ODAとは? ODA改革

政府開発援助(ODA)大綱の見直し
(関係者の主な意見)

(資料4)

平成15年5月12日
外務省経済協力局


(注)本資料は、当局限りでまとめたものである。z

1. 大綱見直しのプロセスについて

  • 今年夏までに結論を出すのは性急であり、まず、現行大綱の評価(具体的にどういう問題があるかの検証等)を行い、時間をかけて議論すべき(NGO)。
  • どのような論点を検討しているのか、公開して意見を聞くべきであり、寄せられた意見に対する対応も公表すべき(NGO)。
  • 国会の場で議論すべき(NGO)。
  • 援助現場からの意見を聴取すべき(NGO)。
  • 結局は役所の判断により思いどおりに見直すというのであれば、国民から意見を聞く意味はない(NGO)。
  • ODA大綱は閣議決定に留まっており、拘束力が弱いので、ODA基本法を制定すべき(NGO、有識者)。


2.基本理念

(1)総論
  • ODA大綱の前提となる日本の戦略があってしかるべき。原則、重点地域も戦略があれば、明確な回答が得られる(経済団体)。
  • 現行大綱の基本理念においては、ODAの具体的な政策目的が示されておらず、新たな大綱では政策目的を明示すべき(有識者)。
  • 「国際社会との相互依存関係」とは、開発途上国との共生(パートナーシップ)を実現するということであり、共生のためには被援助国の制度・社会・慣習等を尊重することが重要(実施機関)。
  • 人間の安全保障を重視する考え方を評価(有識者)。
  • ジェンダーを基本理念等の中で位置づけるべき(実施機関、NGO)
  • 大綱の見直しは、現地の住民の視点で行うべき(NGO)
  • 「人道的見地」をより踏み込んで「人権の保障」とすべき(NGO)

(2)「国益」について

  • ODA大綱の基本理念においても、国際社会が共通して取り組むべき諸課題への貢献に加えて、国内資源に乏しい貿易立国としての我が国の安全と繁栄を確保するという国益のためにODAを積極的に活用するとの姿勢を明確に打ち出すべき(経済団体)。
  • ドナー側の視点だけに終始する論議では、開発途上国の支持は得られない。「相手国の利益をも尊重する相互性に立ち、友好国を増やし、国際環境の改善を通じて、自らの必要を迂回的に満たしていくような長期的・間接的なアプローチを重視する」ことが重要(実施機関)
  • 現行大綱でも相互依存関係という言葉でODAが日本の利益にもなることは十分明らかにしているので、日本自身の「安全と繁栄」を含める必要はない。利己的な部分があるとしてもそれを他国に宣伝する必要はない(NGO)。
  • 「安全と繁栄」を挙げることは、我が国企業などの「商業主義」につながる恐れがあり反対(NGO)。
  • 重要なのは、我が国が優れた援助を行い相手国の発展に寄与することにより、国際的に評価されるという形で我が国の利益に間接的に結びつくこと(有識者)。
  • 我が国の「安全」を掲げることでODAの軍事的利用を進めるためにODA大綱を見直そうとしているのではないか。イラク紛争における武力行使に反対した国に対してODAを使って圧力を加えたことを正当化しようとしているのではないか(NGO)。
  • ODAにおいて近視眼的な国益論や外交の一手段という考え方は排除すべき(有識者、NGO)。

(3)我が国の経験と自助努力

  • 経済成長を通じた貧困削減の考え方に言及すべき(経済団体)。
  • 日本の戦後復興の経験を途上国に伝えることが重要(経済団体)。
  • 現行大綱が自助努力支援を明記したことは画期的であり、大綱の見直しにおいても自助努力支援を示して行くべき(有識者)。
  • 自助努力を慫慂する円借款がアジアにおいて果たしてきた役割を踏まえるべき(実施機関、経済団体)。
  • ODAが我が国企業による貿易・投資活動の促進、ひいては現地における民間経済活動の活発化につながることによって、その効果が高まることを強調すべき(経済団体)。
  • 自助努力支援については、具体的なプロジェクトの実施においてリカレント・コスト支援が行えないなどの矛盾を引き起こす場合があり得る(有識者)。
  • アジアに対する我が国のODAが国内格差拡大等のゆがんだ結果を招いたのであってアジアに対するODAが成功だったとは言えない(NGO)。


