(資料6)
平成16年2月5日
1.イラク支援の意義 
 戦後の廃墟から今日の繁栄を築いた我が国が、戦後の混乱の中で復興に向け努力している他の国に対しその国力に相応しい貢献を行うことは、国際社会において果たすべき我が国の責務です。2400万人ものイラクの国民が一日も早く正常な生活を送れるよう、我が国は、積極的に対イラク支援を進めていく考えです。
 我が国を含む国際社会はイラクを破綻国家、或いはテロの温床としないためにも、テロに屈することなく国際協調でこうした分野への支援を進めていく必要があります。
 また、対イラク支援を進める意味として、イラクの平和と安定を通じて我が国の原油輸入の約9割弱を占める中東地域の安定を確保することが、我が国のエネルギー安全保障の観点からも重要であることが挙げられます。
 こうした点に加え、イラク復興における我が国の貢献は、イラク国民ひいてはアラブ諸国との良好な関係を深めていくこととなります。
 我が国は、フセイン政権崩壊後、いち早く人道・復興支援を開始し、緊急人道援助支援等もあわせて、3月以来支援額は約1億1550万ドル(下記2.参照)に上っています。
 イラク復興国際会議において、我が国は当面の支援(主に2004年の復興需要に対応するもの)として、これまでの支援と併せて総額15億ドルの無償資金の供与(支援分野は電力、教育、水・衛生、保健、雇用等イラク国民の生活基盤の再建及び治安の改善に重点を置く)、2007年までの中期的な復興需要に対する支援として基本的に円借款により最大35億ドルまでの支援(分野は電気通信、運輸等のインフラ整備も視野に入れる)、総額50億ドルまでの支援を実施する旨表明しています。
 イラク国民からは、次の例のように累次にわたり感謝の声が寄せられています。
		
		
		| ― | イラク復興国際会議:統治評議会議長や暫定外相より川口大臣に対して謝意表明 | 
		
		| ― | バグダット市諮問評議会:「日本は口先だけでなく真にイラク国民を助けてくれている」 | 
		
		| ― | 我が国が支援した障害児センター所長:「涙が出る程感謝している」 | 
		
2.人道・復興支援 (計約1億1550万ドル)(注:以下、数値は全て概算)
				
| (1) | 国際機関経由の支援(約7600万ドル) 
	
									| (イ) | イラク緊急人道支援(約2950万ドル)(3/20及び4/9) 
| 1)WFP: | 食糧供給 |  
| 2)UNICEF: | 児童保護、教育、水・衛生 |  
| 3)ICRC: | 医療支援、生活物資配布、水施設復旧 |  
| 4)UNHCR: | 難民支援 |  |  
									| (ロ) | 文化遺産保存・修復、教育支援(200万ドル)(4/23) 
											
												| 1)文化遺産保存・修復 | 100万ドル、UNESCO経由 |  
												| 2)教育分野 | 100万ドル、UNESCO経由 
 |  
												| (イラク教育ニーズアセスメントのための人材育成を含む) |  |  
									| (ハ) | ウンム・カスル港湾浚渫プロジェクト(250万ドル)(4/25) 
| 概要: | ウンム・カスル港における緊急浚渫の実施 UNDP経由 |  
| 効果: | 港の運用を効率化、人道支援物資の搬入の円滑化 |  |  
									| (ニ) | イラク人道・復興支援(約4200万ドル)(5/16、5/21、7/4、10/17、04年1/16) 
| 1) | 「イラク復興雇用計画」:約600万ドル、UNDP経由 
| 概要: | バグダッドにおいてイラク人を雇用し、瓦礫の除去、ゴミ収集や建物の修復等を実施 |  
| 効果: | 延べ約3.5万人雇用創出、バグダッドの衛生状況の改善等 |  |  
| 2) | 「イラク初等教育再生計画」:約1000万ドル、UNICEF経由 
| 概要: | バグダッド、モスル、ナジャフ及びその周辺地域における学校の修復や学用品の供与等 |  
| 効果: | 3都市及びその周辺地域で約100万人の児童が裨益 |  |  
| 3) | 「中央配電所復旧計画」:約555万ドル、UNDP経由 
| 概要: | 中央配電所の施設の修復及び配電制御用のコンピュータ等の資機材の供与 |  
| 効果: | 電力の適正な管理による、病院等の人道的観点から重要な施設への安定的な電力の供給 |  |  
| 4) | カーズミーヤ教育病院緊急復旧計画:約364万ドル、UNDP経由 
| 概要: | カーズミーヤ教育病院の施設の修復および医療機材・器具の供与 |  
| 効果: | 医療サービスの改善、市民生活・衛生状態の向上 |  |  
| 5) | ハルサ火力発電所緊急復旧計画:約800万ドル、UNDP経由 
| 概要: | ハルサ火力発電所の施設の修復およびバスラ地域の送配電網の修復 |  
| 効果: | バスラ地域の電力供給の増加、市民生活・衛生状態の向上 |  |  
| 6) | 「イラク学校再建事業」:約610万ドル、UN-HABITAT経由(04年1/16) 
| 概要: | バスラ、サマーワ、ナシリア及びアマラの271校での学校修復 |  
| 効果: | 授業再開、建設従事者(延べ約38万人)の雇用機会の創出 |  |  
| 7) | 「コミュニティ再建事業」:約270万ドル、UN-HABITAT経由(04年1/16) 
| 概要: | バグダッド、サマーワ及びキルクークの社会的弱者(特に女性)の住宅、公共施設3000戸の再建及び生活インフラの整備 |  
| 効果: | 生活環境の改善、建設従事者(延べ約20万人)の雇用機会の創出 |  |  |  | 
| (2) | イラクに対する直接支援(約2900万ドル) 
	
