ODA評価年次報告書2018 | 外務省

ODA評価年次報告書2018

2017年度外務省ODA評価結果概要

インド国別評価<概要>

全文はこちらからご覧いただけます。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/files/000358918.pdf new window

評価者
(評価チーム)
評価主任 林 薫
文教大学国際学部教授
アドバイザー 牧田 りえ
学習院大学国際社会科学部教授
コンサルタント 一般財団法人国際開発機構
評価対象期間 2017年6月~2018年2月
現地調査国 インド

評価の背景・対象・目的

日本は対インド国別援助方針(現:国別開発協力方針)により、(1)「連 結性の強化」、(2)「産業競争力の強化」、(3)「持続的で包摂的な成長への支援」の3つの重点分野において協力を進めている。日本の対インド支援は広範にわたるため、今回のODA評価は対象を絞り込み、3つの重点分野のうち、(3)「持続的で包摂的な成長への支援」分野(以下、重点分野(3))を中心に、現地調査を踏まえつつ支援実績に対する総合的な評価を行い、有益な提言を得ることを目的として実施した。

評価結果のまとめ(総括)

1 開発の視点からの評価

(1)政策の妥当性 (評価結果:B 高い)

日本の対インド国別援助方針は、インド開発政策との整合性が高く、貧困削減、基礎的社会サービス向上など、インドの開発ニーズにも合致している。また、日本の開発協力大綱や、国際的な優先課題等とも高い整合性が認められる。なお、重点分野(3)の支援に関し、各プログラムレベルでの課題解決の道筋を整理し、明文化することが望まれる。

(2)結果の有効性 (評価結果:B 高い)

農業・農村開発、基礎的社会サービス向上、森林資源管理、上下水道・衛生改善・公害防止、防災のすべてのプログラムで協力の成果があがっていることが確認された。特に森林資源管理分野では、評価対象期間の日本の支援による植林は、インド政府の計画の27%に相当した。上水道整備事業では計1,507 万人、下水道整備事業では計1,057 万人が裨益し、水因性疾患の減少など様々な効果が上がっている。

(3)プロセスの適切性 (評価結果:B 高い)

対インド国別援助方針の策定においては、日本政府とインド政府との間、及び日本の関係機関間で緊密なコミュニケーションが認められ、インド側開発ニーズは援助方針に適切に反映された。また、各支援スキームの特性を活かしつつ複数のスキームを組合せて支援したことによる効率的・効果的な取組も確認された。

2 外交の視点からの評価

日本とインドは、民主主義や人権、市場経済といった価値観を共有し、安全保障面でも互いを高く重視し、近年の頻繁な首脳外交等を通じて、両国関係は一層緊密化の度合いを増しつつあり、「特別」戦略的グローバル・パートナーシップへと格上げされている。インドにおける対日世論調査においても日本が「現在重要なパートナー」、「将来重要なパートナー」としてトップに選ばれている。

インドおける重点分野(3)における支援は、日本の開発協力理念の実現、日印両国との政治・経済・安全保障・社会面における関係、国際社会の目指す目標のいずれの点から見ても、外交的重要性が高い。また、日本からの投資総額や日系企業進出数が大きく伸びていることはODA の外交的な波及効果の表れである。また、日本からの投資及び日系企業進出数も大きく伸びていることはODA の波及効果と見ることができる。

提言

1 政策・戦略の方向性に関する提言

(1)生産性や付加価値の高い農業支援への注力

生産から加工・流通までを一体的に支援する現行の戦略をより一層強化し、市場志向の農業支援、高付加価値農産物の生産、日本の技術を活用した水資源・土地の活用などを実現する。

(2)森林資源管理分野の成果の総括と今後の戦略の明確化

これまでの成果を総括し、幅広く日印双方の関係機関間で共有する場を設け、成果の普及をはかるとともに、日本が中心となった森林資源管理の協力の中長期的方向性を明確化する。

(3)環境・防災教育の実施の検討

環境(町の美化)と防災(洪水の防止)、森林による水源滋養機能の啓もうを合わせた横断的プロジェクトとして環境・防災教育の実施を検討する。

(4)大気汚染対策に関する協力強化

デリーをはじめとする都市の大気汚染対策に関する協力の強化を検討する。

(5)重点分野(3)の各プログラムの再検証

重点分野(3)の協力の効果的、効率的な実施に向け、日本にとっての戦略的な優先順位などを踏まえ、各プログラムの援助方針などを再検証する。

2 援助実施のプロセスに関する提言

(1)広報の工夫

重点分野(3)は大規模インフラ事業のように誰の目にも目立つような協力ではないため、事前事後の写真を活用するなど広報面の工夫をして、日本の支援実績を広くアピールする。

(2)JICA インド事務所の人員配置

現地 NGO・民間企業等の活用や日系企業進出支援を一層促進するため、JICA インド事務所に必要な人員を配置する。

(3)国別援助方針の時宜を得た改定

日本の開発パートナーとしてのインドの重要性とインドの発展の速さに鑑み、「対インド国別援助方針」を定期的改定を待たずに必要に応じて見直していく。

(4)国別援助方針のインフラ分野に関する留意事項の記載

次回「対インド国別援助方針」策定・改定時には、インフラ案件形成時の留意点として、インフラ案件でも、例えばデリーメトロにおいて、終日女性専用車両が設けられており、女性が安心して通勤・通学ができる環境が提供されているほか、他の交通手段と比較して安価な料金のため貧困層による利用が可能となっていることなど、包摂性・持続可能性を深め得ること、また、そのための配慮を行う必要性があることを付記する。

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