3.原則

(1)要請主義

  • 要請主義については、まず我が国の国益を重視した総合的な戦略を立て、その上で相手国政府との政策対話を通じて、相手国政府の政策の取組を促すとともに、具体的なプロジェクトを策定すべき。ODA実施手順等も我が国の主体性を活かす方向で見直す必要がある(経済団体)。
  • 途上国の主体性を尊重する観点から、相手国の要請を踏まえるという意味において要請主義の存続を支持。他方、より能動的に援助を実施することは益々必要で、狭義の要請主義から脱する必要がある(実施機関)
  • 「要請主義」を見直し、政策対話を強化することにより、日本政府がより我が国企業の利益を代弁するようになるのは避けるべき(NGO)。
  • 政策協議の考え方は現行大綱にも書かれており、要請主義を見直す必要はない(NGO)。

(2)大綱原則の内容と運用

  • 大綱原則の運用は拘束力がなく、恣意的である。四原則が「総合的に判断」され、ガイドラインとして機能していないことが問題(NGO、有識者)。
  • 総合的判断の妥当性を判断するために、国民にも十分な情報が与えられるべき。例えば、中国、ミャンマー、インドネシア、パキスタンに対する援助に関する政策決定の過程を公表すべき(NGO)。
  • ODAの停止・再開などの政府方針に関し、その方針根拠となる総合的な判断等を適時に開示することで、判断基準を明確にすることが必要である(実施機関)。
  • 「総合的判断」が恣意的運用と批判されることのないよう、説明責任を果たすべき(経済団体)。
  • コンディショナリティや硬直的な拘束性がないところに大綱原則の良さがあり、あまり拘束性を強調すべきではない(有識者)。

(3)4原則の内容

  • 4原則は基本的に維持すべき。これまで以上に安全保障を意識し、我が国の平和と繁栄に関わる事項も書き加えるべき(経済団体)。
  • 軍事目的への使用回避等を緩和すべきではない(NGO)。
  • 腐敗防止等もっとコンディショナリティをつけた援助を行うべき(NGO)。
  • 原則において、相手国政府の腐敗や財政会計制度の透明性の問題について触れるべき(有識者)。
  • 人間の安全保障や平和構築を重視するのであれば、相手国政府の社会的融和に向けた努力も盛り込むべき(有識者)。
  • 現地住民が主体となった開発の推進の観点が重要(NGO)。


4.重点事項

(1)重点地域

  • 我が国のODA政策においては、引き続きアジア、特に東アジア地域を重視すべきことを大綱にも明記すべき。特に、近年ASEANとの包括的経済連携強化が重要課題となっていることを踏まえ、その推進のためにもODAを戦略的に活用すべき(経済団体)。
  • アジア地域における発展状況、援助需要の変化等を十分に考慮して、ODAの重点を広くアジア地域とすることを支持する(実施機関)。
  • 我が国にとってエネルギー・資源の確保という視点も重要であり、これに資する重点地域の設定を行うべき(経済団体)。
  • アジアの範囲を明確化すべき(有識者)。
  • アジア重視はやむを得ないものの、その理由をはっきり示すべき(有識者)。
  • グローバル化の中でアジアにこだわるのは疑問(有識者)。
  • 重点地域は、貧困国、貧困地域を優先すべき(NGO)。
  • 貧困削減の観点からは、最も援助を必要としているアフリカをアジアと同様に重点地域とすべき(NGO)。
  • アフリカに対するODAは不要というのはやや狭いものの見方(経済団体)。

