ODAとは? ODA改革

ODA大綱に関する公聴会(東京)議事録

ODA大綱に関する公聴会(東京)
日時:7月21日(月) 14:00~17:00
場所:日本青年館・国際ホール


(須磨) 写真本日はお忙しいなかお越しいただきまして、ありがとうございます。控え室での一番の関心事は、この雨の中、何人ぐらいの方にお出でいただけるか、ということでしたが、ちょっと少なめで残念ですね。ODAに関する関心がまだまだ高くないのかな、と思うと寂しい気がしています。少ない理由は、確認するところによるともう一つありそうです。こういう公聴会に限らず、日本の社会では、こうした会を開くにあたり動員をかけることがありますよね、今回の公聴会では。一切の動員をかけていないそうです(笑)。本当にこの場で意見を言いたい、また聞きたいという方だけにお集まりいただいたので、皆さんぜひ活発に意見を言っていただきたいと思います。
 これよりODA大綱の見直しに関する公聴会を始めさせていただきます。ご存知だとは思いますが、今ある大綱は平成4年1992年に策定されたものです。その時には、こういった国民の声を聞くということはなく、政府内だけで原案を作ったと聞いております。今回の見直しは、ご存知のように国際情勢が変化、国内の経済情勢、またニュースにもあったように、ODAに対して批判がある中で、10年経ったということもあり、様々な立場の人、みんなで知恵を出し合って、よりよいODA大綱を作ろう、ということだと聞いております。そしてODAをより効率的に使うシステムまで踏み込んで大綱を作っていこうということだ、と聞いております。私、今回、司会を頼まれるにあたって、形だけの公聴会だったらあまり司会したくないな、と思ったんですね。要するに案があっても、ほとんど決まっていてよろしいですね、という、聞いたという言い訳のための、承認の会であったならば、協力したくないなと思ったんです。ところが、この公聴会は本当にみなさんの意見を入れて大綱を見直し、コメントも書きかえる。しかも、もし入れないのであれば、どうしてそれを入れなかったのか、といことも答えると、外務省のかたがおっしゃいました。あ、これは本気で聞こうとしているのだな、時代がいい方向に動こうとしているな、と思いまして、私の力で少しはお役に立つのであれば、と司会をさせていただくことにいたしました。須磨佳津江と申します。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)ありがとうございます。
 まず、壇上のみなさんから、ご紹介したいと思います。外務省経済協力局調査計画課長須永和男さんです。
(須永) 須永です。よろしくお願いいたします。
(須磨) 外務省の中でも長くこのODAに関するお仕事に携わっていらっしゃいます。後ほど原案についてご説明をしていただきます。そして、もうひと方、ODA総合戦略会議の委員をしていただいております荒木光彌さんです。(拍手)荒木さんは日本で初めての開発問題の専門誌であります「国際開発ジャーナル」の創刊に参加されまして、現在、編集長をされています。ODA総合戦略会議で、どのような話合いのもとに、この原案が生まれることになったか、後ほどお話をいただこうと思います。
 今日のスケジュールとしましては、そうしたご説明の後に、まず、みなさんの意見を聞く口火を各界の3人の方にとっていただき、その後に自由に知恵を出し合っていただきます。よりよいODA大綱を作っていくための、ご意見をいただきたいと思います。
 では、まず初めに政府原案のご説明をいただきます。須永課長、よろしくお願いいたします。
(須永) みなさん、こんにちは。須永と申します。休日にも拘らず足をお運びいただきまして本当にありがとうございます。公聴会、先ほど司会の方からもお話がありましたけれども、昨日も大阪で私やってまいりましたが、そこも、出たとこ勝負で、広報があまり知らなかった方もいたかも知りませんけれども、主な新聞2社には記事を書いていただきましたし、それから外務省のホームページでも広報させていただいて、今回どういう方がいらっしゃるか、非常に楽しみにしておりました。
 中味について簡単にご説明いたします。お手元に、おそらく7月上旬に私ども公開いたしました政府原案があるかと思いますので、これに基づいて説明をいたします。
 なぜ今、10年ぶりにODA大綱を改正するのか、ということを簡単に2つ申し上げますと、一つは、この10年間の間に国際情勢が変わったということだと思います。今、国際社会がいろいろな開発目標を共有するようになって来ていますし、ご存知の方もあるかも知れませんが、貧困削減というのを中心にして、いろんな単に政府だけではなくて国際機関とかNGOとか、あるいは企業も、開発目標を共有して取り組むという動きが非常に盛んになっているということです。日本のODAというのは伝統的に政府対政府で、2国間でやっているODAが多かったわけですけれども、そういうことから国際的な潮流を踏まえて新しいODAのやり方をやる必要があるというのが第1点です。
 第2点は、国内的な話ですけれども、一つは日本の経済とか財政が非常に悪いといことで、いまODA予算も減っています。減っている理由は別に国の経済財政だけではなくて、ODAのそのもののいろんな不祥事とかありまして、ODAは非常に不人気なんですね。そもそも税金使ってあまりいいことやっていないんじゃないかという批判もありまして、そういうことで、ここ2,3年はODA改革というのをわれわれやって来たわけですけれども、そういうODA改革でやって来たこと、これを大綱にきちんと書きたいと、いう2つの理由があるのだろうと思います。
 ということで、中味の説明をいたしますが。お手元の「改定について」という資料がありますが、1ページ目は私が言ったようなことを、もう少し役人なりの文書に書き直したのが1ページ目であります。これを飛ばして、1枚めくっていただいて2ページ目から説明いたします。
 ODA大綱、実は大きく分けて3つの部分から成っています。1つは、最初が「理念」という部分です。もう一つが4ページ目からあるんですが、「援助実施の原則」と言われているのもので、けっこう途上国でも有名になっていますけれども、ODAをやってる際に日本はどういうことに注意しているか、ということが原則に書いてあります。その下に今度「援助施策の立案及び実施」とうのがあります。これは今度の大綱で新しく作った項目ですが、今までのODA大綱、これもお手元に資料がいっているかと思いますが、今の大綱を読んでも、政府がどうやってODA施策を作って、それを実施しているのか、それをどうやって効率的な援助を確保しているのかがよく分からないですね。今回は、これもODA改革を踏まえて立案と実施の、政府がどうやっているのかを少し明確にした、ということであります。
