農業開発への取組は差し迫った課題です。また、開発途上国の貧困層は、4人に3人が農村地域に住んでいます。その大部分は生計を農業に依存していることからも、農業・農村開発の取組は重要です。

< 日本の取組 >

日本は、「開発協力大綱」を踏まえ、開発途上国の「質の高い成長」とそれを通じた貧困撲滅のため、フードバリューチェーンの構築を含む農林水産業の育成等の協力を重視し、地球規模課題としての食料問題に積極的に取り組んでいます。短期的には、食料不足に直面している開発途上国に対しての食糧援助を行い、中長期的には、飢餓などの食料問題の原因の除去および予防の観点から、開発途上国における農業の生産増大および生産性向上に向けた取組を中心に支援を進めています。

具体的には、日本の知識と経験を活かし、栽培環境に応じた研究・技術開発や技術等の普及能力の強化、水産資源の持続可能な利用の促進、農民の組織化、政策立案等の支援に加え、灌漑(かんがい)施設や農道、漁港といったインフラの整備等を実施しています。これらの取組を通じ、生産段階、加工・流通、販売までの様々な支援を展開しています。

マラウイ北部のムジンバ県における農民自立強化・生計向上プロジェクトで栽培指導を実施している様子(写真:レッドソン・ニョンド/公益社団法人青年海外協力協会)

マラウイ北部のムジンバ県における農民自立強化・生計向上プロジェクトで栽培指導を実施している様子(写真:レッドソン・ニョンド/公益社団法人青年海外協力協会)

また、日本はアフリカにおいて、ネリカの研究支援と生産技術の普及支援、包括的アフリカ農業開発プログラム(CAADP)〈注14〉に基づいたコメ生産増大のための支援や小規模園芸農民組織強化計画プロジェクト(SHEP)アプローチの導入支援等を行っています。そのほかにも、収穫後の損失(ポストハーベスト・ロス)の削減や食産業の振興と農村所得向上といった観点から、「フードバリューチェーン」の構築支援も重視しています。これは、農林水産物の付加価値を生産から製造・加工、流通、消費に至る段階ごとに高めながらつなぎあわせることにより、食を基軸とする付加価値の連鎖をつくる取組です。

農林水産省は、2014年6月、学識経験者、民間企業、関係省庁等と共に検討を進め、開発途上国等におけるフードバリューチェーンの構築のための基本戦略や地域別戦略等を示した「グローバル・フードバリューチェーン戦略」を策定しました。この戦略に基づき、開発協力と日本企業の民間投資の連携を通じてフードバリューチェーンの構築を推進するため、ベトナム、ミャンマー、ブラジル、インドなどにおいて、官民が連携し、二国間対話を開催しました。2015年8月には、日越農業協力対話第2回ハイレベル会合において、日本とベトナムの官民連携の下、ベトナムにおけるフードバリューチェーンを構築していくための具体的な行動計画を示した中長期ビジョンを承認しています。

ミャンマー・エーヤワディ地域における農民研修の一環で田植えの実習を行う様子(写真:岡田秀雄/ JICA専門家)

ミャンマー・エーヤワディ地域における農民研修の一環で田植えの実習を行う様子(写真:岡田秀雄/ JICA専門家)

多国間協力による食料安全保障の観点では、2009年7月のG8ラクイラ・サミット(イタリア)の際の食料安全保障に関する拡大会合で、日本は2010年から2012年の3年間にインフラを含む農業関連分野において、少なくとも約30億ドルの支援を行う用意があると表明し、2012年末までにおよそ42億ドル(約束額ベース)の支援を行いました。加えて、開発途上国への農業投資が急増し、一部が「農地争奪」等と報じられ、国際的な問題となったことから、同サミットで日本は「責任ある農業投資」を提唱し、以後、G7/8、G20、APECなどの国際フォーラムで支持を得てきました。さらに、「責任ある農業投資」のコンセプトの下、国連食糧農業機関(FAO)〈注15〉、国際農業開発基金(IFAD)〈注16〉、国連世界食糧計画(WFP)〈注17〉が事務局を務める世界食料安全保障委員会(CFS)〈注18〉において議論が進められてきた「農業及びフードシステムにおける責任ある投資のための原則」が2014年10月の第41回CFS総会で採択されました。

