(資料4)
平成15年8月20日
外務省
1. 経緯
政府は、7月9日に政府原案を公表し、8月8日までパブリックコメントに付すとともに、大阪、東京及び福岡において公聴会を行い、その結果を踏まえてODA大綱案を作成した。
3回の公聴会におけるコメントと200通以上のパブリックコメントについては、主要論点毎にとりまとめ、外務省のホームページにおいて公表している。
2. 主な意見
(I.理念)
- 目的
- ODAは、地球規模の問題(貧困や人権、環境保全)を解決すること、国際的合意に向けて貧しい人たちを優先的に援助することが目的であり、「国益」や「我が国の安全と繁栄」は盛り込むべきではない。
- ODAは日本の国益すなわち納税者である国民の広い利益を見据えた戦略的なものであるべきである。特に、国内資源に乏しい貿易立国である我が国が今後も安定的に生存、繁栄していくためには、世界経済の安定と繁栄、日本と各国の友好関係の維持、発展は勿論、さらには貿易投資等の経済活動をさらに増進することが重要である。
- 国益は確かに重要であるが、目先の小さな国益ではなく、もっと長期的視点に立った国際社会で信頼を得るということが重要。国益については、長期的・短期的スタンス、直接的・間接的国益に分けて考えることが大切。
- 基本方針
- 「平和、民主化、人権保障のための努力や経済社会の構造改革に向けた取組を積極的に行っている開発途上国に対しては重点的に支援を行う」とあるが、政府の改革が遅れている国の極度の貧困やエイズ問題を無視することにならないようにする視点が重要である。
- 「人間の安全保障」が加えられたことは評価する。実施に当たっては、「国益」と人間の安全保障が掲げる「世界益」との兼ね合いに力を注ぐ。
- ジェンダーをもっと強調すべきである。
- 「我が国が有する優れた技術、知見、人材及び制度を活用する」とあるが、それが必ずしも現地にとって最適なものとは限らず、現地の主体性を重視するとの観点から、同部分は修正するか削除すべきである。
- 現下の経済状況の下では、日本のODAにより対日輸出の増進が図れるような援助こそ大切である。
- 3. 重点課題
- 貧困削減について、「貧困削減を達成するためには、開発途上国の経済が持続的に成長し、雇用が増加するとともに生活の質も改善されることが不可欠であり、そのための協力も重視する。」は、経済成長至上主義であり、削除すべきである。
- 貧困削減における雇用創出の重要性を十分認識すべきである。
- 知的財産権保護が行き過ぎると難病治療薬の入手の問題や多国籍企業への途上国の在来技術の財産権移転の問題等が生じる懸念もあり、慎重に対応する必要がある。
- 途上国の持続的成長を支援するため、経済活動上重要となる経済社会基盤の整備とともに、政策立案、制度整備や人づくりへの協力も重視すること、民間の活力や資金を十分活用しつつ、民間経済協力の推進を図ることが述べられていることを評価するとともに、その着実な実行に期待する。
- 平和構築については、日本がもっと広い意味での国際平和活動に取り組むのかというビジョンをきちんと示して、その中で途上国への支援について何をすべきかということを示すべきである。
- 平和構築については、政治的中立性の確保が困難となる可能性やODA実施に際する武器使用及びODAと軍隊・自衛隊の密接な連携関係が促進される可能性があり、ODA大綱における「軍事的用途及び国際紛争助長への使用を回避する」とする原則を逸脱する恐れがあることから、ODAの重点課題として掲げるのは不適切である。
4. 重点地域
- 日本と緊密な関係を有し、日本の安全と繁栄に大きな影響を及ぼしうる東アジアを重点地域とするとともに、経済連携強化等を十分に考慮し、ODAを活用するといった従来の大綱と比べ我が国ODAを戦略的に活用する姿勢があらわれており、その方向性を維持すべきである。
- アジア重視は狭い国益主義が端的に表れている部分であるので、削除するべきである。重点地域は困窮度の高い地域(サハラ以南アフリカや南アジア等)に置くべきである。
(II.援助実施の原則)
- 運用基準、実施基準を公開して、運用状況を白書などを通じて説明すべきである。
- 民主化の促進、市場経済導入の努力、基本的人権及び自由の保障状況に十分注意を払う点は重要であるが、これがODAの制約条件になることは問題である。
- 軍事支出、大量破壊兵器・ミサイルの開発製造等に十分注意を払う点については、実効性が問題になっている。
(III.援助政策の立案及び実施)
- 援助政策の立案及び実施体制
- ODAの効率性、パフォーマンス向上に重要なのは、国別援助政策の立案プロセスであり、如何に各途上国の実情を正確に把握し、将来の援助政策立案に能力を発揮できる専門家の参加を実現するかが重要である。
- 要請主義の見直しについては、日本の貿易や投資を促進するために政策対話を強化することには反対する。
- 援助の受け手である住民の参加や直接対話が必要である。
- 国民参加の拡大
- 開発教育については、ODA理解促進のための教育ではなく、我々の側の国際協力のあり方など問題点も含め、南北問題の解決のためにどう行動するべきかについての教育とする。
- 広報については、途上国だけではなく、先進諸国に対しても我が国のODA政策に関する情報をより重点的に発信することで日本の立場が理解され、強化されるのではないか。
- 効果的実施のために必要な事項
- 評価の充実はODAの効果的実施のために極めて重要であり、第三者評価については、適切な人選が必要である。
3. その他の意見
対中ODAについて、見直し乃至廃止すべきである等の意見が多数寄せられた。