ODAとは? ODA改革

「国際協力に関する有識者会議」第5回会合・議事要旨

1.日時

 平成19年11月13日(火曜日)9時30分―12時15分

2.場所

 外務省 南国際中会議室(南庁舎666)

3.出席者

 「国際協力に関する有識者会議」委員
 外務省より、宇野大臣政務官、別所国際協力局長他が出席。
 佐渡島国際協力機構(JICA)総務部長
 岡村国際協力銀行(JBIC)開発業務部長
 関係府省庁がオブザーバーとして参加。

4.議題

 (1)新JICA発足に向けた準備状況についての報告
 (2)中間報告の骨子案について

5.議事次第

  • 開会
  • 宇野大臣政務官の挨拶
  • 新JICA発足に向けた準備状況についての報告
    (JICA、JBICによるプレゼンテーション)
  • 中間報告の骨子案について
  • 意見交換
  • 次回会合の日程
  • 閉会

6.議事概要

(1) 開会

 冒頭、渡辺議長より、以下の通り述べた。

  • 本日は、まず、国際協力機構(JICA)と国際協力銀行(JBIC)から来年10月に迫った新JICA発足に向けた準備状況についての報告、次に、取りまとめ段階に入った中間報告の骨子案についてご議論頂きたい。
  • 本日は宇野大臣政務官にご出席頂いているので、初めにご挨拶を頂きたい。

(2) 宇野大臣政務官の挨拶

  • 新JICAの発足により、技術協力・有償・無償の3つの援助手法を一元的に実施する世界最大級の援助機関が誕生することになる。日本外交の重要な手段であるODAを効果的に実施していくために、是非、これら3つの援助手法の特性を十分に活かしつつ、3手法間の有機的な連携を可能にする組織となって頂きたい。
  • 中間報告についても、大切な時期を迎えている。これまでの議論で様々な有益なご意見を頂いており、今日の会合でさらに議論を深められ、日本の国際協力をより効果的なものとするためのご提言をまとめて頂きたい。

(3) 新JICA発足に向けた準備状況についての報告(JICA、JBICによるプレゼンテーション)

(イ)資料1「新JICA発足に向けた準備状況についての報告」に基づき、岡村JBIC開発業務部長から以下の説明があった。

(a)改正JICA法と新JICAの業務

  • 新JICAは、JBICの円借款業務、及び外務省の無償資金協力の実施業務の一部を承継し、技術協力を合わせて担当する。
  • 有償資金協力業務とその他の業務の勘定を区分する。(世界銀行が国際復興開発銀行(IBRD)と国際開発協会(IDA)の2つの勘定をもっているのと同様。)
  • 改正JICA法上、新たに加わる業務は、有償資金協力(第13条第1項第2号)、無償資金協力(同項第3号)、調査・研究(同項第8号)及び受託業務(同条第3項)。
  • 新JICAの制度設計にあたっては、総合的な援助機関に相応しい新たな体制と組織文化の創造を掲げている。具体的には、
    • 「海外経済協力会議」の下、政府が策定した戦略・政策に則って、わが国の政府開発援助を一元的に実施。
    • 3つの援助手法(技協・有償・無償)の特性を十分に活かしつつ、それらを有機的に組み合わせて実施するための新たな組織・業務の流れを構築。
    • 地域を中心とした体制の確立を進め、各国・地域毎に3つの援助手法を跨ぎ、援助の全体像を管理。
    • 総合的な援助機関に相応しい国際社会に対する知見の発信力を強化。
    • 援助手法をまたいで知見を有する人材を育成する人事・採用・研修制度の確立:自分(岡村部長)が思い描いている新JICAの人材とは、(i) 相手国政府、相手国国民、(ii)ドナー・コミュニティや他のステークホルダー、(iii)日本国内の関係機関、の3つのフロントで関係構築・折衝がしっかりと行える人間である。
    • 国際機関、NGO、民間企業、大学、地方公共団体等との包括的な協力の実現。
  • 統合のポイント
    • 業務面の一体化:政府が策定した戦略・政策に則り、地域担当部が司令塔となって、援助を機動的かつ迅速に実施。
    • 組織面の一体化:地域を中心とした体制を確立し、各国・地域ごとに3つの援助スキームを跨ぎ、援助の全体像を管理。
    • 人事制度の一体化:新JICAとしての新たな人事制度を構築、組織の一体感を醸成する適材適所の人事配置。
    • 現場主義:3つの援助スキームを現地で実施することにより、現場主義を引き続き推進 。
    • 統合による効率化:人員配置の効率化と国・地域を中心とした体制構築。
  • 新JICAの組織
    • 管理、企画部門(バックオフィス)は統合。
    • フロントオフィスは再編され、地域各部が中心となり、課題、資金協力支援部等が協働。
    • 研究所は統合され、今まで以上に重要な発信機能を担う。

