(資料6)
1.ポイント
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13日の拡大会合には、独仏露及びアラブ諸国等を含め53カ国及び4機関が参加。 |
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今次会合では、治安を含む政治プロセスと経済開発プロセスとが密接不可分である旨改めて確認。 |
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イラク暫定政府として初めて包括的な復興戦略が発表され、今次会合は右を歓迎。 |
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政治プロセスについて、イラク暫定政府から、治安改善及び全国規模の選挙実施を含め予定通り行う強い決意が示され、国連から最大限の支援を行う旨、またドナー(米、日本、欧州委員会、加、豪、NZ等)から資金協力を行う旨意図表明。 |
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経済開発について、マドリッド会議でのプレッジを早急に実施する必要性につき確認。 |
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14日のドナー委員会会合では、信託基金によるプロジェクトが着実に進められている旨報告された。イランが新たに拠出(1000万ドル)を表明しドナー委員会メンバーとなった。欧州委員会及び韓国は05年に追加拠出を行う意向を表明。 |
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今次会合は、11月23日にエジプトで国際会議を開催するとの暫定政府の考えを歓迎。同会議に向けモメンタムを与えた。 |
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次回会合を来春を目途にアンマンで開催する旨合意。 |
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2.13日の拡大会合概要
(1)10月13日、日本政府は、第3回イラク復興信託基金ドナー委員会拡大会合を主催した。今次会合には、6月28日の統治権限委譲後に初めて開催されたドナー会合である。イラク暫定政府の代表団を含め、57カ国・機関が参加した。この幅広い参加により、国際社会とイラクの人々が長きにわたり団結するとのメッセージが改めて確認された。
(2)町村信孝外務大臣が冒頭スピーチを行い、信託基金への拠出金から4000万ドルを選挙支援に充てる旨発表した。城田安紀夫イラク復興支援等調整担当大使が議長を務めた。
(3)引き続き、バルハム・サーレハ・イラク副首相が基調演説を行った。イラクは完全に責任を有する政府を備え、平和で民主的な、市場経済を基本とする国家になるというイラク暫定政府の展望が示された。この展望によれば、イラクは国際社会に完全に統合され、また、将来、支援を必要とする国を助ける役割を果たすことを目指している。イラク人自ら復興のために描いた、今後3年間(2005~2007年)の戦略及び具体的施策を記述している国家開発戦略(NDS)が、今次会合において配布された。
(4)サーレハ副首相は、イラクの人々の大部分は幾多の障害があるにも拘わらず平和で繁栄したとイラクの建設を行いたいと願っていると述べ、国際社会による完全、即時かつ団結した支援を求めた。更に、同副首相は、財政における説明責任と透明性という原則、ダイナミックな民間セクターを基礎とした経済の多様性及び活性化の促進、医療・教育・住宅へのアクセスを通じて人的資源の開発といった暫定政府のコミットメントを強調した。
