(資料4)
平成15年1月27日
ODA大綱見直しWT
本資料は総合戦略会議における政府開発援助大綱見直しの議論の前提として論点の整理を行ったものである。
1. 構成
「基本理念」、「原則」、「重点事項(重点地域、分野)」、「実施上の配慮点」、「実施方針(政府開発援助の効果的実施のための方策)」、「政策立案・実施体制」、「内外の理解と支持を得る方法」という構成とすることで概ね意見が一致した。以下に、この構成に従って論点を整理した。
2.基本理念
(1) |
ODAの目的
(イ) |
ODAの目的としては、(a)人道的な観点、(b)相互依存の観点(「国力相応の責務」やグローバリゼーションの視点も含む。)、(c)我が国の安全と繁栄(例としてエネルギー等の対外依存を挙げる意見もあった。)の要素が挙げられることで意見が一致した。
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(ロ) |
「基本理念」の具体的表現ぶりとしては、「国益」という言葉は多義的なものであるので、「我が国の安全と繁栄」という言葉を使うべきことで概ね意見の一致を見た。 |
(ハ) |
上記(イ)の各要素を記述する順番については、特に意見の一致はみられなかった。
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(2) |
ODAの背景となる国際社会の特徴
(イ) |
ODAの背景となるグローバリゼーションの進んだ国際社会の特徴については、(a)貧富の格差の拡大、(b)民族的・宗教的対立と紛争、テロ、大量破壊兵器の拡散等の不安定要因の深刻化、(c)環境等の地球規模問題、(d)人権及び民主主義の抑圧の存在が挙げられることで意見が一致した |
(ロ) |
なお、上記諸点の一部を感染症等も含め「人間の安全保障への脅威」という観点からも整理しうるという意見も支持をされた。 |
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(3) |
「アジア重視」
(イ) |
「アジア重視」を「基本理念」の中できちんと位置づけるべきとの意見が多く出される一方で、アジア重視の考え方は「重点地域・分野」の箇所に入れれば十分との意見も出された。また、いずれにせよ、「基本理念」に最低限アジア重視の考え方をきちんと導ける論理を記述すべきとの指摘も出された。 |
(ロ) |
この関連で、「基本理念」で、我が国のアジア諸国への援助が一定の成果を収めたことを指摘すべきとの意見が多く出されたが、その表現ぶり(「一定の」、「かなりの」等)について異なる意見があった。また、成果に言及するなら問題点があったことも言及すべきとの意見も出された。 |
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(4) |
その他
(イ) |
「基本理念」部分の論理構成として「ODAの目的」(上記(1))→「国際社会の特徴」(上記(2))とする順番の方がメッセージとして明快ではないかという意見がある一方、ODAの責務性を強調する観点から「国際社会の特徴」→「ODAの目的」の順番の方が良いのではないかという意見も出された。 |
(ロ) |
「基本理念」において「平和構築」(または、「平和の定着」、「紛争後の復興支援」等)に言及すべきことで意見が一致した。 |
(ハ) |
「基本理念」に、ODAが国民参加の下で行われることを盛り込むべきことで意見が一致した。この関連で、主語を「日本は、NGO、個々の国民が協力して国民参加の下」とすべしとの意見が出された。 |
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3.原則
(1) |
総論
ODA大綱の「原則」は、ODA大綱の重要な構成要素であり、我が国の独自性を明確にするものとしてとしても引き続き必要であることで意見の一致を見た。
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(2) |
「原則」柱書きの内容
(イ) |
現行ODA大綱の「原則」柱書きにある「相手国の要請」について、我が国の主体的判断という観点から再考する必要があるという意見も出されたが、残すことで意見が一致した。なお、この関連で文章の主語を明確にすべきとの意見が支持を得た。 |
(ロ) |
また、「総合的に判断」の文言は、ODAの機動性の観点から引き続き用いるべきことで意見が一致したが、他方、その運用については説明責任が果たされるべきであるとの指摘がなされた。 |
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(3) |
「原則」の内容
(イ) |
環境と開発を両立させるとの原則については、現行大綱の文言にかえて、「開発にあたっては環境的要因を(最大限)尊重(又は、重視)する」という意見が大勢を占めた。また、「受け入れがたい環境ないしは社会的影響を伴うものに関しては回避する」との意見も出された。 |
(ロ) |
軍事的用途等への使用を回避するとの原則については、重要な方針であるので現行のとおりで良いとの意見が大勢を占めた。他方、第二原則が平和構築等におけるODAの活用の制約要因になっているとの指摘がなされ、運用方法を改善すべきであるとの意見が出された。 |
(ハ) |
開発途上国の軍事費、大量破壊兵器の開発・製造の動向等に十分注意を払うとの原則については、同じ軍事関連である第二原則とまとめて書くべきとの指摘があったが、両原則の趣旨が異なることから、現行のとおりで良いという意見が大勢を占めた。 |
(ニ) |