(b)国際援助競争下での日本型援助推進

  • インフラ等の投資環境整備や組織・人材育成を通じて、民間投資や政府の機能強化、人的資源の充実を目指してきた結果、東アジアの奇跡に貢献してきた。
  • 従来の国際援助潮流の中でなされがちだったBHN(Basic Human Needs) vs インフラ支援、プロジェクト援助 vs 財政支援、グラント vs ローンといった二者択一の議論を超えた、様々なメニューを総合的に行う機関を目指す。
  • 将来像としては、人間の安全保障や経済成長を通じた貧困削減を重視し、技協・有償・無償の3スキームを一体的に組み合わせた援助手法主導(モダリティ・ドリブン)ではない開発成果重視の組織にして、援助効果の飛躍的向上を図りたい。国内外の開発パートナーシップ・国民参加を強化するとともに、新興援助国をリードしていく。

(c)組織統合の効果

  • 援助ツールの組み合わせにより、Speed up、Scale up、Spread outの相乗効果を目に見える形で実践していく。
  • 援助ツールの組み合わせによる支援例
    • 大規模支援災害の総合的な援助:これまでJICA、JBICは協調しつつも別々に動いていたが、統合により、発生直後の国際緊急援助隊の派遣や支援ニーズ調査から中・長期的な復旧・復興支援まで、一貫して行うことができる。
    • 政策・制度改革:個別案件だけでは解決できない問題(道路完成後の維持管理のための予算配分等)に、総合的に上流の改革に関わる形で取り組むことができる。
  • ODAの一体的運用事例
    • ベトナム:カイメップ・チーバイ国際港湾開発事業
       JICAのマスタープラン、開発調査を受けた連携DD(詳細設計)が実施され、JBICの円借款を供与。さらに円借款事業をモデルとしたキャパシティ・ディベロップメントで技術協力プロジェクトが続けて行われている。時間がかかりすぎた点は反省点であった。
    • フィリピン:ミンダナオ支援
       JICA、JBICの現地事務所が連携し合いながら種々の案件が形成された。
    • チュニジア:科学技術・高等教育分野の支援
       JICA、JBICがアイデア段階から日本の大学を巻き込み結実した案件。
  • 今後のニーズ
    • 気候変動への対応に、ビジネスモデルとしてどう取り組んでいくべきか、考えている。
    • 投資環境整備についても、経済界と協力し、今後の方向性、内容について確認し合いながら進めていきたい。

(ロ)続いて、佐渡島JICA総務部長から、次のように説明があった。

  • JICA・JBIC統合は、国際協力のパラダイム・シフトの単なる通過点。
    具体的な動きは既に始まっている。
  • 成長促進、ガバナンスの強化、環境保全といった大きな旗頭のもとに、目標を定め、そのために効果を上げるためにはどういう要素をどういう組み合わせで投入すべきか、現場及び東京で、ステークホルダーも一緒に議論している。平成20年度新規案件の要望調査対象142カ国のうち95カ国(約7割)において、技協・有償・無償を一体化した協力プログラムのローリング・プラン(事業展開計画)を作成。
  • JICA事務所設置56カ国において、JICA・JBIC共同で要請案件を検討している。共同検討国数は5カ国(平成18年)から大幅に増加。
  • 旗頭ごとに目標を立て、プログラムでまとまった見方をするようになった結果、要請件数は985件(平成17年度)から510件(平成19年度)に減少。
  • プログラム単位による要望調査へ徐々に移行していく。調査団派遣件数も、削減:在外強化及び業務効率化の観点から調査団派遣件数の削減に尽力。その結果、本邦からの調査団派遣件数は1,800件近く(平成14年度)から約100件減少(平成18年度)。
  • このように、日本の援助手法も、徐々に低コストで現場にインパクトがある形へ変化を始めている。

