2017年度外務省ODA評価結果概要
TICADプロセスをふまえた最近10年間の日本の対アフリカ支援評価<概要>
全文はこちらからご覧いただけます。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/files/000358921.pdf
評価者 (評価チーム) |
評価主任 | 望月克哉 東洋英和女学院大学大学院教授 |
アドバイザー | 池上清子 プラン・インターナショナル・ジャパン理事長/長崎大学大学院教授 |
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コンサルタント | みずほ情報総研株式会社 | |
評価対象期間 | 最近10年間 | |
評価実施期間 | 2017年7月~2018年2月 | |
現地調査国 | ガーナ |
評価の背景・対象・目的
TICAD(アフリカ開発会議)は、日本が主導し、アフリカの開発を推進する国際フォーラムであり、日本のアフリカ開発政策の基礎と位置づけられる。本評価では、過去10年間のTICAD首脳会合において日本政府が打ち出してきた対アフリカ支援政策関連取組を評
価対象とした。
評価結果のまとめ
1 開発の視点からの評価
(1)政策の妥当性(評価結果:B高い)
日本の対アフリカ支援政策と、(1)国際社会の取組・援助潮流、(2)日本の開発協力大綱など関連政策、(3)アフリカの開発ニーズとの整合性は、総じて見れば高い。
一部に分かりにくさなどあるが、それは対アフリカ支援政策に係る課題認識や政策哲学についての説明不足に起因すると考えられる。
(2)結果の有効性(評価結果:C一部課題がある)(注1)、(注2)
日本の対アフリカODAの(1)インプット(支援実績)、(2)アウトプット(目標達成状況)、(3)インパクト(長期的・波及的効果)、④ケーススタディ国(ガーナ)での実績・成果のうち、(2)や④に係る評価は概ね良好である。(3)は、残念ながら有意な分析結果が得られず不明であった。(1)については、過去と比べての支援倍増などの成果はあるが、日本の経済規模を勘案すれば主要国の平均的援助水準や国際的な目標に比べて十分でないといった課題もある。
(3)プロセスの適切性(評価結果:B高い)
日本の対アフリカ支援政策の策定・実施プロセスの適切性は全般に高く評価された。ただし、それがアフリカ各国への国別支援政策などに適切に反映されているかについては、外務省とJICAの間の情報共有の面で更なる強化・改善の余地があり得ると考えられる。
2 外交の視点からの評価
TICAD Ⅳが開かれた2008年から段階的に経済外交面での重要性が高まってきていることを踏まえ、日本の対アフリカ支援の外交的波及効果を(1)日本の対アフリカ輸出入・投資額、(2)在アフリカ日系現地法人の売上高、(3)日系企業の対アフリカ事業展開見通しの観点から検証した。(1)や(2)を見ると、日本企業の事業などへの直接的利益は未だ十分にはもたらされていないものの、(3)を見ると日系企業の事業展開志向は徐々に拡大しており、効果は今後発現してくる可能性があると思われる。
提言
1 対アフリカ支援政策に係る課題認識・政策哲学の“文書化”(注3)
現在の日本の対アフリカ支援政策には、アフリカが抱える課題への認識、そうした課題に取り組む上での政策哲学についての説明が不足している。この点を改善し、援助関係者及び国民の政策に対する理解を促進するため、(1)現行のレジュメ風のコンパクトな対アフリカ支援政策を“読み物”的文書に変えること、あるいは(2)対アフリカ支援政策文書に加え“解説書”的な文書を別途作成することを提言する。
2 広域協力・南南協力の推進強化
複数国に跨がる広域事業や、アフリカ諸国間で開発成果の共有・移転を図る南南協力の推進を、一層強化することが望ましい。なお、このような広域協力・南南協力に特化した記述部分を対アフリカ支援政策に盛り込むことも検討に値する。
3 他ドナーやAUとの連携強化
TICADは世界銀行、国連開発計画(UNDP)、アフリカ連合委員会(AUC)などと共催するフォーラムであり、これら国際機関からの支援や協働を引き出すことができれば、より一層大きな成果の発現が期待される。他ドナーやAUとの連携の更なる強化を提言する。
4 TICADの「冠事業」「冠施設」の推進
対アフリカ支援政策の外交的波及効果として強まりつつある日系企業のアフリカ・ビジネスへの関心を実際の事業展開に結びつけ、経済面における国益を実現していくためには、TICADや対アフリカ支援政策に対する認知度と関心を更に高めていくことが望ましい。そのため、関連する事業や施設に「TICAD」の冠を付け、認知度向上を図ることを提言する。
5 TICAD 重点事業の実施迅速化の検討
日本の開発協力について、実施決定までに時間がかかるという指摘がある。意思決定プロセスの一層の迅速化により、アフリカにおける日本のプレゼンス向上などが期待される。重点特定分野事業について、実施決定までの期間短縮のための措置を検討するよう提案する。
(注1)、(注2)、(注3) に関する外務省の見解については、それぞれ報告書(全文)の99 頁と119 頁、63頁 と96頁、55頁と120頁における(注)印の脚注に示している。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/files/000358921.pdf