ODA評価年次報告書2018 | 外務省

ODA評価年次報告書2018

2017年度外務省ODA評価結果概要

南部回廊を中心としたメコン地域の連結性の評価<概要>

全文はこちらからご覧いただけます。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/files/000358923.pdf new window

評価者
(評価チーム)
評価主任 湊 直信
国際大学客員教授
アドバイザー 藤村 学
青山学院大学経済学部教授
コンサルタント (株)国際開発センター
評価対象期間 2015年~2017年
評価実施期間 2017年6月~2018年2月
現地調査国 タイ、カンボジア、ベトナム

評価の背景・対象・目的

メコン地域は日本と歴史的・文化的な繋がりが強く、地政学的及び経済的に重要な地域であり、同地域がグローバルな競争力を維持させ、「質の高い成長」を実現することは日本の繁栄に重要な意義を持つ。また、メコン地域の安定と繁栄の実現には、同地域における連結性の強化が必要である。本評価は、このような認識をふまえ、南部回廊を中心としたメコン地域の連結性強化に係る日本の支援を評価し、国民への説明責任を果たしつつ今後の政策立案と実施に役立てることを目的として実施された。

評価結果のまとめ

1 開発の視点からの評価

(1)政策の妥当性(評価結果:A 極めて高い)

本政策の目標は、連結性の強化を通じたメコン地域の安定と「質の高い成長」の実現であり、日本の開発協力大綱及び関連政策との整合性が極めて高く、また、メコン地域各国の開発政策や課題、経済社会開発ニーズとも整合している。更に、ハードインフラ整備や産業化を通じた持続可能な開発を志向する国際的援助潮流とも合致している。メコン地域の連結性支援における日本の優位性は、メコン地域内における日本の中立性への信頼感や日本が有する質の高いインフラ支援及び効率的な支援スキームにある。これらの優位性を活かし、日本はメコン地域にける連結性支援の調整役を果たすことが期待されている。なお、メコン地域には複数の回廊があり、どの回廊の開発優先度が高いかは各国によって異なることもあり、各国の開発ニーズや開発の可能性をさらに考慮した支援が望ましい。また、本政策に関連する複数の政策文書を一体化して示すことも重要である。

(2)結果の有効性(評価結果:B 高い)

ハードインフラ面においては、道路、橋梁、港湾施設等のインフラ整備を通じた時間の短縮や交通量・貨物取扱量の増加等高い効果が確認された。ソフトインフラ面においては、越境の際の電子通関の導入による通関手続きの円滑化が見られるものの、物流制度の整備や物流コストの削減などが課題として残り、ODA 以外の民間を含む多様な関係機関との連携も必要である。ハードおよびソフトインフラの連結性と並ぶ本政策の重点分野である産業人材育成については、効果が現れるには一定の時間を要するため、より長期的な視点でモニタリングを実施することが必要である。また、政策文書において指標を伴う明確な目標設定を行うことで、より適切な効果の活用、支援方法の検討が可能となる。

(3)プロセスの適切性(評価結果:B 高い)

メコン地域の連結性強化に係る日本の協力は、日メコン間における各種会合を通じ、メコン地域内および日本国内での十分な調整の上、様々な関係者の意見を集約して決定されており、ほぼ全ての検証項目において高い評価結果が得られた。ただし外務本省と在外公館等現地との間において、連結性支援政策に関するモニタリングおよび評価結果の情報共有や、連結性支援をプログラムとして捉えたモニタリングの実施が必要である。

2 外交の視点からの評価

近年アジアを取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中で、地政学的にも要衝に位置するメコン諸国を含む東南アジア諸国連合(ASEAN)地域の更なる統合・安定および、繁栄はアジア及び国際社会の平和と安定に極めて重要である。また、メコン地域は、貿易投資やインフラ海外展開の面においても、日本にとって非常に重要な市場であり、メコン地域の連結性強化に資する各種支援方策は外交的にも重要である。また、 ASEAN 諸国から、日本の安全保障に関する立場への支持がしばしば表明される他、日本からメコン地域への投資や企業進出数の増加、日本とメコン地域各国間の人的交流の活発化がみられる。メコン地域 の連結性強化に対する日本のODAと外交的な効果との因果関係を明確に示すことは難しいが、日本のODAがメコン地域諸国との関係を強化し、政治・経済・社会的側面での外交的な波及効果を一定程度もたらしたと言える。

提言

1 日メコン地域協力に関する政策の一体化(外務省と他省庁の連携強化)

関連する政策文書につき日本側の関係省庁間で共有し連携を強化した上で、日本のメコン地域の連結性強化に関する政策の目的・手法を明確にメコン地域諸国側に説明する。

2 メコン地域各国の開発政策における優先付けと回廊開発協力の関係性強化

各国の開発政策・ニーズに呼応した形で日本の開発政策の優先付けを検証し、同地域における国際競争力の強化につながる開発協力を行う。製造業に限らず各国の特性を活かした産業開発の支援を検討するとともに、制度構築などへの支援を継続することにより地域経済の活性化を目指す。

3 南部回廊の連結性強化に向けた取組の強化

ハードインフラの整備と質の維持管理能力の向上に対する支援を継続し、国境付近の混雑緩和、物流・貿易面の円滑化に向けたソフトインフラの改善を図る。

4 メコン地域支援における日本のイニシアティブの発揮

日本が今後もメコン地域の連結性強化に対する支援においてイニシアティブを取るためにも、連結性強化に関わる政策目標を明確にし、長期的な視点をもった指標と実施計画を設定する。また、二国間協力ではなく、メコン地域支援の枠組みの中で関係国間の調整役を果たす考えを日本として示す。さらに、同地域での存在感が大きい中国の動向把握に努め、メコン地域の連結性強化に対する日本の支援をより効果的なものにしていく。

5 ODAによる協力の継続とアプローチの見直し

政策アドバイザー等の長期専門家の派遣により、相手国政府の政策策定や制度構築面での支援を継続するとともに、各国の得意分野を活かした三角協力等を通じて地域協力を促進する。また、新たな支援スキーム等の検討は柔軟に行う。

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