1.日時: | 平成15年10月5日(日)14:00~15:30 |
2.場所: | 日比谷公園内ステージ・スマイル |
3.出席者: |
●ODA総合戦略会議委員: ・小島 朋之 慶應義塾大学総合政策学部長 ●有識者パネリスト: ・紺野 美沙子 女優、UNDP親善大使 ●NGOパネリスト: ・高橋 清貴 (特活)日本国際ボランティアセンター調査研究・政策提言担当 ●外務省パネリスト: ・渡邉 正人 経済協力局政策課長 ●司会: ・清水 牧子 フリー・アナウンサー |
4.議事概要: | 以下の通り |
●司会: | ただ今からODAタウンミーティング in 日比谷公園を開催致します。ODAタウンミーティングは、平成13年8月に東京で開催されましたのを皮切りに、全国各地で開催されており、今回で17回目を迎えます。外務省では、ODA改革を進めておりますが、タウンミーティングでは、皆様にこのODA改革をご紹介し、皆様から様々なご意見を頂戴して参りました。また、改革の重要なマイルストーンとして、今年の8月末にはODA大綱が改定されました。今回はこの新ODA大綱についても皆様と話し合っていきたいと思います。さて、本日のスケジュールですが、まず、パネリストを紹介し、パネリストの方々からODA改革の進展に関するさまざまな動きやODA大綱に対する自らの思いを語って頂いた後、パネル・ディスカッション、さらに、会場の皆様との対話という予定になっております。皆様と共にODAについて考えていきたいと思っておりますので、最後までおつきあい頂ければ幸いです。 日本のODAは、現在、アメリカに次いで世界第2位の地位にあり、途上国の開発において重要な位置を占めております。その一方で、最近ではODAに対する厳しい見方が増しつつあり、厳しい経済状況を背景に、過去6年間でODA予算は約4分の3程までに減っています。このような中、外務省ではODAの戦略性、機動性、透明性、効率性をより一層高め、国民参加を促進していくため、ODA改革を進めています。それでは、ODA改革やODA大綱の改定について渡辺さんからお話を伺いたいと思います。 |
●渡辺: | 私が勤務する外務省経済協力局の部署では、ODAに関わる問題について、いろいろな調整を行っています。日本の外交政策との調整や、JICA、JBICとの調整に加え、本日、親善大使である紺野美沙子さんがお見えになっていますが、国連開発計画(UNDP)やNGOとの連携、連絡、協力を行う部署です。ODA改革につきまして、私から簡単にご紹介させて頂きますが、ODA改革を語る際に、どうしても触れなければならない重要な会議がございます。それは、本日、参加されている小島先生がメンバーを務めておられるODA総合戦略会議でございます。ODA総合戦略会議は、外務大臣の諮問機関で国民各層の代表から成り、昨年6月に発足しております。この会議では、ODA改革の一貫として、ODAへの幅広い国民の参加を具体化し、ODAの透明性を高めるため、ODAの基本政策、国別援助計画、戦略といったことを議論、提言をして頂いております。外務大臣を議長として、援助分野の専門家、学識経験者、国際機関の経験者、NGOの方、経済界の方、マスコミ関係者など18名で構成されておりまして、月1回、会合を持って頂いております。議論の中身は、外務省のホームページで公開しております。次に、ODA改革の中身につきまして簡単にご紹介させて頂きます。お手元にODA大綱という数ページの資料をお配りしています。今年は、日本のODAとその改革にとって、非常に重要な年であります。そのひとつの柱がODA大綱の改定であります。古いODA大綱というのは、平成4年に閣議決定されたものですが、それから10年以上を経過し、国内外に様々な変化がございました。そういったことを踏まえ、外務省では、ODA大綱の見直しの際、各地におけるODAタウンミーティング、NGO関係者との会合など、様々な機会を捉えまして、論点の議論をさせて頂きました。この大綱の草案につきましては、ODA戦略総合会議においても議論を重ねて頂きました。7月上旬、ODA大綱の政府原案を外務省のホームページに公開し、1ヶ月間にわたりまして、国民各層からのパブリック・コメントを求めました。200件を越すコメント・意見がございました。頂いた意見につきましては、論点ごとにまとめて、それに対する外務省の意見を付し、改めて外務省のホームページに公開いたしました。最終的には、小泉総理も出席した対外経済関係閣僚会議の場で議論が交わされた後、8月28日にODA大綱が閣議決定がされました。この大綱の目玉につきましては後程議論があるかと思いますが、3点だッ申し上げます。第1点は日本の外交の中で重要な位置を占めているODAの役割を一層明確化したということ、第2点は貧困削減という国際社会の共通の開発目標を改めて明記し、同時にアフガニスタン、スリランカなどで最近出てきた新しい援助ニーズの分野である平和構築を重点課題としたこと、そして、第3点目は、最近、緒方貞子さんや国際社会でいろいろな人が主張している人間の安全保障という概念を明記したことでございます。今年は日本のODAにとって大変重要な年であると申し上げました。10月1日、国際協力事業団は名前を改めまして、国際協力機構となりましたが、緒方貞子さんが新理事長に就任されました。緒方さんは難民援助の世界でも大変著名な方で、10年間にわたって国際機関のトップを務められ、最近では人間の安全保障という新しい援助概念の具体化に取り組んでおられます。この方が日本の重要な援助実施機関のトップに就かれたことには、大変大きな意味があると思います。昨日、日本の各紙にJICAの広告が載っており、その中に緒方さんのインタビューが掲載されています。これは非常に読み応えのある立派なインタビューです。お時間があれば、是非お目を通して頂けたらと思います。
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●司会: | ありがとうございます。渡辺さんからもご説明がありましたODA総合戦略会議についてですが、委員のお一人である小島さんからODA総合戦略会議ではどのような議論がなされているのかお話を伺いたいと思います。