(4) 意見交換

(イ) 宇野大臣政務官より以下を発言した後、途中退出した。

  • 技術協力、有償、無償が有機的に統合して、しっかりとした新JICAができるよう期待したい。この後の中間報告の骨子案についても種々ご議論頂き、国際協力に関してお力を賜りたい。

(ロ)説明された方向性を支持する声が委員から複数出されたほか、以下のような質疑応答が行われた。

(a) 総論

  • JICAとJBICの文化は相当異なるが、新JICAに向けて、一体化にどのような努力をしているか。
  • 3つのスキームを有機的に組み合わせて実施する組織・業務の流れの構築、国・地域ごとにスキームをまたいで援助の全体像を管理することが確実に実施されることを期待しており、必ず実施すべく努力するとのお言葉を頂きたい。
  • 異なる組織が一つになるのは大変難しい。関係者の大変な努力が必要。3つのスキームが一体となって、地域単位で現地ODAタスクフォースを最大限活用することが実現されれば、すばらしい援助ができるのではないか。
    (これに対し、JBIC(岡村部長)より、「無償・有償・技協の3スキームが一体的に動くことが根幹。精一杯取り組んでいきたい」との応答があった。また、JICA(佐渡島部長)より、「現JICA側で電算機のシステムを整備し、来年4月を目標にバーチャルな組織を立ち上げる作業を行っている。業務フローについてもJBICと議論を始めている。また、マネジメントの統合が重要であるので、11月から緒方JICA理事長の下で、JBICも参加する定期的な会合を行っている。JBICと多くのレベルで今から議論を行っていきたい」と述べた。)

(b) 外務省と新JICAの役割分担

  • 無償資金協力の中でどの部分が新JICAに移管されるのか。
  • 外務省と新JICAの役割分担が明確にならなければならない。貧困削減支援無償といった財政支援的なものは、今後どのようになるのか。
    (これに対し、JICAより、「現時点ではまだ結論が出ていないが、外務省もなるべく合理的にして効率を上げるべく取り組んでいる」と応答した。)
  • 外務省が策定する国別援助計画と新JICAが策定する国別事業方針との棲み分けを真剣に検討していくべきである。
    (JBICより、「政府と綿密に協議し、外部の方々とも相談しながら、制度設計を行っていきたい」と応答した。また、外務省(別所国際協力局長)より、「国際協力の政策は国の重要な政策であり、何らかの形で国とのつながりが必要。日本が何を積極的に行っていくべきかという政治レベルの議論と、現場からの開発ニーズに基づく議論とを整合させ、日本として限られた資源をどう配分していくかの方針を作ることが政策の役割だと考えている。その点で外務省と新JICAの間で接点が必要である」と述べた。)

(c) カントー橋崩落事故と危機管理

  • ベトナムでのカントー橋崩落事故は、あまり大きく報じられていないが、大変な問題。仮にこのような事故が起きたときに、新JICAとしてどのように危機管理を行うか。納税者である国民に対してどう説明するかも重要であり、透明性の確保を心がけて頂きたい。
  • カントー橋崩落事故は大事故だが、日本政府はフォローアップを行っており、自分(委員)が先週ベトナムで国家主席、首相と会ったときも、日越の関係には何ら影響がないと言っていた。
    (これに対し、JBICより、「今回の事故の死亡者数は、これまでの円借款案件で最大となった。近年、契約手続きを国際基準に合わせる努力を行ってきている。また、基準に沿った契約でも今回のような事故が起こることをどう防ぐか、両面の側面から、対応を考えていきたい」と応答した。
     また、JICAより、「現在のJICAでは、総務部に事故等への対策を行うチームと国全体の情報を分析するチームがあり、24時間体制で日々情報の報告を行うこととなっており、少人数だが合理的なシステムが出来ている。カントー橋崩落事故の際も、直ちにJICAからも現場に人を送る態勢を整え、JBICと共に現場に入り、状況をフォローしている」と説明した。
     外務省より、「事故の原因究明は一義的にはベトナム政府が行うが、日本も専門家を派遣している。二度と起こってはならない事故であり、木村副大臣の下で有識者、国土交通省、JBIC、JICAにも入って頂き、再発防止検討会議を立ち上げた」と説明した。)

