ODAとは? ODA改革

「国際協力に関する有識者会議」第6回会合・議事要旨

1.日時

 12月21日(金曜日)9時30分-12時00分

2.場所

 外務省・共用国際会議室(南庁舎272)

3.議題

 中間報告案について

4.議事次第

(1)開会
(2)小野寺副大臣の挨拶
(3)中間報告案について
(4)その他
(5)閉会

5.議事概要

(1)開会

 冒頭、渡辺議長より、以下のとおり述べた。

  • 本日は、1月に外相に提出する中間報告案についてご議論頂きたい。このドラフトは委員が執筆するとの方針で進めてきており、各委員のご尽力で質の高いものができていると思う。さらにより良いものにするために、ご意見を頂きたい。

(2)小野寺副大臣の挨拶

 次に、小野寺副大臣より、以下のとおり挨拶した。

  • 毎回、熱心にご討議頂き、感謝申し上げたい。いよいよ中間報告案の議論ということで、大変重要な会議になる。
  • 昨日、平成20年度予算の財務省原案が出された。ODA予算は依然厳しい状況にあるが、全体の減少率に比べて下げ幅は留まっていると考える。来年は「元気なアフリカ」をスローガンとしたTICAD IVやG8サミットがあり、また、ODAに関する日本の国際公約もある。これからもODAをしっかりとやっていきたいので、熱心なご討議・ご提言を頂ければ有難い。

(3)中間報告案について

(イ)議長からの説明

 議長より中間報告案の概要や市民社会から出された意見等について以下のとおり、説明があった。

(a)今後の進め方

  • 本日、中間報告案(資料1)をご議論頂き、その議論を踏まえて最終稿を編集する。最終稿は委員の皆様に送付するが、可能であれば議長と事務局にご一任頂きたい。
  • 最終稿確定後、1月の早い段階で外相に提出したい。

(b)中間報告案の概要

  • 第1章「戦略性:選択と集中」は、自分(渡辺議長)が担当し、次のような点を主張した。
    • ODAは日本の外交力の重要な源泉であり、これを持続可能なものとするために「国民益」と「国際益」を相互に埋め込んでいく必要があること
    • 日本のODAの比較優位として東アジアの自助努力支援、インフラ整備支援を通じて民間企業の活力を引き出したこと
    • 制度構築支援のための知的支援の重要性、気候変動問題への対処の必要性
    • ODAの量の問題
  • 第2章「アフリカ支援」は、大野委員にご執筆頂いた。アフリカ支援に関わる多くの日本の方々の議論を集約し、中身の濃いものとなっている。次のような提言がなされている。
    • アフリカ支援戦略を協議・実施するためのマルチ・ステークホルダーのフォーラムの設置
    • 2008年以降の対アフリカODAの事業量拡充
    • 少数国の成長支援に重点を置き、現地体制を強化すること
    • アフリカでの事業実施のリスクを緩和するための特別な制度設計
  • 第3章「官民連携」は、経済界のご意見も聴取して頂きながら、荒木委員にご執筆頂いた。官民連携の具体化、さらには官民の「同盟」を進めるために、次のような具体的な提言がなされている。
    • 民間投資の周辺インフラ整備
    • PPPによる具体的案件の実施
    • 民間提案型案件の実施
    • 企業のCSR活動との協業
    • 現地ODAタスクフォースへの民間企業の参画
    • NGOのプログラム、プロジェクトの拡大の支援
  • 第4章「ODA案件の形成と実施上の課題」は、草野委員にご執筆頂いた。ODAの体制を4層に整理し、それぞれの課題を検討している。具体的には、次のような点が主張されている。
    • 戦略のレベルでは、海外経済協力会議がより大きな議題を開かれた形で議論すべき
    • 企画・立案のレベルでは、現地ODAタスクフォースの強化、他ドナーとの連携、他省庁を含めたオールジャパンとしての協力が必要
    • 実施のレベルでは、新JICAの下での援助スキームの連携、及びスキームの簡素化・要望調査の通年化等の制度改善がなされなければならない
    • 民間のレベルでは、NGOや民間企業との連携強化、ODAとその他の資金の連携が必要
  • 第5章「人材育成」は、事務局に一案を作成してもらった上で、自分(渡辺議長)が編集した。次のような指摘がなされている。
    • 広い人事交流や民間の人材の有効活用を可能にする体制の整備が必要
    • 開発教育を積極的に推進すべき
  • それぞれの執筆者から頂いた原稿を、自分(渡辺議長)の方で編集した。

