参加希望 国際協力について語ろう

ODAタウンミーティング in 金沢
(議事概要)

1.日時: 8月24日(土)14:00~16:40
(16:00の予定終了を40分延長)
2.場所: ホリディ・イン・金沢
3.出席者: コーディネーター:
・横田 幸子
(テレビ金沢アナウンサー)
パネラー:
・川畑 松晴
(金沢学院大学基礎教育機構教授)
・堀 喜代治
(北國新聞論説委員長)
学識有識者:
・砂川 眞
(ODA総合戦略会議委員)
外務省:
・渡邉 正人
(経済協力局有償資金協力課長)
聴衆:
 約100名
4.議事概要:  以下の通り(なお、発言内容については事務局の責任の下にまとめたものであり、発言者のチェックを受けておりませんので予め御留意ください。)


議事概要


(1)まず司会より、本件会合の趣旨説明を行った後、渡邉外務省有償資金協力課長より、ODA改革を巡る最近の動きに関し、以下の通り説明したことに続き、各パネラーが発言を行った。

(渡邉課長) 金沢会合  川口外務大臣は、就任以来、一連の外務省改革に取り組んでおり、その中で最も力を入れているその一つがODA改革である。川口大臣のODA改革のキーワードとして「国民参加」、「透明性の向上」及び「効率性の向上」の3つがある。このODA改革を強力に推進する、いわば司令塔的な役割を果たすものとして、今年の6月に川口外務大臣を議長としてODA総合戦略会議が設置され、これまでに2回ほど開催されている。この会議には本日のパネラーである砂川さんにも委員として参加頂いている。同会議はODAに深い関わりを持つ民間、大学、NGOなどの有識者から構成されている会議である。そこでの過去2回の議論については既に外務省のHPの中で公開されている。本日のODAタウンミーティングは、ODA総合戦略会議を含む最近のODAに関する色々な問題について説明を行い、皆様のご意見やコ比判を今後本格的に開催されるODA総合戦略会議における議論にいかしていくために開催するものである。
 日本のODA総額は、公共事業費等に比べれば低い額である。国際比較をしても、日本のODAは総量ではアメリカと1位2位を争う量であるが、国民一人一人で割っていけば北欧諸国より低い。日本ほど国際社会の平和と安定に依存する国はなく、また、日本ほど世界経済の安定の恩恵に浴している国はないという中で、我々としてはODAの改革・見直しを進めながら、ODAの質的な改善、分野によっては拡充を今後検討していかなければならないと考えている。しかし、そのために私どもが肝に銘じなければならないのは、ODAそのものが国内の理解・支持があってこそ初めて成りたつという原点に立ち返り、ODAはなぜ必要かということを国内に訴えていく必要があるということである。そういう中で、国内の理解・支援を頂き、また、できるだけ多くの人々にODA事業に関わってもらう機会をつくっていかなければならないと思う。本日は、いろいろな貴重な意見を承りながら、私どもも考えていきたい。

