ODAとは? ODA改革

「国際協力に関する有識者会議」市民社会との意見交換会

1.日時

 平成19年12月7日(金曜日)15時-17時

2.場所

 外務省 北国際大会議室(中央庁舎760)

3.出席者

  • 市民社会から、19名の方々
  • 「国際協力に関する有識者会議」から、渡辺議長、荒木委員、熊岡委員、草野委員、大野委員
  • 事務局(外務省)から、別所国際協力局長ほか

4.議事概要

(1)冒頭説明

 冒頭、渡辺議長から自己紹介の後、以下のとおり説明した。

 (イ)「国際協力に関する有識者会議」

  • 本日は、「国際協力に関する有識者会議」が外務大臣に提出する予定の中間報告について、皆様のご意見を賜りたい。
  • 「国際協力に関する有識者会議」は、国際協力に知見と関心を有する国民の声を政策に反映させることを目的とする。外務大臣の諮問を受け、国際協力の基本政策について幅広い視点から討議及び提言を行うために、本年3月に立ち上げられた。
  • 委員は14名で、国際協力に経験・知識をお持ちの各界の方々に個人の資格でご参加頂いている。その内訳は、学界・国際機関から7名、言論界から2名、経済界から3名、NGOから2名となっている。
  • 来年、日本で開催される第4回アフリカ開発会議(TICADⅣ)、北海道洞爺湖サミットを念頭に、3月以降、5回の会合を開催した。その過程で出てきたキーワードが配付資料(資料1)にまとめられている。本来は中間報告の案をお示ししてご議論頂いた方がよいが、時間的な制約があり、このような形とさせて頂いている。外務大臣からは本年中を目途に提出するよう求められていたが、やや遅れて来年1月に外務大臣に提出したいと考えている。
  • 外務大臣から諮問を受けた事項は、
    • 国際協力政策の基本的な考え方、
    • 国際協力への国民参加(国際協力を担う人材の育成や教育等)、
    • ODA案件の形成と実施上の課題(ODAの効率化・迅速化や、官民連携、NGOとの連携等)
    の三点。

 (ロ)中間報告骨子案

  • 今回の報告書のドラフトは、政府ではなく、有識者会議の委員自身が執筆し、全体の調整を自分(渡辺議長)が行っている。
  • これまでの有識者会議の議論で出された主な論点を、配付資料(資料1)の5つの項目に分けてまとめた。
  • 第1章に当たる部分は、「ODAの戦略性:選択と集中」であり、自分(渡辺議長)が執筆を担当する。
    • ODAを供与する目的として「国民益」と「国際益」のバランスを取るべきこと、
    • 貧困削減や、国際社会が共通して目標としているミレニアム開発目標の達成の重要性、
    • 重点国・重点分野に集中的にODA資源を投入することで、戦略性・メッセージ性を明確にすべきこと、
    といった主張を盛り込みたい。
  • 第2章は、「アフリカ」。来年のTICAD、サミットではアフリカの開発が大きなテーマとなる蓋然性が高いと言える。「アフリカ」の部分は、大野委員が執筆を担当する。
    • 「3年間で対アフリカODAを倍増する」という公約の対象期間後の2008年以降の対アフリカODAのビジョンを示し、ODA事業量を拡充すること、
    • アフリカ支援戦略を協議・実施するためのマルチ・ステークホルダーのフォーラムの設置、
    • アフリカでの事業実施のリスクを緩和するための特別な制度設計等、
    の主張がなされる。
  • 第3章は、「官民連携」。経済界の意見も踏まえつつ、荒木委員が執筆する。
    • 一定のルールに基づいて、適切な距離を保ちつつ、一つの会社・NGOを支援することも可能にすべき、
    • 企業の社会貢献活動(CSR)との連携や官民パートナーシップ(PPP)の具体的な案件の実施、
    • 民間企業提案型の案件形成、
    といった提案がなされる。
  • 第4章は、「ODA案件の形成と実施上の課題」。草野委員が執筆する。草野委員は、ODAの体系を4層に分けて提示することを提言している。第4層がODAの戦略を練る「海外経済協力会議」、第3層が、ODAの企画・立案に当たる外務省、第2層が、実施を行うJBIC、JICA等の実施機関。この3層構造に加え、第1層に民間の企業・NGOを置いている。その上で、
    • 戦略のレベルでは、海外経済協力会議がより大きな議題を開かれた形で議論すべきこと、
    • 企画・立案のレベルでは、現地の人員や体制の強化、
    • 実施のレベルでは、新JICAの下での援助スキームの連携、及びスキームの簡素化・要望調査の通年化等の制度改善、
    • 民間のレベルでは、NGOとの連携強化、ODAとその他の資金の連携の重要性、
    を謳っている
  • 最後は、国際協力のための「人材育成」。この部分は、事務局に案を出してもらい、自分(渡辺議長)が編集している。
    • 国際開発に関連する高等教育機関を充実させるとともに、政府・NGO・企業等の間で広く人事交流を行うべき、
    • 開発教育を様々な教育段階で展開していくべき、
    との主張がなされる。