 冒頭から説明いたしますと、まず理念ですけれども、理念は目的、方針、重点と書いてありますが、これはどういう構成になっているかというと、政府は何でODAをやるのか、やらなくてはいけないのか、ということが書いてあって。次に、どうして、と、どうやってやるのか、とハウの部分ですね。それが基本方針です。政府の基本的な考え方を基本方針に書いています。
 では、何をやるのか、ということが重点課題と重点地域に書いてある、という構成になっています。
 それで、目的のところは、最初の2行、「ODAの目的は国際社会の平和と発展に貢献し、これを通じて我が国の安全と繁栄の確保に資することである。」と書いてあります。ここで、これはいろいろ新聞などで話題になっていますけれども、「我が国の安全と繁栄」という言葉を新たに入れております。途中読んでいただくとお分かりになると思いますが、ODAの目的として、まず第一に「国際社会の平和と発展への貢献」を掲げておりまして、その中味は、文章の段落4行目から書いたんですけれども、「極度の貧困、飢餓など」の人道的な問題、それから環境などの地球的規模の問題、されにその下に紛争とかテロ、あるいは民主化とか人権の保障の問題。我が国はこういった問題に率先して取り組む決意であると。これが第1の文章で、一番重要な文章です。我が国の安全と繁栄、いわゆる国益的なものについては、こうした取り組みはひいては各国との友好関係とかいろいろ通じて、我が国にもいろいろな形で利益をもたらすものであると、いわゆる間接的な書き方をしてあります。
 さらに、次はもう少し日本に直接関係のあることを書いてあります。つまり、日本は国際貿易の恩恵を享受して資源、エネルギー、食料等を海外に依存しているのでODAを通じて開発途上国の安全と発展に積極的に貢献する。これがまた目的です。このことは我が国の安全を確保し、国民の利益を増進することに深く結びついている。これも間接的な書き方ですが、こういうふうに書いております。
 基本方針ですけれども、基本方針は5つ書いておりまして、最初は「自助努力支援」でこれは我が国が昔から重視していることです。日本自身の明治以来の発展の経験を踏まえて途上国の自助努力が重要だということを書いています。2は「人間の安全保障」ということですが、これは緒方貞子先生らが国連で推進している概念で、日本が国際社会で提唱している概念ですけれども、この一番のポイントは、もはや政府対政府でODAをやっている時代ではないということを言ってます。つまり、世界中には、例えば政府がないところ、あるいは政府があっても政府はあまりしっかりしていない、つまり、きちんとその国に住んでいる人の人生とか保護とか考えてない所があるわけで、そういう場合には、我が国も中に住んでいる人とか地域ですね、こういうところに直接援助の手を差しのべる。これが「人間の安全保障」のなかの一番基本的概念です。これは政府対政府とか国境を越えて対応するということが(2)です。
 (3)は公平性の確保ということで援助をするといろいろな社会的弱者あるいはジェンダー、男女の格差、これは社会的な格差をジェンダーというそうですが、あるいは貧富の格差、いろいろな問題がありますので、そういうものにきちんと対応する。それからもう一つは、我が国がODAを実施しますと、いろんな環境への影響とか、あるいは地域社会に与える影響がありますので、そういうものに充分注意を払う。それで不公平というか、ある人には利益をもたらすけれども別の人には不利益をもたらすということをできるだけ避けて、公平性を確保するということを3番目にうたっております。
 4番目は我が国の経験と知見の活用ということで、これはかなり視点が変わりますが、顔が見える援助に近い概念ですけれども、我が国の技術とか経験とか知見、人材、こういうものを活用する。それから我が国のいろいろな政策がありますが、貿易政策、農業政策、あるいは青少年政策、教育政策、そういういろんな政策との整合性を確保する。要するに、我が国のいろんな技術とか、人材とか、日本の政策とか、こういうものが見えるような援助をやる。これが(4)です。これも日本の利益に共通する概念だと思います。
 (5)は国際社会における協調と連携ということで、ここは読んでいただければ分かると思いますが、いろんな国際機関とか他の援助国とか、NGOとか、そういうところと連携を強化するということが書いてあります。
 (3)は重点課題ですけれども、4つ入れておりまして、最初の貧困削減は、いわゆるミレニアム開発目標と言われておりまして、国際社会が共通にもっている開発目標、これを第一に掲げております。このミレニアム開発目標に書いてあることは、教育とか保険・医療とか、水とか衛生とか、こういうことが書いてありますが、農業とか、日本が重視している分野ですが、これも書いてますけれども、基本的にはミレニアム開発目標に沿った活動を中心とするということです。ただ、ここで一つ強調していますのは、貧困削岩の項目にある最後の文章ですが、貧困削減を達成するためには、開発途上国の経済が持続的に成長し、雇用が増加することが不可欠であるということを言っております。これはアメリカやヨーロッパの開発戦略と異なっているんですが、日本はとくに今のODAを使って東アジアを中心として経済成長をうながして、それで貧困削減に貢献して来た、そういう戦略を歴史的にとってきたので、それは間違っていないと私どもは思っておりますので、日本自身の戦略としてこういうことを書いています。その成長を達成するためには、どういうことをやったらいいかということを(2)に書いてあります。お読みいただければお分かりいただけると思います。
 (3)は地球的規模の問題で、これもとくに説明は要しないと思いますが、環境問題等こういう問題に積極的に取り組むということが書いてあります。
 (4)は平和の構築で、これは新しい概念ですけれども、まず、平和の構築で一番重要なことは、これは第1文に書いてありますが、貧困削減とか格差の是正、こういうものを通じて、紛争が起こらないようにする、予防することが一番重要である、ということが書いてあります。かりに不幸にして紛争が起きた場合、例えば、難民とかが生じますので、そういう紛争下の緊急人道支援を行うとか、紛争が終結した後のいろいろな復興のプロセスを支援するとか、そういうことを書いております。具体的にはということで、ここにいろいろと書いてありますけれども、ここで一つ注意しなければいけないと私自身が思っていることは、例えば元兵士の武装解除とか、動員解除とか、書いてありますけれども、これすべてODAでやるわけではありません。当然、軍事的手段をもって実施する部分もあると思いますが、ODAというのは、例えば武装解除した兵士に職業訓練をしたり、あるいは、雇用の機会を提供したりして、こういうものを促進するような効果があるのではないかと思っております。
