1.日時: | 10月6日(日)14:00~15:30 | |||||||||||||||||
2.場所: | 日比谷公園 | |||||||||||||||||
3.出席者: |
●司会: ・須磨佳津江(キャスター) ●パネラー: ・木山啓子(JEN事務局長) ・弓削昭子(UNDP駐日代表) ●ゲスト: ・原田龍二(俳優) ●外務省: ・石井哲也(経済協力局開発協力課長) ●聴衆: 約300名 | |||||||||||||||||
4.議事概要: |
以下の通り 「アフガニスタン復興への効果的支援」というテーマに基づき、各パネラーが、政府、国際機関、NGOそれぞれの立場から、実績・現状及び今後のあるべき方向性について説明を行った。まとめとして、木山JEN事務局長及び弓削UNDP駐日代表より、国際協力活動への積極的な参加を呼びかけ、また、石井課長より、アフガン支援への関心を継続していくべきこと、援助は効果が現れるのに時間がかかることを強調した。 | |||||||||||||||||
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●(木山事務局長) |
JENは9・11テロ以前より、アフガンにおける干魃対策に関して活動を計画しており、タリバン政権下で現地を調査してテロ直前の9月7日に戻ったところだった。テロの前から、干魃が終わっても食糧に関する緊急状態は続くと言われていたが、テロ発生直後は治安が悪化した為その緊急援助さえ出来なかった。アフガンで必要とされる支援としてJENが実施しているものは、シェルター関係及び教育関係で、前者については、破壊された家には戻れないので、取り敢えず帰る家として日干しレンガの家を作るプロジェクトをUNHCRと共同で実施している。後者については学校の修復事業であって命に関わるものではないが、女子の識字率が上がると幼児死亡率が下がる統計もあり、緊急復興支援と位置付けUNDPと共同で実施している。これ以外にもUNICEFとの共同事業もある。カブール市内は活気に満ちた状況だが、他方で帰還民の激増により崩壊寸前であるので、地方出身者が地方に戻って生活できる支援プロジェクトなどをやってきている。(須磨キャスターよりの質問に答えて)学校修復の関係では、壊れた学舎を直すことに加え、女子の復学・難民の帰還によりそもそも学校が不足している問題がある。修復した中には、1万人以上の児童がいる学校もある。
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●(弓削代表) |
UNDPは1950年代から継続して支援を行っている。タリバン政権下は、地域コミュニティに対する直接援助であったが、暫定政権となった最近では、1点目として即効性の高い復興支援、2点目として貧困削減のための基礎サービス提供の強化のための支援を行っている。1点目の例であるアフガン復興・雇用支援プログラムでは、日本政府から600万米ドルの拠出を受けてUNDPが実施しており、瓦礫の撤去、政府庁舎・学校・医療施設の修復などを、現地の人々に仕事を作り出しながら復興させていくというものである。実施にあたっては、JENやピース・ウィンズ・ジャパンとの協力で小学校の修復を行っている。2点目では、公務員給与支払い、支払システムや予算制度の構築にも支援を行っている。更に、援助調整・管理体制の強化として、例えば、案件データベースの作成など、援助の効果的受入が可能となる支援も行っている。ほかには、IT分野への支援を行っており、元兵士の社会復帰支援なども予定している。こうした支援へのアフガン人の反応として、手に職がなくても仕事があるという点で感謝されている。また、行政システムの強化というのは目に見えないものだが、これも感謝されており、UNDPとしては、当該国の管理能力の向上のために協力している。
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●(石井課長) |
昨年12月の暫定政権成立時に続き、去る8月に2度目の現地訪問をした。第1にそのときの経験について述べ、第2にアフガンに対して如何にしたら効果的支援ができるかについて述べたいと思う。1点目については、この8ヶ月の間に少なくともカブールについては活気を確実に取り戻しつつあるという印象を受けた。日本の2倍弱の面積を有しているアフガンは、日本とはかなり様子が違う。まずアフガンは多民族国家であり、多言語国家であるし、また内陸国であり周りを多くの国に囲まれているため隣国の影響を受けやすいなど、平和な国造りをしていく上で難しさに直面している。我々として、引き続き関心をもっていくことが重要である。2点目については、人道・復興支援というのは一直線に進むものでないので、現地のニーズを酌んだ上で、一方では食糧・医療等の足の早い支援が必要であるし、他方では息の長い援助が必要である。息の長い援助の中では現地の人も生産活動に関わっていくことが大事で、農業生産の向上もあれば、雇用機会の創出等もある。また、我々の心構えとして「参加」が大事であり、援助する側にあって、NGOや国際機関、地方自治体等とはもっと協力・補完していく関係にあると認識している。(須磨キャスターより、ODAの額はアフガンに重点を置いているのかと質問したのに対して)1月にも国際会議を開いており、平和・人道・治安等の分野で、我が方支援の重点国の一つになっている。
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●(原田さん) | 中東へ訪問した経験はなく、これまで、アフリカのウガンダ、ブラジル・ベネズエラ国境地域、ラオス・タイ国境のゴールデン・トライアングル地帯等を訪問したが、先々では、豊かなモノはないが心の豊かな現地の人々と交流した。テレビ番組でも難民問題について目にするが、ニュースは断片的であり、自分の目で見ないと実態は分からない。自分としては、若い人がどんどん現地を見てほしいし、義務教育のうちから東南アジアの貧しい地域を見る機会を持ってもらいたい。 |