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●小島: | 渡辺課長からも説明がございましたが、1つだけ違う点がございましたので、ご説明させて頂きます。ODA総合戦略会議というのは、外務省に設置されており、外務大臣が議長を務めているのはその通りです。しかし、単なる諮問機関ではありません。諮問機関であるとすると、その議長が外務大臣ですから、外務大臣から外務大臣へ答申をするということになってしまいます。単なる諮問機関というのではなく、ODA全体に関する様々な問題、課題をこの機関で議論をすることになります。ODAについて様々な問題を議論しますが、なんと言っても最大のものは、国別援助計画の策定ということになります。これについては、昨年6月に会議が発足して以来、スリランカ、パキスタン、バングラデッシュ、モンゴルといった国に対する国別援助計画を策定中です。そのうち幾つかについては、まもなく纏まるのではないかと思っています。2つ目は、ODAの重点をどこに置くのかといった重点領域の設定ということを議論しております。その中で、渡辺課長がご説明していたとおり、人間の安全保障、もう少し平たく言えば、生活基盤をどうやって確保していくのかといった問題について焦点を絞って議論をしております。3つ目は、その折々のODAに関する重要課題について議論しております。例えば、このODA大綱の見直しは正にそういうことです。昨年の6月にこの会議が発足したのとほとんど同時に、ODA大綱の見直しをすべしという意見が出て参りました。私を含めて何人かの委員でタスク・フォースを構成して、かなり密度の濃い議論をしてきました。その結果が、8月末に対外関係閣僚会議で決定された新しいODA大綱となりました。その新しいODA大綱の重点については、既にご紹介がありましたが、さらに幾つかの点を追加させて頂きたいと思います。1つ目は、日本のODAはかなり長期に渡って行われて参りましたので、過去のODAの実績をきちんと評価すべきであり、これからのODAを進めていく上で、そこから学び、あるいは、反省すべきではないかという点です。2つ目は、よく議論されて参りましたが、国益の問題です。日本一国のみの安全と繁栄だけでなく、その安全と繁栄を図る中で、国民として、国家としての国柄をどう守っていくべきかということをODAと結びつけて、きちんと明記して行こうといったことを議論しました。
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●司会: | 新しいODA大綱では、国内外のNGOなど援助関係者がODAに参加し、政府との連携の下でその知見を生かしていくことの重要性が指摘されていますが、これからのODAにおいて、NGOが果たすことができる役割、今後の展望について高橋さんからお話を伺えればと思います。
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●高橋: | 日本にはたくさんのNGOがありますので、私がお話することは必ずしもNGO全体の意見を反映しているのではなく、あくまでも一団体、一個人としての話として聞いて頂きたいと思います。私はJVCの職員ですが、同時にODA改革ネットというODA改革に関心を持つネットワークの世話人もしています。そこには、団体として約56団体、個人として約100名以上が参加していますが、今日の話の一部はそこでの議論を踏まえたものです。新ODA大綱についてですが、実は去年からの議論の中で、私たちもいろいろと意見を言ってきました。今日はその新ODA大綱の中で、ODAとNGOとの連携についてお話したいと思います。その後でODA大綱の全体の話をしたいと思います。何故、これだけODAとNGOとの連携が議論されるようになってきたかというと、その背景には大きく4点有ると思います。1つ目は、皆さんが関心をお持ちのように、日本の税金がどれだけ効率的に使われるのだろうかということで、効率的なODAの運用のためにNGOを使った方が安く上がるであろうということが挙げられると思います。いろいろな面でコストがかかり過ぎて、必要な所に手が届かないので、NGOを最大限に活用するということがあると思います。二つ目にグローバル化が進む中で、貧富の格差がどんどん拡がってきて、保健、教育、民主化といったいわばソフトの部分、社会開発分野でのニーズが高まってきていますが、その部分で、現場で地道に取り組んできたNGOの方がより有効であろうということもあります。日本も社会開発を進めていく上で、NGOと連携していきたいということがあると思います。この2点は、実施面での連携ニーズです。その他にNGOとの連携を求める大きな背景が、2つあると思っています。3つ目になりますが、いわゆる市民社会、あるいは、シビル・ソサエティというものが日本も含めて、国際社会全体でとても重要になってきている。市民社会の意義とは何かというところで、現地住民との媒介としてNGOの果たす役割が大きくなってきていることを政府も無視できなくなってきた。また、国際協力の現場で働くNGOを育てて行くためにも、日本で市民社会を強くしていかなければいけない。そのためにNGOとODAがどう協力できるかということだと思います。最後ですが、小島先生がODA総合戦略会議の中で触れられていた国益ということです。国際社会がグローバル化する中で、国際社会の決めごとを政府間だけで行うことが無理になってきたということがあると思います。例えば、「地雷廃絶」というのをご存じだと思いますが、こういう国際スタンダードが今はむしろNGO、市民社会、民間セクターが主導権をとって、国際情勢の規律あるいは方向性を決めていく上で大事な役割を果たすようになってきています。こうした流れの中でNGOも含めてODAや外交政策などを一緒に考えていくことが必要となってきているのだと思います。私が指摘したいのは、日本では最初2点のコストとか社会開発のための連携では、ODAも随分と改善されてきましたが、後の2点、市民社会をどのように醸成していくのかということと、「国益」や外交というものを市民とどのように議論していくのかという点では、まだクエスチョン・マークを付けざるを得ないということです。ODA大綱はODAの憲法みたいなものですが、こういう大事な公共政策を市民と一緒にどうやって作っていくのか、またそのプロセスの中で語られる「国益」のあり方をNGOや市民と本当に議論してきたのかということをもう一回問い直したいと思います。