 次に移りますが、重点地域ですけれども、アジアが重点であると言っています。ただこれも、今の大綱とかなり変えていまして、今の大綱はアセアンとか東アジアが、さらに重点地域であると言っていますけれども、ここでは第2文ですか、ただし、アジア諸国の国際社会状況の多様性、援助需要の変化に十分留意しつつ、戦略的に重点化を図る。これは分かり難い文書なんですが、要するに、例えば中国の沿海部とか、あるいはマレーシアとか、タイも今そうですけれども、経済社会が発展したところですとか、援助需要があまりないようなところは、あまりやらないということだと思います。アセアンの中でも、例えばカンボジアとか、ラオスとか、遅れた地域もありますので、そういうところは引き続き援助をする必要があると思いますけれども、むしろ、アセアン等の東アジア地域、次に書いてありますけれども、経済的連携、貿易とか投資とか、そういう関係ですけれども、それが今後中心になってくると思います。そういうもののためにODAを活用すると、主はむしろ経済連携の強化、こういうことに移っていくのではないか。私の主観を込めてですけれども思っています。
 そのほか、今の大綱には無かったこととして、南西アジア、南西アジアというのは普通は南アジアと言いますが、分かり難くかったら変えてもいいんですが、外務省用語でインドとかパキスタンとかバングラデシュとか、スリランカとかを南西アジアと言っております。通常では南アジアと言っています。あと中東アジアとか、さらにアフリカ、中東、中南米、海洋州についても少し記述しております。
 次に移りまして、原則が出てまいります。4原則というのがあって、ほとんどが今の大綱の文書を変えていません。かなりアジアを中心として、国際社会でも浸透しているということで、日本が、例えば大量破壊兵器、核実験したら援助を止めるとか、かなり知れ渡っていますので、これはそのまま踏襲して運用をきちんとやっていきたいと我々は思っています。変えたところは2行目に、開発途上国の援助需要という言葉がありますが、今の大綱では開発途上国の要請となっております。これは要請主義を見直すということで援助需要というふうに書いています。これは後で説明しますけれども、政策協議の強化と対になっておりまして、要請をそのまま受けて援助することは止めて、途上国とよく政策を話合って、お互いによく理解して援助するというのがこの大綱の一つのテーマになっております。
 次に、援助の実施体制に移りますけれども、これらは、先ほど冒頭に申し上げましたけれども、ここずーっとやってきたODA改革です。ODA批判を受けたODA改革の成果を、成果と言えるかどうか分かりませんが、我々がやろうとしていることをここに書いたということでありまして、キーワードがありまして、(1)一貫性のある援助政策の立案です。つまり、なんで、日本のODAが効率性がないかという理由の一つに、各省庁がばらばらにやっているではないか、というのが非常に強いわけですね。それから、援助庁をつくるべきであるという、そういう主張が出て来るわけですけれども、私ども、今の行政組織の中で、できるだけ一体性と一貫性をもってODAをできるだけ効果的、効率的に実施する。これがキーワードでありまして、そのための方策をいくつか入れております。その一つが、一番大きいのが国の援助計画とつくるということです。これはODA総合戦略会議の方で今つくっていただいておりますが、途上国の援助需要を反映した国別援助計画を、国ごとにつくっていけば、それをいろいろは省庁が共有してやっていけば、目標と計画が共通なわけですから、かなり一体性と一貫性がでるのではないかと我々思っていまして、それが(1)に書いてあります。
 (2)はそういうものを踏まえて、政府間の連携を強める。これは一つは外務省調整の中核とするという言葉が入っていますけれども、この大綱を閣議決定しますので、外務省が調整の中核となるということについて全省庁の合意が得られるということになりますので、これは一つの成果かなと思っています。もう一つは対外経済協力関係閣僚会議という長いのがありますが、これはODAをやっている省庁の大臣が集る会合ですけれども、総理も官房長官も出ますので、実はこれ、過去にあまり開かれていなかったんですが、これを折りに触れてやって、つまり総理が出るところで、いろんな省庁との意思統一を図るということをやっていきたいと思っています。この閣僚会議を基にいろんな省庁の連絡会をつくっています。資金協力についての連絡会、技術協力に関する連絡会、さらに評価に関する連絡会とか、これはかなり頻繁に会合を開くようになっていまして、情報交換、意見交換を蜜になっていると思います。
 3番目が政府と実施機関の連携ということですが、時間がないので通り過ぎますが、次が、政策協議の強化で、これは先ほどの要請主義の見直しと対になっている概念ですけれども、これは1行目に書いてありますが、開発途上国から要請を受ける前から政策協議を活発に実施すると、それによって開発途上国の開発政策とか援助需要を十分に把握する。だから、要請を真に受けて援助するのではなくて、日本としても協議して納得した上でやるということが重要かなと、途上国の政府がつくる要請が必ずしもいい要請とは限りませんので、その辺、今後我々としても途上国と協議して許可するということです。これと、さらに対になっているのが(5)の現地機能の強化ということです。これは、今まで日本のODAはかなり東京で決めていたんです。東京の職員、私はそうなんですけれども、私はフィリピンの大使館で仕事をやったことがあって、現地も知っているつもりですが、もう10年前なので、今はどうか分かりませんが、現地の経済状況や社会状況とか、そこに住んでいる人のこととか、知る立場にあるのは、在外公館の人とか、あるいはJICAとかJBICの現地事務所の人だと思いますね。だから、こういう人たちが現地で十分情報を収集して、あるいは現地の関係者と、これはいろんな関係者がいると思います。住民の人とか、NGOの人とか、国際機関の人とか、こういう人たちと話合って、現地の経済社会情勢を十分に把握して、それで援助をやるということが、間違いのない援助をやる道なのかなと私は思っています。
 (6)が内外の援助関係者との連携で、これはここに書いてある通りです。もはや政府だけがODAをやっている時代ではないということ。これは日本だけではなくて、むしろ日本よりさらに欧米諸国が先行してそういうことをやっているわけですけれども、いろんな各方面との連携を強化するということを書いています。
 2は国民参加の拡大です。これも考え方としては同じですけれども、これもいろんな日本の国民各層からの援助参加と書いてありますけれども、人材育成をしたり、あるいは、こちらからもご支援をしたり、あるいは、学校教育の場を通じて開発教育をやる、これは文部科学省とも話をしていますので、それでこういう表現になっていますが、そういうことをやっています。それから、そのベースとなるのは情報公開ですので徹底した情報公開を行うとここに書いてありますけれども、ODAの政策、実施、評価に関する情報を幅広く、迅速に公開するということをやっていきたいと思っております。
