ODAとは? ODA改革

「国際協力に関する有識者会議」第4回会合・議事要旨

1.日時

 日時 平成19年9月28日(金曜日)9時30分―12時15分

2.場所

 外務省 南国際中会議室(南庁舎666)

3.出席者

 「国際協力に関する有識者会議」委員
 外務省より、小野寺副大臣、宇野大臣政務官、別所国際協力局長他が出席。
 関係府省庁、国際協力銀行(JBIC)及び国際協力機構(JICA)がオブザーバーとして参加。

4.議題

 ODA案件の形成と実施上の課題

5.議事次第

  • 開会
  • 小野寺副大臣、宇野大臣政務官の挨拶
  • 草野委員、村田委員によるプレゼンテーション
  • 意見交換
  • 次回会合の日程
  • 閉会

6.議事概要

(1) 開会

 冒頭、渡辺議長より、以下の通り述べた。

  • 本日は、外務大臣から諮問を受けた3つのテーマのうち、「ODA案件の形成と実施上の課題」についてご議論頂きたい。
  • これまで「経済界から見た国際協力政策の基本的な考え方」、「アフリカ」を論ずる過程で、「ODA案件の形成と実施上の課題」についても議論はされてきたが、その部分だけを取り上げて集中的に議論する必要があると考えた。事前に委員の皆様から、ご意見をA4版1枚程度にまとめて頂いた。これらの意見を何らかの形で中間報告に反映させていきたい。
  • 小野寺副大臣と宇野大臣政務官にもご出席頂いているので、議論に先立ち、ご挨拶を頂きたい。
  • その後、草野委員と村田委員からプレゼンテーションをして頂く。

(2) 小野寺副大臣、宇野大臣政務官の挨拶

 小野寺副大臣、宇野大臣政務官より、それぞれ以下のとおり挨拶した。

(イ)小野寺副大臣

  • 本日この場には、自分(副大臣)がODAのことをゼロから教えて頂いた先生方も多数いらっしゃる。現在は副大臣として、国際協力を担当させていただいているが、国際協力は国民が注視する大切な分野であり、また、来年は第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)、北海道洞爺湖サミットがあるので、自分たちとしてもこの分野の予算をしっかりとしていきたい。ご議論の上、ご提言をお願いしたい。

(ロ)宇野大臣政務官

  • 「国際協力に関する有識者会議」には、経済界、学界、国際機関等各界の皆様にお集まり頂いている。日本の国際協力を今まで以上に立派なものに、また、世界で評価されるものにしていきたいので、宜しくお願いしたい。
  • 自分(大臣政務官)は琵琶湖のある滋賀県出身で、水問題に関心をもっている。世界の水問題は深刻で、ミレニアム開発目標にも水と衛生に関する目標が含まれている。このような点についてもご議論をお願いしたい。

(3) 草野委員、村田委員によるプレゼンテーション

 草野委員、村田委員より、以下のプレゼンテーションがなされた。

(イ)草野委員によるプレゼンテーション

  • 委員の皆様からご提出頂いたご意見とともに、自分(草野委員)がJICA、JBIC、各省、商社の方々からヒアリングしたご意見をまとめさせて頂いた(資料2)。これをご説明した上で、私論を展開したい(資料1)。
  • また、日本の海外経済協力の実施体制は、1)戦略レベル(海外経済協力会議)、2)政策の企画・立案レベル(外務省)、3)実施レベル(JICA、JBIC等の実施機関)の3層構造になっているが、これに4)民間企業やNGO、国民を加えた4層構造を、本日のプレゼンテーションの枠組としてお話しさせて頂く。

