ODAとは? ODA改革

「第2次ODA改革懇談会」(第4回会合の概要)

「第2次ODA改革懇談会」事務局

本懇談会では、ODA改革に関する幅広いご意見を募集しております。
ご意見は、odakaikaku@mofa.go.jp又は03-5776-2083(FAX)までお寄せ下さい。

1.日時

 平成13年7月4日(水)10:00~12:00

2.場所

 外務省892号会議室

3.議題

  • ODAの具体的とり進め振りの見直し
  • ODA実施体制の抜本的強化
  • 経協2案件に関する説明・意見交換
    • 経協案件と環境問題:ソンドゥ・ミリウ水力発電計画(ケニア)
    • 経協案件と民主化・人権:バルーチャン第2水力発電所(ミャンマー)

4.出席者

 田中外務大臣、山口外務大臣政務官、懇談会メンバー((ただし、五百旗頭真神戸大学教授、田中明彦東京大学教授、小島明日経新聞社取締役、小島朋之慶応大学教授は欠席)、事務局(経済協力局)。関係府省庁、JICA(国際協力事業団)及びJBIC(国際協力銀行)がオブザーバー参加した。

5.議論の経過

 荒木委員及び上島委員の報告の後、議論が行われた。その後、事務局から「経協案件と環境問題」及び「経協案件と民主化・人権」について説明があった。主な意見は以下の通り。

(1)ODAの具体的とり進め振りの見直し

  • 指令塔としての国別援助計画の確立が必要である。広く知見を民間に求め、主体的に戦略的なシフトを行いながら国別のODAプライオリティーを決め、これに向かって技術協力、無償資金協力、有償資金協力などの各ODAスキームが連携し、集中的に効果を上げていくようにする。これにより決定プロセスの透明化を図ることができ、限られた予算の有効活用を図ることができる。
  • 「2スクラップ&1ビルド」により資金を集中投入。
  • 個別の要請にバラバラ応じる大量生産ODAではなく、国別援助計画に従い、戦略的高品質化を進めるべし。
  • 日本の技術協力のベースは官僚主導であり、基本的には安上がり思想によるものであった。外部委託制度の拡充を図るべし。各省の既得権益化を打破すべし。
  • 予算執行体制を弾力化すれば、多くの予算の無駄が省ける。
  • 評価結果は実施体制の回線にフィードバックされる一方で、一般に理解され易い内容に加工されて情報公開されれば、ODAの透明性を高めることに役立つ。
  • 成長の度合いに応じて、明確にニーズが変わりつつある。つまり、BHNやハードへの支援からソフトへの支援が求められている。
  • 企業活動においては、既に国境を意識しなくなるほどグローバル化が進展している。あらゆるセクターの企業がアジア諸国に事業拠点を置いている。ODAにおいてもバイの協力も重要であるが、面(regional economic zone)に対する援助が重要となる。
  • 日本のODA資金は主にアジア諸国の経済発展・環境整備に大きく貢献している。各国の環境整備の進展に呼応し、日本の民間企業を始め海外からの巨額の投資を招き、今日に至っている。換言すれば、ODA資金 / 民間資金をDriving Engineとし、各国の自助努力と融合した結果といえる。
  • ODAは経済格差の是正や相互繁栄の推進にとり今後とも重要である。一方、多様なニーズに応える形でのODAの「質の変化」が求められる。ODAと民間部門との連携は成果を生む大きなファクターである。
  • 余りにも低い日本の受注率は問題である。OECDのルールの下での日本の「顔の見える援助」に向けた取組み(特別円借、環境円借等の一層の拡充)や手続きの迅速化が望まれる。