 3番目は効果的実施のために必要な事項で、いわゆる無駄遣いとか、あるいは不祥事とか、こういうのが起きないようにするのが目的ですけれども、評価です。ODAの評価、自前の評価はやっていません。これからはもっと徹底して第三者、つまり政府以外の人に評価してもらうということにしております。
 それから、2番目は適正な手続きの確保ということで、例えばジェービックでも今、環境ガイドラインを作っていますし、ジャイカでも今つくろうとしていますが、こういう環境や社会面を配慮する手続きをとる。それから、質とか価格面でも、効率的な調達を行うということ。
 不正、腐敗の防止。これは当然のことですけれども、その一つは外部監査を導入しようとしております。最後は援助関係者の安全確保ということが書いてあります。
 一番最後のローマ数字のIVで書いてあるのは、ODA大綱をつくりっぱなしにしないで、作ったら、その実施状況を毎年ODA白書にきちんと書いて、それを閣議に報告するということを書いてあります。これについてはまた、実施状況について白書で明らかにします。それについていろいろ一般の方からご意見をお伺いして議論することもできるのではないかと思っております。以上、簡単ですが終ります。
(須磨) ありがとうございました。引き続き、今回の政府原案ができるまで、ODA総合戦略会議でどんな議論が行われて来たのか、経緯をご説明戴きたいと思います。荒木委員お願いいたします。
(荒木) 荒木でございます。私、このODA総合戦略会議のメンバーでありますが、同時にODA総合戦略会議のもとで、昨年の末にODA大綱見直しのタスクフォースが編成されまして、4人ほどODA総合戦略会議のメンバーをコアに会議を進めたわけです。第1回は今年の正月明け7日から始まりまして、5回ぐらいタスクフォースで検討したわけです。タスクフォースの仕事というのはODA大綱の見直しの論点を整理するということで、論点整理に一応尽力し、その論点を政府に提出する。ODA総合戦略会議あるいはタスクフォースでは論点を整理してODA大綱を自ら書くということはしない。これは政府に任せる。こういう役割分担で仕事を進めて来たわけです。それで、論点を整理してODA総合戦略会議の全体会議に付しまして、いろいろな問題を整理して何度かそれを繰り返しながら政府へ渡したわけです。ODA総合戦略会議はそもそも議長が外務大臣です。渡辺拓大教授は議長代理ですが、外務大臣所管になっております。ちなみに、その前の年にあった第2次ODA改革懇談会というのがありまして、この場合は外務大臣の私的諮問委員会であったわけです。そういう仕分けの中で、仕事を進めて来たわけでして、我々は一応外務大臣の委員会であるけれども、まったく有識者として、自分の見直しに対する見解を述べるということで、かなりいろいろともの申しました。情報開示していますので、読んでいただければ分かると思いますが、けっこう厳しくいろいろな問題提起をしたつもりなんです。
 結論から言いますと、出来てきたのを見まして、最初シンプルな文体、文章だったんですが、だんだん時間とともに政府の方が外務省を中心として調整をして、各省庁の根回しをしたり、自民党根廻しいろいろあります。政府の方にもたくさんの意見があります。小泉政権には公明党も入っていますから、いろいろと見解が違います。政権党といっても、昔のように一党体制ではないので、自民党の話が全部通るというわけでもなく、なかなか複雑な状態の中で文章が練られていくと、大体どんどん膨らんで行くんです。それで、一応見直しの焦点は、目的の国益のところです。これは、いろんな議論があって、前後して最大の論点、焦点になったわけです。国益というのは中抜きの言葉でして、国家の利益なのか、国民の利益なのか、いろいろな見解がありまして、やはり国民の利益なんだ、ということで国益ということを考えましょうという意見にはなったんですけれども、最初、もろに国益という言葉をODA大綱の中に盛り込むべきだという意見もあったんですが、相手の国を助けるという普遍的価値の人道的問題もありますから、日本の国益を前面に出すことはいかがかということになって、それに代わるべき言葉として我が国の安全と繁栄という言葉を国益に代えて使うということにしました。何度か、この議論をやっていて、ハッキリして来たのは、つまり、我が国の安全と繁栄のためにやるのか、そうではないということで議論は一応決着しました。最初のうちはそのためだという意見もあったんですが、ODAの性格から言って、それを言い出したら、国際的批判は免れないということもあるし、目的に反していますから。要するに、国際社会の平和と発展に貢献して行くということが第一の目的である。それが回り回って日本の安全と繁栄に寄与できればいいなーというような感じの流れをつくって行くということで落着した感じです。
 それから、もう一つの焦点は、国際貿易の恩恵云々ということが本文にありますけれども、国際貿易の恩恵云々という資源、エネルギー、食料等を海外に依存する我が国としては云々とありますけれども、この辺は既に分かっていることだし、あえてそう細かに入れる必要はないのではないかというのもあったんですが、最初は無かったんですけれども、各省を回っているうちに付いてきたんですね。それは、それとして、まあ、あえて否定することもないだろうということもあって、まあまあ不承不承ここは合意というか、妥協しようということで入れた感じがあると思います。その前には、実は、何度もこの中に、我が国の安全と繁栄ということが、たくさん言葉が出ていたんですけれども、最終的には2つぐらいしかないと思います。それから平和国家という言葉もあったんですが、これも我が国にとって平和を希求するとし、平和国家であるかどうかという議論もありますので、平和を求めて、希求するという姿を提示していこうということになったように感じております。