(i)委員等のご意見のまとめ

  • 第4層
    • 4層の一番上の層は、戦略を論じる海外経済協力会議である。この会議は、「我が国の海外経済協力(政府開発援助、その他政府資金及びこれらに関連する民間資金の活用を含む。)に関する重要事項を機動的かつ実質的に審議し、戦略的な海外経済協力の効率的な実施を図るため」に開催することとされている(資料4)。
    • このレベルについては、
      • メッセージ性が不足している、
      • 優先国、優先地域などの優先順位が示されていない、
      • 第3層(外務省)との相違が不明確である、
      • 外交とODAについてもう少し論じてもよいのではないか、
      との指摘があった。
  • 第3層
    • 第3層(政策の企画・立案レベル:外務省)に関しては、
      • 外務省は、課の体制がスキーム別になっているが、イシュー(課題)別の体制とするべきではないか、
      • 二国間援助・多国間援助の調整機能を外務省が果たすべきではないか、
      • 外務省は地域別、国別の予算配分をすべきではないか、
      • 外務省は、経済産業省、財務省、他省庁と連携を強化すべき、
      • 国別援助計画を見直すべき、
      • 現地ODAタスクフォースの権限の強化あるいは明確化について検討すべき、
      とのご指摘があった。
  • 第2層
    • 第2層(実施レベル:JICA、JBIC等の実施機関)では、2005年、06年の「ODAの点検と改善」で改革は実行中である。
    • 来年10月に新JICAは統合されるが、各委員から共通して、「円借款と他の2つのスキームの有機的連携をぜひとってほしい」とのご意見があった。さらに具体的に、「JICAの中に地域課を設けて、そのもとで3スキームを一体的に進行できるようにしたほうがよい」というご指摘もあった。
    • また、
      • 実施レベルで、他の援助国との連携や二国間援助・多国間援助の連携を強化すべき、
      • 新JICAと民間企業の関係を強化すべき、
      • 新JICAの業務に投融資を復活させるべき、
      とのご意見もあった。
  • 第1層
    • 第1層(NGO、民間企業、国民レベル)については、「これまでの官民協調は実体を伴っておらず、官民協調、あるいは、さらに踏み込んで官民同盟を進めるべき」とのご意見、中には、「民間企業一社への支援、一NGOへの支援も考えるべき」というご提案もあった。
    • また、「民間企業の提案によるODAの案件形成も必要ではないか」、「日本のコンサルタント企業は質の改善が必要」というご指摘もあった。
    • 何人もの方から、「国民への説明責任をもっと果たすべきである」とのご指摘があった。
  • 別枠
    • 4層構造に入らないご意見として、
      • 効率性を追求するのはいいが、費用対効果がきちんと検討されるべき、
      • 評価がきちんとフィードバックされているのか、
      • 重点地域について、東アジアを国益の観点から、アフリカを国際益という点から重視すべき、
      • ODA政策の改善の具体的施策を、項目や達成目標年次を決めてODAマニフェストという形で策定すべき、
      • アジアの経験をアフリカに当てはめるのは、言うは易く行うは難し、
      というご指摘もあった。

