「第2次ODA改革懇談会」事務局
1.日時
平成13年6月5日(火)10:00~12:00
2.場所
外務省892号会議室
3.出席者
田中外務大臣、懇談会メンバー(ただし、五百旗頭真神戸大学教授、河合三良(財)国際開発センター会長、弓削昭子フェリス女学院大学国際交流学部教授は欠席)、事務局(経済協力局)。関係府省庁、JICA(国際協力事業団)及びJBIC(国際協力銀行)がオブザーバー参加した。
4.議論の経過
「ODAによって実現すべき国益は何か」について田中明彦委員及び千野境子委員の報告の後、議論が行われた。また、田中外務大臣が途中出席し、挨拶を行った。
(1)田中外務大臣の挨拶
小泉内閣は聖域なき改革を断行する方針であり、来年度予算については3兆円強の切り込みを明確にしている。各省と協力しながら進めていきたい。
自分は、かねてより、ある程度の時期を切ってODAの見直しを行うべきと考えていた。日本が軍事力を使わずに世界に貢献していくことは喜ばしいことであるが、国会の議論を通じても、様々な噂、事実等が指摘されている。最初はポジティヴに良かれと思ってやっていたものが、長い間に環境が変わったり、政権が変わったりしてうまく機能していないものがある。
ODAは効果的に使われることが重要であり、そうすれば納税者にも得心がいくであろうし、相手国からも喜ばれる。切りつめることが良い訳ではなく、時間をかけて効果のあるものを実施していくことが重要である。国民の同意が得られないようなものについては、率直に見直しをして、結論を出して頂きたい。
目には見えない地球上の人々と手をたずさえて平和な世界を作っていく、地球市民としての意識を持っていきたい。結果として良いものが出来たと評価されるような、良い結論を出して頂きたい。
(2)議論の中で委員から出された主な意見は以下の通り。
- 国益とは、生存、繁栄、価値の追求にある。国益を追求する手段としての援助には、様々な形態がある。ただし、単一の国益概念は存在せず、国益は、複雑な因果関係の連鎖の中に存在する。
- 国益について国民のコンセンサスが出来ておらず、再定義が必要である。ODAは国民の税金であり、慈善ではないという点を基本認識として置かなければならなない。また、ODAは日本社会の活性化につながるという点を国民が共有することが重要である。
- 国際益の実現を通じて国益を実現するのがODAの役割である。国益と国際益、地域益が合致しない場合、どう折り合いを付けるかが重要である。
- 日本人は、国際益を重視し過ぎるぐらい考えてきたのではないか。日本が優等生過ぎたことが援助疲れの原因としてあるのではないか。
- ODAは、貿易、投資、金融等トータルな経済関係が円滑化する環境を作るために受動的になされてきた。基本的ニーズは変わっておらず、今後も変える必要はない。
- ODAは、海外との共生、世界の平和と繁栄といった日本の構造的な宿命のために実施されるべきである。
- 相手国の自助努力を尊重し、ニーズに基づく援助を行ってきた結果、日本のODAはアジアの繁栄に貢献してきた。これまではインフラ整備を通じて経済力強化を行ってきたが、今後は、裾野産業の育成や人材育成の方が必要な国もある。
- 相手国の要求に応えることも重要だが、日本国民として何を成し遂げたいかが分からないと、国民がODAを支持する環境が出てこない。
- ODAを考える上で、人間の安全保障、地球公共財及び社会開発のニーズは重要な観点である。
- 公的部門だけでは、重要な対応が出来なくなっているのではないかという指摘がある。一般市民、企業等に援助のプレイヤーを広げていく必要があるのではないか。
- ODAに対する国民の支持が低下しているという現実と国際益をどうマッチさせるか、また、国際益を国民にどう説明するかは大きな問題である。
- 今後、日本においても援助疲れが益々厳しくなる中、ODAを続ける必要性を国民に説得する必要がある。その際、ODAをより能動的な形で国益に直結したものとせざるを得ない。
- 国益は国家によって戦略的に実現するものであるのに対し、国際益の実現は人道・人権の観点からNGOに委ねる国際的な傾向がある。ODAは国の戦略を背景に考えるべきであり、慈善と混同すべきではない。
- 地球環境の問題等に関わりを持ちたい国民は沢山いるが、生活空間の中で参加し易い環境がない。この点は、日本社会の活性化にも直結する問題である。
- 国益を追求する上で、ODAで何が出来て、何が出来ないのか整理が必要がある。出来ないことをODAに求めても仕方がない。国民が自覚的になるためにも重要である。
- 懇談会のこれからの議論の中でも、絶えずこのような国益の議論に戻るべきである。
5.次回会合
次回会合は6月19日(火)10時から開催し、「国民の参加と理解の増進」について議論を行うこととなった。