 もう一つは、重点化の流れの中で、アジア重視という言葉が出てきて、最初のうちはアジア重視だけて、どちらかと言うと他の地域は、あまり入れるとアジア重視が薄くなるということで、アジア重視一点張りでいこうという意見もあったんですけれども、これはその後、修正されて他の地域も触れるということになったと思います。我々の議論の中では、アジア重視ということが、かなり強く打ち出されて来たんですが、ただ、アジア重視の場合の考え方として、従来の貿易にしても投資にしても、ひも付き援助する云々で、日本の援助を使って商売をするという意味合いでは無くなっているわけです。アジア重視ということがアジア地域の中で日本が一定の地位を得ていくために、アジアの連携を通して日本国民全体の利益のために一体何ができるか、ということをODAで出来るだけ探求したらどうかと言う議論があったと思います。もちろん、タスクフォースのときも、過去のODAを使って経済協力してきた貢献も数知れずありますが、問題点も多いので問題点も併記したらどうかという意見もあったんですけれども、貢献を重視すべきだということで、問題点は除くという議論があったわけです。これが大体大きな問題点なんですけれども、結局、前の大綱を見ていただければ分かると思いますが、インフラストラクチャーという言葉がもうなくなっております。それから構造調整という言葉もなくなっております。要請という言葉もなくなっているし、ベーシック・ヒューマンニ-ズ(BHN)という言葉も今や無くなり、貧困削減に全部包括されているということでありまして、インフラという言葉は経済社会の基盤整備ということで、広い意味の基盤整備ということでとらえていこうとなったわけです。
 その他、言いたいことはたくさんあるんですが、とにかく成文化の裏側では外務省も非常に苦労したと思いますけれども、NGOの人々、その他の一般の方々、学者、政治家、ジャーナリストなどの意見を取り入れて、ある程度平均値のところに留めていくということで、ざっと見てお分かりだと思いますけれども、霞ヶ関のお役所の方から見ると、大体自分たちの考え方がどこかに入っているということで、合意されているというわけです。実は、大綱のあとには中期政策というのが待っているわけです。大綱から10年ぐらいのタイムスパンで考えるとすれば、中期政策は5年ぐらいのタイムスパンです。中期政策になりますと、かっては中期目標と言って、援助量まで規定していたんです。これは90年代の初めに無くなりました。経済が不安定になってきましたから先が読めないということで、量の確保というのはなくなったんですけれども、それに代わって、言葉の中には、中期政策を前提とした各省それぞれが関与するところの予算項目がありますから、それをやはり伸ばしておきたいというとことがあって、言葉については非常に神経質になる。これには違う次元の言葉のチェックが入っています。そういう中をくぐりながら、新しい21世紀を見定めて、あと10年ぐらいというタイムスパンを考えて、この大綱を作っていこうということでやって来たんですが、私たちの立場としては論点整理の中でほとんどの問題点を外務省へ提出し、外務省、各省と、あるいは政府全体で議論をしているというのが今までの経緯だと思います。
 最後ですけれども、全体を流れる一つの流れをキーワード的に申しますと、やはり主体性をもっていく、要請主義というのはなくなってきて、援助事業ということになっていますが、主体的に日本が、主体というのは日本の国益ではないですよ。日本の持っている能力を相手の国のためにどう使うかという主体性と、相手の国のすべてが正しいとは限らない。場合によっては我々は民間人ですから言えるわけですが、相手の政権といっても、いろんな政権がありますから、それが本当に庶民、市民のため、国民のために何をやっているかを踏まえて、我々援助する側はある程度考え、相手の援助事業を引き出していくことを考えて、検討していこうというのが背景にあるわけですね。それが主体性をもってやっていこうということです。
 それから、国民参加というのは第2次ODA改革懇談会からの継続の言葉でありまして、これは非常に漠然とした言葉だということで非難されたんですけれども、その中にはいろんな未だ多くのプレイヤー、ODAに参加する、ODAを知らないけれども参加する機会があるかも知れないというODAの外縁のところもずっと拾い上げていくようなODA政策が必要だということで国民の参加ということを考えたというのが懇談会のときの議論なんです。
 それから連携が一つのキーワードです。お互い日本人同士の連携もありますし、機関の連携、国際機関との連携もあります。それから、政策の一貫性を保ってもらいたい、いい加減のところで、各省が勝手に援助やっているんじゃないかという疑問があったわけですが、きちんとした政策に基づいて透明性を高めて、情報を開示してみんなでいろいろ考えがあれば問題提起していこうじゃないかということで一貫性の政策の提言をやったわけです。もう一つは、司会の方からもお話があったように重点化というのが、今非常に不景気で大変なときに、国民の税金がいかに役に立つように使われているかという疑問が投げかけられたわけです。これがバラマキの援助と言われていた時、それは量が増えたせいもありますけれども、今後は少ない予算をいかに重点的に使うか。相手の貧困削減なり、国づくりに寄与するかということをもっと真剣に考えるということで、重点化を考え、そのためにその政府のシステム、つまり有効な援助ができるシステムをまずつくりあげること。実はみなさん、多くの人たちはちゃんと出来上がっていると思っていたと思うんですね。援助をやるために合理的な、しかも情報を開示できるような仕組みが実はなかったんです。だって92年にODA大綱が初めて出来たわけですよ。それまでに何十年もの間、大綱もなくやってきたわけです。そういうような状況の中で、援助予算というのを水のように使うのではなく、しっかりと使って行こう、あるいは、それを使う時に国民に何にどう使ったかということを情報開示して、政府には説明責任があるという前提でこういうことを考えたわけです。ですから、ODA総合戦略会議では、今後も大綱の作文や推進の中で、もし問題があったら常々同時に問題を提起していくという構えでいるわけです。ですから、何度も申しますけれども、ODA総合戦略会議にお出かけになったらお分かりと思いますが、ほとんど外務省の方々もお見えになっております。ほとんど我々が勝手にしゃべって、主体的にしゃべっているんですよ。外務省の方は聞き役だというのが実態でして、今まで長年この仕事をやってきましたけれども、国民参加の言葉なんていうのは1回も聞いたことがない。初めて国民参加という言葉が出て来たわけですから、これを大切にして更に発展させて行くべきだと思います。以上です。
(須磨) ありがとうございました。お話を聞いていると、国民の一部ではODA総合戦略会議はいわゆる、政府のお声がかりの人が集って御用会議ではないか、と言う人もいましたが、そうではなさそうだな、と感じつつ今お話を聞いておりました。まだまだ、皆さんご意見があると思いますが、次に、みなさんの意見を聞く前に、学会、NGO、経済界、それぞれのお立場の方々のご意見を聞き、これから始まる論議の口火を切っていただきたいと思います。最初は学会から法政大学人間環境学部教授でいらっしゃいます下村恭民さんに、まずお願いいたします。