いわゆる手足となるNGOではなく、もっと頭の部分でNGOとの連携が進んでも良いのではないでしょうか。小島さんがおっしゃったような「成熟した国柄」、緒方さんの言い方では「国の品格」といったものを外に対するメッセージとしてODAが体現できるようになるためにも、NGOや市民を手足ではなく、頭の部分、即ち、政策面において透明性のあるプロセスで参加できるようにして、一緒に作っていくことが必要であると思います。ODAは外交ツールとして重要だということですが、ならばODAや国際協力だけではなく、外交のあり方も含めて、市民ときちんと議論をするということがもっとあってもいいのではないかと思います。さて、新ODA大綱の下で、どうやってODAとNGOが連携していくかということですが、先程も触れましたように、NGO支援のための補助金などは随分拡大しました。これからも拡大してほしいと思います。しかし、付け加えれば、国内で国際協力を考える活動をしたり、ネットワークを広げる活動をしているNGOに対してを、市民社会の醸成という観点からもっとODAの支援があってもいいのかなと思っています。また、NGOと外務省とで定期協議を年4回程やっていますが、お金の話だけでなくもっと広くODA政策全体について議論できるように、NGOも力をつけていきますので、外務省ももっと開かれていってほしいと思っています。
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●司会: | 紺野さんはUNDP親善大使として、カンボジア、パレスチナ、ブータンと続き、今年7月にはガーナを訪問されています。ガーナでは、UNDPが実施しているプロジェクトのほか、日本が支援しているODAのプロジェクトやNGOが関与しているプロジェクトも視察されています。そのような現場の体験から、ODAをより効果的にするにはどういった点が重要だと思われますか。
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●紺野: | UNDP親善大使を務めております紺野美沙子です。今日は秋晴れの日曜日にODAタウンミーティングにお越し頂き本当にありがとうございます。まずはUNDPについてですが、初めて名前を聞く方もたくさんいらっしゃると思います。私が親善大使をしているUNDPは、日本でよく知られているユニセフとか、国連難民高等弁務官事務所と同じ国際機関の1つで、主に全世界の貧困撲滅を目的に世界170以上の国や地域で開発援助を行っている国連の機関です。開発援助というのは、人道援助とは違って、非常に地味で時間のかかる援助です。例えば、最近ではアフガニスタンやイラクでの戦争が終結した後、復興の中心となるのがUNDPです。1つの国や地域が他の国や国際機関の援助を受けずに自立していくまで、人作り、国作りのお手伝いをして行くのがUNDPです。私は、5年前からその親善大使として、カンボジア、パレスチナ、ブータン、そして、今年は西アフリカのガーナを訪問しました。私とODAとの関係は、親善大使となる1年前にODAの広報番組でインドとネパールへレポーターとして行ったのがきっかけです。それまでは、一国民としてODAというのは、どちらかというと、こんなに巨額を投資したのに無駄になっているとか、不正があったとか、ダーティーなイメージが新聞などで大きく報道されるものですから、本当に役に立っているのかとか、税金が無駄使いされているのではないかというようにマイナス・イメージで見ていました。日本国内がこれだけ不況なのみ、どうして外国から要人がくると何十億円も何百億円もあげてしまうのか、随分気前がいいなと正直思っていました。それで、6年前にインドとネパールへ行き、有償、無償の様々なプロジェクトを視察したのですが、ネパールでは、主に青年海外協力隊の皆さんとの交流がありました。電気も水道も無いような非常に不便な所で、助産婦として活躍されている若い方とか、ネパールではビタミンAの不足から目の病気に罹られる人が非常に多いのですが、田舎の村の盲学校で教師として働く協力隊の方にもお会いしました。それから、インドでは、橋作りの専門家としてアジア各地を転々としている方とか、ガンジス川の汚染を解消するために環境問題を取り組んでいる方にもお会いしました。、マスコミはマイナス面を大きくクローズアップしますが、殆どのODAは現地で非常に役立っています。実際に援助の現場で額に汗して、日々努力をしている協力隊の皆さん、国連ボランティアのFさん、NGOの方、そういう方々の地道な作業には、なかなか日が当たらないのだというのが正直な感想でした。その翌年に、親善大使に何故か選ばれまして、先ほど申し上げた4カ国を訪問したのですが、どこの国に行っても非常に大きな歓迎を受けて、日本のお陰でこれだけの設備ができた、こんなに役に立っているといった感謝の言葉をたくさん頂きました。さきほど申し上げましたように、協力隊、NGO、いろいろなボランティア団体の方々との交流もありました。そういった中で、私の役割は何かと考えた時に、ODAや国際協力のいい面や役に立っている面、実際に最前線で活躍していらっしゃる皆さんの姿を、一人でも多く紹介することが私の役割ではないかと思いました。ODAをより効果的にするための方策ですが、日本人特有なのかもしれませんが、アピールが下手だと思います。日本は世界中でこんなに良いことをしているのに、お国柄のせいかとても謙虚なんです。もっと国内に向けて、日本は世界各地でこんなに良いことをしているんだという幅広い広報を行うことが重要ではないかと思います。そのためには、青年海外協力隊のOB、OGの方のお力、専門家の方のお力というものが非常に重要だと思いますし、それ以外の機関で援助の現場にいらした方が、体験を語る場というのも非常に大事ではないかと思います。それから開発教育。小学校や中学校のうちから、世界は広くて、こんなにもたくさんの問題が起こっているのだという教育を地道に続けて行って、国際協力の場で活躍できる、ODAに関して提言のできる人材を育成することも大事ではないかと思います。それから、日本は世界の様々な国でODAを行っており、そういう意味で親日的な国がとても多いと思います。但し、国対国ではなくて、ODAをきっかけにして民間レベルの交流が深まればと思っています。民間レベルの交流がもっと盛んになることによって、ODAの意義も見直されてくるのではないかと思います。