(c)市民社会から出された意見

  • 中間報告の骨子案をもとに、12月7日(金)に外務省で、市民社会との意見交換会を行った。有識者会議の側からは、自分(渡辺議長)と報告書を執筆した荒木、草野、大野各委員、及び熊岡委員が出席した。一般の方々からは、19名のご出席があった。 参加者数は多くなかったが、密度の濃い議論がなされた。
  • また、12月12日(水曜日)までの約3週間、中間報告の骨子案を外務省ホームページに掲載し、一般からの意見を募集した。13名の方々からご意見を頂いた。コメントを資料3としてお手元に配布している。いずれも真摯なご意見だった。
  • 頂いた意見をあえてまとめると、第1章「戦略性:選択と集中」については、
    • 「国民益」、「国際益」、両者のバランスの意味が不明確ではないかとのご意見
    • 貧困削減や「地球益」を重視すべきというご意見がある一方で、開発援助の主目的は経済発展だとのご意見
    等が出された。
  • 第2章「アフリカ支援」については、
    • 貧困削減を目的とするということをもっと特筆すべき
    • 債務問題や構造調整についてきちんと評価すべき
    • 先行発展する国が「成長の極」となるメカニズムで生じる問題への配慮が必要
    等のご意見があった。
  • 第3章「官民連携」については、
    • 官僚と私企業の癒着を懸念しており、ODAの透明性、公開性を確保すべき
      とのご意見が出された一方で、
    • ODAと民間活力を結合し援助効果をより向上させるべき
    • 民間の資金を主体とした事業を官が支援する新たな仕組みを作るべき
    とのご意見も聞かれた。
  • 第4章「ODA案件の形成と実施上の課題」については、
    • 案件形成や国別援助計画策定に地域住民の参加を求める声
    • 円借款の多様化や単年度予算の改正を求める声
      があった。また、
    • NGOの活動に資する予算や制度の拡充
      を求めるご意見がある一方で、
    • NPOの能力が十分でなく、ODAの水準が低下しないか懸念する
    とのご意見もあった。
  • 第5章「人材育成」については、
    • 貧困、環境等、地球規模の課題の理解と解決のための開発教育を行うべき
    とのご意見があった。
  • これらの様々なご意見は、これまでのこの有識者会議での議論と重なるものも多いが、さらに検討し、合理的なものは中間報告に組み入れていきたい。

(ロ)意見交換

 続いて行われた意見交換の概要は、以下のとおり。 

(a)戦略性:選択と集中

(i) ODAの目的、国民益と国際益

  • 「国民益」を英訳すると"national interest" ということになろうが、「国際益」はどう訳すのか。
  • 中間報告案の最初の段落に、国際秩序の形成への日本の軍事的貢献には制約があるので日本の最も重要な外交手段はODAでなければならない、という趣旨の記述があるが、不要ではないか。言い訳か他国批判に聞こえるし、軍事的貢献ができればODAは供与しなくてよいことになってしまう。また、軍事力を背景にできないという点では、最も重要な外交手段は日米同盟を背景とした外交になろう。

 (これに対し、

  • 国際貢献の手段として軍事力行使をとれば、国民の負担はもっと大きなものになる。日本は軍事力行使ではなくODAを使うことを選択する、その方が経済合理性があるという議論を提示するためにも、軍事力行使に関する記述はあった方がよい。
  • 日本は現在、中国や韓国に比べてもPKOへの参加は限定的である一方で、ODA等の国際協力は50年以上にわたる蓄積がある。その経済協力を減らしているのは、国際社会に誤ったメッセージを発信している。この点を中間報告の最初の部分で述べた方がよい。