(ii)より質の高い経済協力実現のために

 以上のご意見を踏まえ、私論を述べさせて頂き、各層について提案を申し上げたい。

  • 第4層
    • 「海外経済協力会議の司令塔機能が期待したほどのものではない、透明性に欠ける」などの指摘がある。同会議の目的は「我が国の海外経済協力(政府開発援助、その他政府資金及びこれらに関連する民間資金の活用を含む。)に関する重要事項を機動的かつ実質的に審議し、戦略的な海外経済協力の効率的な実施を図る」となっている。
       つまり、海外経済協力会議発足の契機となった「海外経済協力のための検討会」(06年3月)が会議に求めた「我が国の海外経済協力の重要事項について、大局的な観点から審議がなされ基本戦略、方向性が示されるべきである」という強い「司令塔」機能は含まれていない。司令塔という文言も会議の目的には含まれていない。したがって、強い「司令塔」機能は本来の役割にない。各省にまたがる特定の議題が多いことからすれば、過大な指示機能を会議に期待することも非現実的。曖昧さは残らざるを得ないが、対中円借款の凍結解除(06年6月6日、第2回会議)のように、これまでも明示的な決定が行われた場合もあり、今後も議題によっては、同様の指示が行われることもあるだろう。
    • 他方、首相、外相等五名の閣僚が、各省の利益を越えて海外経済協力に関する特定の重要事項について定期的に議論をすることは、これまでなかった試みであり意義は大きい。今後も活発な議論が継続されなければならない。
    • 会議がよりよい成果を生み出すために二点、要望がある。第一は、過去10回で取り上げられなかった、より大きな議題について是非議論してほしい。一例は、日本の将来の海外経済協力は、予算の縮小傾向が止まらなかった場合、どのような外交的な影響があるのかなど。第二は、納税者に対する説明責任、透明性の確保である。「○○について一致した」という結論だけでなく、そこに至る議論のポイントなど、より詳しい内容が公開されることが望ましい。
  • 第3層
    • 外務省は、新JICAの発足を08年10月に控え、企画・立案機能に特化し強化することが望まれる。つまり、外務省は海外経済協力会議の議論を踏まえ、地域、国別の外交政策全体と経済協力の関係について検討し、政策を立案する。そうした外交政策的配慮に基づき外務省はODA予算の地域、国別配分機能を積極的に担う。この結果は第4層の海外経済協力会議に報告される。
    • こうした外務省の政策判断に基づき、新JICA(第2層)は個別案件の形成、実施に取り組む。それに伴い、国別援助計画の策定は外務省から新JICAに移管することが望ましい。
    • 他方、現地タスクフォースが本来の機能を果たしていないとの指摘が多い。成否の鍵は「人」の要素が大きく、「人」の要素がなくとも制度的に機能する方法を考えるべきであろう。しかし、この問題には、外務省における経済協力のスタッフ不足という根本的な問題が隠されている。
    • 経済協力には各省の協力が不可欠だが、外務省の調整機能がさらに発揮されることが望ましい。他省庁の技術協力予算の規模は縮小したが、JICA経由の技術協力との重複も依然残されており、透明性も不十分である。また、無償資金・技術協力課は各省からの応援で成り立っていることによるメリットとデメリットをよく精査し、オールジャパンとしての協力がさらに確実なものになるようにしなければならない。無償・技術協力、有償というスキーム課とは別に、国別開発協力第一課、第二課を設けた効果が十分に発揮されることが重要。この外務省と各省との関係についての指摘は、大使館レベルにもあてはまる。
  • 第2層
    • 新JICAは、2008年10月発足を前に、体制整備について協議中。実施レベルで三スキームが一つの組織に置かれる効果が最大限発揮されるよう、制度設計がなされなければならない。円借款と無償・技術協力が一つ屋根の下で別居するという懸念された状態にはならないようであり、歓迎したい。
    • 地域別の部を7つ置き、ここで3スキームについて総合的な観点から案件の形成、審査を行い、実施は課題部が行うと聞いている。これが機能すれば、3スキームの有機的な連携はより円滑に進む。これまで実施促進しか担ってこなかった無償資金協力のうち、一般プロジェクト無償はJICAが実施まで担当することになることも、3スキームの連携を促すと期待される。
    • しかし、これらは、まだ設計図の段階であり、どのように実現させていくか、職員の意識の問題を含め課題は残る。異なる二つの組織が、より大きな利益のためにその組織利益を超えて統合するには、細部の利害調整に細心の注意が必要であろう。
    • そこで、JICA、JBICから統合に至るまでの間、準備の進捗状況について報告を受けることを提案したい。世界銀行につぐ援助機関の誕生に、メディア、国民の関心も高い。できるだけ開かれた状況のもとで、よりよい統合が実現することが望ましい。
    • 新JICAにおける投融資の復活も、検討課題。経済協力に意欲のある中小企業には、技術はあるが資金が不足している企業も多い。気候変動、省エネ技術分野など、公益性が高く、他方、企業にとりリスクの高い分野に限っては、投融資による支援があってもよい。もっとも、「政府の業務の肥大化の回避」という目的に矛盾してはならない。
    • その他、無償資金協力には予備費が用意されていないなど、早急に解決されなければならない問題もある。
  • 第1層
    • 途上国の人々の福祉向上、経済発展が経済協力の目的であるとすれば、途上国への資金の流れの約75%は民間資金ということからも、ODAの役割は限定的である。他方、民間企業が日本のODAにより整備された経済インフラを用いて投資をし、経済発展を遂げたのが東南アジア、東アジアであるとすれば、ODAが途上国の福祉向上、経済発展の呼び水として果たしてきた役割は大きい。
    • 政府と民間の関係強化は、途上国の開発におけるインフラ整備をはじめ官民パートナーシップ(Public-Private Partnership)の観点からも重要。PPPの促進により政府は民間の活力を導入できる一方、民間はリスクを軽減できる。
    • これまで、政府と民間企業との関係の制度化は不十分であった。日本のODAの選択と集中、効率性の追求には、NGOのみならず民間企業との緊密なコミュニケーション、ネットワーク構築が不可欠。
    • 具体的には、民間企業(商工会議所)が現地タスクフォースのメンバーに加わることによって、情報を関係者が共有することが可能となろう。また、新JICAと民間企業が定期的な情報交換会を行うことが望ましい。
    • 既にJICAでは、民間とODAについての勉強会が活発に行われていると聞く。案件形成についても、民間の知恵と工夫を活用した新たな方式の導入が必要。民間企業がODAの案件を提案し、採否を第三者機関の審査に委ねるという方式である。これは民間企業ではなくNGOによる提案であってもよい。もっとも、提案が案件周辺地域の公益を確保するものであることは大前提であるし、審査における公正、公平さを担保するための工夫が必要。
  • 上述の提案は第4層から第1層へと、“上流から下流"への一貫性に注目したものである。しかし、このメカニズムが効果的に展開していくためには、第1層、第2層で生じた問題点などが、第2層を経て、第4層にまで届くような風通しのよい関係とする取組が必要。
  • 別枠
    • 評価として、各層の目的が達成されているか見直すことが必要。
    • ODAの評価(特に円借款)は、公共政策で最も進んでいるが、OOFについては、情報公開がほとんどなされていない。公的資金を利用する以上、同様の透明性が確保されることが必要。

