ODAとは? ODA改革

最近のベトナム経済情勢と日・ベトナム経済関係

(資料8)

平成14年9月

1.ベトナム概況

正式国名 ベトナム社会主義共和国
面積 330,991平方km2(九州を除いた日本の面積に相当)
人口 7,768万人(2001年1月現在)
首都 ハノイ
人種 キン族(越人)86%、約50の少数民族
言語 ベトナム語
宗教 仏教80%、カトリック9%、カオダイ教、ホアハオ教
議会 一院制(定員498名、任期5年)


2.経済・総論

(1)越経済は、ドイモイ(刷新)政策による市場経済システムの浸透を背景に、92年~96年の5年間、順調な外国投資の流入、輸出拡大が機関車役を果たし、平均GDP成長率8.9%を達成した。特に、95年には9.5%、96年には9.3%を達成し、96年半ばの第8回党大会で「2020年までの工業国入り」を目標に打ち出した。

(2)しかし、97年に入り、経済成長にブレーキがかかり始め、GDP成長率は97年8.2%へと低下した。
 この要因としては、(1)投資環境の未整備についての現実認識の広がり、97年央よりのアジア経済危機による外国投資の大幅減少(96年約85億ドル→97年約47億ドル)、(2)外貨バランス維持のための経済成長に必要な資機材の輸入制限、(3)金融システムの未整備、金融不祥事の多発、貸し渋りによる企業の資金不足、(4)豊作貧乏による農民(国民の7割)の購買力低下、等が挙げられる。
 このように越経済のパフォーマンスが悪化する中で、97年5月にはハノイ近郊タイビン省における地方官僚の汚職に端を発した農民暴動、11月にはホーチミン市近郊ドンナイ省における教会の土地収用を巡るカトリック系住民のデモ、警官隊との衝突事件が発生した。これらの事件により、越指導部内では、ドイモイの進展から取り残された農村部の開発、貧富の差の是正等の必要性が強く認識されると共に、急速な市場経済化が政治体制に及ぼす影響(「和平演変」)への警戒感も高まった模様。

(3)その後、越は、97年央のアジア経済危機による周辺国通貨の下落に対応し、これまでに3回に亘り合計約16%の為替レート引き下げを実施したが、依然割高であり、越の競争力を低下させた。アジア経済危機の影響は、98年以降、ボディーブロー的に越経済に及び、99年に入ってもその影響から脱し切れなかった。
 特に外国投資は、主要投資国がアジア経済危機の影響を受けたアジア諸国であったこともあり、96年約85億ドルから97年約47億ドル(▲44.2%)、98年約37億ドル(▲22.8%)と急減し、99年約15億ドル(対前年比▲57.2%)と減少傾向が続き、2000年になって約20億ドルと持ち直し、2001年には24.6億ドルまで回復した。また、1件当たりの投資額は99年に5.1百万ドル、2000年に5.6百万ドルを記録したが、2001年には3.3百万ドルと、88年に外国投資法が施行されて以来、最も低い水準となり、大規模の投資案件が伸び悩む中、中小規模の投資案件が増えている状況を示している。
 貿易面では、2001年の輸出が約151億ドルと2000年比4.5%の伸びを示したが2000年の対前年比伸び率(24.0%)を大きく下回り目標の約9割しか達成できなかった。農産品(コメ、コーヒー)及び原油の価格低迷のため、数量の増加の割に輸出金額の増加に結びついていない。2001年の日本への輸出は円ベースで対前年比+11.3%となっている。
 GDP伸び率は、このような経済状況を反映し、98年5.8%、99年4.8%と低下してきたが、2000年に入って6.7%、2001年もほぼ横這いの6.8%を達成し、漸く回復基調に入ったと見られている。
 インフレ率は、98年の+9.2%から99年+0.1%、2000年-0.6%、2001年+0.8%となっており、国内需要の減退による停滞が見られている。
 失業率は、99年に7.4%とピークを迎えたが、その後、2000年6.44%、2001年6.28%と若干改善の兆しが窺える。但し、都市部では更に高くなっている。

