参加希望 国際協力について語ろう

ODAタウンミーティング in 大阪
(議事概要)

1.日時: 平成15年1月12日(日)13:10~15:20
2.場所: 大阪国際交流センター小ホール
3.出席者: コーディネーター:
・藤野 達也
(財団法人PHD協会 総主事代行)
パネラー:
・中田 豊一
(参加型開発研究所代表)
・千野 境子
(産経新聞社大阪本社論説委員・ODA総合戦略会議委員)
・五月女 光弘
(外務省特命全権大使(NGO担当))
聴衆:
 約180名(途中入退場を含めて約200人)
4.テーマ: NGOとの連携
5.議事概要:  以下の通り(なお、発言内容については事務局の責任の下にまとめたものであり、発言者のチェックを受けておりませんので予め御留意ください。)


議事概要


(1)まずコーディネーターより、本件会合の趣旨説明を行った後、五月女NGO大使よりODA改革の背景等を説明したことに続き、千野委員よりODA総合戦略会議について説明し、NGOとの連携等について現地パネリストとのパネリストディスカッションを行った。

(五月女大使) 大阪会合 私は2ヶ月前までザンビア及びマラウイの大使をしていた。アフリカ諸国の中でマラウイは青年海外協力隊の派遣数が1番多く、2番目がザンビアであり、若い人達と共に国際協力にかかわり大変だったが楽しかった。この催しは私が帰国し初代のNGO担当大使となって初めてのイベントである。以前スウェーデンNGO担当大使が訪日し会見したが、最初はそういう大使がいるのかと感心した。スウェーデンを含む北欧は弱者にやさしい国であり、ODAがNGOとの連携で実施されていてNGO担当大使の役割は大きい。私は5、6年前まで初代の民間援助支援室長をしており、NGO・NPOとのお付き合いは長いので、今回こういう機会に恵まれてうれしく思う。外務省の中で、現在ODA改革が実施されており、「ODA改革・15の具体策」が発表され、その中でNGOとの連携が述べられているが、詳しい内容については本日配布した資料をご覧いただきたい。むしろ、私は、なぜ今ODA改革か、またなぜNGOとの連携が必要なのかについて述べたい。日本のODA実績は世界一をつづけていたがODA予算が年々減額されたため、実績額で2001年には世界第2位となった。しかしODAの予算の中でNGOを通じて行うODAの予算は大きく増えている。平成15年度のODA予算政府原案ではODA予算全体が8,578億円のうち、NGOを通じた支援は約70億円となる見込みである。これは対前年比で約24%の増額であり、全体の予算額が減る中で、NGOを通じた支援は年々増加している。日本の顔が見える援助という意味でもNGOとの力強い連携が必要だと思う。本日来られている方の中には、10年20年にわたりNGO活動をして来られた方から、これからNGO活動をしたいと考えている方もおられると思うが、その中間ぐらいの方々を念頭にお話したい。
 ODAについては、日本国内の厳しい経済財政状況の中でなぜ海外に援助をするのかという意見もあると思う。これに対しては、色々な答えがあるが、何点か理由を挙げたい。中島みゆきさんが昨年末の紅白歌合戦で黒部第4ダムから今ヒットしている「地上の星」を歌った。その黒部ダムは東洋一のダムだが、実は戦後の日本が最も疲弊していた時期に世界銀行から借款を利用して建設したダムである。日本は当時インドと共に最大の世界銀行からのドル借款受け入れ国であり、東名高速道路、東海道新幹線もその借款によって建設された。当時の日本では技術力はあったけどお金がなかったので、国際社会・国際機関の援助無しには復興できなかった。ザンビアの政府全体の予算は1,600億円で千葉市の予算の約半分であるが、その半分は日本を含め先進国からの援助によるものである。その比率に驚いたが今から55年前の日本も似たような状況であった。昭和21年には日本の一般会計予算が1,190億円で、ララやケアといった海外のNGOから580億円に値する支援があった。UNICEFからも大きな支援を受け、日本にとってはこれら国際社会からの支援に対する恩返しという側面もODAにはある。第2番目は、ノーブレス・オブリッジ。豊かな人が困っている人を助けるのは理屈なしの行為であるということもある。第3番目には、相互依存関係が挙げられる。日本は資源がない国で資源を途上国から石油・鉄鋼石等を輸入している。私は、ODAをなぜするのですかという問いに対しては、恩返し、ノーブレス・オブリッジ、相互依存関係の3本建てにて説明している。なぜODAが必要かに加え、ODA予算が減ってきている中で、ODAをNGOと連携し有効活用しなければならない。