●(弓削代表) |
何故このパートナーと連携するのか、どういうパートナーと組めば1+1が2でなく3になるのか、専門性や短所などをよく考えるべきである。その際に、まず第1に、自分達の戦略・役割を考えるべきである。第2に、パートナーシップを組むときに対等の立場でお互いを尊重してやるべきである。現地ではいろいろ状況が変わるので柔軟に対応する必要があり、そのためには全ての段階で対話が必要である。
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●(木山事務局長) |
プロジェクトのうち、どの部分をどこが受け持つのかというのは難しい。現地の人々のやる気が大事である。現地の人が主役であり、現地の人が真に求めているものを現地の人と相談しながら支援をすべきである。その際、それぞれが各々の特徴を生かしながら対話・調整・住み分けすることが必要である。(須磨キャスターより、政府との繋がりを嫌うNGOもある点を指摘したのに対し)例えば、「心のケアと自立支援」がJENの理念であるように、各NGOが活動理念を有しており、この理念を曲げない限り資金源がどこであろうと問題ない。資金を出しているから理念を曲げろと言うのは変である。
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●(石井課長) |
(須磨キャスターより、NGO支援額が平成10年度から平成14年度の間に4倍になっているが、これは、日本政府としてNGO支援を強化しているということかと質したのに対し)ODA予算がなかなか伸びない現状では、途上国の支援を効果的・効率的にやっていくのが大事である。日本のNGO、国際機関にとっても同様である。アフガンの国民一人一人がよりよい明日に期待をかけられるということが一番大事であり、そのための支援として、まずは我々が関心を持ち続けること、次に来るのは行動である。NGOの支援はそのきめ細かさが利点であり、政府としても更に連携を強めていきたい。
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●(原田さん) | 特定された人だけによる支援になって欲しくない。誰でも参加できる草の根レベルの支援が浸透したらいいと思う。先般テレビで藤原紀香さんがアフガンを訪問していたのを見たが、ボランティア活動に関するTV番組がもっとあるべきである。また、例えば、募金されたお金がどこに行くのか知りたいし、子供でも分かるように、ちゃんと届いたということが分かる番組がもっとあれば、より多くの支援にも結びつくと思う。 |
●(質問者1) |
自分のような車椅子の人もアフガンに多くいると思うが、どうやって生活しているのか。また、車椅子を寄贈する場合には現地に届くのか。
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●(石井課長) |
先般の出張は数日の滞在であったため詳しくは分からないが、体の不自由な人は多く見かけた。アフガンでは地雷の問題が深刻であり、地方に行くと地雷がどこにあるかまだまだ分からない状況である。
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●(木山事務局長) |
自分が現地に行ったときは車椅子は一度も見かけなかった。車椅子は高価だし、また現地は道が悪くて車椅子では不便である。松葉杖の人は多い。松葉杖を支給したり義手・義足をつくるプロジェクトも存在する。
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●(質問者2) |
バック・パッカーとしてネパールを訪問した際に聞いたところ、ネパールでのNGO活動は学校を作ることが多いが、継続することが難しい由で、廃墟の学校も多い。ネパール人の側も援助してもらうのが当たり前との意識でおり、現地の人の自立心が欠けている。
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●(弓削代表) |
今指摘の課題は、開発協力の基本的なものである。WSSDでも「持続可能な開発」でないといけないとされた。ドナー主導であってはいけないし、財政・運営上などの面での持続可能性を踏まえてプロジェクトを立ち上げなければならない。 |
●(質問者3) |
援助が現地の人のためになっているのかどうかが大事である。援助は、場合によって、現地の人の良さを奪っていることがある。日本政府も国連機関も国際的合意を優先する。緊急に支援する必要があるのか、しばらく待ってみるべきなのか、優先順位をつけるべきである。 |
●(木山事務局長) |
本当に求められている支援が何かを探る技術も自分たちのプロとしての仕事の一部である。JENとしてはまだアフガンで井戸掘りはしていないが、干魃で水位が下がっている一方で、人々は生活用水を必要としているため結果井戸を掘る必要があり、これが更に水不足につながっている。また、日干しレンガの家を作るにも、水がないと家も作れない。
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●(弓削代表) |
一つのプロジェクトの例で言うと、1年なり2年といった期間のターゲットというものがあるが、たとえプロジェクトが遅延してもオーナーシップを大事にすべきである。「ミレニアム開発目標」の達成は一つの課題であるが、2015年にターゲットを達成できない国もあることは既に分かっている。しかし、オーナーシップがないと開発活動を継続的に進めていくことはできない。
