ODAとは? ODA改革

「第2次ODA改革懇談会」(第11回会合の概要)

「第2次ODA改革懇談会」事務局

本懇談会では、ODA改革に関する幅広いご意見を募集しております。
ご意見は、odakaikaku@mofa.go.jp又は03-5776-2083(FAX)までお寄せ下さい。

1.日時

 平成13年12月3日(月)10:00~12:00

2.場所

 外務省667号会議室

3.議題

 保健医療分野における国際機関との連携

4.出席者

 懇談会メンバー(渡辺座長、五百籏頭委員、池上委員、小島明委員、小島朋之委員、田中委員、弓削委員は欠席)。外部有識者として、青山温子名古屋大学大学院医学研究科教授を招待。外務省から、滑川審議官他が出席。関係府省庁、JICA(国際協力事業団)及びJBIC(国際協力銀行)がオブザーバー参加。

5.議論の概要

 保健医療分野における国際機関との連携について青山名古屋大学教授より報告を受けた後、意見交換が行われた。主な意見は以下の通り。

(1)保健医療分野の特徴

  • 国際保健医療の歴史を振り返ると、40~50年代の「戦後復興と再建の時代」では、経済と政治の安定が求められ、社会の再建を目指した国際協力が行われた。50~70年代の「統合と強化」の時代は、開発と保健医療、冷戦構造、植民地の独立などを背景に、疾病コントロールなどが実施された。70~80年代の「プログラムとプロジェクト」の時代は、プライマリ・ヘルス・ケア、チャイルド・サバイバル、天然痘撲滅などに特徴づけられた時である。80~90年代は「保健医療セクター改革」の時代で、費用対効果、効率、公平、環境、民営化などに配慮するようになった。
  • 世界の保健医療の課題として、健康状態・疾病、公平性・アクセス、サービスの質、効率性、コストの5点が挙げられる。旧共産圏では医療へのアクセスは良かったが、効率が悪く、コストがかかって結局破綻した。
  • 先進国では病気負担が世界全体の7%と少なく、非感染症疾患が8割を占める。一方途上国では、世界の病気負担の93%を占め、そのうち感染症疾患が約半分、残りは非感染症疾患や外傷が占める。
  • 保健医療費支出の配分をみると、低中所得国は世界全体のうち11%を占めるに過ぎず、支出と病気負担の間にアンバランスがある。
  • 途上国といっても地域別に医療の実態が大きく異なる。例えば、乳児死亡率と一人当たりGNPを見ると、コスタリカやスリランカは基礎的な保健医療に投資した例として効果を上げている。中東や南米の国々のように国内格差の多い国ではGNP/cの割に乳児死亡率は高く、旧共産圏などでは、GNP/cの割に乳児死亡率の低い国が多い。また、医師数・病床数をみると、アフリカなどでは、極めて少ないのに対し、旧共産圏の東欧・中央アジアは多すぎて効率が悪く、合理化が必要である。
  • 医療経済システムの展開をみると、低所得国では患者の自己負担が多くを占めるが、高所得国では、公的医療や社会保険が整っており、中所得国では、自己負担を少なくするようなシステム形成に多大な努力を払っている。
  • 健康改善のための戦略と対策として、母子保健や家族計画、栄養、予防接種、健康教育などのパブリック・ヘルスと予防的ケア及び、保健医療費制度や社会保険、保健医療情報管理、病院経営管理など保健医療システムの開発が重要。
  • 世銀はインフラ重視の融資と思われがちだが、保健医療分野の融資は7%とかなりの額を占める。

(2)国際機関等との連携

  • 開発援助機関の特徴をごくおおまかにまとめると以下のようになる。

      資金量 規模 技術力 政策助言 実施期間 実行速度 柔軟性 地域活動
    国際機関 多/少 弱/強
    政府機関 多/少 大/小 難/可 長/短 強/弱
    非政府機関 強/弱 短/長

