1. 日時:平成19年3月5日(月曜日) 17時35分-18時51分
2.場所:外務省 南国際中会議室
3.出席者:「国際協力に関する有識者会議」委員。
外務省より、麻生外務大臣、岩屋外務副大臣、関口外務大臣政務官、別所国際協力局長他が出席。
NGO(国際協力NGOセンター(JANIC)、関西NGO評議会)、関係府省庁、国際協力銀行(JBIC)及び国際協力機構(JICA)がオブザーバーとして参加。
4.議題
- 麻生大臣挨拶
- 議長選任
- 委員による自己紹介
- 別所国際協力局長からの説明(議事運営方法等について)
- 意見交換
- 次回会合の日程
5.議事の概要
(1) 麻生大臣挨拶
冒頭、麻生外務大臣より、概要以下のとおり挨拶した。
(「国際協力に関する有識者会議」立ち上げ)
- この度、「国際協力に関する有識者会議」を立ち上げることができ、委員を引き受けてくださった皆様に感謝。
- 外務省はこれまでも積極的な改革を進めてきた。昨年には、内閣の中に海外経済協力会議が設置されるとともに、年度途中にもかかわらず国際協力局を新設するなどODAの企画立案・実施の体制強化のための変革が行われた。また新しいJICAが平成20年度より誕生する。
- 委員の皆様には幅広い観点からご議論頂き、今後とも海外経済協力につき日本が質・量ともに世界に誇れるものとなるようご助言いただきたい。
(国際協力についての考え)
- ODAを始めとする国際協力は、我が国が192カ国ある国際社会の中で外交的地位を確保していく上で重要な道具である。
- 日本が行う協力の一番の特徴は、現地の人々と共同して働く姿勢を見せることである。イラクでの自衛隊活動においても、イラク人と一緒に活動しきっちり仕事をしたことが現地からも評価された。国際協力は長い算盤をはじく類の事業であり、腰の据わった戦略が必要。
- 特に、来年はTICAD(アフリカ開発会議)、G8サミットを日本が主催する年である。その際、環境問題をはじめ、地球規模の課題に対して、リーダーシップを発揮していくことが重要。先般、李肇星中国外交部長に対しても、渤海湾等の環境問題につき東京湾の浄化に取り組んできた技術を持つ日本と協力したほうがためになる旨話した。
- また、昨年12月に提唱した日本外交の4本目の柱たる「自由と繁栄の弧」の具体化のためにもODAは重要。バルト3国からカンボジア、ラオス、ベトナムまでユーラシア大陸に広がる、民主主義・自由・人権・法の支配・市場経済等の共通の価値をもつ国々に対して、知見・経験を分かち合おうと言っている。これは主義の押しつけではなく、地域の安定のためであり、回り回って日本自身のためになるものだからと言っている。
- 2001年9月11日の米国同時多発テロ以降、世界は変化しており、中国・韓国といった新興ドナーも台頭。アフリカ等において、日本の外交力にも影響が出ている。
(有識者会議に議論していただく事項)
- こうした状況の中、有識者会議においてご議論して頂きたい事項は次のとおり。
1) 国際協力政策の基本的な考え方
2) 国際協力を担う人材の育成や教育など、国際協力への国民参加
国際協力を担う人材とは、現地で活動する人材、国際機関で働く人材、国内で働く人材の3種類がある。国際機関で働く人材等の国際協力を担う人材育成をどのように行っていくか、ご意見を頂きたい。
3) ODAの効率化・迅速化、官民連携、NGOとの連携等、ODA案件の形成と実施上の問題
外務省員にはない能力をもつNGO等と連携してコスト縮減や効率向上を図る取組は個別には行われている例もある(東チモールで公文が行う算盤教育に協力している例に言及)が、体系的な連携には至っていないので、ご議論頂きたい。
- 年内を目途に、中間報告をまとめて頂ければ有り難い。
(2)議長選任
- 本有識者会議の前身である「ODA総合戦略会議」の議長代理を務めた渡辺委員を議長に選任することが提案され、了承された。
(3)委員による自己紹介
- 各委員から自己紹介、及び国際協力についていかなる問題意識をもっているかについて、以下のような発言がなされた。