2012年5月のG8キャンプ・デービッド・サミット(米国)において立ち上げられた、「食料安全保障及び栄養のためのニュー・アライアンス」については、2013年6月のロック・アーン・サミット(英国)に合わせて開催された関連イベントにおいて、ニュー・アライアンスの進捗(しんちょく)報告書が公表されるとともに、新たなアフリカのパートナー国の拡大が公表されました。以来、毎年進捗報告書が公表され、パートナー国は10か国となっています。また、2014年以降は独自の作業部会を立ち上げ、G7プロセスから独立し、アフリカ連合委員会(AUC)〈注19〉のニュー・アライアンス事務局の下、自律的な運営がなされています。このほか、日本の財政支援の下、ニュー・アライアンスの枠組みで関連国際機関による「責任ある農業投資に関する未来志向の調査研究」が実施されています。

2015年6月のG7エルマウ・サミット(ドイツ)においては、2030年までに開発途上国における5億人を飢餓と栄養不良から救い出すことを目標とした「食料安全保障及び栄養に関するより広範な開発アプローチ」が発表されました。

この目標の達成に向け、2016年5月に日本が議長国を務めたG7伊勢志摩サミットにおいては、特に優先すべき三つの分野(女性のエンパワーメント、人間中心のアプローチによる栄養改善、強靱で持続可能な農業・フードシステムの確保)についてG7がとるべき具体的行動をまとめた「食料安全保障と栄養に関するG7行動ビジョン」を策定しました。これを踏まえ、10月には国際シンポジウムを東京で開催し、多様な関係者の参加の下、食料安全保障と栄養に関する議論を行いました。

また、G20において、日本は国際的な農産品市場の透明性を向上させるための「農業市場情報システム(AMIS)」支援などの取組を行ってきました。そのほか、FAO、IFAD、国際農業研究協議グループ(CGIAR)〈注20〉、WFPなどの国際機関を通じた農業支援も行っています。

日本はアフリカの食料安全保障・貧困削減の達成のため、そしてアフリカの経済成長に重要な役割を果たす産業として農業を重視しており、アフリカにおける農業の発展に貢献しています。

CARD( アフリカ稲作振興のための共同体)は、2008年に開催された第4回アフリカ開発会議(TICAD Ⅳ)〈注21〉の際に設立され、サブサハラ・アフリカのコメ生産量を、2008年時点の1,400万トンから2018年までに倍増(2,800万トン)させることを目標としています。2014年のサブサハラ・アフリカ地域の年間コメ生産量は2,516万トンまで増加しており、目標に対して約74%を達成しています。

また、自給自足から儲かる農業への転換を推進するため、2013年に開催された第5回アフリカ開発会議(TICAD Ⅴ)において小規模園芸農民組織強化計画プロジェクト(SHEP)アプローチのアフリカ諸国への広域展開とSHEPアプローチに関する技術指導員1,000人、小農組織5万人の育成を表明し、2015年度までに、20か国においてSHEPアプローチを展開するとともに1,324人の技術指導者、約3万人の小農組織の育成を行いました。

2016年8月に開催された第6回アフリカ開発会議(TICAD Ⅵ)においては、アフリカにおける食料安全保障を強化するため、CARDにおいて2018年までに6万人の農民と2,500人の普及員に対して稲作技術を普及するとともに、農業の生産性・収益性向上のため、市場志向型農業の振興とフードバリューチェーンの構築を支援していくことを表明しました。

●エチオピア

農産物残留農薬検査体制・能力強化支援プロジェクト
技術協力プロジェクト(2011年11月~実施中)

カウンターパートによる分析風景(写真:JICA)

カウンターパートによる分析風景(写真:JICA)