(d) 研究所のあり方等

  • 案件の形成、実施、評価を通じて入ってくる情報を取りまとめて、次のステップに役立てていくための知識の管理(ナレッジ・マネージメント)が重要になってくるが、研究所について何を考えているか。
  • 現地の体験をもつ人が組織のマネジメントに入ることが重要。研究所も実体験をもった人が研修を行うべき。オランダやスウェーデンに好例がある。
  • 研究所が統合されると、例えば、アフリカにおいて過去の円借款が引き起こしてきた累積債務と構造調整の関係について、どこまで踏み込んだ研究がなされるか。
  • 新規の国・地域、プロジェクトのための新しい研究調査だけではなくて、失敗例から学べるケースも多く、過去のケースの検証としての研究を行う考えがあるか。
    (これに対し、JBICより、「今後研究所の業務内容を検討する上で、本日頂いたご意見を参考にさせて頂きたい」と述べた。また、JICAより、「日本が行ってきたことを理論的に整理し、発信していくことができる機関としたい。その際、具体的にどういう柱を立てたらよいか、議論している。また、自分たちのリソースの中で研究に適した人材がどれだけいるのか、検討している」と述べた。)

(e)新興国のリード

  • 例えば中国との間で、「人権」というテーマにも踏み込んでリードしていくのか。JICA、JBICが環境社会配慮ガイドラインをNGOや市民社会と一緒に作ってきた経験を新興ドナーとの間で共有していけるのか。こうしたODA政策のアドボカシーという面で具体的な構想はお持ちか。
    (これに対し、JBICより、「環境社会配慮ガイドラインの策定プロセス・内容・適用について、韓国の韓国輸出入銀行・対外経済協力基金(EDCF)、タイの周辺諸国経済開発協力機構(NEDA)と協議を行っている。中国とは、近い将来、成果が出せるよう、努力しているところである」との説明があった。
     また、外務省より、「先週(11月5日)、局長級で第三国援助に関する日中対話を行い、中国側から援助に関し一緒に議論していくことについては前向きな反応があった。中国は対外援助で政治的条件を付けないことを売り物としているので、人権について扱うのは容易でないが、環境社会配慮については、これまでの日本の経験の紹介など議論をしていくことは考えられよう」と述べた。)

(f)民間企業、NGO、国際機関等との連携

  • 民間企業・NGOとの連携を積極的に進めて、ODAの効果を高めていくべき。
  • 国際機関との協力も強化していくことが必要。新JICAが無償、有償、技術協力とすべて自己完結してしまい、内向きの組織になるのではないか、懸念がある。
  • 国際機関、NGO、民間企業、大学、地方公共団体等との協力を、前例にとらわれない形で行うと明確に表明して頂きたい。
  • 新JICAに望まれる人材に関連して3つのフロントを挙げられた際、日本社会の市民には言及がなかったが、どう関わっていくのか。JICA、JBICが取り組んできた開発教育をどう継承するのか。
  • 実施レベルで、日本や現地のNGOとの連携について、より明確な方針をお聞きしたい。
  • 国別援助計画を策定する上でも、成長を通じた貧困削減の中身は、実体経済を通じた貧困削減が主流になるべき話であるので、民間企業がどのようなインセンティブを国毎にもっているのか、模索し取り入れていくべきである。
    (外務省より、「先週(10月30日)、ザンビアで行われた第4回アフリカ開発会議(TICADIV)の地域準備会合でも、民間の力の重要性をアフリカ側が強く主張していた。今後も、官民の連携を進めていきたい」と述べた。)

(g)新JICA発足の準備にあたっての他機関・団体との協議

  • 米国際開発庁(USAID)、独技術協力公社(GTZ)、加国際開発庁(CIDA)、スウェーデン国際開発庁(SIDA)等の援助機関と相談等を行ったのか。
    (これに対して、JICA佐渡島部長より、「独GTZや仏、世銀等と意見交換を行った」との説明がなされた。)
  • 国内で、NGOやCSO等とどのような情報交換・意見交換があったのか。
    (これに対して、JBIC岡村部長より、「JBIC、JICA各々のNGOとの定期協議会で、その時点での最新の状況を説明している。JICAの協議会にJBIC職員が、JBICの協議会にJICA職員が同席している」と説明があった。)