(藤野コーディネーター) ODAが見直しを迫られているが、なぜか。

(五月女大使) ODAは肥大化してきたが、執行する体制が十分に整っていないために、無駄があるのではないか等批判を受けてきた。日本は、会計検査院の検査、事後評価等を行い、問題のあったところは指摘を受け、かなりの部分は改善されている。しかし、目の届かないところもあろう。また、透明性がないという批判もある。その批判は真摯に受け止めなければならないことであり、それを克服するにはあらゆる面で評価し、事前調査を行うにしても、政府だけではできないことは、民間の方と一緒にやるべきであろうし実際にはじめている。ODAを有効に効率的に執行するには、政府だけではなく、民間の方々のモニター・評価を取り入れなければならない時期が来ており、その中で見直しがある。

(藤野コーディネーター) 昨年3月の第2次ODA改革懇談会最終報告を受けて、ODA総合戦略会議が設立されたが、その目指す役割、どういうことを目指しているかについて伺いたい。

(千野委員) ODA総合戦略会議は、学者や川口外務大臣が務め、議長代理が拓殖大学国際開発学部長の渡辺利夫先生、その他学者や民間企業、NGO、ジャーナリスト等17名で構成され、月1回のペースで朝8時から10時に会議を行っている。会議はODAの指令塔としての役割を期待されている。普通、この種の政府の会議は大臣が名目上の議長を務めることが多いが、川口大臣はとても熱心に出席されている。日本のODAは金額も大きく、コミットしている国も多い。戦略会議はODAが戦略性をもち、国民参加で行っていくという基本精神の下に、具体的にはいま国別援助計画の策定を議論している。すでにべトナム、スリランカの2カ国に着手し、他1、2カ国を選ぶ議論も行った。ベトナムは戦略会議の委員でもある政策研究大学院大学の大野健一教授が中心となってタスクフォースを組織し、具体的な作業が進んでいる。またスリランカについてもやはりタスクフォースができている。これまでこうしたきちんとした国別援助計画なしにODAが実施されてきたこと自体、驚きではある。もう一つ、「ODA大綱」の見直しも大きな柱だ。ODA大綱が出来てから10年が経ち、世界情勢も大きな変化があった。とくに9.11後のテロ、貧困、環境等の2国間では解決できない国際社会の問題に対応するために、大綱の見直しが必要になってきたという背景がある。こちらは委員で慶応大学の草野厚先生が中心になってのタスクフォースで検討されている。このように議論を十分行うために、毎月の会議とは別にその都度、タスクフォースを立ち上げているのも戦略会議の特色と言える。戦略会議を生んだ第2次ODA改革懇談会の最終報告は外務省のホームページをクリックして是非、一人でも多くの方に読んで頂ければと思う。あまり読まれないような分厚い報告書は作らないという渡辺座長の方針の下、ODAへの国民参加をエッセンスとして9頁という短い文章に改革懇談会のメッセージを込めている。

(藤野コーディネーター) 戦略会議のメンバー選出方法はどのようにされたのか。

(千野委員) 基本的には外務省の方で選んでいると思う。第2次及び第1次ODA改革懇談会のメンバーも含まれている。NGOに関しては、NGO内部での相談もあったと聞いている。NGOは第2次ODA改革懇談会にも参加していた。

(藤野コーディネーター) そういう意味では、NGOの意見も反映されると考えられるか。また、関西の方は参加しているか。

(千野委員) かなり反映されると思う。NGOの委員は毎回、大変活発に発言されている。関西からは入っていないが、私は昨年7月より大阪本社で勤務しており、いい機会なので大阪という立場からも発言できればとも思っている。

(藤野コーディネーター) 総合戦略会議の中には、どういった権限があるのか。

(千野委員) 外務大臣の諮問機関という位置づけだ。権限については、この会議の設置を提言した第2次ODA改革懇談会でも議論が沸騰した点だった。審議会というと役人の描いたシナリオを承認するだけといった見方もあるが、それではいけない、きちんとした役割を果たしたいを考えている委員は多いはずだ。また本当に実現されるか、言いっぱなしにならないようにフォローアップの重要性も意識している。