(横田司会)  政府は、最近ODAに関する会議を設立したと聞いていている。砂川委員にODA戦略会議の目的などをお聞きしたい。

(砂川委員)  今日の北國新聞にこのミーティングを紹介する記事が掲載されていたが、その見出しは「国際協力を考える」であり、副題に「ODA」と書いてあった。適切な見出しと思う。「国際協力」という言葉には国際的な協力をやっていくと言う考え方が反映されている。ODAは、OFFICIAL DEVELOPMENT ASSISTANCEの略で、政府開発援助と訳されている。「国際協力」という言葉と援助の関連を考えてみると、国際協力はより広い意味合いを持つ。一方、開発は、開発途上国への開発支援という意味合いが強く国際協力より狭いように思う。また、「途上国」という言葉を考えてみると、途上国は相対的に経済のレベルが低く貧困であり、教育、保健の状況も悪い。だからそれらに対して支援をしていこうという話になる。ODAは、原則として、途上国への支援の中で、政府が行うものである。一方、開発途上国への資金の流れは、ODA以外の資金も含めて年間約2000億ドルが還流しており、その中で二国間のODAの総計は、世界全体で約500億ドルで全体の資金の流れの約4分の1。その他は、ODAとは違ったカテゴリーとなる輸出信用、民間投資・NGOの支援等である。また、ODAは投資の誘い水的な役割も担っている。例えば、タイにODAが入っていれば、民間資金も入っていく。ODAの中にはグラントつまり贈与と、いずれは返してもらうローンつまり円借款があり、グラントには技術支援や学校を建てるといった比較的小さいプロジェクトの無償資金協力がある。道路を作るなど大きなインフラ・プロジェクトなどは口一ン即ち円借款で行われることが多い。
 ODA総合戦略会議の設立は、第1次ODA改革懇談会及びそれに続く第2次ODA改革懇談会で有識者が集まりODAについて議論され、3月に提言が出された。提言の中で、戦略を立てるような機関、つまり司令塔的な機能を果たす機関としてODA総合戦略会議の設置が提言された。ODA改革懇談会が、智恵を出す機能であったとすれば、ODA総合戦略会議は、知恵と共に実際に実行する機能をもつものである。具体的には、国別援助計画を策定することである。例えば、タイにどの分野に、どれぐらいの規模の支援をするのかを考え、決めるものである。そして実施機関に対してこういう方針でこの位の規模で援助を行ってほしいと勧告し、そして結果がどうなったのかフイードバックしてもらう。現在まで、2回開催されており、会議の基本方針、今後の予定について議論した。その内容は公開されている。
 ODAを実施していく上で、透明性、効率性を確保し、戦略性を強く打ち出した国別援助計画を作成し、実行に移していくのが戦略会議の役割である。9月から、3ケ国程度について実際に援助計画を作っていく予定である。

(横田司会) 次に地元のパネラーである川畑教授、堀論説委員長に経済協力等との関わりについての話をお願いする。

(川畑教授)  今日は地元の代表として私達が行ってきたことを紹介したい。私が所属するユネスコは、文字が書けない読めないもしくは簡単な計算ができない人をなくそうという「世界寺子屋運動」を行ってきた。90年の国連の国際識字年から本格的に始まった運動で、文字を読めない約10億人の人を21世紀になる2001年までになくそうという壮大な目的を掲げて行った運動だが、現実は厳しく、文字を読めない人の人口は減っていない。石川県ユネスコ協会もその運動に賛同し、国際郵便貯金そしてベルマーク運動と共に私達も資金を提供しカンボジアのバッタンバンというところに寺子屋を建設した。そこでは、識字に加えて簡単な職業訓練を行っている。5年間の支援の後、地域の人達にまかせようと思っている。また、中国においても小学校の建設にもかかわった。また、第3次の運動として、私達は99年から、ベトナムのホーチミン市の貧しく学校に行けない子供達に対して民間学校を作って支援してきた。FFSC(Friends for Street Children)という団体名である。活動の内容としては資金を集め、古い校舎を壊し、鉄筋コンクリート建ての新しい校舎につくりかえた。そこを拠点に我々の青年部の者が中心となって生徒たちと交流を続けている。FFSCのスタッフへの日本語教育そして子供達が通っている親の希望者への日本語教育、そしてバイク修理、刺繍の指導者講習会を中心にプロジェクトを組んでJICAの小規模開発パートナー事業に一昨年の秋に申請して認められたので、現地にスタッフを送り準備していたが、NGOに対して厳しいと言われるベトナム政府からの許可が得られず、パートナー事業としては断念せざるを得ず、当初計画を縮小して独自の活動にせざるをなかった。色々な面で見通しが甘かった。ベトナムを良く知る他のNGO等の経験や知識を活用すればもっとうまく言ったのかもしれない。この経験を通じて、JICA北陸支部とも何度かやりとりし、NGOとして鍛えられた。そして、独自ながらプロジェクトを続けてきている。