(h)その他の制度面の論点

  • 現在の制度では、閣議決定までのプロセスに大変な時間がかかると聞く。制度の転換がないと、スピードアップはなされないのではないか。特に、権限の委譲についてどう考えるか。
  • 有償と無償を一元管理することで権限が大きくなり、腐敗の可能性が増す。JICAの活動の個別案件のレビュー、事後チェックがどういう形で行われるのか。
    (これに対し、JBICより、「個別案件やセクター・レベルの事後評価を行っている」との応答があった。)
  • 独GTZは既にインドネシアにおいて、EUや英国際開発省(DfID)から技術案件の受注を受けていると聞くが、JICAもそのような受託の可能性を考えているか。
    (これに対し、JICAより、「将来、様々なところから業務を受託できる組織となりたい。目的を達成するためにどのステークホルダーと共同して取り組めばよいか、という発見力が重要になると考えている」と応答した。)
  • 現地ODAタスクフォースは3スキームの調整メカニズムとしてできたという経緯があると思う。新JICAが援助のかなりの部分を担うようになったとき、現地ODAタスクフォースのあるべき姿はどうなっていくのか。
    (これに対し、外務省より、「現地ODAタスクフォースは、現場の意見を統一した声として東京に送ってくることがポイントである。JETROもタスクフォースに入り始めているし、今後、民間の商工会議所やNGOの意見も吸い上げる等、役割は重要になってくる」と述べた。)

(ハ)意見交換を踏まえ、渡辺議長から次の通り述べた。

  • 日本のODAは賠償から始まり、その時々の必要性に応じて、全体の整合性を顧慮することなく拡大してきたと言ってよい。これを整合性を持ったものにする、援助システムの大転換が行われている。
  • 異なる組織が統合する難しさは、委員からも指摘があったとおりである。よくここまで努力されているが、さらなるご尽力が必要。
  • 3つの援助スキームを有機的に統合することは、容易なことではない。現場の個々の案件で両者が協働していくことによって、力強い実施機関が出来ていくことになろう。本有識者会議としても、出来る限りサポートしていきたい。

(5) 中間報告の骨子案について

(イ)議長の説明

 渡辺議長より以下の説明があった。

  • 中間報告は、「国際協力に関する有識者会議」委員が執筆することとし、それを一つのセールスポイントとしたい。
  • 国民に幅広く読んでもらうため、短く、しかし、力強いメッセージが伝わるものにしたい。長くてもA4版で15枚くらいまでにしたい。
  • この有識者会議のこれまでの論点をまとめた資料2をもとに、付け加えるべき点、削除すべき点等があるか、意見をお聞かせ頂きたい。
  • 中間報告は、資料2の項目立てに沿って作ることを考えている。具体的には、1の「戦略性:選択と集中」は、前書きを兼ねて自分(渡辺議長)が書くことを考えている。2の「アフリカ」は大野委員に、3の「官民連携」は経済界の意見をさらに聴取しながら荒木委員に、4の「ODA案件の形成と実施上の課題」は草野委員に執筆をお願いしたい。5の「人材育成」については、事務局(外務省)にお願いしたい。
  • 各執筆者からご提出頂いたドラフトを自分(渡辺議長)が全体の整合性を見ながら修文し、12月前半までに案をまとめたい。そして、12月後半に委員にお送りして事前にお読み頂き、12月21日の有識者会議第6回会合でコメントを頂くこととしたい。
  • もし最後まで意見が一致しない部分がある場合には、議長にご一任頂き、1月の然るべき時期に外務大臣に報告を提出したい。

(ロ)意見交換

 中間報告骨子案に関し、以下のような意見が出された。

(a)戦略性:選択と集中

  • 地球環境問題のほか、貧困削減、感染症対策、紛争解決に取り組むことを明確に打ち出してほしい。
  • 最貧国、最貧地域の最貧層を重点的に支援対象にすることが盛り込まれるとよい。
  • ODA予算の減少に歯止めをかけ、反転させる必要性について言及してほしい。自分が母校の高校で話をしたとき、現在の日本は経済的に栄えているが、戦争直後は緊急物資の支援を受けて給食が行われたこと、世界銀行等からの借款で新幹線や黒部第四ダムを作り、借金を日本が全部返済したのは1990年であること、借金を全て返済して被援助国から援助国になったのは日本がおそらく世界で初めてであること、日本はそのような経験を踏まえて国際協力を行うことが大事だと言うことを話したら、高校生の皆さんも納得された。歴史を踏まえても、日本はODAの額の漸減に歯止めをかけて、国際協力を行うべきだということに言及してほしい。
  • ODAの量の問題は重要。JBICとJICAが統合すると効率化するので、費用は安くすむと思われがちであり、予算は減ってしまう。一定の量が確保できないと、日本のODAの目的が達成できないと言うことを強く書いておくことが必要。
  • 文化的多様性にどのように対応するか、という地域文化中心志向をもっと具体的に出した方がよい。
  • 日本は実施中心主義になりがちだが、日本の戦略アジェンダをグローバルな規範・政策に反映することに重きを置くよう、発想の転換を図った方がよい。そのために新JICA、外務省、その他の研究機関は調査研究能力の強化を図らねばならない。また、評価や広報が、附帯業務ではなくて中心の業務になってこなければならない。
  • 脆弱国に支援を集中した場合、日本が二国間援助だけで行うのは難しい。多国間援助と二国間援助を組み合わせることなどにより、貧困削減・脆弱国支援か成長支援かという二極対立にはならないと思うが、一定のメッセージ性を出していくことは重要。