  との意見も出された。)

  • また、「国際社会の日本に対する信頼と尊敬があって初めて日本の安全と繁栄が確保される」とあるが、信頼と尊敬を得られなくともODAは必要。ODAは、日本にとって望ましい世界を作るのが目的だと考える。すなわち、まず人間の安全保障を確保し、その上で経済発展を達成し、さらにその上で自由・民主主義・法の支配等の価値観を共有できる社会を作るという三層の構造で望ましい世界を作ることである。「開発途上国の人道的ならびに地球的規模の諸問題への効率的対応」自体が、既に国民益であり、国際益である。
  • 国際的な信用を確保するためには、グローバルなアジェンダから逸脱できない。これに積極的に参加する方法の一つが、二国間・多国間の支援であるということを、冒頭に説明する必要がある。
  • 米国では、国際協力は安全保障の中に位置づけられており、国益重視が主流。英国では、貧困削減という国際益を重視している。コンサンセスがない点は、日本は特殊。論点を打ち出し、今後幅広く議論していくことも、中間報告だからこそできることではないか。

(ii)良い統治、民主化、人権等

  • 市民社会との意見交換会でも出されたように、経済成長と良い統治(グッド・ガバナンス)の両方をきちんと見ていくことを強調してほしい。国々は、1)健全な経済成長を遂げ、ガバナンスも健全な国、2)成長を遂げているが、ガバナンスは悪く、権威主義的な体制の下、貧富の差が拡大している国、3)成長がなく、ガバナンスも悪い国、4)紛争に直面している国、に分けられる。市民には、悪い体制の国にもODAをつぎ込んでいるという印象があるので、それぞれへの関わり方を分けて説明する必要があると考える。
  • また、2006年に麻生外相(当時)が民主主義や自由、人権等の「価値の外交」の重視を打ち出し、本年2月に外務省がシンポジウムを開催しているが、このような論点をもっと反映させる必要がある。
  • 人権や民主化も包含した「人間の安全保障」という文言が入っていないが、第1章で述べる必要がある。
  • 人間の安全保障や人間開発を重視するとの言及があるとよい。また、平和構築もこれまで日本が強調してきており実績もあるので、中間報告でも強調してほしい。
  • 市民との意見交換会でも、関東大震災のときに貧しい国を含めて50カ国以上から日本は支援を受けたとの指摘もあったが、地球規模での相互扶助という概念も入れるとよい。

 (これに対し、

  • ODAの基本的な理念は、ODA大綱や中期政策に謳われている。今回の中間報告は大綱や中期政策ではなく、2008年というタイミングで何に絞って訴えていくかという観点からまとめるべき。

  との意見が出されたが、さらに、、

  • 前提となる理念についても冒頭か前文で書いた方が、一般の人が読む上ではよい。

  との意見も出された。)

(iii)ODAの量

  • 「ODA予算の多少の減少は致し方ない」との文言は削除してほしい。むしろ増やすべきと考えるが、財政状況が厳しいのは事実。しかし、減少が致し方ないと述べる必要はない。
  • 国際機関への分担金・拠出金について、どの組織も一律に扱うのではなく、メリハリを付けて選択と集中を行ってほしい。

(iv)成長とインフラ、日本モデル

  • 成長とインフラ支援の日本モデルを実証的に説明することが必要。
  • 成長がもたらす問題点や、成長が必ずしも最貧層に裨益していないという示唆を入れ、成長を促すだけでは担保できない部分にODAが必要だということを示す必要がある。
  • 「日本型ODA」というとき、緊急支援や平和構築関連の支援があまり説明されておらず、何を指すのか分かりづらい。