- 当有識者会議では国際協力の基本戦略を議論したい。特に、ODAの(戦略・企画立案・実施という)3層構造という「形」に、2008年に内外から注目が集まる中、いかに「魂」を入れるか、中身重視の議論をしたい。また、海外経済協力会議等実際の政策に当有識者会議の議論がどのようなインパクトを与え得るのかについて知りたい。
- 現場の経験を当有識者会議の議論に反映させていきたい。
- 「海外経済協力に関する検討会」での議論をふまえて議論していきたい。
- ODAの評価では、事後評価のみならず、具体的な国際協力が目的・目標を達成するかという事前評価を含め、事前・中間・事後の一貫した評価が重要。当有識者会議では、目的・目標自体までについて議論をするが、評価の視点で議論に参画したい。
- 日本ではまだ遅れている開発人類学の観点から、文化効率を中心に議論をしたい。
- 中東における民間の石油精製・石油化学のプロジェクトが、産業の多様化のみならず、特に若者の雇用の創出、ひいてはテロの防止に繋がる。ジェフリー・サックス教授が始めたアフリカにおけるミレニアム・ビレッジ・プロジェクトでのマラリア対策のための蚊帳供与では、外務省の協力もあり大きな成果があった。このような動きを今後全面的に進めていきたい。
- ODA大綱の改定の際は、日本の主張を盛り込むべきとの議論をして、新聞等では国益の面が出ているとの指摘を受けた。外部委託で外の人の能力を借りた方が効率が上がるし、国民の期待も高まる。ODAは政府ではなく国民が実施しているとイメージしてくださいという現場の話をすると理解が得られた。外務省が知らない現場を中心にした政策を議論したら、成果が上がるのではないか。
- 顔の見えるODA、官民協力が大事。援助の実施に携わる観点から議論を行いたい。
- 海外の現場を見る機会が多く、先週もマダガスカルに出張してきた。その際、日本が稲作の改善等で協力しているという話を聞いて日本人として大変うれしく思った。わが国は、このような良いことを実施しているのだということをもっと広く日本国民にわかってもらうようにすることが重要であるという視点からも議論に臨みたい。
- 自衛隊による協力等を含めた協力の中で、ODAを相対的に位置づけながら議論したい。また、ODAは公金で行っていることを忘れないでいきたい。
- 緊急支援から復興支援へどう繋げていくか、マルチ・バイの連携に関するグッド・プラクティスはたくさんあるが、メディア等に必ずしも理解されていない。このような点も議論に入れていきたい。また、ODA向き、国際機関向きの人材育成に大学がどう協力できるかについても議論したい。
- 麻生大臣は、これを受けて概要以下を発言した後、途中退出した。
- 国際社会における日本への評価は、現場で活動する人々の高い規律等により、昨今最も変化した(特に、イラクでの陸上自衛隊の活動、自衛隊員の成長ぶりに言及)。
- 現場での活躍を見ると、日本人として頑張らなければならないとの意を強くする、ODAにもこのような面はあることから、是非委員の方々のお知恵をお借りしたい。
(4)別所国際協力局長からの説明(議事運営方法等について)
別所国際協力局長より、議事運営方法等について、事務局の考え方を概要以下のとおり説明。
(開催頻度等)
- 当有識者会議の活動期間は2年間、会合の開催は2ヶ月に1回程度とする。
- 2008年に日本がアフリカ開発会議(TICAD)、G8サミットを主催することをふまえ、年内を目途に中間報告をまとめて頂く。
(NGOの委員、外部専門家、オブザーバー)
- 当有識者会議には、NGOの方にも参加して頂く予定。NGOからの参加者は、現在調整中であり、本日の会合には、国際協力NGOセンター(JANIC)及び関西NGO評議会からオブザーバーとして参加して頂いている。
- 各会合のテーマに応じて、必要に応じ、外部専門家(地域別・分野別・課題別)をお招きし、ご意見を述べて頂くことも考えている。
- 関係府省庁及び実施機関(国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA))にオブザーバーとして参加をお願いしている。本日もご参加頂いている。
(議事の公開等)
- 各会合ごとに議長より記者ブリーフィングをお願いする。自由な議論を確保するため、また国際協力に関する議論は二国間関係等に影響を与えうるため、議事は非公開とし、議場への立ち入りは委員・オブザーバー・事務局関係者に限る。