(下村) 法政大学で教員をしております下村です。皮切りということで、簡単なコメントをさせていただきます。お示しいただいたODA大綱の案を読ませていただいて、感想として冷戦後の国際社会の潮流、長期不況下での日本社会の変化、そういうものが如実に反映されているという印象を持ちました。そこには、望ましい面もありますが、好ましくない面もあります。ODA大綱の機能の一つは国際社会に向かって日本のメッセージを発信する、あるいは日本の援助理念を発信するということにあるわけですから、望ましいと思われる面が、より明確に発信され、また懸念される面は抑制されることを望みたいと思います。こういう視点から4つのポイントについて問題提起をさせていただきます。
 第1のポイントは、先ほどお話がありましたように、新しいODA大綱は世界に向かって平和を希求する日本という姿勢を訴えているわけですけれども、適切な姿勢だと思います。平和を希求する日本であれば、ぜひ強調していただきたい点があります。現在、途上国への兵器輸出、武器輸出は拡大基調にあります。これが世界の平和を脅かしていることは言うまでもありません。それでは、誰が途上国に兵器を輸出しているか。日本を除くG8の国々と中国、中でも意外なのかも知れませんが、欧米の主要ドナーが武器輸出の6割を占めております。とくに米国は2000年に途上国向けに126億ドルという巨大な額の兵器輸出を行っています。これらの兵器は途上国の貴重な外貨、貴重な予算を浪費させる、非生産的な目的に使われることは言うまでもありません。ODA大綱は援助実施の原則で、途上国が兵器を買う、兵器を開発することには厳しい眼を向けています。しかし、ドナー側の自分たちの行動の規制には触れておりません。日本は兵器ビジネスに手を染めていないわけですが、そういう意味で優位な立場にあります。そういう利点を生かして、日本はODA大綱の中で、兵器輸出抑制の国際協調の必要性を明示的に強く主張していただきたいと思います。
 次に第2のポイント、冷戦後の国際社会が貧困緩和をキーワードにして連帯をしているということは非常に評価できます。しかし、冷戦後の国際社会には非常に懸念すべき傾向も見られます。それは国際社会での途上国の発言力が大幅に低下してドナーの意見が支配的になっているということです。ドナーが途上国に対していろんな複雑なたくさんの条件を付けまして、自分たちの考えを「君たちにとって、これが一番いいんだ」と押し付ける傾向が見られている。これをドナー病と言うんだと思いますが、このドナー病が広がる中で、途上国の主体性は軽視されがちです。しかし、途上国のオーナーシップ、主体性を考えるのであれば、途上国の人々が我々から見てはてな?と思うことがあるとしても、自分たちの頭で考えた創意工夫で問題解決を試みて、時には大きく失敗することもあるでしょうが、次第に基調として事態を改善して行く。それが真のオーナーシップだし、その真のオーナーシップを我々はODAと通じて、あるいはもっと広く、途上国支援を通じて支援していくことだと思います。援助実施の原則、先ほどご説明があった援助実施の原則は非常によく書かれていると思います。つまり、安易に途上国の政治、経済に介入しないように国連の諸原則とかいろんなことが書いてあります。つまり、それは先ほど申し上げたドナー病に感染しない姿勢になっているわけです。ただ、これからの運用の中で、ぜひ、この直線的に安易に介入しない姿勢を貫いていただきたい。言い換えれば、途上国の声に耳を傾けて、途上国の知恵に学ぶ姿勢、それをドナーの中で日本の独特の姿勢として打ち出していただきたいと思います。
 第3のポイントですが、国益という問題がいろいろ議論されたということはこれまで説明があった通りです。今の大綱には非常に幸いだと思いますが、国益というストレートな表現は出ておりません。ただ、おそらく、この文章にもにじみ出ていますし、これからもにじみ出て行くんだろうと思います。国益は確かに重要です。重要ですけれども、我々が追求するのは目先の小さな国益ではない。例えば、日本の援助に感謝しろ、日の丸を見せろ、日本の製品を買え、日本企業と契約しろ、国際会議で日本の意見に1票を投じろ。こういう手近な短期的な国益を語る偉い方が多いんですけれども、国益は、もっと長期的視点に立った国際社会で日本の信頼を得る、そのためのことだと思います。私が言っても誰も相手にしてくれないわけですので、リー・クアン・ユーの助言を聞いてみたいと思います。リー・クアン・ユーはこう言っています。「日本がアジアでリーダーシップを発揮しようとするなら、日本がやろうとしていることが日本ではなく、むしろアジア諸国にとって大きな利点があることをきちんと説明し、納得させ、それによってアジア諸国の信頼を勝ち取ることが大切だ。日本はまだまだそれが出来ていない。」欲望をあからさまにすればするほど、人の心は逃げてしまう。私、いつもそれで失敗していますので、日本のODAは、ぜひ、そういうことのないようにしていただきたいと思います。
 第4のポイントですけれども、ODA大綱を読みますと、いろいろないいことが書いてある。それは結構なことなんですけれども、いいことであればお互いに矛盾がないのか、それがそうでない。ジレンマがあるのが現実だと思います。例えば、非常に気になるのは、基本方針のところに、1ページの一番下に「民主化、人権保障、構造改革に向けた取組みを積極的に行っている開発途上国に重点的に支援を行う」という姿勢が書いてあります。これが現在の国際社会の潮流です。それは確かに適切な面がありますが、非常に難しいジレンマを含んだ問題でもあります。なぜかというと、民主化とか、人権とか、経済政策に問題がある国は、同時に非常に貧困な国です。貧困層がたくさんいる国です。これらの援助を重点的でない形にすると、当然、貧困層の生活はダメージを受けます。人間の安全保障が破綻します。深刻な飢餓とか難民が発生します。テロの苗床になる恐れも強いでしょう。ですから援助を重点的あるいは戦略的に運用することは深刻なリスクをはらんだデリケートな問題だと思いますので、十分お考えいただいて運用に努めていただきたいと希望いたしまして私のコメントを終ります。
(須磨) ありがとうございました。(拍手)続いては、NGOの方からも口火を切っていただきたいと思います。日本国際ボランティアセンターの高橋清貴さんです。お願いいたします。
(高橋) こんにちは、日本国際ボランティアセンターの高橋と申します。今日ここで話をすることになっていますが、私がここに立つことになったのは、NGOの方々に公募いたしまして3人の立候補があって、私が最終的に選ばれたということです。私の意見に関しましては入口のところで資料を配らせていただいておりますので、お手元に資料があると思いますので、それに基づいてお話させていただきます。NGOから見た意見、ポイントというのは、これまでNGOは外務省の方と何度か意見交換をさせていただいております。昨年の11月1日にODA大綱の見直しという動きがODA総合戦略会議に出てから、11月23日にシンポジウムをやりました。その後、外務省と1月21日にインフォーマルな意見交換を行い、今年の4月28日には、公式に意見交換をさせていただいています。これらの中で私たちが表明した意見が、今回7月9日に発表されたドラフトには、あまり反映されていない、というふうに感じています。この辺りの経緯を踏まえながら、今回意見を述べさせていただきます。