(v)営利性と公共性

  • 市場に委ねた方がよい営利性をもつ活動と、市場に委ねると問題が生ずる公共性を持つ活動とを仕分けすることが重要。後者にODAを集中することも考えるべきではないか。中間報告案には、上下水サービスにPPPを導入するとの記述があるが、水供給・衛生は営利性になじまないとの国際的な議論を踏まえて検討する必要がある。
  • 日本は上下水道の整備は自治体が行っているため、企業にノウハウがなく、海外でのプロジェクトに遅れをとっている。フランスでは既に民間が整備を行っており、そのノウハウを活用し、たとえば中国における水関係のプロジェクトは殆どフランス企業が行っているのが現状。水問題に日本が貢献して行くには、まだ課題が多い。

 (これに対しては、

  • 途上国の水の管理を通じて日本企業が経験を積み、力を付けていくことも重要ではないか。日本国内では全体計画の立案に携わっていない日本のコンサルタントが途上国の経済計画を立案する場合と同様である。

  との指摘もなされた。)

(vi)気候変動

  • 気候変動に関する2013年以降の枠組みについて、今年5月に安倍総理(当時)が出した3原則は、国際的に評判がよくない。もっと踏み込んで、日本のようにC02の排出量が多い国は責務を負うべきだという声を考えると、3原則に言及するのが妥当か、疑問がある。
  • 北海道洞爺湖サミットに向けて、日本も気候変動の問題にもっと明確なポジションを出した方がよい。現在、国別の仕組みとしてクリーン開発メカニズム(CDM)があるが、日本国内には鉄鋼業界等にキャップ・アンド・トレードの導入に強い反対論があり、業種別の国際協力を行うセクター別アプローチが提唱されている。このアプローチをキャップ・アンド・トレードに代替するものとして行ってよいのか等について、もう少し踏み込んだ提案があってもよいのではないか。
  • CDMの促進のため日本が積極的な行動を取るべきとの記述を入れるのには、強く反対。CDMは、排出権の販売がなければ経済的に成り立たない、効率性のないプロジェクトに資金を誘導することになる。また、実体的にCO2が減るわけではなく、バーチャルな削減でしかない。
     京都議定書の問題点は、国内的なコンセンサスを得ずに対外的なコミットがなされたことである。1990年を基準年としているが、日本の産業界は、既にそれまでにエネルギー効率を大きく改善していた。例えば国際エネルギー機関(IEA)によると、一定のGNPを産出するために必要なエネルギー量は日本を1とした場合、EUが1.8、米国が3、中国が9、ロシアが18となっている。各国にもっと省エネに努力してもらうことが必要。
     キャップ・アンド・トレード自体には温室効果ガスの削減効果はない。各企業・セクターが省エネ・削減努力をしなくてはいけない。そのために、ハイリゲンダム・サミットの合意に基づいて、IEA等がセクター別アプローチに取り組んでいるところ。
  • 京都議定書には問題があるが、既に日本は1990年比で6%削減の義務を負っている。それを達成するために、国内の削減で足りない部分についてCDMや共同実施(JI)を活用するということであろう。排出権取引の市場を作ることには、自分も反対。京都議定書の過ちを繰り返さないようにしつつ、国際社会の中で役割を果たしていくためには、安倍総理の3原則はよくまとまったメッセージではないか。

(vii)文化

  • 文化的背景がほとんど扱われていないのは、残念。北欧のように、ODAで地域専門家を育成し、きめ細かな現地の状況を把握することが必要。青年海外協力隊の経験者のノウハウを活用すべき。例えば、貧困の概念についても種族によって考え方が異なり、地域・時代の特殊性があって一律には考えられない。現地の固有の社会構造を出来るだけ吸収し、異なる文化の接合性を見出すことによって、効率を上げることができる。このような視点を入れてほしい。
  • 文化戦略という項目を加えて頂けると分かりやすくなると考える。貧困削減・生活向上や教育、広報の問題を文化概念で統括することも可能。