- 議事要旨は、会議後速やかに外務省ウェブサイトに掲載する。議事要旨では、冒頭発言については発言者を明示するが、質疑に関しては発言者を明示しないで、各委員の発言の概要を記述する、という提案をした上で委員のご議論と意見の一致を頂きたい。議事要旨の案は公表前に発言者にご確認頂く。
- 会議での配布資料は、外交政策の円滑な実施や相手国政府との関係上公開が不適当と判断される資料等を除き、原則として議事要旨とともに外務省ウェブサイトに掲載する。
(5)意見交換
(渡辺議長の問題意識)
渡辺議長より、当有識者会議の前身の「ODA総合戦略会議」での経験・反省をふまえて、次のような問題意識が述べられた。
- ODA総合戦略会議は、ODA大綱・中期政策・国別援助計画・「点検と改善」といった重要文書を発信するベースとなった。
- 一方、ODA戦略を真正面から論ずる時間がなかった。特に、東アジア共同体構想、対中円借款の供与停止、アフリカの最貧国援助、コモンファンド、ポスト・コンフリクト国への援助等の重要な課題に議論が及ばなかった。
- 国別援助計画は非常に良いものができたが、一方で、分野別の議論や方法論、卒業政策、国際連携と協調の方法等の議論は手薄となった。当有識者会議では積極的に議論してほしい。
- 当有識者会議は外務大臣の諮問機関ではあるが、積極的な発信をしたい。そのメッセージを外務大臣に海外経済協力会議で発言してもらうに値する、積極的な提言を行っていきたい。
(議事録の公開について)
【発言者の氏名を特定した議事録を公開するべきとの意見】
- 一般会計のODA予算が(10年間で)38%削減される中、ODAへの国民の支持を得るためには、透明性の確保は極めて重要。議事要旨の公開だけでは、一般の国民の理解を得られない。「ODA総合戦略会議」でも二国間の議論はあったが、議事録は公開された。教育再生会議でも、発言者の氏名を特定して議事録を公開するなど、行政情報の公開は、安倍内閣の方針にも合致。
- ODA総合戦略会議で公開されていた議事録を、当有識者会議で公開しないとするのであれば、特段の理由が必要。
【発言者の氏名を特定した議事録の公開に慎重な意見】
- 個々の意見すべてを掲載するのは、煩雑な面がある。反対意見も入れて、論点をコンパクトにウェブサイトで発表するのがよい。
- 当有識者会議の議論は、海外経済協力会議等での議論に繋がっていく可能性があることを想定すると、機微に触れる問題が出てきうる。すると、特に経済界代表者はビジネスにも障害をきたすので、発言に制約を受けてしまうだろう。それは当有識者会議にとって得策ではなく、分かりやすい、コンパクトな要旨を公表する方がよい。
- 議論の過程で煮詰まっていないものを公開すると、それが一人歩きしてしまうことがあり得る。ある程度煮詰まったものをここまで公開しようという合意を委員の間で作りつつ、できるだけ公開していく方法がよい。
- 発言者の氏名を特定して発言がすべて公開されることになると、どうしても自由な発言が制約される。組織にとらわれず個人の立場から自由な発言がされる方が、よい議論ができる。結論を要旨として出して、ほかにこのような個別の意見があったということを書けば足りる。
- 以上の議論を踏まえ、議長から以下の案が提案され、委員の了承を得た。
- 当有識者会議において、委員が自由な個人の立場で発言できるようにすることは重要。その観点から、発言者の氏名は特定しない。
- 一方、国民の理解を得るためには透明性確保が重要である。そこで、特定の事項について合意があった、あるいは意見の相違があった等の議論の「彩り」がそのまま分かる形で、かつコンパクトで読みやすい議事要旨を事務局が作成し公表することにする。
- 公表前に、議事要旨の案は、各委員にご確認頂く。
(6)次回会合の日程
- 第2回会合の日程は、5月9日(水曜日)10時~12時を予定。
- 今後の議題については、本日の会合で出された意見を踏まえつつ、議長が事務局と相談して一案を示すこととされた。議長より、次回の議題は委員に前もってお知らせするので、お考えをまとめてきて頂き、発言をコンパクトにまとめてほしい旨述べた。