 実はこれまでのプロセスで何度か外務省、とくに須永課長とは意見交換させていただいているんですけれども、外務省よりも、もっと向こうにある方に私たちが主張するポイントと違うポイントを押す方がおられる。とくに国益とかを主張する人たちがいるんだな、ということが少しずつ分かってきました。そういう中で今日は、須永課長や外務省に意見を述べるというよりも、むしろ、須永課長や外務省の向こう側にある国益を主張する勢力、そこに意見をぶつける思いで意見を述べたいと思います。
 ポイントは4点あります。その説明の前に、今回NGOがこの問題が大事だなと思ったのは、実はODA大綱の見直しというのは、私の観点では2つの大きな意味があると思います。一つは、ODAは来年で50周年になりますが、この50周年の間にいまだに大きな問題を惹き起こしているという事実に対して、これの一番大きい原因は、私たちとしては、ODAの理念とか根拠が不明確だということなんです。よくよく考えてみたら、日本がなぜODAをしなければならないか、なぜ途上国に援助しなければいけないか、という根拠がありません。あるとするならば、憲法だと思っています。憲法の前文にあるところの、私たちが「国際社会で名誉や地位を占めたい」という。日本が支援をする根拠は、その憲法前文にあると思うんです。ODA大綱を見直すというのは、その理念をどうやってきちんと、書くかということなんです。
 2点目は、これはODA大綱という非常に大事な文章が持つメッセージ性なんです。今、下村さんからお話がありましたが、どういうメッセージを発信するんだろう、ということが問題になってくると思います。私はこの大綱が変わるだけでODAの実施のあり方が直接すぐに変わるとは思っていません。むしろ実施の部分では細かい制度、例えば、環境のガイドラインですとか、いろんなNGOとの連携ですとか、JICAですとかJBICの案件形成のあり方ですとかが問題で、そこの部分は既にNGOは定期協議などで話し合う機会があります。具体的に私自身もJICAの環境ガイドライン検討委員会に入って、一緒にいいものをつくろうとしています。だけど大綱の文章を改訂する意味は何度も言いますように10年やって来た中で、日本がODAを行う根拠を文書で明らかにして、国内と国外を整理して発信するということなんです。その意味において、ODA大綱の見直しはODAの新たな位置づけ直しなのです。だから私たちは目的や理念のところに非常にこだわるわけです。
 まず、1ページ目の理念のところで、この中に国益ということが書かれています。いわゆる「我が国の安全と繁栄」ということを書くかどうかです。やはり私たちは、日本のいろんな政策の中で、あえてODAで、そこまで書く必要はないだろうと思います。納税者であろうとも、きちんとメッセージして、日本が世界の中で憲法前文に述べられているように「名誉ある地位を占めたい」、そのため途上国に支援するんだということを発信するので十分だと思っています。そういうふうな書き方を国益の目的、理念のところで、しっかりと書くべきだろうと思っています。そのメッセージを納税者に納得してもらう努力をすべきなのです。「我が国の安全と繁栄」という文言は削除すべきです。
 具体的提案は理念、目的の最初の文書「日本のODAの目的は途上国の平和と発展に貢献し、これに資することである」ということで十分だと思っています。ちなみに、ご参考のために、前のODA大綱をちょっとだけ、ここで読ませていただきます。これは高いメッセージ性をもち、はるかに誇れるものだと思います。「世界の大多数を占める開発途上国においては、今なお多数の人々が飢餓と貧困に苦しんでおり、国際社会は、人道的見地からこれを看過することはできない。また、世界は、平和と繁栄が実現され、自由、人権、民主主義等が確保される社会の構築に向けた努力を行っているが、開発途上国の安定と発展が世界全体の平和と繁栄にとって不可欠という意味での国際社会の相互依存関係を認識しなければならない。さらに、環境の保全は、先進国と開発途上国が共同で取り組むべき全人類的な課題となっている。一方、平和国家としての我が国にとって、世界の平和を維持し、国際社会の繁栄を確保するため、その国力に相応しい役割を果たすことは重要な使命である。」これで何も変える必要がないんです。これで理念と目的のところは十分言い切れるものと思っています。
 2点目です。この10年間の間で、確かに国際的潮流は変わってきていますが、その一つの大きな変化は、貧困やエイズの問題について国際合意が生まれて来ているということなんです。途上国の貧困やそういう問題に対して国際社会は共同して取り組んでいこうじゃないかということだと思います。そしてミレニアム開発目標や人間の安全保障という新しい指標や考え方を一緒につくってきたのだと思います。やはりODA大綱においては、こういう問題に日本が積極的に取り組んでいくんだよと、またその実施に当たっては途上国の自主性、オーナーシップを尊重すべきであると明示して頂きたい。今、下村さんの方からドナー病のお話がありましたけれども、一方で変な言い方ですが、途上国は育って来ています。大きなものを学んで来ています。彼らが何をすべきかも十分分かっていると思います。その意味で、彼らの自主性を尊重しながら、国際目標に向かって最大限努力する、それを日本は支援するんです、ということを大綱のメッセージとして国内外に伝えていくことでいいのではないかと思っています。
 ODA大綱の基本方針の部分に、戦略性という言葉が冒頭に出てくるんですね。この戦略性ということは裏を返して、言い換えれば、選別性だということです。どういうところに支援するか、支援しないか、その選別性の基準はどこにあるのか、ということだと思います。ここにおいて、我が国の安全と繁栄というような国益みたいのがかぶさってくるとおかしいと思っています。ここで言いましたように国際的合意に向けてある種の選別性を、つまり貧しい国の人たちに対して優先的にやるんだよということを、きちんと戦略性をもって取り組んでいくと理解したいと思っています。そのように理解できるようにODA大綱の書きぶりを直して頂きたいと思います。