(堀論説委員長)  ODA改革懇談会は第1次と第2次がありそれぞれ報告書がだされ、ODA改革の議論は出し尽くされている感があるが、政治的な側面からODAを見ていきたい。ODA総合戦略会議は今年から始まったが、ODAは戦略的であるべきであるので、私はこの名称はふさわしいと思う。相手の国に役立ち、そしてそのことによって日本の国益にもつながる。国益とは何かというとまたややこしくなるので、ここで議論はしないが、海外の他国の援助は「施し」という面が大きいように見え、見返りを求めない慈善事業のように聞こえるが、戦略性はある。「戦略」は政治が決めていくべきであるけれども、政治がしっかりしていない。鈴木議員の事件のために、ODAの裏側には色々な利権が絡んでいるという疑念を国民に抱かせてしまったのは、彼の罪のひとつであると思う.外交のわかる政治家がでてきてほしいし、そういう人を外務省は取りこみ応援団にしていくべきである。ODAでは、外務省と経斉産業省の間で主導権争いがあると言われているが、省庁間の確執は良くない。ODAは国のためのものであり、内閣の下で戦略を練っていく、そして実務的なことについては外務省が中核を担うということが望ましいと思う。JICAが最終的に外務省の管轄となったことはODAが外交の-環であれば、正しい選択だったと思う。最近ODAで注目される点の中で、対中国ODAの問題は難しい問題である。私自身はっきりとした答えをもっていない。経済発展がすさまじい軍事・政治大国である中国になぜ援助しなければならないのかという素朴な疑問がわくのは当然である。政府もその疑問に対して答えていくべきである。現在対中国ODAはより貧しい内陸部への援助、そして環境に関連する援助を重視する方向にきりかえられているが、この動きは正しいと思うし、これを徹底していってほしい。
 国家予算が削減されている中でODA全体も削減するということではなく、国際社会で日本が安定的に生きていくためには、外交の柱であるODAの削減については慎重にすべきだと思う。対中国支援については、戦後賠償の意味合いがあると言われているが、支援する側がへりくだったODAのあり方は改めるべきである。マスコミは悲観論で飯を食ぺているが、ODAの良い面が出てこないのはよくない。この前金沢で講演を行った緒方貞子氏は難民政策において高い評価を得ているが、その評価は高い行動力といった個人的な能力にも依っているが、背景には日本のODAの支援が地道に続けられてきたこと、それがバックボーンになっていると思う。

(横田司会) 2人の発言に対して砂川さんにコメントをお願いする。

(砂川委員)  2つコメントさせて頂く。一つは、ジャーナリズムの報道の仕方については、ODAの悪い面だけではなく、ODAは高潔な目的をもって行われているのだから、この良い点についてもジャーナリズムはもっと報道してほしい。この面から堀さんのご発言を評価したい。もう一つは中国のODAについて。中国は軍事・経済大国であり、環境面において日本に悪い影響を及ぼしている国、日本に敵対しながら他国に援助をしている国、日本の援助に感謝しない国等々、対中国ODAについては批判が多く且つ強い。対中国ODAは見直さなければならない。特に厳しい経済情勢の下ではなおさらである。しかし、今まで営々とやってきた対中国援助を、今外交面から評価するとすれば、一言で言えば、私は成功であったと思う.なぜかというと、中国のWTO加盟が実現したからである。これは中国が国際ルールを守って国際社会への参加を1つの大きな目的としてきた経緯があるからである。また中国の高い経済成長率、そしてその結果としてまだまだ強くなるであろう経済力に関しては、日本は中国と共存していく姿勢が必要と思う。経済の構造も体質も異なり、その競争力も分野によって違う。WTOが求める開かれた国際社会で公正なルールの下で競争すればいいのではないか。中国がここまで発展できたのは日本の支援が碇になっている。因みに中国が受け入れたODAの6割は日本からである。中国の学者レベルで日本ODAを研究している人が出てきている。中国の体制の中で、日本を誉めてはいけないという風土があったかもしれないが、金 熙徳(キン・キトク)という中国人学者が日本のODAにういてよく研究し、「徹底検証 日本型ODA」という良い本を書いていて、その中で日本のODAを高く評価している。

(横田司会)  それでは、外務省としてコメントをお願いする。

(渡邉課長)  石川県ユネスコ協会の活動に関し、先方政府との関係等でうまく行かなかった点については、外務省及びJICAとしても色々研究していかなければならない。NGOとの連携はこれからもますます重視していかなければならない。経済産業省の確執の件だが、外務省、財務省、経済産業省は、ODAに関しては緊密な関係を持っており、財務省は国際金融、財政という面で、また経済産業省は貿易・通商、また日本企業の関わりという面からも関与してきている。ただ、ODAは、日本の外交政策との関連性が深いということもあり、外務省が総合調整を担っている。
 対中国援助について、人口が12億を越す隣国である中国とどのように付き合っていくか、などのさまざまな側面を念頭において総合的に考えていかなければならない問題であると思う。これまでの援助に関しては、改革開放政策に対する支援という側面があった。今後の対中ODAについては、昨年政府が決定した対中国国別援助計画に則って、沿岸部から内陸部へ、そして環境、人材育成、貧困対策等に重点を移していく。ちなみに昨年度の対中円借款供与約束額は、前年度比25%減という結果になった。