(ロ) 村田委員によるプレゼンテーション

  • 草野委員の言う第1層~第4層と関連させながら、多国間援助の観点から二国間援助やNGO、民間を見るという形で説明させて頂きたい。
  • 日本のODAは、二国間援助(贈与、政府貸付)と多国間援助に分けられる。自分(村田委員)が所属する国連開発計画(UNDP)は、無償援助を行う多国間機関である。他方、イラクでJBICの貸付の管理をUNDPが行うという画期的な連携の試みがなされている。第2層における連携と言えよう。
  • 国連機関の特長は、政治的に中立であること、国際世論・国際政治の中心であること、様々な国際分野における経験と知識があること、世界規模で展開する機動的な実施体制があることである。
  • 国連は現在、国連諸機関が一体となって業務を遂行する「一つの国連(one UN)」という改革を進めており、8カ国で試験的に実施されている。日本の現地ODAタスクフォースが、国連諸機関の知識と経験を集中させるone UN とどう関連し、効率的に活用できるかが、今後議題に上がっていくのではないか。
  • 日本が1996年に経済協力開発機構(OECD)開発援助委員会(DAC)で新開発戦略のとりまとめに主導的役割を果たしたことが、ミレニアム開発目標につながった。日本のアジェンダ形成・外交政策が世界的潮流になったことが、国連職員も含め、日本の外の人々に認められており、実施を真摯にフォローアップしなくてはいけない。
  • ミレニアム開発目標を期限どおり達成するために必要な費用は、年間1,210億ドル~1,890億ドルと言われているが、これはエクソン・モービル社の売り上げ3,399億ドルより小さい。サブサハラ・アフリカでの目標達成が遅れる中、ODAはどこに「選択と集中」を行うのか、仕分けを明確にすべき。国連は莫大な組織に資金をつぎ込んでいるように言われているが、実際の予算は東京消防庁とほぼ同額。
  • 日本は国際協力・ODAを通じて何を達成したいかを軸に、政策目標を定める見直しを行うことが必要(これは第4層(戦略)に関連)。単に政策・プロジェクトの実施で日本の旗が揚がったかということだけでなく、日本のアジェンダ・政策がグローバルに制度化されていくことも、真に日本の顔が見えるということ(visibility)で重要。例えば、日本は平和構築に力を入れているが、高須国連代表部大使が現在議長を務めている平和構築委員会も、日本のODA政策の重要な部分になるのではないか。日本が政策アジェンダ・戦略を提唱・策定し、それをグローバルな規約・政策に反映させていくこと、及びそれを国民に対し、また多国間機関(国連、世銀等)を通じて説明していくことが重要。
  • 国連システムは、自らの機関の政策と一致する場合には、企業の一社支援や一NGOの支援を行うことができる。例えば、最近、UNICEFはボルビックと連携して、ボルビックの水の売り上げの一部をアフリカに還元する運動を行っている。企業の社会的貢献としては、オリンパス光学工業がHIV/AIDSの啓蒙活動を行っており、写真展の後援などでUNDPや世銀も協力している。また、市場環境整備の支援としては、JETROと日本花輸出入協会が連携して、東アフリカの生花関連の現地企業に対し日本市場向けに品質改善指導をしており、このような例は画期的なアフリカ支援につながる。イラクでは、日本の緊急無償資金援助の一環として商社が13都市総合病院プロジェクトやサマーワ発電所プロジェクトなどを受注。
  • 先日、経団連がアンゴラに経済調査ミッションを送るということで相談に来られた。国際機関を大いに活用して頂くべく、UNDPアンゴラ事務所に連絡を取った。アンゴラは資源も豊富で、企業の社会貢献活動も含めてどのような支援ができるか、TICADの大きな枠組で話し合われることを期待。
  • ODAの包括的な戦略性を議論することが必要。ODAには、和平合意・災害発生後の緊急支援から、復興、その後の開発支援まである。民間企業との連携は開発支援の領域であるが、NGOは緊急支援で活躍している。このような全体像の中で、借款と無償資金協力の使い分け、国連組織・NGO・民間組織・研究グループ等のステークホルダーの組み替えを戦略的に行うことを、オールジャパンで話し合う必要がある。
  • 例えば、UNICEFが住友化学と協力して、防虫加工の蚊帳を配給したり、UNDPのネリカ米種子開発事業とJICAの普及事業を連携させたりする協力がなされている。インドネシアでは、ヤマハ発動機が輸出する魚を洗浄する水のための濾過器の事業を社会的貢献として行おうとしており、UNDPが実現可能性調査を行っている。
  • 国連機関では、日本からの拠出金が縮小するに従って、日本人の幹部職員数が減少。政策アジェンダを持ちかける上では、国連内にそれを戦略的に内部で動かす人材も必要。
  • 国際協力分野での人材育成のため、政府・NGO・民間企業・メディア・学術機関・国際機関等の間で広い人事交流を行うことが必要。新JICAでは、国際機関・民間セクターとの人事交流をもっと制度的に行うことが必要。「東洋経済」によると、JICAは若い人に人気のある就職先として昨年は40位だったのが今年は29位である由。若い人は国際協力に興味をもっている。我々は国民への説明を行っていく責任がある。
  • 2007-2009年は、ミレニアム開発目標達成に向けた折り返しの年であり、TICADやG8サミットの開催年、また気候変動に関する節目の年でもある。日本が政策アジェンダをインプットし、国際舞台で指導力を発揮する好機。