(b)アフリカ

 アフリカについて、委員から以下の説明があった。

  • なぜアフリカを支援するか、どのようにアフリカを支援するのか、どのようにマルチ・ステークホルダーで連携していくのかを議論する場を作りたいと考え、中間報告案に書かせて頂いた。アフリカは、特に国民益、国際益を重ねて取り組まなければいけない地域だが、支援の目的や国民益・国際益の割合等について、開かれた場で議論していくことが必要。TICADの支援策も、政府・実施機関だけでなく、市民社会やアフリカ外交団等も含めてフォローアップする場を作ることが必要。広報もここに含めていきたい。
  • アフリカの国々では、日本がアジアで行ったように、持続的な成長を通じて貧困を削減する取り組みを拡充してほしいという強い希望がある。対象国を絞って、政策から実施に至るまで包括的に関わる、新しい成長支援を行うべきであること、現地のNGOや研究者等との関係ももちながら、現地の体制を強化し、追加のODAをこの支援に向けていくべきであることを訴えている。
  • 日本のアジアでの開発経験は、自助努力を助け、援助からの卒業のプロセスを助けていったことであろう。その際、実体経済との関わり、産業面の関心は重要であった。また、地域をよく知り、現場主義で寄り添う支援を行った。そのような開発経験をアフリカに活かしていくということであろう。

(c)官民連携

 官民連携について、委員から以下の説明があった。

  • 官民連携について、具体的な提案を示すことで議論を深めたいと考えた。また、アフリカを意識して書いている。米国は2001年から民間との連携を行っており、現在までに約500のプロジェクトを実施している。地域別では殆どがアフリカと中南米、分野別では、経済成長と貿易関連、農業、保健・衛生の順となっている。日本のアジアに対する経済協力は、実体経済に沿って相手国の産業・経済全体を底上げするために人づくりを行ってきた。アフリカでも、実体経済を考えなければミレニアム開発目標は実現できないという前提に立って、民間の力を借りていかなければならないことを論点とした。
  • NGOとの連携については、ご意見があったら加えていきたい。

 (これに対し、

  • NGOは独立性を保つのが基本。その理由は、一つは国益等を超えて国籍性が薄いからこそ、相手の地域や人々に受けいれられるため。もう一つは、紛争国等、国籍性を強く出すことによって活動しにくくなる国・地域が現実としてあるため。連携はケース・バイ・ケースとする方が、NGOにとっては受け入れやすい。
  • 民間企業にとっても独立性が重要なのは同様。

  との意見が出された。)

(d)4層構造

  • ピラミッド型に第1層から第4層というと、上下関係を想定しがちであるので、円上に4つの極があるといった表現にした方がよいのではないか。

 (これに対し、

  • 市民社会との意見交換会でも、国民や納税者が明記されていないという指摘があった。当然、実質的な主役であり、その点を考慮していないわけではない。
  • 「ODA供与体系の形成」の最後のパラグラフで、階層秩序を想定しているのではないという点を明記した。4層構造は、外務省が実施体制を3層構造として説明しているのを使わせてもらっており、また、外務省と実施機関や他省庁との関係を説明するには適している。しかし、上下関係を考えているわけではない。
  • 日本の国際協力をよりよくするためには、各機関の役割分担を明確にすることが必要。現行の国別援助計画は実施レベルに近いことまで書き込んでいるので、中間報告案では国別援助計画の事務局をJICAに移すべきと書こうと当初考えた。しかし、本来の国別援助計画は、当該国に対する企画・立案、政策を示すものであるので、それを外務省が策定すべき、他方、個別の案件に関する部分はJICAが作るものとすべき、とした。
  • 新JICAでは地域部が強化されるべき。これが本当に実現されるか、懸念がある。日本の国内の事情を優先させてはいけない。この有識者会議で、来年10月の新JICA発足までに改革の状況について再度説明を受け、また、新JICA発足後もフォローアップを行っていくという提案を中間報告に入れたい。