(5)その後、マフディー・アル・ハーフェズ計画開発協力大臣(戦略レビュー評議会議長)は、「マドリッド1周年」と題するスピーチを行い、長い道のりではあるもイラク人はこれまで相当な成果を上げてきたと発言した。これらの成果には、GDPの増加、健全な経済法制度の導入、信頼できる新通貨の導入、石油生産能力の向上、人権・男女平等の包括的な法制度整備、保健医療及び教育関連インフラの改善が含まれる。同大臣は、ドナーによる支援を効率的に実施する旨約束する一方、ドナーが現地のプロジェクト実施を加速化し、また、電力及び水分野を含む優先分野において追加的な支援を行うよう呼びかけた。
(6)イラク側のスピーチに対して、今次会合は、復興プロセスにおけるオーナーシップに基づくイラク暫定政府の決意と方途を歓迎した。NDSはイラク復興という将来にわたる仕事の礎となる。今次会合は、イラク復興のために強い国際協力が極めて重要であることを確認した。
(7)これらイラク側のスピーチに引き続き、セッションIの最後に、国連、世銀及びIMFによるスピーチが行われた。マロック=ブラウン国連開発グループ(UNDG)議長は、来る選挙の運営を行っている独立選挙委員会に対してあらゆる支援を惜しまない旨述べた。クリスチャン・ポートマン世銀副総裁は、世銀の復興・改革支援プログラムの進捗状況を説明した。加藤隆俊IMF副理事は、緊急ポスト・コンフリクト支援(EPCA)の承認を含むマドリッド会議以降の活動状況を説明し、今次会合はECPAの承認を歓迎した。
(8)セッションI終了直前に、イランから信託基金に1000万ドルの拠出表明がなされ、米国(アーミテージ副長官)からマドリッドでプレッジされた支援を選挙前の決定的な時期にある今こそ実施に移すべきである、米国は最大の懸案である治安及び石油にリソースを集中する方針であるので、他の重点分野である電力・水・衛生分野でのドナーの支援を期待する旨表明。ヨルダン(アワッダラー計画国際協力大臣)からヨルダン国内におけるイラク支援策を訴え、また、次回ドナー委員会会合をヨルダンで行う用意がある旨表明。
(9)セッションIIでは、出席した各国及び機関の代表が、イラク復興支援の現状を報告した。欧州委員会は、2005年の信託基金に対する追加拠出を含めて更なる支援を行う意図を表明し、韓国も2005年にIRFFIに追加拠出を行う意図を表明した。また、クウェートは相当額の支援を実施している旨表明し、日本は新たな直接支援案件の発表(注:12日発表の通信案件及び病院案件)について報告した。こうした報告から、マドリードでのプレッジが実際に現地で動いており、イラク人の能力構築も実施されていることが確認された。
(10)これに対して、イラク側は国際社会によるこれまでの寛大な支援に多大な謝意を表明した。イラクの緊急ニーズに鑑み、イラク側は既にプレッジ済みの支援の早急なディスバースメント、及び、ドナーに対し、イラク戦略レビュー評議会と緊密に連絡しつつ信託基金経由又は二国間支援の形で支援を行うよう再度呼びかけを行った。その関連で、今次会合は、イランによる1000万ドルのコミットメント表明を歓迎した。
(11)引き続き、世銀及びUNDGは、信託基金の進捗報告を行った。既にドナーが支援を表明した額の殆どが払い込まれ、拠出金は特定のプロジェクトに貼り付けられ、多くのプロジェクトの実施が開始されたと報告され、必要とされているプロジェクトの実施には追加拠出が必要なことが示された。拡大会合は、治安状況の制約にも拘わらず、重要な進展が見られると結論付けた。
(12)13日午後のセッションIIIにおいて、サーレハ副首相は、イラク暫定政府が治安改善のためあらゆる努力を行い、また、2005年1月までに完全に全国規模で選挙を実施することを含めて政治プロセスを予定通り進めるとの強固なコミットメントを表明した。この目標を達成するため、また、イラク独立選挙委員会及び国連の呼びかけに応え、いくつかの国が選挙プロセスを支援する旨表明し、また、いくつかの国は選挙支援の可能性を示唆した。選挙に関する議論において、独立選挙委員会委員長は選挙を公正かつ透明性をもって実施するとのコミットメントを再確認し、これまでの準備状況を説明し、引き続き国際社会による支援をお願いしたい旨述べた。国連事務総長イラク特別代表代行は国連による支援につき説明を行った。
