ODA評価年次報告書2023 | 外務省

ODA評価年次報告書2023

コラム

ハバナを走る日本の協力:評価チームが見た現場

2022年夏、ようやくコロナ禍が収まって海外渡航の障壁が低くなり、外務省のODA第三者評価でも、3年ぶりに現地を訪問しての調査を再開することとなりました。ハバナ市に廃棄物収集車100台などを供与した「平成28年度対キューバ無償資金協力『経済社会開発計画』」、またその翌年、同市にダンプトラックや高所作業車など、都市整備関連機材を供与した「平成29年度対キューバ無償資金協力『経済社会開発計画』」の評価のため、9月21日から10月1日にかけて、評価チームがキューバの首都、ハバナを訪れました。(評価結果については、「平成28年度対キューバ無償資金協力(経済社会開発計画)」及び「平成29年度対キューバ無償資金協力(経済社会開発計画)」の評価をご参照ください。)

現地では、関係省庁や市の保健、防災当局を訪問したほか、供与した車両の整備工場やゴミの収集所、最終処分場なども見て回りました。日本政府が供与した機材がどのように使われ、管理されているか、また、それらの機材が実際にハバナ市の廃棄物処理や災害対策にどのように貢献しているかを視察しました。現場で働く方々にもお話を聞き、環境改善への効果が確認できたと同時に、外貨不足のため交換用のタイヤやバッテリーの入手に苦労している様子や、ゴミ収集は円滑に行われるようになっても、最終処分場が容量オーバーになっている現状など、新たな課題もみつかりました。

評価チームが現地に滞在中の9月26日から27日にかけて、キューバをハリケーン・イアンが通過し、暴風雨による被害が発生しました。国土全体が停電に見舞われたほか、キューバ政府によると、死者3名、避難者約7千人、被災者約50万人という甚大な被害が出ました。評価チームも丸1日半、ハバナのホテルに缶詰になりましたが、天候が回復するとすぐに市内に出て、市の職員が、日本が供与したチェーンソーや高所作業車、ダンプトラックなどを使い、復旧作業を行っている現場を視察しました。

ハリケーン・イアンの災害復旧作業の写真。

ハリケーン・イアンの災害復旧作業

ハリケーン・イアンによる災害廃棄物の撤去作業に利用される日本が供与した廃棄物収集車の写真。

ハリケーン・イアンによる災害廃棄物の撤去作業に利用される日本が供与した廃棄物収集車

カリブ海に位置するキューバは常にハリケーンの脅威に晒されてきました。2016年から2020年の主要な自然災害7件だけでも、24万軒以上の家屋が損傷し、約7億ドル相当の経済損失を被ったといいます。機材の不足は、災害復興の遅れに直結するだけではなく、倒木の恐れのある樹木の予防的な伐採を行うこともできず、被害の拡大にもつながってしまいます。今回のハリケーン上陸は不運な出来事ではありましたが、この機会を捉えて、供与機材の稼働状況を確認できたことは、評価チームによる現地訪問の大きな収穫のひとつでした。

ハリケーン・イアンによる災害廃棄物の撤去作業に利用される日本が供与したダンプトラックの写真。

ハリケーン・イアンによる災害廃棄物の撤去作業に利用される日本が供与したダンプトラック

現地渡航ができなかった2年間、各案件の評価チームは、オンライン会議システムを使って現地関係者にインタビューをしたり、現地コンサルタントを経由して視察や聞き取り調査を行うなどして対応してきました。このような代替手段によっても一定の情報収集が可能であることが確認でき、評価実施方法の選択肢が広がることにはなりましたが、やはり「百聞は一見にしかず」。実際に現地を訪れ、ODAの現場を目で確認し、相手と直接顔を合わせて率直な意見を聞くことで、より生の情報に近づくことができるのは、言うまでもありません。

ハバナ市内に出ると、日の丸を貼ったオレンジ色の廃棄物収集車が街じゅうを走り回る様子が目にとまります。日本人キューバ移住120周年、日キューバ外交関係樹立90周年にあわせて日本が供与したこれらの機材は、長年にわたる両国の友好関係の印として、ハバナの人々に対する日本の協力の広告塔としての役割も果たしています。

日本が供与した廃棄物収集車の写真。

日本が供与した廃棄物収集車

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