(b)アフリカ

  • 円借款と累積債務の関係や、IMF等が推進した構造調整計画(SAP)によって社会セクターへの資金が不足し、サブサハラ・アフリカ諸国が困窮したということについて、言及するべきである。
  • アフリカには、アジアの成長の経験を学びたいとの強い気持ちがある。過去の失敗をどう克服するかは念頭に置きながらも、そのようなメッセージを出したい。
  • アフリカの人々への高等教育の支援や、日本のアフリカ研究者の育成といった、知的援助が遅れているので、この要素を加味してほしい。

(c)官民連携

  • 官民連携の「民」にNGOが入っているというご説明を頂いたが、Public Private Partnership というときの"Private"は営利組織を意味する用語であり、NGOは含まれないので、懸念がある。
  • NGOと外務省・JBIC・JICAとの間では、政策や実施のレベルで協議を行ってきている。JICA・JBICの環境社会配慮ガイドラインや、外務省のODA大綱や中期政策策定の議論にNGOも参加してきた。政策、実施両面でNGOとの連携協力を推進するという趣旨を述べてほしい。

(d)ODA案件の形成と実施上の課題

(i) ODAをレビューする機関の創設

「ODA予算を増額するのであれば、効果があるということを示すためにも、また、実施においてスクラップ・アンド・ビルドを行っていくためにも、ODAが国の政策にどう適合しているのか、効率的に使われているのかを個々の政策や計画についてレビューする機関を作るべき。その場合、第三者を入れて独立性を担保し、調査権限を持たせ、失敗例の責任を追及できるものとするべき。」という意見が出された。

これに対して、

  • 4層構造のどの段階のレビューを想定しているのか。
  • 個別の案件のレベルでは、各機関で外部の有識者を入れて評価が行われているので、マクロの政策レベルでの評価を考えているのか。国会の役割との関係でどう考えるのか。
  • 決算や行政監視の機能は衆・参両院で高まっている。小さな政府を目指す流れの中では、新たな機関を作るよりは、既存の場を活用する方がよい。その際に重要なのは、情報公開で透明性を確保することである。

との質問・意見が出された。

これについて、以下の応答がなされた。

  • 専門家がチェックして、それをもとに国会で議論するのであればいいが、そうでなければ、国会議員の調査能力には限界があり、ある国での具体的な計画が本当に役に立っているかを議論するのは、難しいと考える。
  • 疑問を持たれている個別の案件を誰がどう調査するのか。例えば、パシフィック・コンサルタンツ・インターナショナル(PCI)社の問題は、検察が調査する前に、外務省がどう調査して疑問に答えるのか。また、飛行機が落ちたときに、国土交通省に事故調査委員会ができるように、ベトナムのカントー橋崩落についても、橋が落ちた理由を調査するなど、ODAのバックアップないしフォローアップを行う機関が必要ではないか。

さらにこれに対し、以下のような意見が出された。

  • 二つの話が議論されていると思う。一つは、大きな不祥事が起きたときの、原因究明と再発防止。これには、個別のケースについて、第三者を入れた委員会で原因究明を行い対応策を決めて、結果を公表することで対応できると思う。
     もう一つは、個々の案件にとどまらない、ODA全体の評価。これについては、例えば、他の援助供与国も様々な援助活動を行っている中で、日本が橋をつくることとその国全体の貧困削減との間の因果関係を明らかにするのは、方法論上も難しい。そのような評価は、ODA評価有識者会議で国別・テーマ別に年間8~9件行っており、その質も高いと考える。別の機関を作って評価しても、現状の成果以上のものが出るとは思えない。ただし、そのような政策レベルの評価を行っていることが国民には知られておらず、また、評価結果がどうフィードバックされ改善が行われているかが公開されていないのは事実。説明を工夫して行っていく努力は必要。また、現在評価を行っている委員会等は外務省の下にあるので、これをもう少し外務省から独立させる工夫も可能だと考える。
  • 援助政策を国益との関係でどう判断していくかが重要。本来は海外経済協力会議で議論すべきものであるが、何か工夫ができるか、中間報告の議論にも入れてほしい。
  • 国会に常設機関を設けるべき。その事務局から有識者や現場に詳しい人が調査の委託を受けられるようにするというのも一案。