(2)重点分野

(イ)総論

  • 現行大綱の重点分野は総花的であり、我が国の特徴を生かせる重点分野を絞るべき。ODAを撤退させる分野はNGO等の民間やより適した国際機関・他ドナーに任せることが考えられる(有識者)。
  • 我が国が技術力・ノウハウの優位性を発揮しうる分野に重点的に取り組むことを大綱に明記すべき(経済団体)。
  • 重点分野としては、貧困問題解消、地球環境強化、環境保全、平和構築、人権擁護、民主主義進展、ジェンダー格差是正、BHNの充足等が挙げられるが、それぞれの意味を明確にすべき(NGO)。
  • 重点分野としては、経済成長を通じた貧困削減、経済の安定、環境分野への取組、政策制度改善に向けた知的貢献・知的協力、地域協力等が挙げられる(実施機関)。
  • ミレニアム開発目標を重視すべき(NGO)。

(ロ)インフラ

  • インフラ整備を通じた経済成長による貧困撲滅というアプローチを明確化すべき(経済団体)

(ハ)政策支援、人材育成等

  • 政策・制度構築に関する途上国の総合的な能力開発への協力の重要性について触れるべき(実施機関)
  • 法制度の整備を含む各種制度構築支援、日本人技術者の派遣、途上国人材の日本研修等、「顔の見える援助」を推進すべき(経済団体)。
  • 知的支援の関係で、日本の政策ペーパーの質や使われ方には改善の余地がある(有識者)。
  • 構造調整という考え方は若干古い(実施機関)。

(ニ)平和構築

  • 実際にODAが平和構築に活用できるか評価・検討すべき(NGO)。
  • 平和構築を通じてよりソフトな支援に取り組むべき(NGO)。
  • イラク等における米国の軍事的破壊の後の復興に協力するのでは、ODAを通じて戦争協力していることになる。そのような形で「平和構築」を行うことには反対。平和構築の指す内容を明確化すべき(NGO)。
  • 平和構築を通じてPKO支援を実施しようとしているのではないか(NGO)。

(ホ)その他

  • 人口、リプロダクティブ・ヘルスも重要(NGO)。
  • 我が国民間企業の保有する環境・省エネルギー技術の国際的な普及が、地球温暖化問題の解決に資するとの観点から、これにODAを積極的に活用すべき(経済団体)。
  • ITは、沖縄サミットのコミットもあるので、重点分野にしてほしい(経済団体)。


5.ODA政策の立案及び実施

(1)政策立案・実施体制

(イ)国別援助計画
  • 国別援助計画の整備・拡充が急務。計画策定に当たっては、産業界からの意見も聴取すべき。また、計画自体に問題が発生した場合には速やかに見直せる柔軟性が必要(経済団体)。

(ロ)政策立案・実施体制

  • 政府内、実施機関間、政府と実施機関間の連携が重要(実施機関、経済団体)。
  • 政府と実施機関の役割を明確にするとともに、実施機関の有する専門性を活用することで業務の重複を回避することが必要(実施機関)。
  • ODAの計画・実施・フォローの調整部門としての外務省の役割に期待(経済団体)。
  • 各省庁毎に異なる国益を追求しているのは問題であり、ODAの運用体制を一元化すべき(NGO、有識者)。
  • 「変化する国際情勢に的確に対応するため、機動的な意思決定・実施体制をとること」を記す必要がある。「機動的」対応という目標を明確に掲げる必要あり(実施機関)。

(ハ)その他

  • 案件形成での実施機関の役割に触れるべき(実施機関)
  • 案件形成において私的利益追求者は排除すべき(有識者)
  • 案件形成、実施プロセスの透明性についても触れるべき(実施機関)
  • 現場主義が重要であり、政府・実施機関の連携を強化すべき(実施機関)。
  • 国際機関を通じた援助も大綱の適用を受けることを明確化すべき(実施機関)。