(3) 意見交換

  • 小野寺副大臣より以下を発言した後、小野寺副大臣と宇野大臣政務官は途中退出した。
    • 草野委員より、4層各層がしっかり機能すべきであること、3スキームの有機的な連携強化、官民パートナーシップ等、多くのご示唆を頂いた。村田委員からは、国際機関の役割を踏まえ、アジェンダ形成の重要性、多国間機関・二国間機関の援助の連携、ODAの量の問題等のご示唆を頂いた。
    • 公務が重なっており、恐縮ながら退席させて頂くが、後で事務方から報告を受け、政策に反映させていきたい。熱心なご議論を宜しくお願いしたい。
  • この後、委員の間で以下のような意見交換が行われた。

(イ)4層構造

 4層構造の分析に複数の委員が賛同したほか、以下のような意見が出された。

  • 4層の下に「基層」として、ODAの主役である地域住民がいる。4層に分けるだけでは、地域住民は実施者やNGOを通じて接触するだけにとどまってしまう。「基層」を確認していくと、実施上の問題点がいくつか浮かび上がってくるのではないか。
    (これに対し、「地域住民にとってマイナスになる国際協力はあり得ないので、当然念頭に入っている」との応答がなされた。)
  • 4層の役割分担を明確にすべき。特に、司令塔で戦略性を強めるとともに、司令塔の指示が、外務省が立案・調整する重点政策・国、予算配分等の政策に反映されるよう、リンクを強化していくべき。また、新JICA設立に伴い、外務省とJICAの業務の重複を整理することも重要。
  • ODAタスクフォースの成否が「人」によっているとの指摘があったが、仕組みとして機能するようにすることが重要。その点、4層の各層で評価を行い、下流から上流に評価をフィードバックしていく仕組みを作ることが重要。
  • 社会学の観点からは、組織の構造は単純である方が有効。重要なのは現場を知っていることであり、外務省の職員に専門家を育成し、専門家が権限と資格をもつことが必要。
  • 「4層構造」というと、上下関係を想起してしまう。司令塔は必要だが、外務省、実施機関、NGO・民間企業・国民が横に並ぶイメージの方がよいのではないか。ポイントは、役割分担を明確にすること。
    (これに対しては、「ご指摘の通り、所管官庁とJICA・JBICの関係を除けば、上下関係ではない」との応答がなされた。)

