ODAとは? ODA改革

最近のイラク情勢について
(イラク復興を中心に)

(資料5)

平成15年5月8日
外務省中東第二課


1.イラク情勢

(1)4月28日、第2回の内外イラク人会合がバグダッドで開催。周辺ではデモも行われたが 、前回欠席したシーア派最大のイラク・イスラム革命最高評議会(SCIRI)も含め、主要各派約300名が参加(前回出席者は約80名)。4週間以内に、暫定統治機構設立に向けた国民会議を開催することで合意。

(2)5月1日、ブッシュ米大統領は、空母「エイブラハム・リンカーン」のデッキ上において演説。イラクでの主要な戦闘は終了した旨発言。

(3)米復興人道支援局(ORHA)は4月21日よりバグダッド入りし、イラク国内で活動中。また、米軍等により大量破壊兵器の捜索が行われている。


2.国連における動向

(1)対イラク経済制裁は、これまでイラクが武装解除等の義務を履行してこなかったことから継続。また、制裁によるイラク国民の人道状況緩和を目的とした「オイル・フォー・フード」計画の期限が6月3日に到来。

(2)現在、制裁解除、大量破壊兵器の査察、石油管理制度等について、各国間での協議が行われているところ。

(3)ダ・シルバ人道調整官等、国連関係者が5月1日にバグダッド入りし、国連もバグダッドでの活動を再開。


3.周辺国等の動向

 4月18日、アラブ・イスラム8ヶ国外相(サウジアラビア、イラン、ヨルダン、クウェート、シリア、トルコ、エジプト、バーレーン(現アラブ連盟議長国))は、戦後のイラク問題を協議するためリヤドで会合を開催。共同声明を発出し、イラクの安定及び領土保全への各国のコミットメントを確認するとともに、各国がイラク国民に対し必要とされるあらゆる支援を提供する用意があること等を確認。


4.我が国の対応

(1)総理訪欧

(イ)小泉総理は、4月26日から5月2日まで、英国、スペイン、フランス、ドイツ及びギリシャ(EU議長国)を訪問し、欧州5ヶ国首脳との会談、日・EU定期首脳協議等を実施。各首脳との間で、将来に向けての国際協調の再構築が重要であり、復興過程における国連の関与が重要であるとの認識で一致。
(ロ)また、小泉総理より、イラク人のイラク人によるイラク人のための政府を速やかに樹立する必要性を強調し、我が国はイラク国民の生活基盤回復のため、我が国独自の支援、ORHAを通じた支援、国連・国際機関を通じた支援をアラブ諸国国や周辺国と協力しつつ進めていく旨説明。

(2)川口外相の中東訪問

(イ)川口外相は、4月26日から5月3日までヨルダン、イスラエル、パレスチナ自治区及びシリアを訪問。
(ロ)ヨルダンにおいては、川口大臣から、イラクの復興と中東地域の平和と安定に向けて、中東諸国と密接に協力していく意向を先方に伝えた。ヨルダン側からは、対イラク武力行使が米英対アラブ世界の対立に終わらぬようにするためにも、中東和平問題の解決が重要であるとの立場が示された。

(3)三等幹事長等の中東訪問

 4月28日から5月5日まで、与党三幹事長及び中谷前防衛庁長官はアラブ首長国連邦、クウェート、カタールの湾岸アラブ3ヶ国を訪問するとともに、クウェートからイラク領内のウンム・カスルに入り、現地状況の視察を行い、イラク人道復興支援につき関係者との意見交換を行った。

(4)イラク現地調査団

(イ)イラク現地調査団(団長:相星中東ニ長)は4月28日から5月1日まで、現地の治安情勢や我が国大使館事務所の状況等の調査のためにバグダッドを訪問。
(ロ)バグダッド市内の治安は徐々に改善しつつあり、食料品店等も再開しつつある。昼間に市内中心部を移動する限り大きな支障はないが、主要国やORHAは警護をつけている。確たる警察組織も立ち上がっておらず、依然、治安確保が最優先の課題。
(ハ)大使館事務所は4月10日にパソコン、テレビ等が略奪にあったものの、建物に大きな損壊はなく、近く大使館を再開する予定。