エチオピアの主要輸出品の一つはコーヒーであり、主に日本に輸出されています。しかし、2008年、厚生労働省のモニタリング検査において、日本向け輸出コーヒーから残留基準値を上回る農薬が検出され、農薬検査強化などの動きにつながったため、日本がエチオピアから輸入するコーヒーの量が大幅に減少し、農業分野がGDPの約4割で、輸出額の9割以上を占めるエチオピアの経済にも負の影響が出ました。

そのため、エチオピアでは、食品の安全管理の重要性が再認識され、エチオピア農業省(MoA:Ministry of Agriculture)家畜作物安全管理局内に残留農薬検査場が作られました。しかし、エチオピア国内において農薬分析の経験者および検査のための試薬や溶媒が不足していることや、農薬汚染経路が特定できないことなどが問題となり、エチオピア政府は日本に対し、検査場で農薬分析を行う人材の育成への協力を要請しました。

JICAは早速、農薬分析用機材の提供や検査場の運営、人材育成に関し助言をすることのできるスタッフを派遣し、検査場で分析可能な対象農薬や農産物を増やし、検査場の残留農薬検査機能を強化するための技術指導に着手しました。特に、JICAのスタッフは、エチオピアの技術者たちが、自主的に農産物の報告書を分析し、必要に応じて残留農薬検査を行って、輸出が可能かを決めることができるよう、日ごろから、検査活動の方針を立てるときなどは、必ず職員全員が参加し、みんなが必要な技術を共有できるよう努めています。

また、独立行政法人 農林水産消費安全技術センター(FAMIC:Food and Agricultural Materials Inspection Center)は、検査場の職員を日本に招いて研修を行ったり、現地にスタッフを派遣したりしていますが、残留農薬を分析する中で起きるトラブルの対処方法など、重要な応用力も含めた技術指導も行っています。

これら日本の支援の結果、エチオピアの残留農薬検査場では、検査のための基礎データが蓄積され、エチオピアの検査スタッフたちが残留農薬の分析方法を習得することができました。現在は日本向けコーヒーの全量に、残留農薬検査所を通じて自主検査が実施されています。日本の農産物残留農薬検査の技術や人材育成支援によって、エチオピアの農業の安全性が強化され、エチオピアの事例がアフリカ全域へと広がっていくことが期待されています。

(2016年8月時点)

●モロッコ

アブダ・ドゥカラ灌漑地域における灌漑システム向上プロジェクト
技術協力プロジェクト(円借款附帯プロジェクト)(2011年7月~ 2016年7月)

アブダ・ドゥカラの整備された灌漑農地における灌漑システム(写真:JICA)

アブダ・ドゥカラの整備された灌漑農地における灌漑システム(写真:JICA)

モロッコは、GDPの約13%(2015年)が農業セクターであり、同国輸出の約11%、就業労働人口の約25%を占めています。しかしながら、農耕可能地域の大部分は乾燥もしくは半乾燥地域であるため、天水に依存している農業地域では干ばつによってしばしば大きな被害を受けるなど、降雨量の多寡(たか)が農業生産量を左右してきました。今後さらに工業用水および上水需要の伸びが想定される中、限られた水資源を効果的・効率的に活用するために灌漑(かんがい)施設を拡充させることが急務となっていました。

アブダ・ドゥカラ平野(カサブランカ市の南西100 ~200kmに位置する)が位置するカサブランカ・セタット地方は、人口約686万人の地域で、そのうち、約180万人(約26%)が農村部にて生活しています。カサブランカ・セタット地方の総農地面積は同地方の総面積の約66%であり、農村部人口の約10%が農業セクターに従事しています。モロッコは、1988年に同地域の灌漑施設整備を計画し、第1期でアフリカ開発銀行、欧州投資銀行、アラブ社会経済開発基金の資金援助により16,000ヘクタールの灌漑施設を整備し、第2期で日本の円借款事業「アブダ・ドゥカラ灌漑事業(2001年事業完了)」により18,901ヘクタールの灌漑施設を整備しました。