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●司会: | 日本のODAは、150以上の国や地域に対して実施されており、中でもアジア諸国に対しては、2001年には、日本のODAの全体の約57%が実施されています。このように、アジア諸国の中にはODAによって経済発展を遂げた国も多くあると思います。そこで小島さんにお伺いしたいのですが、ご専門の現代中国論、東アジア論の観点から、日本のODAがアジア諸国において果たした役割について、どのようにお考えでしょうか。
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●小島: | 日本のODAというのは、日本の企業とともにアジアの経済発展に大きく貢献したと思います。旧ODA大綱の主旨のところでも、開発途上国の安定と発展のために支援していこうという目的が謳われていました。その目的どおりに、日本のODAは、アジア諸国の発展に大きく貢献したと思います。発展ということにはいろいろな意味がありますが、経済発展のために必要な交通、鉄道、電力といったインフラ部分できちんと支援し、それがアジア諸国の発展に繋がった結果、80年代初めに韓国、シンガポール、台湾、香港のアジアの4つのドラゴンが経済的に成長し、80年代終わりから90年代初めになると中国の東部沿岸地域、インドネシア、インドなどが発展して、発展の玉突き現象といった状況が生まれています。これは東アジア経済成長のミラクルと呼ばれています。その先頭を走ったのが日本であって、日本の支援を通じて、アジアの国々が次から次へと雁が群れをなして飛ぶように発展していきました。これを雁行型発展と言いますが、その基礎に日本のODAがあると思います。さらに90年代の終わりには、東アジアは通貨金融危機に襲われましたが、まさにこの危機の克服過程で、日本のODAがもう一度大きな役割を果たしています。新宮澤構想という財政支援を行い、我々が見ている東アジア経済の再発展に繋がったと思います。この300億ドルの新宮澤構想というのは、特別円借款というODAの一つの枠組みですが、まさに紺野さんがおっしゃられたように、顔の見える日本の支援ということが、東アジア諸国にも非常に評価されたと思います。更に、これからの東アジアと日本とのODAを巡る関係で言えば、韓国、シンガポール、台湾などはODAから卒業しました。タイ、中国などもODA卒業途上にきていると言っていいと思います。そういったODAを卒業した、あるいは、卒業途上にある国々と組んで、アジアでまだ開発がきちんと進んでいない国々、あるいは、アフリカなどへ共同で支援をしていくことが、東アジア全体に広がっている協力と統合を一層進めていくことになると思っています。
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●司会: | 高橋さんは青年海外協力隊、開発コンサルタント、そして、現在ではNGOのお立場からODAに関わってこられたわけですが、そのような様々な立場から見たODAの姿について、ご自身の経験を踏まえてお話をして頂けますか。
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●高橋: | 私は協力隊でフィリピンに2年、開発コンサルタントとしてインドネシアに3年半程おり、JVCでの何度も現場に行きましたが、途上国の人から日本のODAについての意見を時々聞いています。先程、紺野さんはODAのいい部分がなかなか表に出てこないと言っておられましたが、僕もそれは半分正しいと思っています。確かに効果のあるODAも中にはありますが、普通の人にはそれがODAであることがあまり知られていない。例えば、協力隊で教えていましたが、学生さんは協力隊が日本のODAだということを知らない。また、インドネシアで病院関係のODAをやっていましたが、病院に来る患者さんは、医療機材や病室が日本のODAによるものだということを知らない。建物や機材にODAマークを貼っていますが、これはそれ程注意をして見るものではないからです。しかし、援助というものは、元々そういうものでいいのかなと思っています。例えば、日本の皆さんの中で、東海道新幹線が世界銀行の融資で出来たということを、知っている人は知っているけれど、知らない人の方が多いでしょう。でも多分それでいい。援助を通して私たちの顔を見せるということは援助の本質から言って大事なことではないのではないでしょうか。その国の貧困や環境がどうなるかという議論に、日本の顔を見せるというのは二の次ではないかなと思うのです。もう一つ言っておかなければいけないことは、マスコミが失敗ODAのことを過剰に取り上げるということですが、それは多分にあるにしても、考えなければいけないのは日本から見たときに全体の10%の被害でも、被害を受ける途上国の住民から見たら、それは100%の失敗、100%の被害であるということです。いわゆる「失敗」ということに対して援助する側が、どれだけ受ける側の立場に立って考えられるかということです。この問題は、私たちNGOも同じです。実は、そのくらい援助というのは難しくて、センシティブなものなのです。私たちがODAに期待しているのは、そういう感受性ということで、1つの失敗でもそこには何万人の住民がいたりするし、その人たちにとっては100%の被害なんだということを理解して、できるだけ失敗をゼロにしていく努力です。理想論かもしれないけれど、その視点を忘れないで頂きたいと思っています。つまり誰のための援助かということです。最近では、日本の外務省もJICAも少しずつ現場の人たちの声を聞くようになってきていますので、将来、そういう方向で改善が進んナいくのを期待しています。しかし、最近できたODA大綱の中では、はじめて国益と戦略性ということが謳われました。現場の人々のニーズに応えるということの他に、援助する側が口出しをしていくということなのですが、もし援助する側の考え方が強く出てくるようでは問題です。90年代にいわゆる冷戦時代が終わる中で、日本もまじめに援助について考え始めました。住民参加も進み、NGOも成長しました。ところが、9.11があって後戻りしてしまった。米国が自分の国益を前面に出してきたため、日本ももっと国益というものを前面に出さなければいけないという議論が出てきた。つまり、ドナーがもっとODAをコントロールしようということです。結局、新ODA大綱の中では、貧困削減やできるだけ現場のニーズに近づきたいと言いつつも、他方で、ODAの国益性や戦略性を謳うという二面性を持つことになった。ですから、これからが大事だと思います。本当に住民や現場から見て役に立つ援助になるのかどうか、この新大綱の下でどういうODAが展開されていくのかということを皆さんと見ていかなければいけないと思っています。
