平成12年6月16日
1.政治・経済・社会情勢
86年末のドイモイ(刷新)政策の採用後、市場システムの導入と対外開放政策を推進。経済構造改革の推進、貧困緩和、地域間格差の拡大や環境悪化等への対応が課題。
2.開発上の課題
第6次5ヶ年計画(1996~2000年)」では、5年間で一人当たりGDPを1990年の2倍に引き上げることを目標とし、また「経済システムの改革」及び「生産力の再構築」の2つの側面より競争市場原理に基づいた経済効率の向上を追求。開発上の主要課題は、(A)市場経済に適合した法制度整備・運用、人材育成、(B)経済基盤インフラの整備、(C)国営企業改革と民間セクターの育成、(D)金融セクター改革を通じた国内資本の蓄積と有効活用の促進、(E)農業セクターの開発・強化、(F)貧困削減・地域間格差の是正。
3.我が国の対越援助政策
(1)対越援助の意義
越の政治的安定と経済発展は東南アジア地域全体の安定と発展にとって重要。日越関係も着実に進展しており、我が国としては越の市場経済化の努力を支援していくことが重要。
(2)ODA大綱原則との関係
総じて望ましい方向。
(3)我が国援助の目指すべき方向
依然不足する大型インフラ整備への支援とともに、「人造り・制度造り」、「農業・農村開発(貧困対策)」及び「環境」分野等への支援も重要。またハード面の他ソフト面の充実にも配慮し、円借款協力については越の債務負担能力を慎重に考慮することが必要。
(4)重点分野・課題別援助方針
(イ)人造り・制度造り(特に市場経済化移行支援)
持続的成長のための開発政策立案・実施と人材育成、市場経済化に即応した行政体制、法制度の整備、金融システム整備に係る支援及び次世代の人材育成のための高等教育システムの構築が必要。
(ロ)電力・運輸等の経済インフラ整備
今後の電力需要と物流増加に対応すべく電力、運輸分野等のインフラ整備支援を検討。
(ハ)農業・農村開発
農業部門の生産性向上と食糧増産、農産物の市場アクセスの確保を図るための支援とともに、農村工業化等により余剰労働人口を吸収し、農家所得向上を目指す支援を検討。
(ニ)教育、保健・医療
教育分野では初等教育等における施設整備と教育の質的向上が重要。保健・医療分野では弱者保護、貧困対策の観点から、保健医療サービスの拡充が急務。また医療設備の整備の支援及びポリオ、エイズ等の地球的規模の視点に立った協力の拡充も必要。
(ホ)環境
越で深刻化している森林破壊、水質、大気、土壌汚染等に対応するための支援を検討。
(5)援助実施上の留意点
(A)実施体制の強化、(B)越政府部内での複雑な承認手続きの簡素化、(C)越側関係省庁・機関の調整の強化、(D)越の開発戦略策定・実施等に協力するためのパートナーシップへの積極的参加、(E)インドシナ地域全体に裨益するプロジェクトの推進に留意。