(ロ)海外経済協力会議

  • (「海外経済協力会議の目的に司令塔機能が含まれていない」との草野委員のプレゼンテーションに対して、)「我が国の海外経済協力に関する重要事項を機動的かつ実質的に審議し、戦略的な海外経済協力の効率的な実施を図る」という海外経済協力会議の目的の表現は、「海外経済協力のための検討会」が言う「我が国の海外経済協力の重要事項について、大局的な観点から審議がなされ基本戦略、方向性が示される」ということを表したもの。司令塔機能が期待したほどではないのは、目的の文言の問題ではなく、運営や運用に問題があるのかもしれない。しかし、まだ始まって1年くらいなので、ある程度は仕方がない。
  • 海外経済協力会議の透明性の確保については、すべてオープンにしては戦略は議論できないので、限界がある。
  • 海外経済協力会議は、人間開発・社会開発を議論できる場であると思うが、逆に狭い意味での経済開発・経済協力がベースになっているのか。
    (これに対しては、「人間開発・社会開発も当然、重要。ここでは、政策を実施する体制についてのみ論じた。JBIC及びJICAの環境社会配慮確認のためのガイドライン策定時に見られるように、NGOは政策決定過程に既にかなり関与しており、それと比較して民間企業との関係が密でないため、あえて経済インフラという言葉も使用した」との応答がなされた。)
  • 海外経済協力会議で「○○について一致した」という結論が出てくるのは、各省庁の妥協の産物。司令塔の役割を強化するのであれば、戦略的に何を優先するか打ち出す場にしていかないと、期待されている役割を果たせない。省庁間で予算の防衛をしている限りは、選択と集中が進まない。

(ハ) 平成19年度国際協力重点方針・地域別重点課題

 「『平成19年度国際協力重点方針・地域別重点課題』について、政府内での位置づけ、及び司令塔との関係について説明してほしい」との質問に対し、事務局より、以下の通り説明した。

   外交政策を踏まえた国際協力を行うために、これまでの外交的なイニシアティブと現場から出てくるニーズとを調和させていくのが国際協力局の役割と考える。外務省の中で、国際協力局が査定官庁になるのではなく、地域の専門家を擁し外交のイニシアティブを作っていく地域局と一緒に議論して、全体的な国際協力の重点事項を整理し、地域別の課題を特定した。海外経済協力会議や、外相の下の国際協力企画立案本部での議論も反映している。今回策定した重点事項を踏まえて相手国の要望を聞くよう、現地ODAタスクフォースにも伝達している。

(ニ)実施機関のあり方

 「JICAの統合準備の進捗状況について本有識者会議の場で報告を受けたい」とする草野委員の提案を受けて、新JICA関係者間だけでなく外部からコメントすることについて議長が意見を求めたところ、「内外一体となって議論すべき問題であり、統合の議論のプロセスを公表し、透明性を高めるべき」との意見が出された。
 また、「JICAはこれまで役所の一部のような運営で、プロジェクトの費用対効果を真剣に考えていたのかも疑わしい。JBICのノウハウを活かし、民間企業のプロジェクトの審査・運営に近い形で運営してほしい。そのためには、あまり省庁が干渉すると、実施の段階が歪んだものになるので避けるべき」との意見も出された。

(ホ)民間企業との関係

  • 途上国に流入する資金の75%が民間資金だと言っても、中国やブラジルのように民間資金が大半の国もあれば、サブサハラ・アフリカのようにODA、特に無償が中心になる国もある。「途上国」と一括りにするのは難しく、区別して考える必要がある。
    (これに対しては、「ご指摘の通りであり、念頭に置きたい」との応答がなされた。)
  • NGOとODA関連省庁・実施機関とのコミュニケーション・チャネルを整備する上で、透明性や参加の確保に腐心した。民間企業と外務省等とのチャネルを整備するときにも、透明性や参加について慎重にご議論頂ければ、信頼性・実効性が高まる。
  • どこの国で何をやるか、具体的な案件形成が重要。民間企業の案件形成の提言を充実させていきたい。そのためにまずは官民で勉強会を立ち上げるよう提案する。
  • 官民連携の具体的な実施のためには、前例にとらわれない発想が必要。現地ODAタスクフォースへの民間の参加や、民間・NGOからの案件形成も検討して頂きたい。
  • 二国間のODAは公的資金を基にしていることから、本邦技術活用条件(STEP)の更なる活用など、日本の顔の見えるODAとすることが必要。
  • 民間としては、円借款の迅速化、新JICAにおける3スキームの連携等のこれまでのODA改革の方向性を歓迎。具体的な運用の中で実現されることが重要。
  • 官民の「同盟」(アライアンス)は、ミレニアム開発目標を達成するには公的資金だけでは到底足りないので、官と民が協力してカバーしていくというのが、基本的な発想。また、従来の公的な援助は効率的・効果的な資金運用がなされてこなかったという課題もある。米国は、官民同盟の案件を2000年以降、100か国以上で、400件以上行っている。ここでは民間企業は国際開発庁(USAID)の行う投資以上の額を投資することが原則とされており、これまでのUSAIDの投資額約14億ドルに対し、民間企業の総投資額約46億ドルを動員した。UNDPでも一社支援ができるのに、なぜ日本の二国間支援ではできないのか。日本も、日本的な官民同盟を追求していくことが必要。
  • 米国は、ゲーツ財団のように民間の財団が多額の資金を持っている点、特殊である。日本の場合は企業活動を通じて貢献していくしかないのではないか。ODAでインフラを整備し、民間投資で事業を起こして雇用を創出し、受け入れ国の経済発展に寄与していくことが重要。
  • 危険な地域で、ODAが出されていなくても、民間企業がリスクを負ってプロジェクトを立ち上げている例が、アフリカでは顕著になってきている。その点からも、アンゴラへの経団連の経済調査ミッションに期待している。