  • 特別円借款は、アジア経済の早期回復、相手国の経済構造改革並びに日本の産業支援を目的として創設されたが、まだ消化が進んでいない。この制度の恒久化、供与プロセスの更なる迅速化ができないか。
  • 商社にとってのODAの意義は、市場発展の為の環境整備であり、相手国の経済社会状況に精通しているという強味を活かして相手国の案件形成に協力している。
  • 国毎のニーズは大きく異なり、官民協同による国別援助計画の策定が重要。また、貿易・投資の活性化につながる各国の産業基盤の構築・環境整備、人材の育成、裾野産業の育成、IT途上国の支援策といったグローバル化に関連するソフト分野を重点分野とすべき。
  • 各国からの要請を待つのではなく、日本側から提案を行い、案件を共同形成すべし。顔の見える援助及び迅速化に繋がる。
  • 顔の見える援助のため、日本が技術力・ノウハウ等で優位性を発揮しやすい分野に重点をおくべき。また人的支援の強化として、 企業、NGO等民間人材を積極的に活用すべき。
  • 現在の援助手続では、相手国要請からプロジェクト完成まで6-10年かかり、被援助国にとって「タイムリーな援助」とはならない。諸手続きの迅速化が喫緊の課題である。
  • 少子高齢化という問題を抱える日本にとり、将来、途上国に頭脳や労働力をより大きく依存する蓋然性がある。従って、ヒトとカネが日本に流入し根付く基盤整備が必要。産業界・NGO・地方公共団体が広くODAに参加できる体制、いわば日本側のODAに関するインフラ整備の視点が必要。
  • 発電所は借款、保守点検は技術協力など、技術協力・無償資金協力・有償資金協力など諸制度の有機的運営をすべし。また、臨海工業団地は民間、港湾・道路はODAなど、民間投融資案件とODA案件は連携すべき。JBICの投融資制度や貿易保険を積極的に適用すべき。
  • 円借条件を弾力化すべし。例えば、返済期限の短縮・低金利化やユーロ或いはドル建(円リスク回避)、期前返済の許容など。
  • 国別援助計画、共同案件形成、民間投融資案件とODA案件、人的支援等、様々なレベルでの官民連携を推進すべき。
  • 日本のODA事業は諸外国と比べて、人的資源よりも金融資源に偏っている。予算削減が叫ばれているが、この際両者の比重を大きく変え、人的資源重視にしたらどうか。これは顔の見える援助にもつながる。
  • 要請主義は当然ではあるが、欧米のように、被援助国内での開発戦略策定、プロジェクト形成などに日本も人を投入すべきではないか。
  • 国別援助計画など、フレームを作って重点を絞った援助をすることが重要。環境、女性、統治などのグローバルなプライオリティも必要だが、ドナーはみな同じプライオリティで活動してしまう傾向がある。従って、インフラ整備面が弱くなったりするなど、途上国のニーズとギャップが生じることがある。日本はグローバルなプライオリティの要素を十分取り入れた上で、比較優位を持つ得意な分野で協力するべきである。
  • 援助を途上国の政策に関連づければ、その地域だけに裨益するだけでなく、デモンストレーション効果によってより大きな効果が得られる。
  • 現在の専門家派遣は役所に依存しすぎている。派遣専門家の公募をすべき。また、各省の専門知識は大切だが、JICAの指揮監督のもとでそれらを活用すべきである。
  • 専門家は、JICA派遣であっても、現在担当省庁から出張命令が出されていると思うが、本来はJICAから命令を出すのが筋ではないか。
  • 評価に関し、どこまで国別援助計画を踏まえてされているのかよく見えない。

