(資料3)
平成15年3月14日
対外経済協力関係閣僚会議
1.現行の政府開発援助大綱(ODA大綱)は、政府開発援助(ODA)について、内外の幅広い支持を得るとともに、援助を一層効果的・効率的に実施するために、平成4年6月に閣議決定された。その後、10年間を経過し、ODAを取り巻く情勢は、次のような大きな変化を遂げた。このような変化を踏まえ、ODA大綱の見直しを行うこととする。
(1)グローバル化の進展に伴い、また、一昨年9月11日の米国同時多発テロを契機として、途上国の開発が国際社会の課題としてますます重要になっている。
(2)「持続可能な開発」、「貧困削減」、「人間の安全保障」等の考え方や、「平和構築(平和の定着及び国造り)」等の新たな分野、さらには国連が定めた「ミレニアム開発目標」等がODAをめぐる議論の重要な柱となっている。
(3)我が国では、厳しい経済財政状況の下、ODAの戦略性、機動性、透明性、効率性の確保が一層求められている。
(4)NGO、ボランティア、大学、地方公共団体、経済界等、ODAの参加主体が多様化し、ODAへの幅広い国民参加が一層求められている。
2.ODA大綱の見直しにおいては、政府内において、別紙基本方針を踏まえつつ、政府開発援助関係省庁連絡協議会を通じて関係省庁と調整しつつ原案を作成する。ODA総合戦略会議における議論を踏まえるとともに、実施機関、NGO、経済界等からのヒアリング、パブリック・コメント等幅広い国民的議論を十分に尽くしつつ検討を行った上で、平成15年中頃を目途に対外経済協力関係閣僚会議における審議を経て、最終的な結論を得る。
(別紙)
政府開発援助大綱見直しの基本方針
1.基本理念
(1)現行の政府開発援助大綱(ODA大綱)は、人道的見地、国際社会の相互依存関係、環境の保全及び平和国家としての使命等を掲げるとともに、自助努力支援を基本とした、開発途上国における資源配分の効率と公正や「良い統治」の確保を図り、健全な経済発展を実現するよう努めること等を基本理念としている。
(2)ODA大綱の見直しにおいては、上記の要素を含めた「普遍的価値」とともに我が国にとっての安全と繁栄等を加えてODAの基本理念を明確に示す。
2.原則
(1)現行のODA大綱においては、「原則」は概ね次のとおり規定されている。
国際連合憲章の諸原則及び以下の諸点を踏まえ、相手国の要請、経済社会状況、二国間関係等を総合的に判断の上、政府開発援助を実施するものとする。
(1)環境と開発を両立させる。
(2)軍事的用途及び国際紛争助長への使用を回避する。
(3)開発途上国の軍事支出、大量破壊兵器・ミサイルの開発・製造、武器の輸出入等の動向に十分注意を払う。
(4)開発途上国における民主化の促進、市場指向型経済導入の努力並びに基本的人権及び自由の保障状況に十分注意を払う。
(2)ODA大綱の見直しにおいては、いわゆる「要請主義」について、狭義の要請主義にとどまらず、政策協議の強化等を図ることにより、相手国の経済開発・貧困削減等の総合的な援助需要に応える形で我が国の援助を位置づける観点から、そのあり方を検討する。
(3)また、現行のODA大綱が掲げる上記(1)の原則が我が国のODA政策において果たしてきた役割と機能を踏まえつつ、今後のあり方について検討する。
3.重点事項
(1)重点地域
(イ)現行のODA大綱は、アジア地域、とりわけ「東アジア地域、ASEAN諸国」を重点地域としている。
(ロ)ODA大綱の見直しにおいては、めりはりのある実施を前提に、今後ともODAの重点をアジア地域に置きつつ重点化を図る。
その際、アジア地域における発展状況、援助需要の変化及び経済連携強化等を十分に考慮する。
(2)重点分野
(イ)現行のODA大綱においては、「地球的規模の問題への取組み」、「基礎生活分野(BHN)等」、「人造り及び研究協力等技術の向上・普及をもたらす協力」、「インフラストラクチャー整備」及び「構造調整等」を重点分野としている。
(ロ)ODA大綱の見直しにおいては、現行ODA大綱の重点分野及び国際的開発課題の変化も考慮しつつ、次の諸点も踏まえて適切な規定を置く。
- 平和構築分野(平和の定着及び国造り)におけるODAの積極的な活用
- 「人間の安全保障」
- 国際的な開発目標(貧困削減等)
4.ODA政策の立案及び実施
これまでのODA改革に関する各般の提言も踏まえ、ODAの戦略性・機動性・透明性・効率性を確保するため、「政策立案・実施体制」、「効率的・効果的実施のために必要な事項」及び「政策の立案・実施上配慮すべき点」等の観点に沿って必要な規定を整理する。
(1)政策立案・実施体制
(イ)外務省が調整の中核となり、関係府省間の連携を強化し、かつその知見を活用しつつ政府全体としてのODA戦略・政策を立案する方策やプロセス。
(ロ)政府と実施機関(国際協力事業団(国際協力機構)、国際協力銀行)との連携強化及び実施機関相互の連携強化。
(ハ)ODA政策立案・実施における現地(在外公館及び実施機関現地事務所)の役割・体制強化。
(2)効率的・効果的実施のために必要な事項
(イ)被援助国にとって真に必要な援助について、各スキームの有機的連携も踏まえた総合的かつ重点が明確な国別援助計画の作成及び同計画に則った一貫性あるODAの実施。
(ロ)被援助国との政策協議の強化。
(ハ)他の援助国、新興援助国及び国際機関等との連携。
(ニ)NGOをはじめ、大学、地方公共団体、経済界等、様々な主体による国民参加型援助の推進。
(ホ)透明性の確保。
(ヘ)不正・腐敗、目的外使用の防止。
(ト)ODA評価の強化。
(チ)外部監査の導入等監査体制の強化。
(リ)専門性をもった援助人材の育成・確保。
(3)政策立案・実施上配慮すべき点
被援助国における次のような点に配慮する。
(イ)社会的配慮(ジェンダー、子供、貧富格差等)。
(ロ)現地住民の参加への配慮。
(ハ)途上国国内の地域格差への配慮。
(ニ)貿易・投資との関係。
5.ODAへの理解と支持を得る方法
ODAへの理解を一層深めるため、我が国のODAについての情報発信を強化すべく、以下のような内容につき規定を置く。
(イ)広報・情報公開。
(ロ)開発教育の普及。
6.ODA大綱の実施状況の公表
ODA大綱の実施状況に対する説明責任の観点から、毎年閣議報告される「政府開発援助(ODA)白書」においてODA大綱の実施状況について報告する。