(2)意見交換

 続いて行われた意見交換の概要は、以下のとおり。

 (a)今後の手続き

 (市民)

  • 本日の意見交換は、外務省のホームページ等、何らかの形で公開されるのか。また、パブリック・コメントの募集は行われるのか。意見交換会の意見が、パブリック・コメントを行う段階で公開されており、議論の喚起に役立てばよいと考えている。さらに、12月21日の第6回会合までにコメントは集約されて、会合の中で紹介されると理解してよいか。

 (委員)

  • 本日の意見交換会の情報は公開する。ただし、「国際協力に関する有識者会議」の会合と同様、自由な議論を行うため、発言者の名は出さない形で分かりやすく公開するようにしたい。公開は早ければ早いほどよい。
  • また既に、外務省ホームページを通じて一般からご意見を募集している。
  • 意見交換会で出された意見を第6回会合で提示し、然るべき点は取り入れたい。

 (b)NGOの位置づけ

 (市民)

  • NGOが実施の段階以降の「第1層」に置かれているが、NGOや市民社会が開発政策に意見を言っていくことが、現地のグッド・ガバナンスにつながる。ODAの戦略や企画・立案にNGOが積極的に関わるべきだということに、もっと留意すべきではないか。NGOの関与について、「戦略性」の部分で重要な基本的概念として明記して頂けると有難い。

 (委員)

  • 「国際協力に関する有識者会議」は国民の声を政府の政策に反映させる役割を担っており、ここにNGO出身の2名の委員に参加して頂いていることで、一つの経路は確保されている。

 (委員)

  • 「国際協力に関する有識者会議」の9月の会合でも、同様のご意見を頂いた。「4層構造」と言っているのは、外務省が3層構造として説明しているものを使って、国際協力の意義や問題点を分かりやすく示すためであって、NGOが戦略・企画立案の段階から参加することを全く否定していない。中間報告案でも、階層秩序でないことを強調している。また、途上国の現地でも、現地ODAタスクフォース(TF)に、より現地NGOを含めた民間の声を拾い上げるよう制度化をすべきだと、今回の提言の中でも述べている。

 (委員)

  • 中間報告案では、第4層から第1層への一貫性とともに、第1層から第4層へ問題点
  • 評価がフィードバックされることが必要だとも主張している。それを制度上どう担保するかについては考えなければならず、ご意見を頂ければ有難い。

 (c)アフリカの対外債務と構造調整の評価、中国との関係

 (市民)

  • 骨子案に挙げられている「アフリカに対する過去の円借款による対外債務増加と構造調整の悪影響の評価」を、是非、日本と現地の市民社会と一緒に評価してほしい。

 (委員)

  • この点に関しては、どのように自分(委員)なりに咀嚼できるか検討している。円借款自体がアフリカの困難をもたらした主要因とは言えない。構造調整借款は世銀と協調融資で行われており、世銀・IMF主導で途上国の主体性を尊重せずに改革の条件を押しつけた反省から、現在では、国際社会が貧困削減戦略(PRSP)を導入し、援助協調・援助効果向上で協力している。過去の支援は良いところも悪いところもあったが、悪いところは真摯に反省した上で改善していこうという書き方を考えている。
  • アフリカ支援について、マルチ・ステークホルダーで恒常的に議論していく枠組みを作りたいと考えている。その中で、過去の援助の反省や改善点についても議論できるのではないか。

 (市民)

  • 後者の点はすばらしいご提案で、是非早急にやっていきたい。
  • 借款については、サブサハラ・アフリカでなぜこの時代にこのようなことが起き、債務を帳消しにしたのかということを検討して開示すべき。失敗を繰り返さないようにどうしようとしているのか、日本政府として示す必要がある。それが難しければ、市民と一緒に考える場を作ることが重要。重債務貧困国に入っていない、例えばケニアの債務を現在のケニア国民に負わせるべきなのか、悩ましいところだが、一緒に解決の道を探りたい。

 (委員)

  • 円借款でインフラ整備を行うのと異なり、構造調整融資は結果が目に見えない形で消失する一方で債務の半分近くを占めたので、正確な情報開示が行われていないことは問題。