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●(石井課長) |
アフガンでのニーズは無限に多い。しかし、日本の出来ることは予算的にも限られ、また、目に見える援助が求められている。井戸でいうと、地方には水利権等の関係で、一方的に援助していくと逆に難しい問題を引き起こす引き金にもなりかねないので、住民の参加を促していかないといけない。カンダハル郊外に行った際、避難民の長老に、今何が欲しいか尋ねたところ、長老は第1に安全と平和、第2に働く機会がほしいと言っていたが、これは「目から鱗」だった。援助においては、成果物を与えるだけでなく、成果物を作るプロセスに関係者が関わることも重要だということを再認識した。
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●(質問者4) |
なぜ戦争が起きたのか。武器を提供してきた国があることが根本問題であり、また、こうした国にペナルティを課せられない国連は無力である。国連の組織内において、武器提供国に制裁を与えることについてコンセンサスが得られないのは納得できず、日本政府として、相当額の分担金を負担しているのであるから、強く主張してもらいたい。
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●(石井課長) |
支援するに当たり、それが支援が軍事的なものに使われていないか等は、最も注意すべき点と自覚している。
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●(質問者5) |
シェルターや教材用の資金は足りているのか。
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●(木山事務局長) |
資金額は飛躍的に伸びているものの不足している。国連でさえ、予定されていたプロジェクトを実施する資金が不足している。
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●(石井課長) |
(須磨キャスターより、NGO予算を増やすことは考えているのかと質したのに対し)現下の厳しい状況の中、効果的、効率的に支援を行っていくために有効な方法も考えながら、予算を少しずつ重点的に増やそうとしている。
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●(質問者5) |
日本政府のNGO支援額は具体的にいくらか。
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●(石井課長) |
我が国NGO支援予算(当省関連)は、平成10年度は約15億円、平成13年度は約40億円、本年度は約56億円である。
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●(質問者6) |
道路などの予算に比べれば少ない。
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●(石井課長) |
全体的に予算額を伸ばすことが難しいので、メリハリをつけるよう努力したい。
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●(質問者7) |
ODAの本を読むと、企業が儲けるため、日本のコンサル会社が書類を作成して現地政府にサインさせるなど、現地の人の実際の要請でない場合がある由である。
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●(石井課長) | 相手国が本当に必要としているものを知るために、先方政府からの要請は勿論大事であるが、国によっては、要請自体をなかなか上げることの出来ない国もある。正式な要請がなくても、相手国が必要なものを探るため、我々が政策協議をしたりプロジェクトを形成するための調査団を派遣する場合もある。また、コンサル選定等の手続きにおいては、透明性を更に高めていきたい。 |
●(木山事務局長) |
このフェスティバルには、NGOのみならず各種機関が集まっている。皆さんも、自分に合う団体を探して国際協力に参加し、より良い社会づくりに協力してほしい。
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●(弓削代表) |
第1に、皆さんも、自分から積極的に国際協力活動を行ってほしい。第2に、広報活動が大事である。第3に、学校や道路建設以外に、行政・司法制度強化や人材育成といった目に見えにくい支援も行われており、これらも重要であるので目を向けてもらいたい。
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●(原田さん) |
まずは、自分で現地に行ってみないと何も言えない。どういった支援が行われているかを現地に見に行くようなTV番組があれば、是非出演したい。
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●(石井課長) |
第1に、アフガンについては、関心を引き続き持っていくことが大事である。関心を持つこと自体はそれほど難しいことではないにしても、関心を持続していくことは意外と難しいものである。第2に、援助の効果がなんでもすぐに上がると思ってもらっては困る。人と人との結びつきが契機となる支援は時間もかかるし、援助の受け入れ側においても、それなりに時間がかかることを理解してほしいと思う。
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