平成14年6月27日
26~27日、カナダのカナナスキスにて行われたG8サミットの概要以下の通り。
1.全般的評価
(1) 今次サミットは、(イ)2001年9月11日の米国での同時多発テロ事件、その後の米露関係を始めとするG8諸国間の協調強化、(ロ)2001年11月のWTOドーハ閣僚会議、2002年3月の開発資金国際会議から8月下旬のヨハネスブルグ・サミットに連なる一連の開発関連会議を通じた国際社会における開発、就中アフリカ問題に対する関心の高まり、(ハ)開発に当たり、民主化、健全な経済運営を軸足としたアフリカの自助努力(オーナーシップ)の発露である「アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)」の発表(2001年7月)、などを背景として開催された。
(2) このような中で、「サミットの原点」に立ち戻るべしとの議長国カナダのクレティエン首相の意向を反映した議事運営(リトリート方式、行事簡素化、宣言の廃止等)がなされた。その結果、テロ対策、開発を含む世界経済、アフリカ、及び地域情勢につき、首脳間で自由且つ率直で実りの多い意見交換を行うことができた。
(3) 今次サミットでは、前述の通り宣言が廃止された代わりに、実際の首脳間の議論をできるだけ反映した「議長サマリー」が議長国の責任で取り纏められ、発出された。
加えて、今次サミットに至るG8間の作業の成果である以下のような文書も併せて発出された。
(a)「大量破壊兵器及び物質の拡散に対するG8グローバル・パートナーシップ」、(b)「交通保安に関するG8協調行動」、(c)「G8アフリカ行動計画」、(d)「万人のための教育への新たな焦点」等。
(4) また、ロシアの2006年議長国就任が合意されるなど、G8の未来に関する歴史的な決定が行われた。
(5) なお、小泉総理は、今次サミットの機会を捉え、25日に日加、日米、26日に日英、27日に日露の二国間会談を行ったほか、ワールド・カップ観戦のために日本を訪問するシュレーダー独首相と帰路を共にした。
2.具体的成果
(1)テロ対策
テロ対策については、国際的なテロリズムの根絶のため、今後とも、G8として一致団結して取組を強化していくことを確認した。また、米国はテロ対策を今次サミットでの最重要課題ととらえ、次に述べる交通保安及び大量破壊兵器の不拡散に関するイニシアティブを提案。先ず、人やコンテナ等の国際的な移動にかかるテロ対策・安全強化を目的とするイニシアティブが発出された。
さらに、安全保障・軍縮、テロ対策を含む不拡散、環境保全の観点から、「大量破壊兵器及び物質の拡散に対するG8グローバル・パートナーシップ」(10年間で200億ドルを上限)が、実際の協力を進めるに当たっての「指針」とともに、打ち上げられた。本件は国際社会全体にとっての重要課題であり、日本も当面2億ドル余の貢献を行う旨等表明した。
(2)世界経済
世界経済の現状認識や展望についても当初の想定より多くの時間が割かれ、幾つかのリスク要因や最近の市場動向については注意しつつも、経済ファンダメンタルズは基本的には健全であることにつき一致した見方が示された。小泉総理よりは、「改革なくして成長なし」との考え方に立ち、経済活性化戦略等の基本方針を打ち出し、構造改革を着実に進めている旨説明した上、改革は今や後戻り出来ない、改革路線を歩み続ける旨述べたのに対し、各国首脳より温かい激励と高い評価が示された。
(3)開発政策(WSSDに向けて)
小泉総理より、「人づくりは国造り」との考え方に基づき、教育と保健の分野における協力を重視する旨説明した。また、総理よりヨハネスブルグ・サミットの成功のためには、環境保護と開発を共に達成させるための具体的行動が重要である旨指摘するとともに、議長国である南アフリカのムベキ大統領を支援していくことを呼びかけた。京都議定書については、日本が6月4日に締結した旨述べた上で、その速やかな発効を目指すべきである旨指摘。また、違法伐採問題への取組を含むG8森林報告書の実施の重要性につき述べた。
(4)アフリカ
アフリカ問題に関する国際社会の関心の高まりを受け、サミットに先立ち欧米はアフリカを念頭に、ODAの大幅増額、LDC産品の市場アクセス改善を発表した。また債務問題への一層の取組の必要性を表明した。議長国は本件をサミットの目玉とする考えであり、ブレア英首相も強い関心を示した。この中で今次サミットではアフリカの自助努力(オーナーシップ)の発露であるNEPAD(アフリカ開発のための新パートナーシップ)に対しG8が如何に支援していくかという形での議論を踏まえ「G8アフリカ行動計画」を採択した。
また、今回オバサンジョ・ナイジェリア大統領ほかNEPAD主要国首脳及びアナン国連事務総長をサミットに招待し、G8との会合がもたれた。小泉総理よりは、日本は「アフリカ問題の解決なくして21世紀の世界の安定と繁栄なし」との考え方に基づくアフリカ開発会議(TICAD)プロセス等の取組を説明した他、先般発表した日本の対アフリカ支援(LDC産品に対する市場アクセスの改善や、教育分野におけるODAの重点的支援等)を説明し歓迎された。
(5)地域情勢
主に中東情勢、アフガニスタン情勢及びインド・パキスタン情勢について活発な議論が行われ、日本をはじめ各国より、これらの地域にG8を始め国際社会が引続き関与していくことの重要性が指摘された。
中東情勢については、米国の果たす役割の重要性とともに、パレスチナ改革、治安問題への真剣な取組、パレスチナ国家の樹立に向けてパレスチナ人が希望を持つことの必要性につき認識が共有された。
小泉総理よりは、日本としても、アフガニスタン情勢や中東情勢に積極的に役割を果たしていく考えを述べるとともに、特に北朝鮮については、北朝鮮側が安全保障上及び人道上の諸懸念に前向きな対応を行うよう働きかけを継続していく必要があること、また、日本として北朝鮮との間の国交正常化交渉を通じて、拉致問題を含む諸問題の解決に努力する旨述べた。