 (委員)

  • 説明責任は確かに欠けている。同時に、アフリカ諸国は経済発展のために資金が必要と考えている。日本などが世銀以上に貸付に慎重になる一方で、新興のドナーが融資を盛んに行っている。例えば、タンザニアでは中国が道路案件の90%を安く引き受けているが、途中で仕事を放棄する例もある。資金がほしい国はこのようなドナーに借りに行ってしまうが、これをどう考えたらよいか。

 (市民)

  • 何が問題であったのかを包括的に理解すれば、貸せるケースの判断を組織として行えるはずである。
  • また、アフリカ諸国が有償の融資を求めるのは、日本の無償が使いづらいのが一因。なぜ使いづらいのか考える必要がある。
  • 中国は、日本がかつて批判されたことを行っており、それを見習う必要はない。信頼関係が重要。アフリカでも市民社会は育っており、今後中国式の援助が喜ばれるとは考えない。

 (委員)

  • 中国と同じことを日本がする必要がないというのは、同感。日本なりに、地道に現場を大事にして信頼関係を築いてきた。日本の良さを打ち出せる支援の仕組みを考えていくメッセージを出したい。
  • 日本として反省すべきなのは、アフリカに対し政策的な関わりが少なかった点である。政策的な支援や、民間・市民社会のネットワーク等を使って、包括的に関わっていくことが、過去の反省に基づいて日本が打ち出せる支援の仕方である。その上で量の拡充のメッセージも出したい。

 (市民)

  • マルチ・ステークホルダーの枠組みで、アフリカのNGOと外交団が十分に主体的に関われるようにすることが必要。
  • 中国のように、援助で外交的得点を買おうとする時代ではない。パートナーシップの強化は、援助によらずともできるはず。経済界とのパートナーシップだけでなく、民際的なものも取り入れるべき。

 (d)現地の市民社会とのコンサルテーション

 (市民)

  • 2006年にセネガル、エチオピア、タンザニアの国別援助計画について日本の市民社会とのコンサルテーションの場が設けられたのは前進だが、これらの国について、あるいは2007年度からザンビア、ケニア、マダガスカルについて、現地語に翻訳して、現地の市民社会とも十分にコンサルテーションを行ってほしい。

 (委員)

  • 「国際協力に関する有識者会議」の前身である「ODA総合戦略会議」から、国別援助計画を重視してきた。「ODA総合戦略会議」では、東京タスクフォース(TF)と現地TFの意見交換の往復によって国別援助計画を作っていくモデルを作っており、現地TFに現地NGO等も入ってコメントを頂く形となっている。ご提案があれば伺いたい。

 (e)NGOの活動に資するODA予算の拡充

 (市民)

  • NGOはODAの効果的・効率的実施に大きな役割を果たしている。連携強化に向けて、NGOの活動に資する予算を拡充することを明記してほしい。
  • 「ODA予算減少の反転の必要性」とあるが、これはTICAD IVや北海道洞爺湖サミットの機会を捉えてODAの拡充に転ずることを念頭に置いているのか。
  • ザンビアで結核・エイズ対策の活動に12年携わっている女性の方から、日本の結核対策の援助は、少し時間はかかるが、ザンビアの国の政策に合わせて丁寧に行われている、日本はもっと自分達の援助のやり方に自信をもってよい、との話を聞いた。

 (委員)

  • 1997年から現在までのODA予算の減少率は38%と、公共事業関係費予算の減少率の倍で、予算項目中最大の削減である。長期的な国益を見据えて提言をしていても、ここまで量が減ってしまっては、質を向上させても限界がある。この傾向を反転させるきっかけとして、TICAD IVと北海道洞爺湖サミットが開催される来年は、いいタイミングと考える。
  • 財政状況が厳しい中、NGOへの予算もそれほど拡充できないと思われる。NGOの非政府たる部分を大事にしてほしい。しかし、欧米に比べてNGO向けの予算が日本はあまりに小さいというご意見はあろう。
  • ODA予算をどうするかは高度に政治的な決定であり、海外経済協力会議で決定してもらう必要がある。中間報告のメッセージも主として同会議に向けるつもりである。

 (委員)

  • ODA予算全体が減る中で、NGO向けのODA予算の減り方は小さいと思う。海外経済協力会議では、ここまでODAが削減されたら、日本が国際社会で生き残る上でどのような問題があるかが議論されていない。無駄遣いは改める必要があるが、予算増の必要性を政治家に理解してもらうために、皆さんも意見を言ってほしい。

 (委員)