(4)このような状況の中で、越は、(1)2003年までにAFTAの関税率削減目標(0%~5%へ)の達成義務、(2)APECにおける自由で開かれた貿易・投資のための個別行動計画の策定、(3)WTO加盟交渉等により、今後、更に地域経済、国際経済への統合を進めて行かざるを得ない見通しであり、越経済の競争力強化を図る必要性に迫られている。
 このため、越は、(1)大半が赤字といわれる国営企業約5、800社の株式化、(2)国内退蔵資金(金融機関への貯蓄は全貯蓄のわずか12%)の活用のための郵便貯金制度の導入(99年8月より開始)、証券取引センター開設(2000年7月、ホーチミンに開設)、(3)金融システムの改革等による競争力強化に努めている。また、99年9月には我が国とは「新宮澤構想」による対越支援実施(経済改革支援借款200億円)に際して民間セクター育成プログラムの行動計画(AP)に合意したところ、この着実な実施により、越経済の構造改革、競争力強化、投資環境改善等の大きな成果をもたらすことが期待されている。


3.経済・個別項目

(1)農業については、北部紅河デルタと南部メコン・デルタが二大生産地であり、ドイモイ政策による合作社廃止、自作農化により、生産意欲が高まった結果、89年にコメの自給達成のみならず輸出を開始し、2001年に355万トンを輸出するなど世界第2位のコメ輸出国となっている。また、コーヒー、ゴム、カシューナッツなども生産、輸出されている。
 水産ではエビ、イカ、林業では木材、香木、籐竹製品が輸出されている。
 鉱業では無煙炭、燐鉱石、鉄鉱石、ボーキサイト、クローム、錫などの鉱物資源があるが、長期にわたる戦争などのため資本・技術の不足から十分に開発されていない。かかる中、南部ヴンタウ沖でソ連(当時)の援助により86年から4万トンの規模で商業生産が開始された原油は、2001年には1,675万トンへと飛躍的に増加しており、工業化を目指す越にとり大きな希望となっている。
 工業では、繊維、手工芸品、食品加工が中心。

(2)貿易については、2001年は輸出約151億ドル、輸入約160億ドルであり、約9億ドルの入超。主な輸出品は原油、繊維製品、水産物、履き物類、コメ等、主な輸入品は機械機器・同部品、石油製品、衣料品材料、鉄鋼等である。

(3)対越投資については、88年に外資法の公布後、着実に増加し、越経済の牽引役を果たしており、2001年末まで、累計で3,520件、総額約399ドルとなっている。投資分野は工業、建設、ホテル・観光、運輸・通信、石油・ガス、サービスと続いている。主要投資国は、シンガポール、台湾、英国、日本、香港、韓国である。


4.我が国との関係

(1)貿易
 越の対日貿易については、2001年対前年比輸出11.3%増の3,167億円、輸入1.7%増の2,164億円となり、越側が1,003億円の出超となっている。対日輸出では繊維製品、魚介類や原油が主要品目。輸入では一般機械、電気機械、繊維品等が主要品目である。

(2)タオル・セーフガード問題
 2001年2月26日、日本タオル工業組合連合会より経済産業大臣に対し、タオルに関する繊維セーフガード措置の発動要請(全輸入量のうち、中国80%、越15%)。4月6日、経済産業省が調査開始を決定し、同16日にその旨官報に告示。その間、越側はコアン商業大臣発平沼経済産業大臣宛書簡をもって、タオルを初めとする繊維製品の日本向け輸出を阻害する措置を日本が採らないよう要請越した。これに対し、平沼大臣より、我が国はWTOのルールに従って、調査開始を決定した旨の返書を発出。
 当初、調査開始後6ヶ月以内に発動の是非を決定することとされていたが、経済産業省は調査期間を2回に亘りそれぞれ6ヶ月間延長する決定を行い、調査期間終了は本年10月とされている。

(3)投資
 我が国の対越投資有効案件の累計は、2001年末まで328件、約35.2億ドルとなっており、国別ではシンガポール、台湾、英国に次ぎ第4位の投資国となっている。投資分野は、セメント、自動車組立、通信網整備等幅広い分野に亘っている。しかし、投資の本格化に伴い、越での投資の難しさ(煩雑、不透明な投資手続き・法制度、政策の朝令暮改等)が一層明らかになってきている等の懸念要因も存在しており、99年は約0.62億ドル、2000年は0.8億ドルと激減したが、2001年には前年比約2倍の1.6億ドルを記録した。