(ヘ)NGO・市民社会との関係

  • 国別援助計画策定にあたっては、初期の案から日本や被援助国のNGO・市民社会を巻き込むプロセスをとってほしい。NGOが持っていて大使館に届いていない情報もあるので、情報・意見交換から始めると良い。
  • 政策アドボカシーはコストが低くて大きな貢献ができる。村田委員の「日本のvisibility」の資料中では、「コスト(高or 低)」とされているが、コストは低いのではないか。
    (これに対しては、「金銭的なコストは低いだろうが、アドボカシーが失敗したときの一般市民のダメージのコストが高いと考えた」との応答がなされた。)
  • 現地の政府・市民社会を主役とする政策上の優先課題に対して、国際社会がどう援助協調を行っていくかが課題。貧困削減戦略文書の策定を側面支援する等の支援を深め、広げる努力が必要。
  • 日本のNGOは発展途上。来年4月にはシビルG8も開催されるので、そのような中で日本のNGOも力を付け、政府・民間企業・メディア等とのリンクを作っていけるのではないか。
  • NGOとの関係は重要だが、場合によってはロビー団体のようになり、足を引っ張る形になってしまう。どのように上手な関係を作っていくかを考える必要がある。

(ト)二国間援助と多国間援助の連携等

  • アフリカ開発会議(TICAD)、北海道洞爺湖サミットを日本が開催する2008年に向けて、アフリカ等の支援において4層の中の連携、多国間機関と二国間機関の連携をどう行っていくか、日本のODAの改革のモデルとして、具体化させていくべき。
  • 二国間援助と多国間援助を組み合わせて行っていくことが重要だが、UNICEFに寄付をしても、実際に子供たちのために使われる金額は30%くらいだと言う。国際機関も費用の削減をすることが必要。

(チ)広報・人材育成

  • 国連大学で行っている国際開発に関する講座や、国連機関でのインターンシップを、各大学が自分の大学の単位として認定するとよいが、このような動きは大学側の事情もあって進んでいない。国連機関から大学に対して何らかのキャンペーンをして頂き、協力関係を作っていくとよい。
  • 開発人類学の学生は、就職が非常に難しい。また、JICA、JBICの研究所には学術的に使える資料が少ない。スウェーデンでは、ストックホルム大学人類学科の横に国際開発協力庁の作ったユニットがあり、大学院の学生を使って各国からの要請の実現可能性調査を行い、知識が教育研究機関に集約されている。日本でも、実施機関の研究所を一つにして大学の中に移管することも必要。
  • 日本人は国際機関でなかなか恒久的な職を得られない。例えばヤング・プロフェッショナル(YP)制度で国際機関に入った人が2-3年の任期が終わって、プロジェクトに資金がつかなくても、国際機関から出て行かなくてすむよう日本政府が支援するなど、若い人材が安定して勤務できる仕組みを作る必要がある。
  • 日本貿易会が設立したABIC(Action for Better International Community:国際社会貢献センター)には、1,700名程の人材が登録されている。元商社マンで海外経験が豊富なので、現地ODAタスクフォースのメンバーや、大使館の国際協力担当官、また国際機関職員に派遣することも考えられる。
  • 日本は良い援助をして被援助国から評価されている素晴らしい国だと思えるよう、国民的コンセンサスを作るべき。そのための広報を進めるために、国際協力親善大使を設けて現場に派遣し、被援助国からの評価を直接聞いてもらい、それをメディアを通じて国民に伝えていくべき。
  • 国際機関で活躍できるのは、国際協力に人生の目的を見いだす情熱を持った人。資金をかけて講座を設けるよりも、それぞれの人の資質に頼った方がよい。
  • 国際協力を学んだ人は、民間でも活躍できる。ODAに関心を持つ、民間で活躍している方々の人材をプールして活用できるとよい。