開発途上国の民主化の促進、市場志向型経済導入の努力並びに基本的人権及び自由の保障情況に十分注意を払うとの原則に関しては、「市場志向型経済導入の努力」については、90年代初頭の国際情勢を背景としたものなので、もはや不要ということで、意見が一致した。また、「平和構築」の概念も含めれば良いとの意見も出されたが、むしろ「平和構築」は重点分野とすべきであるという意見が支持を得た。 |
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4.重点事項(重点地域・分野)
(1) |
重点地域
(イ) |
「重点地域」の考え方については、アジアを重視する現行ODA大綱の考え方で良いことで意見が一致した。 |
(ロ) |
アジアを重視する理由として、(イ)国益のためにアジアが重要であること、(ロ)アジアの経済発展は日本のODAの成功例であること、(ハ)アジアにおける援助卒業国による南南協力が重要であることの3点とすべきとの意見が大勢を占めたが、南南協力には問題点があることから現行ODA大綱の記述ぶりで良いという意見も出された。 |
(ハ) |
アジア以外の地域については、貧困削減の観点からアフリカも重要であるとの意見も出された。 |
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(2) |
重点分野
重点分野については、新しい開発課題を巡る最近の動向を踏まえ、以下のとおりとすることで意見が一致した。
(イ) |
「地球的規模の問題への取り組み」
「地球的規模の問題への取り組み」については、引き続き一番目の重点分野とすることで意見が一致した。ただし、その際、環境問題や人口問題のみならず、グローバリゼーションに伴う格差拡大の問題や感染症の問題についても言及すべきであることで意見が一致した。 |
(ロ) |
貧困削減
現行大綱でいう「基礎生活分野(BHN)」については、むしろミレニアム開発目標(MDG)等を反映しつつ、「貧困削減」として整理すべきことで意見が一致した。 |
(ハ) |
平和構築
新たな分野として「平和構築」を加えることで意見が一致した。ただし、「平和構築」は広い概念なので、説明をきちんとする必要がある旨の指摘があった。 |
(ニ) |
「政策支援及び人造り等」
「政策支援」の概念を現行大綱の「人造り等」に加えることで意見が一致した。 |
(ホ) |
「インフラストラクチャー整備」については、引き続きニーズが高く、経済・社会開発にとって重要との観点から引き続き重点分野とすることで意見が一致した。 |
なお、現行大綱で挙げられている「構造調整等」については、過去の世銀のいわゆる構造調整アプローチを念頭に置かれたものであるから、項目をたてる必要はないとの意見が一致した。ただし、政策支援への言及の中で、現行大綱の「構造調整等」で書かれている内容について整理することが必要であることで意見が一致した。
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5.実施上の配慮点
現行ODA大綱4.における開発における女性、社会的弱者、貧富格差・地域格差等への配慮については、新たに「実施上の配慮点」という項目を設けてその中で整理すべきことで意見が一致した。具体的には、「社会的配慮(ジェンダー、子供、貧困格差等)」、「現地住民の参加への配慮」、「被援助国の国内地域格差への配慮」がこの「実施上の配慮点」として整理されることで意見が一致した。
6.実施方針(政府開発援助の効果的実施のための方策)
(1) |
「実施方針」部分に含むべき論点として「国別援助計画」、「連携」、「透明性(情報公開等)」、「不正・腐敗及び目的外使用の防止」、「評価」、「人材の育成及び確保」、「開発研究」が挙げられることで意見の一致を見た。
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(2) |
ここでいう「連携」とは、国内における連携(国民参加)、他の援助国との連携(援助協調、南南協力)、国際機関との連携という3つの次元の連携があるということで意見が一致した。
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7.政策立案・実施体制
「政策立案・実施体制」については、自由民主党「ODA改革の具体的な方策」(昨年12月)等を基に政府が改善しようとしている内容につき簡潔にわかりやすく記述すべきことで意見が一致した。
8.内外の理解と支持を得る方法
(1) |
我が国国民の理解と支持を得ることがODAにとって重要であるとの観点から、開発教育、広報、情報公開の関連記述を充実させるべきとのことで意見が一致した。
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(2) |
特に、開発教育について、内容を詳細に書く必要はないものの、狭義の開発教育にとどめず、地球市民として途上国問題を考える教育にも言及すべきであることで意見が一致した。
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(3) |
情報公開については、評価を含めるべきではないかとの意見が出された。
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(4) |
情報公開の関連で、大綱の運用・実施状況について定期的に評価・公表するとの内容も盛り込むべきであることについて意見の一致を見た。
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