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●司会: | 紺野さんはこれまでも様々な開発途上国を訪問していますが、そのようなご経験を踏まえ、日本や日本人に期待されることは何か、あるいは日本や日本人にできることは何かという点についてご意見をお聞かせ願いますでしょうか。
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●紺野: | どこに行っても感じますが、期待されていることは資金援助ではないかと思います。但し、日本国内で心配なのは、日本の人たちの無関心です。今日、ここにいらしている皆さんは関心のある方だと思いますが、そういった援助に対して、関心のある方と全く関心のない方との二極化が進んでいるような気がしています。ODAに対して、全く無関心な方というのは、例えば、電車の中で困っている人がいても、あるいは、日常生活の中で何か問題が起こった場合でも、無関心な人たちではないかと思います。残念ながら、そういう人たちが少しずつ増えていっているような気がします。他人の事に無関心になりつつある人たちをどうやって取り込んでいくかということが私たちの大きな課題だと思います。日本や日本人に期待されることについてですが、パレスチナやガーナに行って感じたことは、中東やアフリカにおける日本の立場が非常に中立的であるということです。そういった中立的な立場だからこそ、出来ることもあると思います。それから、日本の良さというのはどこかというと、やはり、技術力であったり、組織力であったり、人の力ではないかと思います。自己主張は下手かもしれないけれど、技術的、組織的なことになったら、大きな力を発揮できるのではないかと思います。そういった援助を今まで続けてきたと思いますし、これからも続けていくのだと思います。そういった継続性のある援助の中から国際社会の信頼を得ていくことが、非常に大切ではないかと思います。ですから、日本がこれからもそういった援助を続けて行くために、日本国内での無関心層を如何に減らしていくかということが大きな課題であるような気がしています。
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●司会: | ここで質疑応答に入らせて頂きます。 |
●質問者A: | これから国とNGOとの協力が更に深まっていくにあたって、双方が評価基準を設けないといけないと思いますが、その点に関して、どうお考えでしょうか。
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●渡辺: | 評価というのは、ODA改革の重要な柱です。政府とNGOとの協力は、今後非常に重要なテーマになるかと思います。評価基準とおっしゃいましたが、おそらく第三者に評価を頼むということかと思います。日本は70年代くらいから評価について重視し、いろいろと検討してきております。今では外務省が行う政策的な評価、JICA、JBICなどの実施機関が行う評価につきましても、事前評価、事後評価につきましても、かなり綿密に実施しており、結果をホームページなどに掲載しております。政府とNGOとの協力に関する事後評価につきましても、これから様々な形で検討されていくと思います。
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●司会: | 続いて高橋さん、お願いします。
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●高橋: | 評価にはプロジェクト単位で評価する場合ともっと大きな単位で評価する場合の2つのレベルがあります。おそらく、NGOとODAの共通した評価というのは、教育や保健といった社会開発などの共通する分野ではできると思います。但し、国の場合、プロジェクトの規模が大きかったり、そこに投入の量が多かったりすることがあるので、NGOの評価以上のインパクトが累積した場合などの評価、例えば、国全体でどうであろうかといった部分がプラス・アルファとして必要なのではと思います。加えて、国の場合、新ODA大綱の目的、理念にある国益という点を含め、如何に国の政策的な立場から効果があったかという評価も必要だと思います。ですから、NGOとしては、政策部分でのビジョンの共有がなければ、実施レベルでの連携でも慎重にならざるを得ないと思っています。ご指摘のあった評価のあり方というのは、非常に大事だと思いますので、今後も外務省などの関係者と対話を続けていきたいと思っています。
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●質問者B: | ODA全体におけるNGOの位置付けと、医療分野でのODAにおいて、NGOはどのような特色をもって活動しているのかという点をお聞きしたいと思います。
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●渡辺: | 医療分野は日本のODAにおける重点分野の一つです。これは開発分野だけでなく緊急人道支援や平和構築の過程でも大変重要な分野です。NGOにつきましても、医療分野においていくつかNGOが世界各地で非常に活発な活動をしています。治療を行ったり、メンタル・ヘルスケアーを行ったりするなど、様々なNGOが活躍しております。アフガニスタンやイラクなど紛争直後の国や地域での活動でも、これまで相当の実績があったと思います。今後ともいろいろな形で支援を続けていきたいと思っております。