本円借款事業施設の完成後、モロッコは日本に対し、水利組合の灌漑設備運営管理に係る技術移転や、農家の営農や市場アクセスの改善、水源からの漏水などによるロスの軽減についてさらなる技術協力を要請しました。これらは、水資源の効果的な利用による農業生産の安定や収量の増加といった農民の生計向上を図ることを目的としています。

これを受け日本は、技術協力プロジェクト「アブダ・ドゥカラ灌漑地域における灌漑システム向上プロジェクト」(2011/7 ~ 2016/7)を実施しました。これは整備された灌漑農地にて、点滴灌漑と高収益作物の導入を促進するために、パイロットサイトにおけるモデル確立を支援するとともに、アブダ・ドゥカラ灌漑地域全体の水管理システムの改善に必要となる現状の把握や、将来の効率化に向けた支援です。

また、これは、モロッコが2020年を目標年として進める農業セクターの開発戦略である「緑のモロッコ計画」に沿うものであり、同計画を推進するプロジェクトの一つとして位置付けられています。

現在、円借款で整備した灌漑施設は効果的に利用されており、アブダ・ドゥカラ平野の農業従事者約5,700世帯に有効的に利用されています。

用語解説
ネリカ
ネリカ(NERICA:New Rice for Africa)とは、1994年にアフリカ稲センター(Africa Rice Center 旧WARDA)が、多収量であるアジア稲と雑草や病虫害に強いアフリカ稲を交配することによって開発した稲の総称。アフリカ各地の自然条件に適合するよう、日本も参加して様々な新品種が開発されている。特長は、従来の稲よりも、①収量が多い、②生育期間が短い、③乾燥(干ばつ)に強い、④病虫害に対する抵抗力がある、など。日本は1997年から新品種のネリカ稲の研究開発、試験栽培、種子増産および普及に関する支援を国際機関やNGOと連携しながら実施してきた。また、農業専門家や青年海外協力隊を派遣し、栽培指導も行い、日本国内にアフリカ各国から研修員を受け入れている。
小規模園芸農民組織強化計画(SHEP※)アプローチ
小規模農家に対し、研修や現地市場調査等による農民組織強化、栽培技術、農村道整備等に係る指導をジェンダーに配慮しつつ実施することで、小規模農家が市場に対応した農業経営を実践できるよう、能力向上を支援する。
※SHEP: Smallholder Horticulture Empowerment Project
収穫後の損失(ポストハーベスト・ロス)
不適切な時期の収穫のほか、適切な貯蔵施設の不備等を主因とする、過剰な雨ざらしや乾燥、極端な高温および低温、微生物による汚染や、生産物の価値を減少する物理的な損傷などによって、収穫された食料を当初の目的(食用等)を果たせないまま廃棄等すること。
責任ある農業投資
国際食料価格の高騰を受け、開発途上国への大規模な農業投資(外国資本による農地取得)が問題となる中、日本がG8ラクイラ・サミットにて提案したイニシアティブ。農業投資によって生じる負の影響を緩和しつつ、投資受入国の農業開発を進め、受入国政府、現地の人々、投資家の3者の利益を調和し、最大化することを目指す。
エルサルバドルのサン・ロレンソ市で特産であるロロコの付加価値化・商品化を目指して、一村一品運動に取り組む青年海外協力隊の佐橋良子さん(コミュニティ開発)。農場訪問でロロコの栽培状況を視察。(写真:エルネスト・マンサーノ/ JICAエルサルバドル)

エルサルバドルのサン・ロレンソ市で特産であるロロコの付加価値化・商品化を目指して、一村一品運動に取り組む青年海外協力隊の佐橋良子さん(コミュニティ開発)。農場訪問でロロコの栽培状況を視察。(写真:エルネスト・マンサーノ/ JICAエルサルバドル)