  • 開発援助機関の連携の長所として、(1)共通のポリシーのもとでの援助、(2)重複を避けて効率化を図ることができる、(3)各機関の資金枠を超えた効果的な援助にできる、(4)各機関の技術面の相互補完が挙げられる。一方、短所として、(1)意思決定メカニズムが異なる、(2)スキーム・会計年度・プロジェクト期間などにずれがある、(3)リーダーシップとプレゼンスの問題(誰がリーダーシップを取るか、共同したときに各機関のプレゼンスを示せるか等)が挙げられる。
  • 日本の保健医療分野ODAの長所として、(1)まとまった資金額である、(2)人道的観点に立っており、政治性が少ない、(3)分野によっては高い技術力がある点が挙げられる。まとまった額を出せる機関は世界には少ない。また、日本の援助は本国の政治にあまり左右されないので、突然終わることもなく、その国の基盤整備に貢献できる。短所として、(1)政策的方向性が不明瞭で各スキームが不統合、(2)現場で方針決定できる専門家がいない、(3)期間・金額などにおいて柔軟性不足、(4)分野によっては人材不足、(5)民間セクターとの連携が困難なことが挙げられる。例えば、世銀の窓口である財務省と外務省のODAは短期的にはうまく連携していないことがある。また現場で意志決定できないと、他機関との議論が困難になる。また一度決めた金額などが変えられないと、決めた金額を使わなければならなくなり、ここまで達成できたらさらに追加で支援するといった柔軟な対応が難しくなる。カウンターパートが途中で変わってしまうような状況変化があっても、金額などを変更できなくなる。
  • 日本のODAと国際機関との連携については、長所として、(1)相手国の政策に対する助言が強化される、(2)資金規模の拡大と効率化、(3)技術面での相互補完、(4)日本の人材育成につながるなどの面がある。問題としては、(1)連携は個人的努力に依存しており連携システムの不足、(2)国際的潮流・セクター全体を判断できる人材が不足、(3)現場の専門家が意思決定できない、(4)日本の貢献が正当に評価されないことがある、(5)特定の機関・個人の業績向上に利用されることがあり得るなどの点がある。日本にはセクター全体を洞察できる人材が少ない。専門性を持っていて、かつ国際的事情にも通じて日本の事情についても対外的に説明できる人材は限られている。
  • 国際機関との連携を進めるためには、日本のODA全体の明確な政策方針をたて、意志決定に専門家を登用し、現場での裁量権を増し、連携を進めるシステムを設立し、他機関との意思疎通と広報活動が必要である。
  • 日本の保健医療分野のODAをより効果的するためには、適正な人材養成(専門知識、開発理論、理念、経験、人格などを備えた)、セクター全体と世界的潮流を展望したプロジェクト形成、国際社会に認識される独創性のある開発協力、各種援助スキームの効果的統合、プロジェクトの客観的評価、専門家への正当な評価、外部委託方式の採用、日本人以外の人材(特に途上国の人材)の活用などが必要である。
  • NGOがJICAと連携する際、JICAに取り込まれてしまうことが多い。
  • JICA予算によってNGOと連携する場合は、JICAの予算である以上はJICAの方針に従うべきである。
  • 教育と保健医療など複数の分野との連携も重要である。ただし、カウンターパートが複数の省庁にまたがる場合、調整が難しくなる場合がある。また評価にも工夫を要する。
  • 現地への権限委譲が出来ていないのは、ODAに限らず、企業においても同様である。
  • 権限委譲は、東京から現地、政府から実施機関の両方が必要である。権限委譲を進めないと、国際的発言権がなくなってしまう。

(3)人材養成・活用

  • 日本の人材は少ないとはいえ存在するので、活用するべきである。また、意識的に養成していくべき。特に大学院教育を変えていくべき。なお、評価システムの充実も人材養成に資する。外部委託を認めることも効果あるだろう。
  • 現在は専門家は誰が誰を知っているかという、個人的なつながりで見つけることが多い。今後はもっと公募などもあってもいいのではないか。
  • 保健医療分野では、オランダやデンマークなどは、現地の専門家に大幅な権限委譲がされており、特定の国・地域を担当する能力の高い保健医療専門家が活躍している。
  • 今後はジェネラリストではなく、特定の分野や地域に詳しい専門家が必要。このような専門家を政策の立案に関与させるシステムが必要である。
  • 地方自治体や民間が出資して出来たWHO神戸センターがあるが、こうした施設も人材養成などに使えるのではないか。
  • 人材養成機関を設ける場合、留意しなければならないのは、教える側の人材、すなわち、途上国での活動経験と学問的背景を兼ね備えた人材が、まだ少ないことである。既存の大学や大学院と連携をしつつ、少数の機関で重点的に人材養成することが必要。
  • 日本国内に活動の場が少ないので、海外で活躍している日本人も少なくない。内外を見渡すと、それなりの人材もいるのではないか。彼らを拾い出す必要があり、それには公募も一つの案である。
  • 専門家の採用について、JICAと大学が総合契約のようなものを結ぶことが考えられるのではないか。その際には、大学に予算的、人材的にフレキシビリティを与えることが重要である。
  • 大学教員の問題として、特定の分野には極めて詳しくても、同じ保健医療であっても異なる分野となるとよく理解していないことがある。そこで、外部評価などの評価体制の充実が重要となる。その際専門分野関係者からの評価だけでなく、国・セクター全体などを見渡している人による評価が必要。
  • 外務省の専門調査員制度を人材養成に活用すべし。

(4)コモンバスケット方式

  • 英国等欧州諸国には、国籏を下ろした援助形態であるコモン・バスケット方式を進めている国がある。日本が顔の見える援助を推進し、影響力を維持していくために、セクター・ワイドの議論に参加できる人がどのぐらいいるのか心配である。
  • セクター別の議論できる人は、日本にいないとは言わないが、少ないのが現状である。ただし、最近では育ってきているのは確かである。
  • セクター・ワイドでの対応も重要であるが、日本が独自にパラレルで協力すべき分野はある。例えば、女性の健康などについては、ある途上国から、セクター・ワイド・プログラムとして扱われると、落ちこぼれてしまうというのではないかという不安が寄せられたことがある。
  • セクター・ワイド・アプローチには3つの要素がある。第一は、政策、戦略、プログラムを共同で作っていくということである。第二は、ルール・規則を作っていくということである。第三に、調達であるが、日本の色を付けたいのであれば、一部分は日本のものとしてコントラクト・アウトすることも可能である。
  • 日本はまとまった金を出すことが可能であり、コモン・バスケットに金を投入しなくても、まとまった援助をすることができる。問題は、政策、戦略、プログラム作りを他のドナーと共同でやらなくてはならないということであり、オール・オア・ナッシングで考えるべきではない。
  • 政策、戦略、プログラム等上流部門に入っていくことのできる人材を早急に育てる必要がある。さもないと、下流部門で資金的負担だけを求められることになってしまう。
  • 日本としてもコモン・バスケットを大いに活用できるような専門家を、責任官庁が育てていく必要がある。
  • 必ずしも国別援助計画の下にセクターを位置づけるべきではない。例えば、マラリアについては地域的な対応が必要になる。

6.次回会合の日程等

 次回会合(弟12回会合)は、12月18日(火)に開催し、各府省庁間の連携について議論を行う予定。

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