2013年12月6日(金曜日),北海道大学大学院に外務省国際協力局 和田 充広 審議官を講師として派遣しました。今回の出前講座では,同大学公共政策大学院及び法学研究科修士1,2年生並びに法学部3,4年生の約50名を対象に「転換期にあるODA」というテーマで講義を行いました。
講義概要:「転換期にあるODA」
◆参加者からの感想(抜粋)◆
◆官民連携のODA案件例や,中小企業によるODA活用例など,新しいタイプのODA活用を知ることができた。
ODAは官による短期の支援がメインだとばかり思っていましたが,テルモのカテーテル術研修やツムラ生薬の原料栽培など,官民一体型の長期的な支援も増えてきているのだと知りました。
◆ODAの目的に関して,今までのODAに関する著作・書では,日本のODA実施の目的について,よく欧米から批判があり,もう少しチャリティーに根ざすべきだという意見に傾倒していましたが,政府ODAが日本国内企業・事業と援助国とのマッチング機能として,国益も考慮したWin-Winのプロジェクトという姿勢に関して,とても賛同できる内容で,新たなWorld-Standardとして売り込んでいくのもアリかなという変化がありました。
イメージとして,どうしてもODA事業というと,大手企業がメインという考えがあったのですが,今日の講演を通して,中小企業の埋もれかかっている素晴らしい技術・知識を,ODAによって海外に売り込むということにも積極的に動き始めたという話を聞くことが出来,ODAの新たな可能性を知ることが出来,とても有意義なものでした。
◆ODA転換期に直面している背景としての国際的課題にはいかなるものがあるのか,その課題解決へのアプローチとしてどのようなものが考えられるのか,日本のODAの取組方はどのようなものかなど,今まであまりよく知らなかった部分を知るよい機会となりました。
今回の講座を受講して,ODAを考えるポイントとして国民とのバランス,開発面での先進国と途上国とのバランスといった様々なレベルでのバランスを考えることが必要なのだということが分かりました。
税金を使って援助するという面をもつODAは税金を納める国民の同意は不可欠だと思います。だからこそ,ODAの果たす役割,現状・課題・目的について直接お話を伺い,疑問に思ったことについて,直接回答して頂く機会というのは,行政の側としてはこれからを担っていく人に納得してもらい,信頼を得ることで今後の政策を進めていくうえで,国民の側としては政策を理解する上で,互いに有益なことであると思います。
◆外務省で実際に働いている人が普段どんなことを考えているのか,何を問題として捉えているのかが聞けて興味深かったです。
震災の際に様々な国が支援をしてくれたのは,これまでの日本の援助活動の結果だという話を聞き大変嬉しく思いました。日々国際関係での問題は絶えませんが,日本のこれまでの世界への対応は確実に意義のあるものだったと思います。地道な努力を続け,今後も国際社会との絆を深めていけたらと思います。
◆日本のODAの利益を受けた私にとって,ODAの研究はとても有意義と思っています。
私は国際環境保護協力における,日中関係の再構築に携わる外交官になるべく日本に来ました。私が外交官という職業に興味を抱き始めたのは,2007年の日本の甘粛省蘭州市大気環境改善計画がきっかけです。私は中国甘粛省出身で,子供のころからひどく大気汚染の被害を受けています。その際に日本の方々から頂いた温かい支援や多額の援助に感銘し,隣国との友好関係の大切さを実感しました。甘粛省はゴビなどの砂漠,東は黄土高原がある厳しい自然環境です。大気汚染もとてもひどいです。また,砂漠緑化は大気の循環に影響を与えている。ここにODAが使われることは,決して日本のお金は無駄遣いされていないと思っています。本当に感謝しております。これからも,日中関係の再構築に微力を尽くします。
◆日本政府を批判する声はよく聞くが,実際に政府の本音などを聞く機会は少ない。マスコミや評論家の意見にまどわされず,自分の耳で生の声を聞き,自分で判断したいと思っていた。
官民連携という動きに興味を持った。官だけではできないこと,民だけではできないこと,いろいろあるが,お互いに補い合うことで,適切な援助ができると思った。
外務省の方の生の声を聞く貴重な機会に感謝しています。他の大学でもこのような取り組みをどんどんしたら良いと思います。大学生という若い世代の理解を得るためにも大事なのではないでしょうか。マスコミなどから入ってくるフィルターのかかっている情報では,真実を知ることは難しいです。透明な情報を政府自身が発信することで,もっと国民の支持・理解を得やすくなると感じました。