(藤野コーディネーター) 次に中田さんにNGOの立場から発言をお願いする。

(中田参加型研究所代表) 私自身は、かつてODAとNGOがほとんど接点を持たなかった15年ほど前の時代に、バングラデシュで日本のNGOの現地駐在員として勤務していた。その時のODAの印象は、何と資金が豊富なのかということ。我々であればもっと有効に使えると思う一方、市民社会に依拠するべきNGOがODA資金に依存するのはどうかという思いがあった。現在では、ODAの有効活用のためにNGOとの連携が謳われているが、少し違和感がある。というのは、NGOは基本的に自分たちがやりたいことをやっているものなので多種多様であり、一律にNGOの活用という議論には無理があるからだ。NGOの間でも、ODAとの連携について激しい議論がある。ただ、私達が考えなければならないのは、ODAを良くする責任は誰にあるかということである。当然、ODAを良くする責任は、国民、市民にあるべきであるが、直接的に責任を担っているはずの政府機関から、急にそう言われても困るという気持ちがある。また、現地の人にとってはODAによる援助もNGOによる援助もあまり区別がないという状況もある。さらには、NGOと言うとまず日本のNGOについて考えるが、実は現地NGOが現地で一番活躍できるという認識が国際的には進んでいる。日本の国民に向いたODA改革に重点を置いているようだが、現地NGOとの連携という視点を外務省も日本のNGOも持つ必要があると思う。

(藤野コーディネーター) NGOの多様性について述べられたが、中田さんがNGOを説明される場合どうされるか。

(中田参加型研究所代表) まとめるのは難しいが、国際協力に限定すれば、大きく2つの種類に分けられる。一つは自分たちで集めた資金を使って途上国の現場で直接活動することで状況を改善しようとするタイプのもの、もう一つはODAを良くするために色々な提言をすることで国際社会に貢献しようとする提言型のNGOである。

(藤野コーディネーター) NGOの実力をどのように考えるか。

(中田参加型研究所代表) NGOの数は増えてきたのは事実である。しかし、規模が小さく経験がないNGOの若者が、現地で活動し疲れて日本に帰っていくということが繰り返されるというのが一般的な状況のようだ。5年や10年と活動する中で、力をつけてきたNGOも無いわけではないが、ODA改革がまだまだこれからであるように、NGOもこれからだと言う印象が強い。

(藤野コーディネーター) 外務省の立場からNGOをどのように見ているか。

(五月女大使) 難しいのはNGOは一枚岩ではなく、NGOが100あれば、100の違う意思がある。そのため、外務省内でも色々な部署が管轄している。海外支援型のNGOについては経済協力局、人種・環境問題等に関わるNGOは国際社会協力部、国際交流型の国内で活動するNGOは報道官組織がそれぞれ担当している。NGO/NPOは国内で10万あると言われ、そのうち国際分野の活動をするNGOは約3000余、その中で海外支援活動をしているのは約400団体、提言型は100ぐらいあろう。統計があるわけではないので、非常に漠然としている。ODAを活用するNGO、自力で活動する団体があるが、海外支援は自力でやるけど情報はほしいと言うところもあり、連携の形は色々あってもよいと思う。予算アップの支援だけでなく、コミュニケーションの活性化、お互いが理解し合うことも大切である。信頼関係を築いて多彩な方々の希望、期待、批判を聞いて風通し良くしていきたい。NGO担当大使は生まれてまだ2ヶ月の役職でまだ赤ちゃんであるが、経済協力関係だけでなく、外務省に関連するインターナショナルなNGO、NPO活動についてのことであればご相談いただきたい。

(藤野コーディネーター) 総合戦略会議の話に戻るが、総合戦略会議にNGO関係者が2人加わっているとのことだが、2人だけでNGOの意見が十分入っているかという疑問がある。戦略会議は公開で行われているのか。

(千野委員) 公開されていないが、議論の概要は外務省のホームページで公開されている。NGO関係者は意見を述べる際に、中身によっては出身母体に持ち帰ったり、他のNGOの意見を集約するといったことも行っているようだ。

(藤野コーディネーター) 最近ODAの流れが大きく変わってきて平和構築関係の部分がクローズアップされている。軍事面でのことに特化して話が進みODA大綱の見直しが出されているという意見もある。アメリカの動きに連動する形でODAを活用するという向きもあると考えるが、どのように考えるか。

(五月女大使) 一般論で言えば、議論の過程では、どのような議論もなされても良いと思う。

(中田参加型研究所代表) 紛争予防、平和構築が欧米NGOの中心的役割になってきている。途上国の生活向上は現地NGOにまかせて国際的NGOはそういう活動をすべきだという意見も増えている。それらの活動にはしっかりとした見識と情報が要求されるが、日本のNGOがそれらを十分に有しているかどうかは疑問である。