渡辺議長より、次のように述べた。

  • 新JICAの中にチェック・アンド・バランスの機能を組み込むことが重要。
  • 第三者機関による中立的な評価もさらに検討すべきテーマであるという書き方を考えたい。中間報告の案文ができた段階で、もう少し議論したい。

(ii)その他の議論

  • 日本のコンサルタント会社の質の向上の必要性をもっと強調すべき。また、案件を専門的に評価する力をつけるよう、在外公館に赴任するODA担当官の開発教育が必要。
  • 「三層構造」の役割分担の明確化とあるが、政策から実施まで、どのように役割分担を明確にするかについて踏み込んで書くべき。

(e)人材育成

  • 「開発教育」を外務省・JBIC・JICAは「ODA理解の促進」と考えがちであるが、NGOは「貧困問題の理解の促進」ととらえている。すなわち、浪費する「北」の社会がある一方で「南」の欠乏があるというつながりを学習して、それに対する行動まで考えていくことが基本であると考えている。
  • 「開発教育」には2つある。一つは、援助をする側が開発をどのように考えるかという開発教育。もう一つは、援助を受ける側が開発とは何なのかを考える開発教育。

(f)その他

  • 「メッセージ性の強い報告とすることが大切。意見が分かれるところもあろうが、極力、両論併記を避け、どちらかに方向性をもって執筆して頂きたい」との意見が複数の委員から出された。
  • 渡辺議長より、「個別の事項については、法律や制度を改正しないと実現できないものもある。例えば、ODAの投融資制度復活は過去の閣議決定との関係があり、また、円借款の返済金活用も制度上、困難な面がある。実現性のないものを書いても意味がないので、報告書作成の過程で執筆者と個別に相談するなど、検討していきたい」と述べた。

(6)中間報告に関する市民社会との意見交換会について

 渡辺議長から、以下の説明があった。

  • NGO出身の委員から要望のあった、市民社会との意見交換について、本来であれば、中間報告案を公開してご意見をもらうべきところだが、外務大臣からは中間報告を12月末か1月初めに提出するよう求められており、日程上制約がある。そのため、資料2の中間報告骨子案を公開して意見を求めることとし、12月7日(金)の15時から17時に外務省内で意見交換会を行うこととしたい。
  • 有識者会議からは、自分(渡辺議長)と執筆委員は最低限参加することしたい。

 これに関して、NGO出身の委員から、意見交換の機会が作られたことへの謝意を述べた上で、以下のように述べた。 

  • 日本のNGOは組織が脆弱であり、通常業務を行っている人々が平日の昼間に参加できるか危惧がある。平日の夜か土・日の方が、一般の方も参加しやすいのではないか。
  • 東京1ヶ所だけではなく、インターネット等を駆使し、全国4ヶ所くらいをつないで意見を聴取するようにしてほしい。そのために現地のNGOが協力することは可能。

 これに対し、渡辺議長は、「可能であればそのようにしたいと思うが、事務局に検討してもらったところ、予算や日程等の制約もあり、難しいようである。骨子案を公開して外務省のウェブサイトを通じて一般の方から意見を募集することでよいのではないか」と述べた。NGO出身の委員が「ウェブサイトに寄せられたコメントは、中間報告を執筆する委員や他の有識者会議委員に回付され、次回の会合の資料になると考えてよいか」と質したのに対し、渡辺議長から、そのようにしたいと述べ、了承された。

(7)次回会合

  • 次回会合は、12月21日(金曜日)9時30分―12時00分を予定。事前に配布する中間報告案を議論する。
  • 12月7日(金曜日)の15時―17時に、外務省内で、市民社会との意見交換会を行う。中間報告骨子案は、本日の議論を反映させた上で、出来るだけ早く公開する。
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