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●高橋: | 医療というのは、極めて専門性が高いものですから、NGOが自前でスタッフを抱えて、そういう能力を高めていくことは、今の資金力では非常に難しいです。ご質問された方のようなバックグラウンドのある方(質問者は医学部の学生)が、必要に応じて、私どもに協力して頂くのは、非常に有り難いことです。例えば、イラクに劣化ウラン弾が原因と思われる白血病の患者が増えているのですが、どういう薬を送ったらいいかということについては、実際、お医者さんといろいろとご相談しながら進めています。医療分野でのODAとの連携について言えば、例えば、国際協力に携わることができるお医者さんの人材プールがあり、そこからODAに関わることもあれば、NGOにも参加して頂くこともある、というようになればいいのかなと個人的には思っています。
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●質問者C: | アジアの途上国へ行く若者が大変多いのですが、それは、関心を持っている人がたくさんいるということだと思います。しかし、そういう所へ行って、日本のODAの現状や農村地帯の貧困を見ることは、現地の交通事情が悪いこともあって、難しいことだと思います。そこで、紺野さんに質問ですが、国際協力に関心のある若者が現地へ行った場合、その国のどの部分を見るのが一番効果的だと思いますか。
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●紺野: | 実際にその国に足を運んで見えてくることは、非常に大きいと思います。今では、日本にいるだけでも、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで本当にたくさんの情報を得ることができます。しかし、どんなに情報があっても、実際、自分で出かけて行って、目で見ること、肌で感じること、土地のにおいとか、五感をフルに活動させて感じることは、響きが違うような気がします。そういう意味で、若い人たちにどんどん途上国へ出て頂きたいと思います。実際に足を運んだ人がどう感じるか、何を見たいのかということは、本当にそれぞれの価値観の違いだと思います。交通手段が悪くても、探してみればいくらでも手だてはあると思います。実際、その地域で働いている日本のNGOの方々もいらっしゃると思います。そういう人たちに聞いたり、現地の大使館員からの情報を得たり、実際にその場に行きたいというのであれば必ず叶うことだと思います。但し、多くの問題が首都にあるということも事実だと思います。都市部に貧困層が集まってきていますので、スラム街を見るのもいいですし、実際、そういった人たちの話を聞くことも大事だと思います。地方へ行くことも大切ですが、首都を歩くだけでも、その国の問題が分かると思います。カンボジアのアンコール・ワットへ行ったとき、UNDPの方が、「ここには、カンボジアの光と陰がある」とおっしゃいました。光の部分というのは、世界遺産に指定されているので、大きな観光収入があること、陰の部分というのは、カンボジアでは地雷の被害が大きいので、観光客が集まるところには、地雷の被害に遭われた方々がたくさん集まって、物乞いをしていることです。子供達が生きていくために観光地に来て、頼まれてもいないのに観光客にガイドをしようとする。そういったカンボジアの貧困の部分を見ることができると思います。やはり、ご自身の感受性を研ぎ澄ませておくことが大事かと思います。
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●小島: | 何も分からずにアジアの先進国や途上国へ行くのは困ります。やはり、基本は行こうとする国についての基本的な知識を学ぶことです。学ぶための手だては、幸いにして、日本はたくさんあると思います。本であれ、インターネットであれ、国際協力事業団や国際協力銀行や外務省や、そういった所には関心を持つ地域の情報がたくさんあります。従って、そういったことをきちんと調べた上で現地へ行くことを望みます。また、大学には地域の研究者がいます。今、お話に出たような保健・医療、HIV、貧困といったような問題について、具体的に取り組んでいる先生や仲間がいます。そういった人たちと話しながら、東南アジアの国々をもう一度訪れることをお勧めします。
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●質問者C(再度): | 自分が行く国について勉強しておくのは確かに大切で、最低条件だと思うのですが、その上で、多少勉強が足りなくても、行ってみて、現地でその国のことを知り、強い関心を持って日本へ戻った後に、日本のいろいろな情報を利用して、関心をもっと高めていくという考え方はいけませんか。
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●小島: | いえ、全然いけなくありません。是非そうしてください。
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●質問者D: | ODA大綱においても、国民参加ということがすごく強調されていると思います。これまでにも国民参加、市民参加という言葉が使われていましたが、そういった場面で見受けられたのは、やはり政策の実行段階への参加であったと思います。これからは、政策の立案過程における国民参加も、一つの形態として必要になってくると思うのですが、そういった点について、外務省ではどのようにお考えですか。