(2)ODA実施体制の抜本的強化

  • 援助は散発的ではなく、上流から下流まで一気通貫で行う必要がある。
  • 政府は国別援助計画の立案作成、変更修正などの援助上流部門、つまり政策立案と調整機能に専念し、スキームを連携させた実施はJICA、JBICなど、下流部門にゆだねる体制を、権限委譲という形で促進させる必要がある。
  • JICAは地域別編成に一応踏み切ったにもかかわらず、指令塔に当たる外務省経済協力局は未だにスキーム別編成でいる。これは国を見ていくという外交目的に損なうことになり、またODAの中枢的なコーディネーターとしての権威も失うので、早く改善すべき。
  • 年間ODA事業予算1兆8千億円が各省庁に分散しており、多様化するODAの業務効率化を図るべく、「ODA政策の司令塔」的組織を創設すべし。これまでの体制はそれなりに評価できるものであったが、今後は体制を変えていくべき。また、援助の効率性・透明性を高め、評価責任を明確にすべき。
  • 援助人材が不足しているが、アウトソーシングや民間部門との連携だけでは不足分を埋められない。ODA実施機関の人を増やすべきである。なお、数多くの専門家がJICAスキームで途上国に派遣されているが、JICAは彼らを主体的に指揮、指導、監督すべきであり、専門家を評価する体制を築くことで、人的資源の不足をカバーできるのではないか。
  • JBICについて、自己資本と財投借入で資金調達しているが、現在世界で債務削減の動きがみられるなか、そのための十分な準備金の積み上げができていない。将来も借款事業を続けていくならば、JBICが開発金融機関として自立していけるよう考えていくべき。同時に、借款の条件を弾力的に変えられるようすべき。
  • エイズや紛争予防、平和構築など新しい援助ニーズが発生しているなか、専門家がODAシステムの中に日本に必ずしもいるとは限らない。そのような分野で効果的に援助を進めていくには、国際機関やNGOなどから人材を集めるなど人材の循環をすすめる必要がある。この場合、援助人材は日本人である必要は必ずしもない。外部からの専門家の採用に加えて、ODAを管理するプログラムオフィサーなどの人材の育成・訓練も必要である。
  • 現地事務所でより積極的に現地スタッフを活用すべきである。これによって現地事務所の強化のみならず、途上国の人材育成を推進することができる。
  • 現地事務所への権限委譲により、援助の効率性が高まる。例えばプロジェクト内容の一定範囲内での修正や変更については、いちいち本国で決裁するよりは、現地事務所で処理した方がいいのではないか。
  • 援助への民間企業の参加には、ビルゲイツ基金の活用などの直接的方法に加え、企業の流通システムの活用、企業の研修施設やノウハウ、トレーナーの活用といった方法など、新しい参加形態がある。
  • 日本は一人当たりの援助額が他のドナーと比べ極端に大きい。実施機関への徹底した権限委譲、評価体制の確立と分かりやすい情報公開の促進が決定的に重要。
  • 極端にいえば、研修員受入数を減らし、その分で援助人材の充実を目指してもいいのではないか。
  • ODA実施部分は実施機関に権限委譲し、役所は基本的政策の立案にもっと専念すべきである。
  • JICAが設立されたときは、各省が行っていた協力を集めたため、各省に妥協する形でJICA内はセクター別組織となった。本来はセクター別よりも地域別組織であるべき。
  • 途上国の開発政策は、ドナーdrivenでないといいつつも実際は人材を入れて計画を作り、デマケをして各ドナー国で分担するのが現実である。しかし、日本には政策提言できる人材がいないため、おいしいところは皆他のドナーに抑えられてしまう。開発政策に提言できる人材を途上国に派遣していくべきであり、また国内で人材を育成する必要がある。
  • ODAの多様化が進んでおり、援助の計画段階から途上国のNGOを巻き込んでいくべし。
  • 日本はどのようなODAを行っているのか、国内と同様世界でも知られていない。各省にまたがる日本の援助システムは複雑であり、非効率的である。例えば日本貿易会のNPOが人材バンクを作っても、各省の制度に乗りにくい。
  • また、JICA内は各省の権益が入り組んでおり、思い切った改革が必要。外務省は日本の援助の司令塔として、権限を強めていかなければいけない。各省との連携といっただけでは改善しない。
  • ODAの効率化を図るためには各省や実施機関の司令塔的役割を果たす組織が必要である。ODAにかかわる専門的人材以外にも、中小企業向けの民間ベースの協力が必要。

(3)経協案件(ソンドゥ・ミリウ水力発電計画、バルーチャン第2水力発電所)

  • 海外メディアに日本に対する記事はパターン化されている。日本の捕鯨への批判などが代表例であるが、ODAについてもミャンマーの軍事政権に日本は甘いなどといつも批判されている。海外メディア対策をもう少し重視する方がいいのではないか。
  • NGOの主張がいつも正しいとは言わないが、NGOの情報は参考にすべきである。使える情報は全て使って政策決定してほしい。

(4)その他

  • 資源小国・貿易立国の日本にとり世界各国、特にアジア諸国との「共生」は重要である。日本との政治的・経済的関係から援助地域はアジア諸国を重点とすべき。
  • 「聖域なき改革」の必要性はその通りだが、日本は最大ドナーであり、ODAは国際貢献の支柱となる手段である。「共生」の意義もかんがみると、ODA予算は一定の規模を維持し、内容の充実を図るべき。
  • 「顔の見える援助」が重要と良く言われるが、日本が造ったということを意味するのか、日本人がかかわっていることを意味するのか、「顔の見える援助」の意味が分からない。
  • 海外では、日本の援助は非効率なので、ODA予算が削減されても影響はないのではないかと揶揄する声もある。改革にはイノベーショナルなメッセージが必要。
  • JICA設立の際、当時の田中総理大臣が各省の権限争いに歯止めをかけるため大きな力を発揮された。妥協の産物も残ったが、事態が大きく改善した。田中外務大臣にもがんばって頂きたい。
  • 援助も聖域なき改革の対象であることは十分理解しているが、ある程度の量は維持しなければならない。質面では、途上国のニーズは発展段階によっていろいろ変わり、新たなニーズを的確に反映させるべし。

6.次回会合

 次回会合(第5回会合)は7月17日(火)10時から開催し、「国際的な連携の強化」について議論を行うこととなった。また、臨時会合を7月11日(水)10時から開催することとなった。

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