(2)質疑応答

(質問者A) 金沢会合  中国へのODAは考え直さなくてはならないし、私は停止すべきであると思う。私は以前教員をしていて中国の教科書を見てきたが、改定されるたびに日本への批判が大きくなっていった。日中友好30年とか言うが、中国は友好を考えていない。現在の中国はあまりにも日本に対して非友好的である。
 もうひとつ言いたいことは「戦略」会議の名称について、なぜ「戦略」という言葉を使うのか。戦いという言葉はマイナスで、おどろおどろしい名前であり、改名すべきである。また、教えていただきたいこととして、日本のODAを実施した後、会計検査院などで検証しているのか。またタウンミーティングにおいては、もっとODA質問や意見を発言できる時間を取ってほしい。

(渡邉課長)  タウンミーティングの運営の仕方については、質問時間を増やすことを検討したい。ODA案件の成果等の評価については、実施機関であるJICA、JBICが評価を行っているが、外部有識者による評価も検討されている。会計検査院も、毎年、ODA案件を調査している。ODA総合戦略会議という名称については、ODAには「戦略」がないという批判に答えていきたいという発想に基づくものである点をご理解いただきたい。対中国援助に関する新聞などさまざまな方面から厳しい批判については、対中国国別援助計画を策定する過程、及び援助を実施する上でも、念頭においてきている。他方、先ほども申しあげたように、中国への支援については日本と中国との関係を総合的に勘案してどうあるべきかということを考えていかなければならないと考える。

(質問者B)  私は、中国、アメリカ、ロシアという3大地雷輸出国が地雷禁止条約に加盟していないことに対し、国連に対してそれら3カ国の加盟を働きかける運動をしている。対中国援助について、中国に3ケ月前に行ってきたが、北京は日本よりも発展しているように見えた。オリンピックまでには日本は抜かされるのではないかと危惧している。今までの中国の援助は外交の観点からどうしようもないかもしれないが、今後の対中ODAは見なおすべきである。

(質問者C)  私は「砂漠を緑で包む会」に所属し、地球は一つという時代に世界の砂漠化を防ぎたいと思い活動している。中国のゴビ砂漠においても5年ほど前から緑化の活動をしている。ゴビ砂漠周辺の民族は、お年寄りや家族を大切にして生活しているが、砂漠化が進み、人間が住めない環境になってきている。ODAにおいては、このような活動を行っている地方の人たちへの支援を行って欲しい。石川県でボランティアでがんばっている人達を支援していただきたい。

(質問者D)  私は8年ほどODAに関わった経験をもっている。日本のODAには拙速主義な部分があって、事前調査や現地情報が不足している傾向にある。私の関わった案件はペルーにおける漁港基地の建設であったが、設計に問題があり、それを商社から指摘されていた。しかし、その問題を指摘したところ私は担当からおろされた。その案件においては設計、施工、検査とすべて同じコンサルタントが担当していて、これではきちんとした検査ができない。また現地では取れた魚を健康食品に加工するための設備をODAで支援していたが、これはあまり現地の人に役に立っていないように見えた。また、日本大使館について言えば、大使の人柄によって大使館員の日本人に対する態度が全く違っていた。ホンジュラスにいる時には、免税の車や荷物を受け取るのに税関で税金を払えといわれた。そこで、大使館の書記官に相談したが、まったく相談を受け入れてくれなかった。