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●渡辺: | ODAというのは、日本の国民の税金を使って行われている事業である以上、国民の理解と支持が無ければやっていけないというのが大前提です。そういう中で、更に能動的に国民にODAに関わって頂きたいというのが、今回の大綱のメッセージです。他方、具体的にどのように関わっていくかということについては、いろいろなステップがあると思います。ODA総合戦略会議というのは、国民のすべての方が参加している会議ではありませんが、いろいろな方面の代表者に集まって頂いています。ここで、ODA大綱や国別援助計画などについて提言して頂くというところに大きな意義が見いだされるかと思います。国民参加という意味では、NGO関係者、NGO以外の大学関係者、一般企業関係者といった方面との連携も重要です。外務省のODAのいろいろなスキームや事業の中、あるいは、JICA、JBICの事業の中で、NGOやNGO以外の市民社会との協力や連携が図り易くなるように工夫してきているところです。まだまだ改善点があるかと思います。そういったものを拡充していくというのが2つ目の点です。それから、やはり重要なのは、若い人たちに大学、高校、中学といった段階から開発援助ということに慣れ親しんで頂くことが重要と思っております。JICAを中心に、学校に青年海外協力隊の経験者を派遣して、援助の現場について説明して頂く事業もございます。それから、先程ODAの現場を見てみたいとのご意見がございましたが、外務省では、毎年ODA民間モニターという事業を実施しており、一般の希望者を募り、ODAの現場を見て頂くツアーを行っています。勿論、JICA、JBICにお問い合わせ頂ければ、ODAの現場を見るためにはどうしたらよいかというご相談にも乗らせて頂いております。是非ご利用ください。
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●質問者E: | 今の日本のODAは要請主義なので、こちらから押しつけてする援助は駄目なんですということでかなり政治力を排除してきたことがあると思います。具体的に言えば、地元産業を援助に取り入れられないかと言われることが結構あります。これから戦略援助を強化すればする程、そういう可能性が高まってくると思いますので、政治力を排除しながら中立的な援助に持って行こうとする工夫について、ご意見をお聞きしたいと思います。
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●渡辺: | 先程も申し上げましたとおり、ODAというのは、税金を使う以上、最終的には国会のチェックとコントロールを受ける、また、重要な方針については、政治レベルで決定されるというのがプロセスです。他方、不当な介入などにつきましては、排除しなければならない。ODA総合戦略会議で言っているところの戦略ということの意味は、決して政治的な考慮から物事を変えるということではありません。一般的な話を申し上げているのですが、今までは場当たり的に行われていたという批判に対して、日本の援助はどうあるべきかという基本から整理して考えるべきではないかという意見を踏まえて、戦略という言葉が出ていると理解しています。
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●小島: | その問題については、ODA総合戦略会議でもしばしば議論されます。おっしゃられたような点については、評価をしっかりとやることで担保していくのだと思います。ODAがどれほど最初の主旨に沿った形で実現されているのか、あるいは、いないのかということについて、事後評価をきちんとやっていこうということが一つであろうと思います。新ODA大綱でも、重点地域や重点領域が具体的に明記されています。まさに、戦略的なODAが今後どうあるべきかということをどのように重点項目や重点領域と整合させていくかということが重要になってくると思います。それから、国別援助計画というのが新たに策定されていますが、現地の意見をきちんと取り込んだ形でこの計画を作成していくことが既に始まっていますので、それを見て頂くことで、ご懸念の一部が解消されるのではと思います。 |
●質問者F: | 日本のODAが東南アジアの経済発展に強い影響を与えたということですが、その点に関連して、日本のODAのあり方を考えることが、これからの国際関係に強い影響を与えると思います。その点について、ご意見をお聞かせ下さい。
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●小島: | 東南アジアの経済発展というのは、本当に成長のミラクルと言われるほど驚異的でした。これからの東南アジアや国際関係についてですが、やはり、東南アジアが経済発展の結果として一つの地域に纏まっていかなければいけない、世界がグローバライゼーションの中で纏まっていかなければいけないということだと思います。間もなく東南アジアでAPECの会議が開かれ、東南アジア、韓国、中国、日本や中国や13カ国が集まって会議を開くことになります。その中で、東南アジアはEUをモデルとしたような新しい共同体を作り、そういう方向へ行こうとしております。まさに、そういった方向へ行こうとしている東南アジアと日本のODAとが協力していけば、東南アジアが東アジア全体の協力の輪とある種の共同体を作るというように繋がっていくだろうと思います。ヨーロッパの共同体、南北アメリカの共同体とパラレルな1つの纏まりを東アジアを作っていくことにおいて、日本のODAが東南アジアに与える影響は非常に大きいし、また、そうあってほしいと期待しています。
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●高橋: | 新ODA大綱の中では、アジア重視が謳われています。しかし、実は手許に途上国の歳入に対する日本のODAの割合という数字があるのですが、上から見ていくと、39.6%のギニアを筆頭にアフリカ諸国が並んでいます。つまり、ODAがその国の財政に果たす影響では、アフリカ諸国の方が遙かに大きいのです。おそらく、アジアにおいては、小島先生がご専門だと思いますが、歳入に対する日本のODAの割合は1%前後でそれ程大きくない。そういう中で、アジアとの関係はODAに期待するよりも、もっと別の外交手段ほうが、アジア地域において日本が果たす役割としては大きいと思います。つまり、援助というよりは、安全保障や経済関係という観点で考えるべき問題ではないかなと個人的には思っています。むしろ、ODAは、貧困削減ということで、歳入に果たすODAの割合が大きいアフリカ諸国に対して行って、その本来の役割を集中的に果たすべきだろうと思います。
