ODA総合戦略会議議長・議長代理殿
1.本会議はODA大綱や国別援助計画の検討を通じ、人類の共通課題や我が国の安全と繁栄に対してODAをより効果的に貢献させるための議論を行っている。だが平時のODAとともに、非常時の経済協力のあり方も全く考察の外に置くわけにはいかない。非常時のわが国の政策が平時の開発協力と矛盾したりその効果を減殺してはならないものであって、両者は補完的に同じ目的を達成するものでなければならない。昨年末に小泉首相に提出された「国際平和協力懇談会」報告書においても、平時以外のODAの役割の検討が謳われている。
2.これまで湾岸危機・アフガニスタン攻撃のような国際危機が発生した場合には、我が国はポストコンフリクト国の復興等に対してODAを含む資金的・人的支援を実施し、また要請されることがあった。またNGOを通じても貢献を行った。
3.現在、イラク攻撃・北朝鮮問題をめぐり、我が国は大きな外交的課題に直面している。状況の展開や日本政府の方針によっては、再び我が国の大きな資金的・人的関与が必要となる可能性が高い。しかしながら、これらをめぐる我が国の外交政策、および資金的・人的関与のあり方については、政府は説明責任を十分果たしているとはいえないし、国民レベルでの論議や合意形成が十分行われているとはいえない。
4.今般、ODAをもって特定の政治的立場に誘導することを容認する論調や、イラク攻撃後の複数周辺国への復興支援の議論があるようだが、いずれもODAの運用として問題が多く、再検討を要する。
5.我々は、ODA総合戦略会議において、できるだけ早い機会にイラク攻撃を含む非常時の経済協力のあり方につき討議を行うことを提案する。具体的には以下のような論点を含む(これに限らない)。
(1) |
紛争・戦争の事前予防のためにODAが果たすべき役割 |
(2) |
非常時の経済外交に関する国内合意形成過程 |
(3) |
非常時に外交上の支援獲得のためにODAを使用することについて |
(4) |
事後的な復興支援を戦費負担に関する方針 |
2003年3月18日
大場健一
伊藤道雄
磯田厚子