  との説明があった。)

  • 「オールジャパン」が強調されているが、現地のNGOや現地企業との連携を考えないと、効果的な活動はできない。現地NGO・企業との連携に言及があってもよいのではないか。
  • オールジャパンで連携すべきというのは、まさに海外経済協力会議を作った際の問題意識。二国間のODA、多国間のODA、その他の政府資金、民間の資金をどう連携し、シナジーをもって海外経済協力を行っていくかということだった。その企画・立案・調整を行うのは外務省しかない、というのがそのときのコンセンサスだった。外務省がどのように他省庁・民間に働きかけて企画・立案・調整を行っていくのか、示していかなければならない。中間報告では、海外経済協力会議の意義を強調し、外務省が積極的な役割を果たすべきことを述べるとよいのではないか。

(e)広報、メディア、人材育成

  • メディアについてあまり言及されていないことに驚いた。ODAに関するシリーズ番組をNHK等で組んでもらうような努力をすべき。

 (これに対し、

  • メディアを使うという表現は避けるべき。メディアの第一の機能は政府批判である。ODAへの批判は誤っているものもあるが、日本のODAをよくした部分もある。

  との意見も出された。また、委員から、

  • 官民連携の部分でも、連携をメディアに押しつけるわけにはいかないので、具体的に中間報告案には書き込んでいない。

  との説明があった。)

  • 国際協力が国益に適うとのコンセンサスが国民レベルで成立しているとは言い難い、という記述が第5章「人材育成」にあるが、このようなコンセンサス作りはもっと短期的に解決すべき課題。第1章で現状の問題点と解決策を書くとよいのではないか。
  • ODAの基本的な考え方や、ODAがどのような貢献をしているかということを、具体例も含めて、国民に訴えていく必要がある。
  • 広報戦略はやはり必要。ここにこのような良い話がある、というサインをメディアに送り、国内で知らしめる努力はあってよい。
  • 本年の新しいODA白書では、個人に焦点を当てたエピソードを多く紹介している点がよい。
  • 攻めの広報を考えるべき。ODA白書を多くの人が読むわけではないので、このコンテンツを種々の媒体を使って広報していくことが必要。
  • 納税者やメディアの信頼を得るためにも、評価の充実・強化が重要だという言及を第1章に入れてほしい。
  • 地方で国際交流に取り組んでいる方々等とも議論をしていくことも、この有識者会議の活動の一つになり得るのではないか。地方にいる青年海外協力隊OBと、国際協力に関心をもっている若い政治家との交流もあると聞くので、そのようなマルチ・ステークホルダーの取り組みを進めていくのも一つの方法。
  • 有識者会議の委員が地方に行って、地方紙とタイアップした会議を開いて議論することも考えられてよい。
  • 先日、タンザニアの第2の都市ムワンザの図書館を訪れたが、チャイナ・トゥデー等の中国の英字雑誌がバックナンバーを含めて置かれていた。他方、ある国の日本大使館の日本の情報は古いものしかなく、外務省全体の広報戦略も考える必要がある。

(f)議長の総括

 これまでの議論を受けて、渡辺議長より、「本日出されたコメントをどう取り入れるかは、執筆者どうしで話し合いたい」とした上で、以下の三点を述べた。

  • 第一に、今回の報告書は、ODA大綱でも中期政策でもなく、来年のTICAD、北海道洞爺湖サミットで日本が何をメッセージとして発信できるかに焦点を当てている。そのため、議論の取捨選択をせざるを得ない点、ご理解頂きたい。
  • 第二に、環境・気候変動の問題は、外務大臣の諮問事項には明示的に含まれておらず、また、気候変動への適応に関する有識者会議の提言が出されている。今回の報告書からは環境への言及を削除することも考えられるが、ご意見を頂きたい。
  • 第三に、4層構造は見事な整理の仕方で、上下関係を示すものではない。問題は、この構造の中で誰が指示を出すのか、全体のメカニズムをどこから動かすのかである。そこをどう書くべきか、ご意見を頂きたい。