(参考)ベトナム経済

1.主要経済指標

一人当たりGNP 388米ドル (2000年:IMF資料)
経済成長率 6.8% (2001年暫定値:越政府発表)
消費者物価上昇率 0.8% (2001年暫定値:越政府発表)
失業率 6.28% (2001年:越政府発表)
対外債務 125億ドル (2001年末見込み:越財務省公表)
為替レート 1米ドル≒15,200ドン (2002年4月の実勢)


2.貿易・外国投資

(1)貿易

総貿易額(2001年) [輸出]15,100百万ドル
[輸入]16,000百万ドル
主要品目(2001年) [輸出]原油、繊維製品、水産物、履き物類
[輸入]石油製品、機械機器・部品、衣料品材料
貿易相手国(2001年) [[輸出]日本、中国、米国、シンガポール、豪州
[輸入]シンガポール、日本、台湾、韓国、中国


(2)外国投資

3520件、約399億ドル(2001年末まで:越計画投資省)

国 別: (1)シンガポール (2)台湾 (3)英国 (4)日本 (5)香港 (6)韓国
分野別: (1)重工業 (2)軽工業 (3)建設 (4)観光・ホテル (5)石油・ガス (6)運輸・通信


3.主要産業

(1)農業(総労働人口の70%以上):米、ゴム、とうもろこし、砂糖きび、果実、綿花、ジュート、タバコ、コーヒー、茶等

(万トン、籾換算)
  1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001
コメ生産 2,600 2,400 2,640 2,770 2,914 3,139 3,255 N.A.
コメ輸出 210 215 305 355 380 455 350 355
89年に自給達成。コメ輸出はタイに次ぎ世界第2位の輸出国。


(2)水産業:淡水魚漁業・沿岸漁業・養殖(エビ、イカは重要な輸出品)

(3)林業・鉱業:原油、無煙炭、燐灰石、鉄鉱石、ボーキサイト、クローム、錫、珪等
(万トン)
  1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001
原油生産 630 700 770 860 957 1,260 1,500 1,550 1,675





(参考)日・ベトナム経済関係

1.我が国の対ベトナム貿易

(財務省貿易統計)     (億円)
  1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001
日本の輸出 658 864 1,239 1,548 1,738 1,851 2,129 2,164
日本の輸入 1,378 1,614 2,195 2,644 2,289 2,230 2,846 3,168
総  額 2,036 2,478 3,434 4,192 4,027 4,081 4,975 5,332
日本から見た収支 -720 -750 -956 -1,096 -551 -379 -717 -1,004
(注) 越にとり、我が国は最大の貿易相手国

  輸 出 輸 入
日本の貿易に占める越のシェア(1999年) 0.4 0.6%
越の貿易に占める日本のシェア(2001年) 16.6% 13. 7%


2.投資関係

 日本の投資認可累計:328件、35.2億米ドル(2001年末まで、越計画投資省)

(越側統計)   (億米ドル)
  1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001
海外よりの投資総額 37.22 65.24 84.97 41.77 36.57 15.67 19.89 24.65
日本よりの投資総額 3.33 11.30 5.91 6.57 1.08 0.62 0.81 1.60


3.その他

(1)日本商工会会員数(2001年4月現在)

ハノイ日本商工会会員数 109社
ホーチミン市日本商工会会員数 225社


(2)在ベトナム邦人数

(2001年10月1日現在、在越大及び在ホーチミン総調べ)
約2,700人(北中部約1, 000人、南部約1, 700人)

(3)ベトナムへの日本人旅行・渡航者数の推移(越観光総局統計)

  1993年 1994年 1995年 1996年 1997年 1998年 1999年 2000年
海外よりの投資総額 31,320 67,596 119,540 118.310 122,083 95,258 113,514 152,755
(注)2001年には約20万人が旅行・渡航した見込み
このページのトップへ戻る
目次へ戻る