(13)今次会合は、治安を含む政治プロセス及び経済開発プロセスが不可分であるとのサーレハ副首相の考えを確認した。今次会合は、11月23日にエジプトで国際会議を開催し、近隣諸国及び他の国際社会のメンバーが参加するとのイラク暫定政府の考えを歓迎した。
(14)セッションIでは、閣僚を含むイラク暫定政府高官は、経済改革、社会保障、インフラ整備、ガバナンス・市民社会といったテーマを扱う分科会において説明を行った。分科会ではNDSで示された復興ニーズが確認された。
3.14日のドナー委員会会合概要
(1)14日、日本政府は、イラク復興信託基金ドナー委員会会合を主催した。城田安紀夫イラク復興支援等調整担当大使が議長を務めた。イラクからハーフェズ大臣及び独立選挙委員会委員長等が出席した。ドナー委員会は日本政府及び城田大使に対して会合を準備し主催したことにつき謝意を表明した。
(2)5月のドーハ会合以降、トルコが1000万ドル以下の貢献である小ドナー国を代表してドナー委員会メンバーとなった。また、デンマーク及びニュージーランドが貢献額1000万ドル未満の小ドナーとなった。
(3)イランは1000万ドルの拠出表明を行い、新たにドナー委員会メンバーとなった。
(4)上記を踏まえ、豪州、カナダ、欧州委員会、インド、イラン、イタリア、日本、韓国、クウェート、ノルウェー、カタール、スペイン、スウェーデン、英国、米国及び小ドナーを代表してフィンランド及びトルコがドナー委員会メンバー国として確認された。
(5)ドナー委員会は世銀及び国連開発グループ(UNDG)信託基金調整官から詳細な報告を受けた。右報告は、信託基金の管理、運営及び資金管理上の事務を含むものであった。また、右報告の財務に係る部分には、ドナーによる支援の現状(金額、イヤーマーク等)及びプロジェクトのコミットメント及びディスバースメント状況が含まれる。更に、右報告には、信託基金によるプロジェクトの実施状況及び諸勧告について触れられている。
(6)ドナー委員会は信託基金調整官により示された進捗報告を歓迎した。同委員会は、信託基金による活動がイラク開発に係る優先順位にしっかりと統合されていると評価し、引き続き、イラク政府によるプライオリティを反映するよう求めた。更に、同委員会は、信託基金が可能な限りプログラム実施を加速化すべきである、また、信託基金がプロジェクトの実施に向け革新的なメカニズムを検討するよう求めた。ハーフェズ計画開発協力大臣は、二国間支援及び信託基金経由の支援を行う上で新しい方途を見いだすことが重要である旨強調した。
(7)ドナー委員会は、来年1月の選挙が重要であるとの見解を共有しており、UNDGクラスター11(選挙支援)の活動を含めた選挙の準備状況について説明を受けた。ドナー委員会は、タイトな日程の下で選挙準備を進めていること、及びUNDGがイラク独立選挙委員会(IECI)を支援していることを評価した。
(8)信託基金は、拠出された10億ドルの殆ど全額がイラク戦略レビュー評議会(ISRB)により承認された優先プロジェクトに割り当てられている旨報告した。ドナー委員会は、治安情勢にも拘わらず多くの承認されたプロジェクトが実施され始め、幾つかについては既に結果を出しているとの評価を下すとともに、追加的な拠出なしには、他の優先プロジェクトの資金が得られないことに留意した。今次会合では、イラク政府当局及び信託基金による案件形成、準備及び実施にとっての確固たる基礎が構築されていることが確認された。こうしたモメンタムに基づき、議長国(日本)は、信託基金がイラクの優先分野に資金を手当てするために追加的な拠出を行うようドナーに呼びかけた。
(9)IRFFIのアウトリーチ戦略(注:新規ドナーを見出すための戦略)についても議論され、ドナー委員会の各メンバーは、それぞれのアウトリーチ活動の現状を報告した。
(10)ドナー委員会メンバーは、イラク政府の開発戦略への支持とマドリード支援国会議でのプレッジを履行することへのコミットメントを改めて表明し、信託基金を通じてイラク国民に対してすべての可能な支援を行うと表明した。
(11)ドナー委員会は、第4回ドナー委員会会合を来春、ヨルダンで開催することに合意した。具体的な開催日は追って決定される。