  • NGOの活動で、効果が大きい、モデル的なものだと判断される場合、これをODAで面的に拡大していくことが考えられる。そのような制度を設計し、実績を積み上げることにより、ODAの中におけるNGO関連予算を増やしていくべきという声も出てこよう。

 (f)ガバナンス

 (市民)

  • グッド・ガバナンス(良い統治)は参加型の意思決定プロセスであるが、ここでは効率性が強調されており、透明性や結果の公平性の検討の必要性が強調されていないとの印象を受けた。

 (委員)

  • 日本は民主主義国で、広範な大衆の政治参加のもとに政治体制が作られている。それに加え、本有識者会議のように各界の人々が国民各層の声を届けるというメカニズムもあり、本日の意見交換もそのような場。参加を軽視しているつもりはない。しかし、参加をもっと高めていくべきという主張はあり得よう。

 (g)ODA増額の必要性の説明

 (市民)

  • 単にODAの総額が減ったから増やせという議論は説得力がない。この部分を削り、一方でこの優先順位で積み上げていった結果、増やすことが必要、といった説明が必要。

 (委員)

  • 国際秩序形成のために軍事力を使用するには厳しい制限がある日本にとって、ODAは外交力の源泉。ODAの量は、外交的努力を示す象徴的なものだと思う。外交力から見て、ODA実績が世界で5位や6位になってしまっていいのかと考えると、自分(委員)は量の反転・拡大を主張したい。

 (h)「戦略」の意味

 (市民)

  • 誰のために何をすることが「戦略」か。

 (委員)

  • 安全保障や貿易・投資体制についての外交的な国家戦略があり、その中でODAを位置づけるべき。海外経済協力会議がもっと本質的な議論を、情報を開示しながら行うことが重要と考えており、現状には不満がある。

 (i)官民連携、開発の目的としての経済成長

 (市民)

  • 中間報告骨子案の「1.戦略性」の「国民益と国際益のバランス」に違和感を覚えた。ODAは、一義的には両国、なかんずく相手国の国益のために行うもの。開発援助である以上、開発の目的は経済成長であるということを明確に確認することが、戦略性・メッセージ性の向上につながる。
  • また、アジアで日本の援助が経済成長に貢献したという「日本モデル」について、実証研究を行うべき。それがあって初めて、他地域への適用を議論できる。
  • 官民連携については、これまでの官の予算をもとに民間が参画する連携に加え、民間の資金を活用して援助プロジェクトを実施できるような制度を作っていくべきことを強調してほしい。
  • 円借款の制度の改善よりも、円借款の多様化を考える必要がある。

 (委員)

  • 貧困削減という一つの目標に向かって、NGO・企業・政府が「同盟」を結ぶ思想が必要。一社支援についても、きちんとルールを作って、周辺住民の福利を向上させる効果があれば支援を可能にすべきとの提言をまとめつつある。米国でもInstitute for OneWorld Health のように、医学界、財団、米国際開発庁(USAID)と企業が集まって一つの組織を作り、薬品開発の実証試験のコストを下げ、途上国に安い医薬品を提供しようとしている。このような例にヒントを得ながら、官と民がもっと平等な形で問題解決に当たってはどうか。
  • 途上国の輸出産品の開発等への投融資事業の制度も、閣議決定で廃止が決定されているが、再検討が必要ではないか。

 (委員)

  • 議論を分かりやすく単純化されているのだろうが、違和感を持ってお聞きした。ケニアのソンドゥ・ミリウで、コンサルタントの方がマラリア手当を貯金して現地の小学校に小さな図書館を開設した等、コミュニティー開発に取り組んでいる例がある。このようなことを考えないと、日本の国際協力は前に進まない。

 (市民)

  • NGOの活動の重要性とは、また別の話。開発援助の目的は一義的には経済成長であり、戦略性・メッセージ性を高めるためにはそのことを明確にする必要があろう。

 (j)より大胆なビジョン・具体策の必要性

 (市民)

  • お手元に提言書を配布した(資料2)。
  • ODAが貧困削減にどう効果を持つようになるのか、どう変わってどう魅力的になるのかが見えることが大切。中間報告の骨子案には、大胆なビジョンと大胆な具体策、独創性が欠けている。貧困削減がODAの目的であることを明確にすべき。また、人権の問題への日本のスタンスと援助がどういう関係を持つか、経済事由で不利益を被った人々が異議申し立てを申告できるような仕組みを作るリーダーシップをどう果たしていくか等、大胆な提案が必要。

 (委員)

