2017年度外務省ODA評価結果概要
JICAボランティア事業の評価<概要>
全文はこちらからご覧いただけます。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/files/000359849.pdf
評価者 (評価チーム) |
評価主任 | 廣野良吉 成蹊大学名誉教授 |
アドバイザー | 藤掛洋子 横浜国立大学大学院都市イノベーション研究院教授 |
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コンサルタント | (株)国際開発センター | |
評価対象期間 | 2002年~2017年(本評価実施時期) | |
評価実施期間 | 2017年6月~2018年2月 | |
現地調査国 | ニカラグア、ブラジル |
評価の背景・対象・目的
独立行政法人国際協力機構(JICA)ボランティア事業は、日本の「顔の見える援助」の代表例として実績を積み重ね、国内外から高い評価を得てきた。本評価は、JICAボランティア事業について総合的検証を行い、今後の日本政府による政策立案、効果的・効率的な実施のための提言を行うこと、更には、その評価結果を広く公表することで国民への説明責任を果たすことを目的として実施した。
評価結果のまとめ
1 開発の視点からの評価
(1)政策の妥当性 (評価結果:A 極めて高い)
JICAボランティア事業は、日本の開発協力大綱及び関連政策と整合性が極めて高い。また、被援助国の開発ニーズとの整合性は高く、同事業への応募者及びJICAが連携を進めている企業、自治体、大学等国内関係機関のニーズとの整合性も極めて高いことが確認された。さらに、国際的援助潮流等との整合性も極めて高く、JICAによる充実した支援体制やボランティアのネットワークなど他国・他団体の同種事業では見られない比較優位も有している。
(2)結果の有効性 (評価結果:B 高い)
評価対象期間において、着実な派遣実績を上げており、有効性は極めて高いと判断される。また、個別ボランティアの活動成果は、個別のケース毎の差異はあるものの、おおむね高いと判断される。 また、JICA ボランティア事業全体の成果は、定量的な指標の設定は難しいが、おおむね高い評価を得ている。
(3)プロセスの適切性 (評価結果:A 極めて高い)
JICA ボランティア事業に関しては、定期的に事業の在り方に関する検討、見直しが実施され、更に個別ボランティアの活動や成果へのモニタリングも行われ、これらを通じた実際の改善実績は数多い。また、事業実施体制や関係機関等との連携・調整の面でも、国内機関との情報共有や責任者の明確化が徹底されて、連携が積極的に促進されており、プロセスの適切性は極めて高い。更に、国民の主体的な参加による事業であるとのJICA ボランティア事業の特質を事業主体が適切に認識し、積極的な情報公開・発信が行われている。情報公開・発信の適切性についても極めて高いと評価できる。
2 外交の視点からの評価
JICA ボランティア事業は、日本外交において明確に位置付けられ、「草の根外交官」としての役割を果たしており、外交的な重要性は極めて高い。また、派遣国からの表彰実績や東日本大震災の際に派遣国から寄せられた多額の義援金等に鑑みれば外交的な波及効果は極めて大きいと評価される。
提言
1 事業の設計・運営等に関する提言
(1)本事業については「無償の労働力」を想起させる「ボランティア」から「協力隊」への名称の変更や各ボランティア区分間の格差の是正等の措置をとりつつ、今後も着実に継続して実施すべきである。また「草の根外交官」としての役割が求められていることを踏まえ、日本の事情等の必要知識やコミュニケーション能力の向上を図るべきである。
(2)国別援助方針・事業展開計画において、より長期的な位置付けを明確化し、更に、「アニメ・漫画」等の新しいボランティア職種の設定、グループ型派遣、大学・民間・自治体との連携拡大を検討すべきである。
(3)定量的な効果の把握が難しいことから、より明確かつ幅広いニーズ把握、前任者との情報共有・アーカイブの整備、広報の強化、定量的モニタリング・評価手法の開発と普及が必要である。
2 日系社会ボランティア事業に特化した提言
日系社会支援の理念に関する研修の強化、ボランティア応募要件の日系人への拡大、派遣国における各種活動への参加促進及び日系社会におけるボランティア活動に対する支持拡大のほか、国民への日系社会ボランティアの知名度向上に努めるべきである。
3 処遇・敬意・人生設計・関係者による支援体制に関する提言
JICA 企画調査員(ボランティア)の安定的な雇用の実現を図るとともに、JICA ボランティアが派遣期間終了後に敬意を持って処遇されること、また、帰国後に明確な人生設計を描けるよう支援を充実すべきである。
4 外務省・JICA 以外の関係者による支援体制に関する提言
「グローバルコンパクト」(持続可能な成長を実現するために企業が責任ある創造的なリーダーシップを発揮すべきとする世界的枠組み)との関連性も念頭に、企業によるJICA ボランティアの採用への積極的な取組や支援体制の充実が必要である。