平成25年2月22日
- ハイチ共和国において,平成25年1月より,TB-LAMP法(簡易結核遺伝子検査技術)および結核検査のゴールドスタンダードである培養検査法の導入・定着を図り,同国における結核診断能力向上を図る取組みが開始されました。具体的には栄研化学株式会社からTB-LAMP法実施に必要な試薬,消耗品の提供を受け,日本から専門家を派遣し,現地の検査実施機関(National Lab.等)において,現地検査技師を対象にTB-LAMP法及び培養検査法の研修を行います。本研修は,3月末から8月末の間,非営利活動法人日本リザルツの協力,公益財団法人結核予防会結核研究所の技術支援の下,独立行政法人国際協力機構(JICA)と栄研化学株式会社との共催により実施することとなりました。
- 本研修の実施に際しては,栄研化学株式会社が,ハイチ側での情報収集や調整,研修施設や研修素材の提供,講師を務める日本人医師との調整,研修実施後のフォローアップ等を行うとともに,研修実施費用の一部を負担します。また,JICAも研修にかかる費用の一部負担等を行います。また,今回のTB-LAMP法による結核診断結果データは,当該検査法に対するWHO推奨獲得に必要な基礎データとして活用されます。WHOの推奨を得ることができれば,高感度・簡易・安価なTB-LAMP法を他の途上国にも普及させることができます。
- この案件は,平成20年4月発表の官民連携促進策「成長加速化のための官民パートナーシップ」(注1)における民間提案受付制度の官民連携案件として,栄研化学株式会社からの提案を受けて今般実施されることになったものです。
- ハイチは,西半球の最貧国(LDC)(一人あたりのGNIは650ドル(2010年))で,国民は長く貧困に苦しんでいます。更に,2010年1月にはマグニチュード7.0の大地震が発生し,死者約31万人を超える大きな被害を受けました。大地震後もコレラ等の感染症の流行,政治的混乱等によって震災からの復興が遅れています。ハイチでは従来から基礎的保健医療サービスが国民に十分行き届いておらず,乳幼児・妊産婦死亡率などの指標も中南米カリブ地域では最も悪い状況となっています。その中で,結核の流行も社会に悪影響を及ぼしており,早期治療のみならず,感染防止が求められていました。栄研化学が基本特許を有するTB-LAMP法は従来の結核検査方法と比べて高感度・簡易・安価であり,他の途上国(インド,ウガンダ,ペルー,南アフリカ,ブラジル,ベトナム)においても現地評価が行われている等,途上国での導入可能性が高い検査方法です。
- 外務省としては,引き続き,政府開発援助等の開発途上国の支援と民間企業の活動との連携を促進し,開発途上国の経済成長や貧困削減,生活の向上を後押ししたいと考えており,こうした官民連携案件の提案が数多く寄せられることを期待しています。
(注1)成長加速化のための官民パートナーシップ
発展途上国における民間企業の活動とODAの連携により,ODAだけではできない雇用の拡大や技術の移転,貿易・投資の促進などに貢献することを目的とする。民間企業からの官民連携案件の提案の受付,現地ODAタスクフォースへの日系企業が参加する拡大現地ODAタスクフォースの設置等を内容とする。