 第一の点に関して、以下の指摘がなされた。

  • 2008年の意義はTICADとサミットだけではなく、新JICAが発足することも重要。

 第二の点に関して、以下の意見が出された。

  • 環境への言及は落とすべきではない。気候変動に関する国際的枠組みに途上国も取り込んでいくべく、ODAの中で環境にどう取り組んでいくかをきちんと書くべき。
  • 将来の気候変動に関する枠組みへのスタンスや、CDMを進めるべきという姿勢について書くのは適切ではないが、気候変動対策を視野に入れてODAを実施するということはしっかりと書くべき。

 第三の点に関して、以下の意見が出された。

  • 国際協力の案件を企画・立案し、他省庁と連携して海外経済協力全体としてのシナジー効果を持たせるのは、必ずしも外務省に限らないものの、実際としては外務省が中心となろう。
  • 外務省が、国民の諸階層の意見・企画を集約する、日本の国際協力のエンジン役にあることは、報告書に書き込むべき。
  • 官民連携も、民間を含めた他の組織が外務省をどのような体制で補完すべきか、という発想で考えている。
  • 理想論としては、戦略の部分をマルチ・ステークホルダーが関わった形で議論して、海外経済協力会議に伝えていくプロセスがあるのが望ましい。今回、アフリカについて提案したマルチ・ステークホルダーのフォーラムは、必ずしも事務局は外務省の中に置かれなくてもよい。中立の立場のものが、外務省にも主体的に関わってもらいながら、様々な方と調整するということもあり得る。
  • マルチ・ステークホルダーの恒常的な組織を作ることは、アフリカ以外に関しても必要ということになる。そのそれぞれが多様な組織の中に散らばっているのでは姿が見えにくく、今後どう整理するかを検討する、という一文を報告書に入れると良いかもしれない。
  • 悩ましい論点である。実現可能性のない理想論や曖昧な書きぶりでは不適切。一方で、外務省が海外経済協力会議を仕切るべき、という書きぶりも、マルチ・ステークホルダーの関与を求める議論とぶつかり、難しい。
  • 戦略の議論は、広く意見を聞くのになじまない部分もある。また、外務省が全体を仕切るべき話ではない。全体の仕組みを作るというより、例えばアフリカの問題について事務局を作り、そこで海外経済協力会議にもっていける議論を作るという視点で考えるとよいのではないか。各省庁がばらばらにやることにならないよう、制度化することが重要。
  • 司令塔が何でもやるのは、無理な話。大きな政治的な感覚で日本の国益論を論じ、それを受けて外務省が調整し、方針を決定する、そして、その方針を実施機関に落とすという流れではないか。

 最後に、渡辺議長より、以下の通り述べた。

  • これまでの日本の援助は、時々の要請に応じて全体の整合性を顧みることなく量的に拡大してきた。4層構造の提案は、これを目に見えるシステムとして表している点が大きな貢献。
  • 本日の会合でご発言できなかったご意見がある場合には、1-2日のうちに、事務局にご提出頂きたい。
  • 本日の意見を集約し、最終稿を確定した後、1月の早い段階で外務大臣に報告書を提出したい。どのような形で提出するかは、ご一任頂きたい。

(4)その他

 別所国際協力局長より、本日(21日)閣議報告されたODA白書2007年版について、以下のとおり説明があった。

  • 「日本の国際協力」との副題をつけ、個人のエピソードなどを入れて、読みやすくした。長さも2割ほど削減した。
  • 白書をどれだけの方が読むのかというご指摘も頂いたが、外務省ウェブサイトにも掲載されるので、そちらへのアクセスに期待している。

(5)今後の予定

 中間報告については、本日の議論をふまえて、最終稿を確定し、1月の早い段階で外務大臣に提出する。
 中間報告提出後の次回会合の日時、議題については、事務局を通じ調整する。

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