(リ)その他

  • 単年度予算を越えて、より長期的に資金を支出できるようにしたり、ODA事業の国際約束を事業毎ではなくより包括的に締結したりする等、手続き面の改善も必要。
    (これに対しては、「多年度予算ではダイナミックなプログラムが可能になるので、新JICA成立を機に多年度予算ができないか期待する」との応答がなされた。)
  • 世界水フォーラムのプロセスでは、2000年の「世界水ビジョン」、及び2003年のカムドゥシュ前IMF専務理事の世界パネルの報告書で、世界の水・衛生問題を解決するには毎年1,800億ドルの資金が必要だとされている。しかし、これは大規模集中型の施設を建設・管理することを想定しており、小規模分散型の施設を想定したNGO側の試算では、MDGsの達成に必要な資金は約20億ドルとなっている。地域性やタイミング等によって、どのスキームをとるのが重要か、精査する必要がある。
  • 新政権の政策の中でODAの位置づけを考えるべき。特に、新JICAについてどれだけのことが合意できるのかを改めて見直したい。
  • 平和構築分野で外務省は防衛省、消防庁、警察庁との関係を広げており、アジェンダ形成も従来のODAの様相からはだいぶ変わってきている。

(ヌ)議長の総括

 渡辺議長より、「お二人の委員の意見に賛同し、その方向性をさらに強めるコメントが多かった。本日表明された意見を、お二人の報告にさらに反映していきたい」ととりまとめた。

(4) 中間報告案についてのNGO側からの要望

 渡辺議長より、NGO出身の委員から

(イ) 中間報告案を有識者会議で審議する前に十分な余裕を持って事前に公開し、公開で市民・NGOが知見・意見を表明できる場を設け、そこで出された意見や委員とのやり取りなどを議事録を作成し、公開する、

(ロ) NGO等から意見書が寄せられた場合は、中間報告案を審議する有識者会議の会合において参考資料として配付し、重要な知見・意見を含むものについては会議で検討する、

(ハ) 上記を進める上で必要な場合には、専門委員として意見書の作成者を招き、有識者会議において意見聴取を行うとの意見が出されていることを紹介し、この委員から、次のような説明があった。

 NGOは非常に多様であり、NGO出身委員はごく一部の市民社会組織に関係しているにすぎない。中間報告書をとりまとめる上で、多種多様な意見を反映するプロセスを取って頂けないか、ということで提案させて頂いた。参加者を限定せず、日本国内のどこかで、委員の方々で出席できる方にもご参加を頂き、意見交換をして頂くのが提案の趣旨。多様な意見があることを知って頂き、またこの会議の議論の趣旨を多くの人に伝えられる機会になろう。

 渡辺議長より、「上記(イ)にいう、報告書案を事前に公開してNGOが意見を表明できる場の設定については、具体的な方法は今後検討するが、適切な形で行うのがよいと考える。しかし、(ロ)及び(ハ)については、この会議はODAに関心と知識のある方々が個人として自由な意見交換をする場であり、他の委員も経済界や学界の意見を集約して出しているわけではない。NGO側で意見を集約する必要があるのであれば、NGO出身委員で意見を集約してこの会議で発表して頂ければよいと考える」と述べた。これを受けて、NGO出身の委員は、「公開の対話がなされるのであれば、(ロ)及び(ハ)はそこに集約することも考えられる」と述べた。

 これに対し、「民間企業はNGOよりも数が多く、納税額も大きいので、民間企業に対する説明責任の方が大きい。本有識者会議の議論をNGO出身の委員がNGOに対して説明し、ご意見があったら委員がとりまとめてこの会議で発言して頂けばよい」として、(イ)~(ハ)のいずれの提案にも反対する意見も出された。しかし、NGO出身の委員が「対象をNGOだけに限るわけではなく、企業の方も含め、誰でも参加できる場を設定してほしいという提案である」、渡辺議長も「ODA大綱や中期政策の改定等にあたっては、タウンミーティングを開いたり、パブリックコメントを求めたりすることが通例となっているので、この中間報告だけを例外とするのは避けた方がよい」と述べ、最終的には議長に一任され、具体的な方法を工夫して後日報告することとなった。

(5) 次回会合の日程

 次回会合は、11月13日(火曜日)9時30分―12時00分を予定。これまでの議論(「経済界から見た国際協力政策の基本的な考え方」、「アフリカ」、「ODA案件の形成と実施上の課題」)を簡潔に整理した上で、中間報告の素案を議論する。また、可能であれば、JICA・JBICから、新JICA統合に向けた準備の進捗報告を受ける。

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