									| (イ) | イラク内務省に対する警察車両620台の供与(約31億円(約2900万ドル))(04年01/16) 27都市に配備予定。サマーワには20台の車両が配備される予定。
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| (3) | NGO経由の支援(約1050万ドル) 
	
									| (イ) | NGOが行う緊急医療活動支援(約330万ドル)(3/20) 
| 1) | ジャパンプラットフォーム(JPF)合同チーム: ヨルダンで活動 |  
| 2) | ピース・ウィンズ・ジャパン(PWJ): イラク北部で活動 |  |  
									| (ロ) | NGO活動への追加支援(約520万ドル)(5/16、5/21、11/20及び12/11) 
| 1) | JPFがイラク国内で実施する医療プロジェクト、緊急物資の配布及びイラク・ヨルダン国境の難民支援等:約250万ドル(5/21 |  
| 2) | ヨルダンの「ハシミテ慈善財団」がイラクで抗生物質を始めとする医薬品等を配布するプロジェクト:約15万ドル(5/16) |  
| 3) | 国際NGO「ケア・インターナショナル」が乳児用点滴セット等の医療用具を配布するプロジェクト:約8.2万ドル(5/16) |  
| 4) | 日本サッカー協会からイラク・サッカー協会へのサッカー関連器材の寄贈に対する草の根文化無償協力(輸送支援)(11/20) |  
| 5) | JPFがイラク国内で実施する医療施設、教育施設等の応急修復等:約246万ドル
(12/11) |  |  
									| (ハ) | 人道・復旧支援(約210万ドル) (草の根・人間の安全保障無償資金協力を通じて実施)
 
| 1) | ウンム・カスル市の互助組織に対する、車両、医薬品等の供与 :約9万ドル(5/1)
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| 2) | バグダッドの自治組織に対する事務機器等の供与:約7万3千ドル(8/31) |  
| 3) | バグダッドの小学校8件および工業学校1件の整備 :約20万6千ドル(8/31)
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| 4) | バグダッドの障害児センターに対する家具・遊具等の供与 :約4万2千ドル(8/31)
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| 5) | モスル市のムスタクバル中学校の再建:約37万5千ドル(11/27) |  
| 6) | モスル市の下水処理施設4箇所の整備:46万ドル(11/27) |  
| 7) | ニネベ県の上水施設2箇所の整備:約23万ドル(11/27) |  
| 8) | ニネベ県に対する救急車10台の供与:62万ドル(11/27) |  |  | 
| (4) | 調査団・専門家の派遣 
	
									| (イ) | 在イラク日本大使館の再開(5/8) |  
									| (ロ) | 我が国の調査団・専門家のイラク派遣( 1)2)を除き実施) 
注:現地の情勢を踏まえる必要あり。
| 1) | 緊急開発調査団(JICA) |  
| 2) | 官民合同調査団 |  
| 3) | 政府調査団(累次) |  
| 4) | UNDP、WHO、世銀及びIMFによるニーズ調査への専門家派遣 |  
| 5) | 日・エジプト合同医療調査団 (7/8~15) |  
| 6) | UNESCOの調査ミッションへの専門家派遣 |  |  | 
| (5) | その他 
 国際交流基金によるTV番組「おしん」の無償提供への支援(10/27~放映開始)
 
 
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3.国際協調の構築
 我が国は、広範な諸国・国際機関の参加を得たイラク人道・復興支援に関する国際会議が早期に開催されるべきと考え、このため、国連等の関係国際機関がその開催に向けて積極的な役割を果たすことを求めてきました。その結果、イラク復興国際会議が10月23、24日にスペインのマドリッドで開催され、総額330億ドル以上という当初の予想を上回る巨額の資金協力の表明がなされ、対イラク支援を積極的に進めイラクを「破綻国家」としてはならないとの国際社会の強い決意が示されました。我が国が表明した支援は、内容、額、タイミングの観点から、各国より一様に高い評価を受けました。我が国の支援表明なしにマドリッド会議は成功しなかったとの声も各国から聞かれます。
4.連合暫定施政当局(CPA)との連携
 CPAを通じた人的協力。
5.アラブ・周辺国との協調
 ヨルダンの「ハシミテ慈善財団」を通じた対イラク医療支援の実施や日・エジプト合同対イラク医療協力など、アラブ諸国との協調を推進。
6.国際平和協力法に基づく協力
				
| (1) | UNHCRへの物資供与(3/28) UNHCRに対し1600人分の難民用テントを供与し、政府専用機2機でヨルダンへ輸送。
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| (2) | WFPに対する輸送協力 国連等の人道支援物資の自衛隊機(C-130H)によるヨルダンと欧州(イタリア)の間 の輸送。7月17日より8月12日まで約140トンの人道物資を輸送。
 
 
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7.周辺地域支援 (約3億2225万ドル)
				
| (1) | ヨルダン:無償資金協力(1億ドル)(3/23) | 
| (2) | パレスチナ:食糧援助(約420万ドル)(3/23)、新支援パッケージを表明(右援          助を含め、約2,225万ドル)(4/29) | 
| (3) | エジプト:小泉総理のエジプト訪問の際に2億ドルを越える支援を表明(5/24) |