  • 日本という民主主義国家の中で、国論から遠い議論をしても実現できない。国民が、国内に多くの貧しい人がいるのに、どうして他国の貧しい人々を助けるのか、と考えている。これをふまえ、あえて、自分(委員)としても、ODAは日本の外交力の源泉という意味で国民益であるが、ODAを外交力に転じるためには開発途上国の人道的問題や地球規模の諸課題に関して国際益を追求しなくてはならない、国際益の中に国民益を埋め込み、国民益の中に国際益を埋め込んで初めてODAが持続可能になる、と書いている。

 (市民)

  • 国民の中に様々な考え方があり、バランスを取る必要があるのが現実。ODAの理念を明確化し、いくつかの柱のバランスの比率を数字で示す議論をする必要があるのではないか。

 (委員)

  • 比率を数字で示すことは難しいが、国に対する支援のあり方を決定するメカニズムを作るということを打ち出そうとしている。
  • 自分(委員)としては、経済成長を通じた貧困削減の重要性を打ち出したい。アフリカに支援を増額できるのであれば、追加的支援を成長の明るい兆しのある国に絞り、包括的な成長支援パッケージを供与することが、アフリカからも期待されていると思う。

 (市民)

  • バランスを考えるときは、ODA以外の公的資金等を含む国際協力全体の中でODAを位置づけることが必要。

 (k)これらの議論を受けた委員の発言

 (委員)

  • 日本の国際協力・援助の目的は、貧困削減やミレニアム開発目標の達成を中心にしていくべきと考える。狭い意味での国益や、外交の道具、資源獲得のための国際協力という発想では、却って日本とその国際協力の地位を低めることになろう。これらの目的は、他の手段や予算でも果たし得るのではないか。日本の外交力の源泉としては、ODAの金額だけではなく、例えば紛争の良き仲介者・調停者となることもあり得る。
  • 自分(委員)の過去の活動では、経済が数字上成長しても独裁的な政権の下では、却って貧富の差が拡大し、底辺の人々が体を売るしかないほどに貧困が悪化した国も見てきた。良い統治(グッド・ガバナンス)、民主的統治がない国にいくら無償・有償資金協力を投入しても、却って腐敗の増大、権力の集中などの悪影響を与えることもあるのではないか。政府、専門家による検証が必要。
  • 昨年、麻生外相(当時)が民主主義や自由を重視する「価値の外交」を提唱し、良い統治を側面支援する国際協力を進めるべきとしており、それを一つの重点として打ち出す議論が必要。
  • 一般市民のアンケートを見ても、良い印象を与えているのは青年海外協力隊、NGOを通じた援助、水・保健に関わる技術協力等である。良い事例が多く出れば、一般市民・納税者の支持も得られて増額につながるのではないか。

 (委員)

  • 現在、多くの国民が内向きになっている。国会議員の方々と話をすると、選挙で国際協力の話をすると地元の方々から、そのような資金があるなら自分達に出してほしいと言われてしまうと言う。理想とのバランスをとっていかなければならない。
  • 貧しい世界の人々の空腹をどうして満たすかという、人間の生存に関わる援助が重要。経済成長は、そのための一つの手段として優先度が高いと考える。欧米はガバナンスを協調しているが、日本は過去のアジアの経験で成長に実績を残した。

 (委員)

  • 国際協力に携わる人は、人間として生を受けた以上、貧しい人々を助けるのは当たり前だと考えがちだが、そう思わない人を説得する論理がまだ十分でない。
  • 新JICAは有償資金協力、無償資金協力、技術協力の3つのスキームを単に並列する組織であってはならない。地域部を中心とする新組織が本当に実現されるか、懸念している。新JICAの発足の意義がどこにあるか、外部の人間が声を大にして言っていかねばならない。

(3)閉会

 渡辺議長より、最後に以下のとおり述べた。

  • 日本のODAは、賠償から始まり、その後の国内外の要請に応じて、全体の整合性を考えることなく拡大してきた。今日、それが限界に来ており、立て直す機運が高まっており、ODAを改革するまたとない好機である。
  • 時間がなくてご発言できなかった方は、外務省のホームページに積極的に意見を寄せて頂きたい。

(これに対し、市民より、「日本は関東大震災の際に未曾有の被害を受けたが、当時57か国あった独立国のうち、貧しい国々を含む50か国から援助を受けた。現在の価値で1,400億円にも上る、それまでの最大級の救援金を受け取ったと聞いている。そのような善意があって今日の日本があるということ、84年前を忘れないということを一言、報告書に入れて頂ければ、国民にもODA拡大の必要性が伝わるのではないか」との発言があったのを受け、)

  • ご指摘のような要素を論理的に示して、国民の胸に響くメッセージ性を出す努力が必要だと考える。
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