2017年度外務省ODA評価結果概要
カンボジア国別評価<概要>
全文はこちらからご覧いただけます。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/files/000358920.pdf
評価者 (評価チーム) |
評価主任 | 稲田 十一 専修大学経済学部教授 |
アドバイザー | 野田 真里 茨城大学人文社会科学部准教授 |
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コンサルタント | 学校法人 早稲田大学 | |
評価対象期間 | 2017年8月~2018年2月 | |
評価実施期間 | 2012年6月~2017年12月 | |
現地調査国 | カンボジア |
評価の背景・対象・目的
日本のメコン地域との貿易・投資関係強化の重要性からも、今後も引き続きカンボジアの開発を支援する意義は大きい。対カンボジアODA 政策を全般的に評価し、今後のODA 政策の立案や実施のための提言や教訓を得るため、本評価を実施した。
評価結果のまとめ
1 開発の視点からの評価
(1)政策の妥当性(評価結果:B 高い)
日本の対カンボジアODA政策は、カンボジアの開発ニーズ、日本の開発協力大綱及び、国際的な優先課題に整合している。また、日本は他ドナーと協力して支援の相乗効果を高めていることが確認された。ただし、日本の援助の質は高いと評価される一方、量は中国より少ない状況にある。最近では、中国を始め他ドナーも日本と同様、投資・貿易と一体となった援助を実施しており、日本の優位性は相対的に低下している。
(2)結果の有効性 (評価結果:C 一部課題がある)
道路・電力・水道・保健分野の支援において大きな成果が確認された。例えば、水道分野では安全な水へのアクセス率が格段に向上した。一方、農業・教育分野においては、効果が現れるのに時間がかかるため、具体的な確認はできなかった。また、ガバナンス分野においては、汚職対策、法整備、財政管理、行政改革のための人材育成支援を行っているが、カンボジア政府の財政透明性の低さや人材不足、裁判官の汚職問題などの課題も残っている。
(3)プロセスの適切性 (評価結果:B 高い)
対カンボジアODA 政策は、カンボジアの開発ニーズに対応し、適切な手続きを経て策定されている。国民の意見(パブリック・コメント)や過去に第三者評価として出された提言が政策策定にどのように活かされているか分かりにくいという点を除き、政策のモニタリング・フォローアップもおおむね適切に行われている。
2 外交の視点からの評価
これまでの日本の援助実績に対するカンボジア政府・国民の評価は高い。アンコールワット遺跡群の修復やカンボジア紙幣にも刻印されている「つばさ橋」「きずな橋」の構築などを通じて、カンボジア国民への対日イメージは良好であり、日本のODAが二国間関係の緊密化への一助となっていることは明らかであり、高い波及効果が見られる。また、近年、両国関係は戦略的パートナーシップの関係に発展してきている。メコン地域の要衝に位置し、地政学的にも重要性を有するカンボジアに対し継続的な支援を行っていくことは、引き続き日本外交にとって資産となる。
提言
1 「 質の高いインフラ」支援の継続と支援手続きの簡素化及び迅速化
援助の量(規模・金額)における日本の地位の相対的低下も踏まえ、日本特有の「質の高いインフラ」がカンボジア政府からより一層深く認識され、評価されるように努めるべきである。また、インフラ案件は時間がかかるため、外務省・JICA は意思決定、支援手続きの簡素化・迅速化に向けて、今まで以上に取り組むべきである。
2 質と量を確保するための幅広い援助機関間連携と民間資金の活用
援助の質と量を確保するためには、政府機関と民間企業が連携して、出資・融資・保証を行い、質の高いインフラ整備を行うことが必要。また、多額な金額の拠出が可能な国際協力銀行(JBIC)やアジア開発銀行(ADB)と効率的・効果的に協力・連携して支援を行うことが適当である。
3 人材育成分野におけるODA の充実・拡大
日本への留学経験のあるカンボジア人は、開発協力や貿易・投資の分野で活躍しており、より強力な二国間関係を構築するためにも、日本への留学機会を拡充すべきである。また、人材育成は、内戦で多くの人材が失われた同国の重要な課題であり、教員の質の向上を始めとした教育改革を、日本として積極的に支援していくことが期待される。また、北九州市が支援をしている水道分野の技術支援は、同市の若手職員が水道業務の基礎を学ぶ機会にもなっている。両国双方に恩恵がある協力関係を一層深めていくことが望まれる。
4 ガバナンス改善に関する関与と幅広い国民参加を得た形での協力の拡充
カンボジアの法秩序、開かれた社会作りを支援することにより、日本の支援と中国の支援の差別化を図ることができる。こうした点も踏まえ、ガバナンス改善に対する支援を積極的に行うべきである。また、カンボジアと真のパートナーとなるため、ガバナンス面で耳の痛い助言も行うべきである。更に、政府間協力のみでは手の届かない領域で助言を行えるよう、NGO を始めとする市民社会、法曹人材間における交流など幅広い国民各層の参加を得て協力を拡充していくことが有効である。