農業市場情報システム(AMIS:Agricultural Market Information System)
2011年にG20が食料価格乱高下への対応策として立ち上げたもの。G20各国、主要輸出入国、企業や国際機関が、タイムリーで正確、かつ透明性のある農業・食料市場の情報(生産量や価格等)を共有する。日本はAMISでデータとして活用されるASEAN諸国の農業統計情報の精度向上を図るためのASEAN諸国での取組を支援してきた。
アフリカ稲作振興のための共同体(CARD:Coalition for African Rice Development)
稲作振興に関心のあるアフリカのコメ生産国と連携し、援助国やアフリカ地域機関および国際機関などが参加する協議グループ。2008年に開催されたTICAD Ⅳにて、CARDイニシアティブを発表。2018年までの10年間でサブサハラ・アフリカにおけるコメの生産量を倍増(1,400万トンから2,800万トン)させることを目標としている。

  1. 注14 : 包括的アフリカ農業開発プログラム CAADP:Comprehensive Africa Agriculture Development Programme
  2. 注15 : 国連食糧農業機関 FAO:Food and Agriculture Organization
  3. 注16 : 国際農業開発基金 IFAD:International Fund for Agricultural Development
  4. 注17 : 国連世界食糧計画 WFP:World Food Programme
  5. 注18 : 世界食料安全保障委員会 CFS: Committee on World Food Security
  6. 注19 : アフリカ連合委員会 AUC: African Union Commission
  7. 注20 : 国際農業研究協議グループ CGIAR:Consultative Group on International Agricultural Research
  8. 注21 : アフリカ開発会議 TICAD:Tokyo International Conference on African Development

●タンザニア

コメ振興支援計画プロジェクト
技術協力プロジェクト(2012年11月~実施中)

タンザニアの田んぼで稲を刈り取る女性(写真:JICA)

タンザニアの田んぼで稲を刈り取る女性(写真:JICA)

タンザニアにおいて、コメはトウモロコシに次ぐ穀物生産量を誇る重要な作物です。コメの消費量は年々増加しており、消費の増大に国内生産が追いつかず海外からの輸入に頼っている状況で、コメの増産が喫緊の課題となっています。こうした背景から、タンザニア政府は「国家コメ開発戦略」を2009年に策定し、灌漑(かんがい)稲作を中心にコメの増産を図り、2018年には2008年の約2倍に当たる約196万トンのコメを生産することを目標に掲げています。

日本は1970年代から、キリマンジャロ州モシ県における灌漑稲作の発展に貢献してきており、その結果、同県の灌漑地区のコメの生産性はタンザニア全国平均を大きく上回る6t/haを達成することに成功しました。90年代からは、この成果を全国に広げるため、キリマンジャロ農業技術者訓練センターを拠点として、コメ生産性の改善のための研修を実施し、多くのタンザニアの農家がコメの増収を達成するのを支援してきました。

これまでの成果を受け、本プロジェクトでは、農業研修所を拠点として増やし、研修を通じた灌漑稲作技術の普及を全国に展開することを目指しています。また、貧困削減という観点からは、灌漑稲作のみならず、天水畑地稲作、天水低湿地稲作の振興も必要であることから、天水稲作技術(畑地および低湿地を含む)の普及に向けた研修手法の開発を行うとともに、生産のみならず、収穫後処理、マーケティングまでを含めたコメ産業バリュー・チェーンの強化が必要であることを踏まえ、コメ産業バリュー・チェーンに係る研修の強化を図っています。

本プロジェクト開始以降、これまでに灌漑技術研修を40の灌漑地区で実施し、これまで合計5,000人を超える農家に稲作技術の研修を実施してきました。研修では44種類の稲作技術を紹介しており、そのうち、水田の畔(あぜ)づくりや平らにする作業、苗の直線植えなど、主要技術が約半数の農家に取り入れられ始めています。そのほか、天水畑地でも栽培可能なネリカ米(New Rice for Africa)の研修も進め、これまで300人近くの農家が同研修を受講しました。また、いずれの研修も実施する際には男女の比率に配慮して、研修に参加する農家の男女比が1:1になるようにしています。

本プロジェクトは2018年に終了しますが、プロジェ クト終了3年後にはタンザニア全国で250万トンを超えるコメが生産できることを目指し、適正稲作技術が多くの農家に取り入れられるよう、活動を進めています。

(2016年8月時点)

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