(藤野コーディネーター) 最近、ビルマ(ミャンマー)に対する対外債務帳消しが決まったが、今の軍事政権に対してどういう影響があるのだろうか。また、スリランカ和平の動きの中でノルウェーが音頭取りをしたが、そのようなことに同じアジアの日本が音頭取りできたら良かったのにと思う。外交ツールとしてのODAを捉えるという意見があるが、ミャンマーに対するお金の使い方やスリランカに対する対応にもうひとつ考えが遅い、的を外している気がするが、マスコミの立場からは時事的なこととのつながりでODAをどのように思われるか。

(千野委員) ODAについてメディアはこれまで熱心に報道してきたとは必ずしも言えない。ともすればODAの問題面だけがクローズアップされる嫌いもあった。メディア一般について言えることでもあるが、“良いニュースはニュースでない”という諺があって、ODAの建設的な側面ももっと報じるべきではなかったかと考えている。スリランカに関してちょっと言わせて頂くと、ノルウェーという北欧の中位の国ならではの和平外交という側面もあるのではないか。日本はやはり「大国」でノルウェーと同じようにはいかない。ただし一般的に日本のODAはどうも追随型で、そういう意味では残念な気持ちを私も抱いている。


(2)質疑応答

(質問者A) ODA大綱の見直しをする動きがあるが、大綱の原則についてはすばらしいと考えており、改正が必要ないのではないか。ODAは戦争責任でその賠償が根になるのではないか。

(千野委員) 私もODA大綱は良くできていると思う。委員にも見直しする必要はないという意見の人もいる。しかし国際社会の新しい流れである紛争予防外交・平和構築の重要性という面については、それに見合うような形で見直してもいいのではないかという声が強い。基本原則を変更するものではないと思う。

(五月女大使) アジアへのODAには賠償の側面もあると一部みられるかもしれないが、アフリカ等の国々について述べれば、賠償とは関係ない。アフリカには53カ国あり、それらの国々と友好関係を築くことは国際社会においては重要である。世界全体を見れば、アジア地域、中東、アフリカ、中南米、大洋州諸国等ODAによる被援助国と日本との関わり合い方はそれぞれ異なる。したがって、それぞれに違った形の援助は可能であると思う。

(質問者B) インドネシアやフィリピンなどのダム批判があり、ODAの裁判まで起こされているが、そういったミスを起こした場合、日本は礼儀としてどのような償いをするのか。またそういうことについての基本方針等あるのか。ミスをした場合、うやむやにせず謝罪してもらいたい。総合戦略会議では、良くなかった点についてどのように考えておられるのか。

(五月女大使) ダムの建設については、ダム建設が駄目だというわけではなく、必要であれば建設する必要があると思う。例えば、日本の黒部第4ダムは経済発展にとって有効であったと思う。ダムはいけないという考えを私は持たない。建設に際して、透明性を持って作られたか否かが問題である。バランスをとって考えなければならない。これからのことを考えると、ODAが減額される中、ODAは益々有効に使わなくてはならない。使われ方、現地のニーズの見極め、そのために事前調査及び中間評価が重要となる。ODAに対する批判、意見は必要であり、私どもとしてはそういうものを聞き入れて直していくことが大事であると考え、努力しているところである。

(千野委員) ODA戦略会議でも問題が指摘されたプロジェクトについては、そのつど説明を求めている。国別援助計画はこうした問題やスキャンダルを防ぐ意味でも重要である。しかし途上国については、相手が1つにまとまっていないというケースも多い。このためプロジェクトへの賛成、反対、どの声を大事に受け止めるかという判断は非常に難しく、こうだという答えはない。日本のODAは国民の税金によって行われており、被援助国も大切に受け止めてほしいという日本のメッセージを強く伝える必要がある。インフラ整備は途上国にとって依然として重要なことだと思う。しかし建設して良くないと言われるのは2重の意味でよろしくない。

(質問者C) インドネシアのコタパンジャン・ダムについては、現地住民が日本政府、JICA、JBIC等に対しダムにより被害を受けたとして訴訟をおこしているが、ODAの負の部分を反省しないことにはODA改革は始まらないのではないか。国際平和協力懇談会等については、対イラク戦争へ協力することを可能にする方向に動いており、そのために平和の構築等を名目にODAを活用する動きがあるが、戦争協力ではないのか。NGOは、国を超えて非政府で活動することを基本としており、日本の国益・戦略のためにNGOを活用するのはおかしいのではないか。