(砂川委員)  実施機関の立場から述べたい。途上国に対するODAのプロジェクトは、業務数も増え、今まで実施していなかった新しい分野にも入っていくことで、その実施が複雑になり難しくなってきている。先ほどお話のあった先方政府の役所との関係でも、途上国が貧しいが故での問題である。現在、ガバナンス、良い政治に対する支援が重視されている。つまり、援助がより効果的に行き渡るよう、ODAにおいて被援助国政府の能力アップを行っていこうということである。また、環境の問題については、地球温暖化が進み、ODAがこの分野で益々重要になってきている。この大きな問題にODAで対応していくことは並大抵のことではない。援助の効率性ということを言えば、例えば、JBICは職員約1000人で世界銀行は職員約1万人で融資額まほとんど同じである。これは効率的とも解せるし、それだけ行き届いていないとも考えられる。人不足のために、先ほどお話のあった設計、施工をやった人に、やむなく検査もお願いしていることが起こっているのでしょう。是正していかなければならないと思う。

(渡邉課長)  外務省・大使館に対する批判があることは、厳粛に反省しなければならない。外務省改革の一環で、大使の資質について、厳しくチェックされることとなろう。
 日本のODAに関わるスタッフは他の先進国に比べ非常に少ない。実際、大使館で経済協力を担当しているスタッフが大変少ない中、如何に効率的にJICAやNGOの方々と連携していくかというのが今後の課題である。ODAの事前調査について拙速であると指摘があったが、ODA改革の一つの流れとして、実際にどういうプロジェクトを行うのかということについて、ある程度先方政府と合意ができた段階で、そのプロジェクトに対する事前評価をHPで公開されることになっている。ODAでは、特に大型プロジェクトについて、環境面、社会面での事前の評価・調査が重視されるようになってきている。

(質問者E)  「ODAの国民参加」については、どうしてこのようなことが言われるようになったか経緯を知りたい。また、ODAの国民参加を実現するために国内ではどのようなことがなされているのか。

(渡邉課長)  日本のODAは、戦後官主導で開始されている。最近、ODAの規模が拡張し、一方で様々な批判を仰いでいる中、世間の理解・支持なくして存続していくことは難しいという認識がある。できるだけ多くの方にODAを理解していただくと共に、できるだけ多くの人にODAに関与していただくことが重要である。また、NGOの持つ相手国の住民、特に貧困層に直接アクセスしうるというメリットに注目して、政府ベースの援助とNGOの活動の連携を図ることにより援助効果を高めたいという考え方もある。
 ODAの国民参加を定着させるためには教育が重要であり、小・中学校の授業において「開発教育」を取り入れるためにJICA関係者及び青年海外協力隊の帰国隊員が学校を訴間している。

(砂川委員)  今の件で2点申し上げたい。まず1点は、どういう活動をそのNGOが行っているかということがあるが、これはそのNGOがその活動の目的と現状についてきっちりと対外的に説明する必要があると思う。もう1点は、そのNGOの活動をどうしたらODAの一環として実施できるかというシステムの問頴である。そのシステムをどのように構築するかの議論は行われているが、NGOの活動が非常に多岐にわたっており、それらの活動をどうすればoDAの範囲の中で支援できるか検封する必要がある。

(質問者F)  私は、医師をしており、外務省やJICAの医療専門家としてナイジェリアなどに勤務した経験を有している。JICA退職後、カンボジアの感染症対策専門家として勤務した。私は、平成11年~12年にカンボジアにて医療のODA評価委員として、エイズ対策の事業がうまくいっているかという評価活動に関わった経験がある。
 そこで過去の経験に照らしてODAに必要なのは広報活動である。もっとテレビを活用した方が良いと思う。ドキュメンタリーのような特別番組を制作して幅広く広報してはどうか。
 またODAタウンミーティングなどのイベントも東京近辺での開催が多く、また、ODA総合戦略会議の委員などにしても東京を中心とした有識者が活用されがちである。是非、裏日本の人材の活用を検討頂きたい。

(質問者G)  青年の友情計画に関わってきた。近年予算が減ってきており、昨年は予算削減に伴い、招聘青年の滞在日数等が減らされた。そのため、受け入れ団体の負担が増加した。
 もう一つは、予算の関連で3日前の北國新聞に、民間外交をODAにて積極的に行う旨の記事があった。申請書類などいつ・どのように提出すべきか教えてほしい。また、同記事では来年度予算でこの分野の予算が増額されるとなっていたが、是非、民間への資金を増やしてほしい。

(渡邉課長)  昨年、JICAの青年招聘事業は予算の節約により、滞在日数を減らさざるを得なかった。それによって受け入れ側の関係者にご迷惑をかけていることについて認識した。
 草の根レベル、自治体からのODAへの協力・参加について、JICAであれば、JICA北陸支部、外務省であれば、例えば経済協力局民間援助支援室といった窓口がある。この分野の予算は、将来に向けて伸ばしていかなければならないと思う。