(5)その他

(イ)ORHAが行う対イラク支援に協力することを目的に、現在、奥在英大参事官、井ノ上在イラク大二等書記官、根井経産省大臣官房政策企画官(外務事務官併任)がバグダッドへ出張中。
(ロ)我が国は、これまでに約2億2755万ドルの対イラク・周辺地域支援を実施又は決定。
(ハ)イラク支援に関する日・アラブ間協力を推進している。例えば、ヨルダンのハシミテ慈善財団が進めている対イラク医療支援との協調につき調整中。


イラク問題関連での我が国の貢献(現状)
平成15年5月8日現在


1.人道支援

(1)我が国NGOを通じた支援

ジャパンプラットフォーム(JPF)参加NGOが行う緊急医療活動に対し約330万ドル(約4億円)拠出。
→ピース・ウィンズ・ジャパン(PWJ):イラク北部
→JPF合同チーム:ヨルダンのイラク国境付近で難民等に対する診療活動

(2)国際機関等を通じた支援

国際機関(UNHCR、UNICEF、WFP)に対し活動資金として約503万ドル(約6億円)拠出決定(3/20)、拠出済み。
国連緊急統一アピール(4/9)等に応え、1億ドル上限(含503ドル)の支援表明。
→その際WFPに約1150万ドル、ICRCに800万ドル、UNICEFに500万ドルを拠出決定し、拠出済。
→人道支援物資搬入のためUNDPが実施するウンム・カスル港湾浚渫プロジェクトに250万ドル拠出(4/25表明)。
→イラク南部の都市ウンム・カスル市において人道・復旧支援活動に当たっている同市の互助組織に対し、約9万ドル(約1000万円)の草の根・人間の安全保障無償資金協力を実施(5/1)。
→これまでに上限1億ドルの内、約3,200万ドルの拠出決定。
(残りの約6,800万ドルは、状況やニーズを見極めつつ必要に応じて検討。)

(3)国際平和協力法に基づく人道救援活動(3/31)

UNHCRに対し難民用テント160張(1,600人分)を政府専用機でヨルダンへ輸送・供与。

(4)医療技術協力

JICA医療技術協力チーム5名がシリアで緊急医療体制強化に従事(3/24~4/1)


2.周辺地域支援

(1)ヨルダン:1億ドル(約120億円)の無償資金協力を表明(3/23)
→約5,000万ドル(60億円)分のノンプロ無償供与の交換公文締結(4/6)。
→今後の具体的支援についてヨルダンと調整中。

(2)パレスチナ:

(イ)国連パレスチナ難民救済機関を通じ約420万ドル(5億円)の食糧援助表明(3/23)。
 →交換公文を締結(3/26)
(ロ)対パレスチナ新支援パッケージを表明(上記(イ)を含め、約2,225万ドル)(4/29)


3.復興支援

(1)米復興人道支援局(ORHA)との連携(4月18日方針発表)

外務省職員の身分で長期出張しORHAと連携してイラク支援を行う。外務省、他省庁、民間から当面4~5名目処。現地情勢の推移・ニーズに応じて漸次増員。
→現在3名がバグダッド入り(4/23、4/25、5/8)。

(2)ユネスコとの協力を通じた文化・教育面での協力(4/23発表)

ユネスコ文化遺産保存日本信託基金に100万ドル追加供与。
→イラク国立博物館収蔵物やその他の文化遺産の修復・保存作業等を実施。
ユネスコ現地調査ミッションに松本健国士舘大イラク古代文化研究所所長が参加予定。
ユネスコ人的資源開発日本信託基金を通じ教育関連プロジェクトに100万ドルまでの協力。


 [注] 支援策の合計 約2億2,755万ドル(約273億円)
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