(五月女大使) 個別案件については、知らないこともあり答えられない。ただ、一般的に言えば、税金を使うという意味では、透明性が必要であるから批判は重要である。日本は海外から援助を受けてきた時に、その援助金を透明に使用したところが評判になった。だから日本のODAで不透明な部分は透明にしていかなければならない。NGO、NPOは国を越えて活動するものということは十分認識している。

(千野委員) いうまでもなくODAはOFFICIALであり、NGOはNON-GOVERNMENTだ。しかし国との関わり方をめぐって、NGOにもジレンマがあることは理解している。国と協力していくか否かは、あくまでNGOの選択である。一般論だが、相互の関係は、緊張感を持ちつつ、NGOは国とつきすぎても離れ過ぎても駄目だと思う。

(質問者D) ODA自体の批判は散見されるが、ODAは外交の手段であるので、批判や問題がある場合には、その下にある外交政策が間違っているのではないかと思う。ODAという枠を外して責任の所在が明らかになるような体制をつくり、各政策が正しいかどうかを明らかにすべき。先ほどNGOは多種多様という話があったが、そうであるとODAで支援を受けるNGOが恣意的に決められているのではないか。NGO支援に際しては基準を決めなければいけないのではないか。

(質問者E) 意思決定のプロセスになるが、総合戦略会議にNGOの世界から2人参加しているとのことだが、多種多様なNGOがある中で、選出された人はNGOの代表というわけではないのではないか。国民参加、国民参画というはやり言葉であるが、そのためにはきちんと情報公開をしてほしい。

(質問者F) 東京との情報格差があるので、ODAタウンミーティングのような場をこれからも各地域で行い情報提供を行ってほしい。またNGOに対し他省のODAを含めたホームページを通じた情報提供を充実させて欲しい。ODAの失敗例については、現地公館が現地のNGOから意見を聞くことは重要である。日本のNGOはまだまだ規模が小さいので、草の根無償等はNGOを育てるという視点を持ち、運営費への助成等さらなる日本のNGO支援を検討してほしい。

(質問者G) 有償資金協力について、タイド化を制度化するという報道があったが、これは国益に基づく考えであると思う。新しいODAを考えるのであれば、地球市民益を一番に考える必要があるのではないか。評価についても、評価は国益を基準にするのか、現地民のためになっているのかという視点で行うのかで全く違ってくる。また、現地の国民を重視する視点を持つのであれば、政府開発援助、ODAというネーミングはふさわしくないのではないか。

(質問者H) NGO支援の予算が拡大したと言っているが、ODA予算全体では1%も占めておらずまだまだ少ないと思う。国民参加を重視するのであれば、ODA総合戦略会議ではどのような国民へのチャンネルを用意しているのか。また、ODA計画段階から国民の意見を取り入れるシステムを構築してもらいたい。

(五月女大使) ODAというネーミングについては、他国も同じネーミングなので、日本だけ変えるわけにはいかない。
 ODAは外務省だけについている訳ではない。約1兆円のうち約60%が外務省枠である。政府全体として考えていかねばならない。
 先ほど関西ではなかなか外務省と話す機会がないということだったが、私自身はこういう機会があって呼んでいただければ喜んでお伺いする。ホームページについては色々な情報を載せて透明性があがってきていると思う。それに対して批判があれば、投書等して欲しい。
 援助するNGOについての基準はある。むしろ基準が厳しすぎるという意見もある。支援をするときにスタンダードなしでやるということはない。
 ODAを実施する際には、基本は国益であるが、現地民の利益もまた重要であると思う。

(千野委員) ODAのタイド化については私自身、その後の進展をフォローしていないので、外務省に問い合わせてみてほしい。意思決定のプロセスという点で、皆さんのお話しを聞いていてODA総合戦略会議にオブザーバーの参加も考えてみる必要があるのではないかと感じたこの点はそのように伝えたい。市民の声は限りなくあり、私も新聞記者として世論はどこにあるのかということを暗中模索しながら記事を書いている。国民がODAに対して常に目を光らせることが大切で、それによってチェック・アンド・バランスも保つことができると思う。

(中田参加型開発研究所代表) 色々な人に支えられて活動できるのがNGO、NPOである。国民参加といわれるが、NGO、NPO側も国民の一人としてのJICA職員や外務省職員にメンバーとなってもらえるような組織作りをしていって欲しい。
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