(質問者H)  私は青年海外協力隊をめざしていて観光業に携わった経験をもっている。観光業はとても重要であり、一方通行の援助と違って相互の行き来のある観光における開発にもっと重点をおいていただけないか。被援助国がドルやユーロ等の外貨を稼いで途上国が独り立ちしていけるという意味でも観光は重要である。

(砂川委員)  一つには、国家の収入の観点からすると、一般的に観光業が非常に有望な産業分野であり、観光菓を育成することは重要である。もう-つは、質問者自身の問題である。観光業にたずさわってきてこれから青年海外協力隊をめざしているのであれば、どうすればある途上国に観光客が来るのかという政策面や、VISAの簡略化などの手続き面についてどのようなシステムがつくれるか等を勉強していただき、目的意識をもって臨まれるといいのではないでしょうか。

(質問者 I)  JICAの青年招聘事業に関わってきた経験を感想として述べさせて頂く。日本の急激な経済成長は義務教育の良さや識字率の高さに拠っていると言われているが、多くの途上国では、反対に、義務教育にはお金を払わせて、高等教育は選ばれた少数のエリートに無料で与えているのが実情である。これからのODAにおいては、貧困問題に対する取り組みに加えて教育問題、特に識字や初等教育そして給食制度の確立ということに重点を置いていただきたい。

(横田司会)  最後にパネラーから一言ずつお願いしたい。

(川畑教授)  配布されている第2次ODA懇談会最終報告概要の中に、開発人材の発掘・育成ということがあるが、これは重要なことである。開発教育にODAが目を向けることは重要である。現在、小・中学校の総合的な学習の時間において開発教育や国際理解の授業を取り入れている。そこに経験を持った、例えばJICAの職員等が出前講座を行って理解を助けるということができるのではないかと思う。世界とつながっていることを小学校時代から教育することに大きな期待を持っている。

(堀論説委員長)  地域発信型のODAが認められるようになると良い。国際協力の「かきくけこ」を唱えたバングラデシュの学者がいるので、それを紹介したい。「か」は金、「き」は「機械」、「く」は車でこれらはこれまでの日本の援助が重要視してきたものだが、これからは「け」の健康、「こ」の「志」が大事になってくる。グローバル化の中で、こういう「志」を持った若者が増えてほしいと思う。

(砂川委員)  1億数千万人の人口を抱え、資源がなく交易に依存している日本にとっては、世界が秩序良く発展していくことを願うが、これを促進するODAは重要である。日本人は、隣人が貧しくて食べ物がない時には食べ物を与えるというようなやさしい心を持っている国民であり、これからもそれができる国民であると思う。世界で貧困問題や環境問題が非常に大きくなっている。これらの問題に対し、人間として支援をしていくことは必要である。この二点から、日本のODAについて、どこに、どういう目的で、どういうことをするのかを皆んなで考え、議論していけば日本のODAの在るべき姿が浮き彫りにされてくると思う。
 今日のタウンミーティングで皆さんと議論させて頂き大変勉強になりました。皆さんの意見をODA総合戦略会議の中に取り入れていきたいと思う。

(渡邉課長)  観光と教育についてご意見・ご質問を頂いた。観光に関しては、中東のジヨルダンでは、円借款により博物館を作り、アクセスのための道路も建設した。更に観光分野で、青年海外協力隊員を派遣するなど様々なスキームを連携させて支援している。教育に関しては、アフガン支援の重点分野として教育、特に女子教育支援を重親している。
 数年前、コソヴオ紛車中に家を追われた難民の中にネジール君という目に障害を持つ3 才の男の子がいた。日本のNGO団体の支援と当地金沢の関係者の協力により、ネジール君と父親は紛争直後から、約半年間、金沢に滞在し、金沢大で眼の治療を受けることができた。
 その後、コソヴオでこの父親に会う機会があったが、彼は、自分の子供を助けてくれた日本人、特に金沢の人達にとても感謝していた。このように金沢にいながらにしてODAを含む国際協力に携わるチャンスはある。我々としても、そのような機会が増えるように努めていきたい。

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