(2)効率的・効果的実施のために必要な事項

(イ)援助協調

  • 他のドナーとの援助協調は重要(実施機関、有識者)。
  • 「顔の見える援助」が重要であり、コモンバスケット等はマルチの援助を通じて実施して行くべき(経済団体)。

(ロ)国民参加

  • 大学や学会をもっと活用すべき(有識者)。
  • ODAの現場で途上国にニーズを熟知し、住民のきめ細かいニーズにも通じた民間企業・NGOは、援助の重要な担い手となり得る(経済団体)。
  • 国民参加型の援助の推進と言うが、企業のODAに対する関心は下がっている。ODAと企業の新しい関係を考える必要がある。
  • 単に我が国の国民が参加する「国民参加」ではなく、相手国の国民も参加する「市民参加」とすべき(NGO)。

(ハ)評価、監査

  • 政策評価から事業評価まで評価を強化すべき。また、評価者の人選の客観性を確保すべき(NGO)。
  • 政策評価における国会の関与を強化すべき(NGO)。
  • 外部監査は、国内の監査法人ではなく、現地の監査法人の活用を認めるなどして国際的に実施すべき(NGO)。

(ニ)その他

  • 効率的・効果的実施の観点から、手続の簡素化・迅速化による「供与決定プロセスの改善」も必要な事項として明記すべきである(実施機関)。
  • 案件のフォローアップが重要(経済団体)。
  • 技術協力においても、一層の成果重視、幅広い人材の活用等にも触れるべき(実施機関)。
  • 学識経験者、実務経験者等、幅広い関係者の知力の活用も重要(実施機関)。
  • ODAの実施に関する異議申し立て制度を作るべき(NGO)。
  • 国際機関への人的貢献の重要性を協調すべき(経済団体)

(3)政策立案・実施上配慮すべき点

(イ)配慮すべき点

  • 障害者支援も重視すべき(実施機関)。
  • 配慮事項(ジェンダー、子供、貧困格差等の社会的配慮、現地住民の参加、被援助国の国内地域格差)を冒頭の基本理念に移して記述すべき(NGO)。
  • ODAを行う際に、現地住民の視点が重要であり、大綱見直しも現地の住民の視点が重要(NGO)。
  • 「環境配慮」も明記する必要がある(実施機関)。

(ロ)貿易・投資、民間活動との連携

  • 貿易や投資との関係の重要性につき触れるべき(実施機関)。
  • ODAを広い意味で外交・通商政策の一要素として捉え、広く民間経済活動を支援していくことが必要(経済団体)。
  • 民間の果たすべき役割がますます重要。貿易・投資は、持続的な経済成長を確保するための重要な要素であり、民間企業は、技術と経験を有しており、経済協力の担い手になりうる(経済団体)。

(4)内外の理解を得るための方策

  • 情報公開、開発教育、広報をそれぞれきちんと区別すべき(NGO)。
  • 開発教育においては、なぜODAを行う必要性があるのか(我が国の対外依存度、我が国の繁栄が途上国の犠牲の上で成り立っている(加害者の観点等)について説明すべき(NGO)。
  • 我が国のODAについての情報発信を強化するためには、我が国ODAが国際社会の模範となるよう努力するとともに、国際社会での開発アジェンダ作り等での議論をリードするよう努め、我が国ODA自体の国際社会でのリーダーシップを高めることが必要(実施機関)。


6.その他
  • ODAへの支持が減っているのは、ODA大綱そのものに原因があるのではなく、ODAの不透明性や運用上の問題によるもの(NGO)。
  • 日本のODAは現地の役に立っていないのではないか。日本企業を儲けさせているだけではないか(NGO)
  • ODAは、「政府開発援助」ではなく、「公的資金による開発援助」と訳すべき。その立案には市民が参画すべき(NGO)。
  • 相手国の経済発展状況に応じ、借款条件等について柔軟に対応することも検討すべき(経済団体)。
  • コンサルタントの活用については、入札情報をもっと幅広く公開してほしい(経済団体)。
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