2017年度外務省ODA評価結果概要
ウガンダ国別評価<概要>
全文はこちらからご覧いただけます。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/files/000358919.pdf
評価者 (評価チーム) |
評価主任 | 大野 泉 政策研究大学院大学政策研究科教授 |
アドバイザー | 尾和 潤美 中京大学 国際英語学部講師(国際学専攻) |
|
コンサルタント | 有限責任あずさ監査法人 | |
評価対象期間 | 2010年4月~2017年12 月 | |
評価実施期間 | 2017年6月~2018年2月 | |
現地調査国 | ウガンダ |
評価の背景・対象・目的
ウガンダ(人口4,149 万人:2016 年)は、安定した経済成長を記録しており、また、南スーダンなどから難民を受け入れるなど、周辺地域の安定にも重要な役割を果たしている。本評価は、(1)ODAの管理改善、(2)国民への説明責任の確保を目的として、日本の対ウガンダ援助全般について分析を行った。
評価結果のまとめ(総括)
1 開発の視点からの評価
(1)政策の妥当性 (評価結果:A 極めて高い)
日本の対ウガンダ援助政策は、ウガンダの国家開発計画、日本の開発協力大綱、国際的な優先課題と整合性が高い。特にインフラ開発、農業、北部地域復興分野においては、技術力を活かしたインフラ整備、コメ増産の重点的支援、及び地方行政の能力強化を重視した北部支援など、日本の得意な分野に焦点を当てた協力を行い、他のドナーと相互補完的に協力が進められていることを確認した。
(2)結果の有効性 (評価結果:B 高い)
日本の支援では、量(規模・金額)より質の面において顕著な貢献が認められた。対ウガンダ国別援助方針に掲げられる「経済成長を実現するための環境整備」では、「質の高いインフラ」整備や北部回廊物流整備マスタープランの策定などに取り組んだ。「農村部の所得向上」では、ネリカ米を中心にコメ増産に貢献し、同時に、ウガンダ側の農業統計の不備や普及員制度の度重なる変更など、課題にも直面した。「生活環境整備」では、特に保健分野で様々な指標の改善が認められた。「北部地域における平和構築」では、多様なスキームを体系的に連携させるプログラム・アプローチを採り、基礎的インフラ整備を集中的に支援し、貧困率の改善に貢献した。ただし、過去の国内紛争の影響もあって、行政能力や人材育成などソフト面の支援の効果発現には更に時間を要すると思われる。
(3)プロセスの適切性 (評価結果:B 高い)
日本についての理解が深いウガンダ政府関係者や、ウガンダ政府に派遣された邦人政策アドバイザーの存在が効果的であった。また、青年海外協力隊(JOCV)のグループ派遣(例:ネリカ米の普及を目的に派遣されたグループ)や民間連携、現地ドナー間の協議の場である現地開発パートナーグループ(LDPG)におけるJICA 事務所現地職員の活躍は、高く評価できた。更に大使館は積極的に広報活動に取り組んでいた。一方、長期事業については、成果の普及・拡大に向けた戦略を検討することが重要と考える。加えて、南スーダン難民対応や日系企業支援など増大する業務量に、現地大使館やJICA 事務所が限られた人員で対応を迫られている状況も確認された。
2 外交の視点からの評価
ウガンダは、天然資源を有する近隣内陸国とケニアのモンバサ港を結ぶ要に位置する他、南スーダン等に展開するPKO の重要な拠点でもある。また、ウガンダは、地域統合の推進を通じて自国の経済発展に努めており、日本が同国を支援することは、周辺地域の安定と発展を推進する上でも重要である。近年、二国間の要人往来は活発化しており、人的・文化的な交流に深化が認められる。外交的な波及効果としては、民間連携事業を通じて発展した自治体間交流や企業間の多層的な交流の拡大、JOCV としての経験を通じた国際的人材の育成等が確認された。過去数年の、現地メディアによる報道件数の増加により、日本に対する認知度の高まりが認められた。民間のビジネス活動が徐々に活発化し、日本の中小企業のウガンダにおける事業化と拡大展開も実現している。
提言
1 援助事業実施における戦略性の強化
(1)「ウガンダ側政策・制度面への働きかけの強化」
これまで日本が現場で直面した具体的な課題や得られた教訓、またウガンダ側関係者と築いた信頼関係を基に、個別事業の成果の普及・拡大に向けてウガンダ側の政策・制度面における関与を強化すべきである(農業統計の整備、職業訓練プログラムの全国展開など)。
(2)ウガンダ側関係者による主体性や自助努力の醸成に向けた取組みを強化するべきである。
(3)長期にわたる援助事業、特に職業訓練事業における出口戦略を策定し、運営主体を徐々にウガンダ側に移行すべきである。
2 現地の援助実施体制の強化
(1)企業との連携に知見を持つ民間連携担当官の在ウガンダ日本大使館への配置
(2)JICA ウガンダ事務所の現地職員の登用とインセンティブ付与、及び好事例の他事務所との共有
(3)政策アドバイザーの積極活用、及び開発援助政策の分野での人材の発掘と育成
ウガンダ政府内の有能な邦人政策アドバイザーの確保・維持のためにも、海外や国際機関の勤務経験者など、開発・援助政策に関するコミュニケーション能力を備えた人材の還流・登用、育成を意識的に行うことが重要である。留学生と日本人学生が共同で学ぶ政策志向の大学院プログラムの拡充なども有用であろう。
3 知日・親日人材の育成と積極活用
多数のドナーが存在するウガンダにおいて、日本の援助や価値観を理解する人材を政策・実務の両レベルで育成し、積極活用していく必要がある。日本大使館やJICAは、ウガンダ政府・関係機関と一層緊密にコミュニケーションを図り、知日・親日人材を発掘・育成するとともに、こうした人材に二国間の協力事業で活躍する場を意識的に提供するなど、戦略的に取り組むべきである。
4 日本とウガンダの多層的な交流拡大に向けた取組みの強化
(1)在ウガンダの官民関係者による拡大ODAタスクフォースの開催
大使館と JICAによる定例のODAタスクフォースに加えて、投資環境、人材育成における課題や、ODA事業との連携の可能性など、様々な切り口で在ウガンダ日本企業やNGOと意見交換する場をつくるべきである。
(2)現地及び日本国内における、両国の官民人材が交流する場の設置
JOCV経験者やABEイニシアティブ留学生、民間企業などによる事業展開やキャリア開発を支持すべく、日本とウガンダ官民の人材の交流会を現地と日本国内(各地)で実施することを提言する。