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●質問者G: | ザンビアに民間モニターとして参加させて頂いたのですが、紺野さんと同じようにいろいろな印象を受けて帰ってきました。広報活動というのは重要だと思いますし、無関心層へのアプローチという部分で苦慮されていると思いますが、この点について、紺野さんはどのような方針で行くべきと考えていらっしゃいますか。
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●紺野: | 私の親善大使としての活動は生活の中の一部です。本業もありますし、家庭もありますし、子供もおりますし、自分の時間も欲しい。その中で親善大使というのがあります。100%の援助、100%のボランティアというのは無理だと思いますが、いろいろな楽しみがある中で、そのひとつがボランティアなり国際協力になってくれたらいいなと思います。私もやってる、あなたもやってるというように社会参加が当たり前に広がる社会になればいいなと思っていますし、そういうことのお手伝いをこれからも微力ながら続けて行きたいと思っております。
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●司会: | 最後になりますが、パネリストの方々から、本日のタウンミーティングにつきまして一言ずつご意見を伺いたいと思います。
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●小島: | 3点申し上げたいと思います。第1点目は因果は巡るということで、新幹線もODAによって作られた事実を我々は忘れてはいけないということです。第2点目は自己満足の諌めです。私自身も中国で木を植える環境協力をしています。しかし、実際に私が木を植えているわけではありません。365日、現場にいることはできませんから。従って、木を植えて頂くといった考え方が必要だろうと思います。第3点目は日本だけでODAをやるわけではないということです。先程も申し上げた通り、日本がアジアを支援し、そのアジアが成長してきた。今度は、そういったアジアの国々共にODAをやっていく。日本のODAを考える時には、アジアのODAを考えることが必要だろうと思います。
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●高橋: | 最初に申し上げましたが、私たちNGOは、決してODAを全否定したいと思っているわけではないですし、むしろ、一緒に良いODAを作ろうと思っているのです。対外的に日本が印象を与えられる部分というのは、やはりODAだと思います。そのODAを品格のあるものにしたいと思うわけです。でも、国益とか戦略性が謳われているこの新ODA大綱の中で、どうしたら「品格のあるODA」を作っていくことが出来るのでしょうか。そのためにどういう制度を整え、市民として何をしたらよいのかということを一緒に考えていきたいと思っています。また現在、日本にはODA全体を体現できる政治家はいません。「この人だったらこのODA」という人がいないのです。先程、政治の介入という話がでましたが、最終的には、私たち市民が選ぶ政治家の中から援助大臣になってODAを語れるような人が出てくることを期待しています。それまでの間は、外務省とNGOがイコール・パートナーとなって、ODAの改革を進めていけると思いますし、一緒に頑張りたいと思います。
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●紺野: | 今日はたくさんの若い人達から積極的に質問して頂いて、本当にうれしく思いました。私が申し上げたいことは、一人でも多くの人に関心を持って頂くということです。日本は、ODAを通して、多くの国にたくさん援助を行ってきましたし、これからも行っていくと思います。私たち日本人は、そのことにもっと自信を持っていいのではないかと思います。皆さん一人ひとりができることから始めて頂ければいいのかなと思います。本当にありがとうございました。
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●渡辺: | 非常に有意義な意見交換をさせて頂き、ありがとうございます。3点だけ申し上げます。新ODA大綱につきまして、国益についてのご意見がたくさん出ましたが、新大綱では、国益という言葉は一回も使っていません。新聞等で国益重視と書かれておりますが、国益という言葉自体は使われておりません。国益は、この大綱を作るに当たって非常に意見の割れた点でございます。その経緯やどのような意見があったかと言うことにつきましては、外務省ホームページのODA大綱というところをクリックして頂いて、ODA大綱案に関するご意見募集、公聴会の結果について、是非ご一読なさってください。いろいろな意見のバランスをとって、案文を作ったということをご理解頂けたらと思っております。新大綱では、要請主義を見直して、相手国と一緒に、また、世界銀行やUNDPなどの他機関と一緒に援助を行うこと強調しております。当然、そこにはNGOとの連携が入ってきます。NGOとODAについてのデリケートさ、センシティビティーということをよく理解すべきだと思います。JBIC、JICAの新環境ガイドラインでは、住民移転に伴う事業、環境に影響を与える事業につきまして、これまで以上に慎重で綿密な事前調査を行うことになっており、その過程でNGOの方々の批判や指摘について、誠心誠意、受け止めて対応する姿勢でやっていくことになっております。どうもありがとうございました。
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●司会: | パネリストの方々からは貴重なご意見を賜り、誠にありがとうございました。これらのご意見をこれからのODAの実施に活かして頂きたいと思います。皆様、長時間おつきあい頂きまして、ありがとうございました。
(以上)
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