 3点目、今日の大きなポイントは平和構築、世界平和だと思っています。ここは少し細かいことになるかも知れませんが、一つはODA大綱において、国際平和に向けての日本の考え方というのは、日本のビジョンというのがあまり見えて来ないんです。唯一見えて来るとするならば、貧困が紛争の原因だという意味合いに取れる箇所が2箇所ぐらい出てきます。JVCという国際協力NGOのスタッフとして現場に行くと、必ずしも貧困が紛争の原因とはならないことを数多く見てきました。紛争を起こす原因には色々ある、紛争を起こすもっと大きな原因を先進国側ドナー側の秩序なき武器輸出ですとか、過度の市場経済化による貧富の格差、もしくは社会的差別につながると思っていますが、そういった問題が紛争の原因であるのであって、貧困そのものが唯一の原因ではないということです。そういう意味でODA大綱のなかで、国際平和ということを平和構築ということでうたっていくのであれば、もっと広い意味で日本が、国際平和活動に取り組むのかというビジョンをきちんと示して、その中で途上国への支援について何をすべきかということを外堀がわかるように示すべきだと思います。一つの提案は、重点課題の4番目、冒頭の第1文ですが、ここを次のように書き直したらどうかと思っています。「国際社会から武力紛争を根本的になくすために、軍縮や武器輸出コントロールなど国連機関の強化、仮想と整合性を図りつつ紛争を防止するために活動する」と。紛争を防止するためには、紛争の構造的問題に多角的に取り組むという活動が重要であると思っています。
 4点目ですが、これはODA大綱の原則に関る部分です。今回のODA大綱において、原則がどういうふうに運用されるのかというところが、やはり恣意的運用の危険性を残したままになっている。「総合的判断」が残っているわけですが、これは様々な危険性、運用のやり方によっては大変な問題を惹き起こすと思っています。一つ目は、原則があったとしても、適用する場合の判断基準というものが変わるということがあるわけです。外交の問題があったり、いろいろあるんでしょうが、それに対して十分な説明がないままに、この場合は適用したが、この場合は適用しない、ということであっては不信感は煽るだけだろうと。二つ目はある種、それに基づいて制裁を発動する、もしくは制裁を解除するということが起こった場合に、どういうところがダメージを受けるかということに、きちんと目配りの配慮があるかどうかということだと思っています。それが、ここにも書きましたけれども、女性は子ども、病人などもっとも脆弱な人が被害を受けるということ、こういう人に対する配慮がどのように適切にとれるかということをきちんと考えるべきことだと思っています。3つ目はこういったことによってまた、さらに日本が国内もしくは国外からもODAに対する不信感というのを招いてしまう懸念があるわけです。こういったことをなくすために、ODA大綱だけでは不十分であろうと思っています。大綱の中で先ほど言いましたように、国際社会の貧困という問題に対して取り組みをするということを明示することが必要ですが、それに合わせて、運用の場合の運用基準、実施基準は何かということをきちんと公開して、それに合わせて、どういう運用をしたかという結果をODA白書などに説明して欲しいということです。「運用の実施基準」というものを別途整えて欲しいと思います。そして冒頭の理念の話に戻りますが、今の大綱ドラフトは総花的な感じがありますので、最も脆弱な人々を支援するものがODAであると、そこがきちんと理念としてさせ、ODAの根拠を示すものとして大綱と憲法の間にODA基本法というものを作って、そこできちんと理念を謳って欲しいというふうに思っています。ありがとうございました。(拍手)
(須磨) ありがとうございました。(拍手)では続いて経済界からもコメントをいただきます。経済団体連合会国際経済本部アジア大洋グループの部長をしていらっしゃいます川口さん、よろしくお願いいたします。
(川口) ただ今ご紹介をいただきました日本経団連の川口です。私からは、ODA大綱の見直しに関する経団連の基本的な考えをご紹介させていただくとともに、先ほどのご説明に関し、お伺いしたい点がございますので、1点ご質問させていただきます。
 ご存知の通り、日本経団連は日本の主要な企業、団体を中心とした経済団体であり、日本の経済社会のあり方に関する様々な提言、例えば、税制や社会保障、規制改革等の国内問題に関する提言を取りまとめ、その実現を政府関係先に働きかけております。同時に国際関係につきましても、いわゆる民間外交を展開すると共に、貿易、投資、開発援助などの各種の問題に取り組んでおり、とくに国際協力の分野ではODAのあり方に対する提言などを取りまとめております。
 こうした活動の一環として私ども経団連では、今回のODA大綱の見直しの問題につきましては、本年の4月22日にODA大綱の見直しに対する意見を発表しております。この意見書の詳細につきましては、私ども経団連のホームページhttp://www.keidanren.or.jp/indexj.htmlに掲載しておりますので、そちらをご覧いただければと思いますが、簡単にそこで申し上げております私どもの考えを紹介させていただきたいと思います。
 まず、重要なODAの理念ですが、経済が停滞し、財政も逼迫している中で、貴重な国民の税金を年間1兆円近く使って実施しているODAがなぜ必要なのか、その政策目的と効果をODA大綱などで明らかにして、納税者たる国民の理解と共感を得ることが一番大事だと思っております。こうした観点から、我が国が国際社会の一員として、貧困の削減であるとか、環境問題の対応であるとか、平和の構築などグローバルな問題に貢献するという姿勢はもちろん重要であるとは思いますが、同時にODAは日本の国益をみすえた戦略的なものであるべきだというのが私どもの経団連の見解であります。この場合、先ほど荒木先生からご説明がありましたが、国益というのは納税者である国民の広い利益であると考えておりまして、政府原案にある通り、我が国の安定と繁栄という形で享受し得るものだと考えております。とくに国内資源に乏しい貿易立国である我が国が今後も安定的に生存、繁栄して行くためには、世界経済の安定と繁栄、日本と各国との友好関係の維持・発展はもちろんのことですが、さらには貿易投資等の経済活動をさらに増進することが重要であると思っております。
 次にODAを具体化する上での重点事項ですが、まず、重点地域につきましては日本がおかれております歴史的、地理的、政治的、経済的状況を考えますと、政府原案にあります通り、アジアとくに東アジア地域を重視すべきであると考えておりまして、とくに現在、東アジアとの関係では、小泉総理が提唱されておりますアセアンとの包括的経済連携構想を具体化することが重要な政策課題になっているかと思います。このような東アジア地域における結びつきを促す上で、ODAも重要な役割を果たし得ると考えております。また、重点事項につきましては、基本的に日本が技術力・ノウハウの優位性を発揮する分野に重点的に取り組むべきであり、我が国の経験・実績が充分あって、依然として途上国からの要請の強い分野となると、経済インフラの整備がありますし、環境、省エネルギー技術については、我が国は世界最高水準の技術を有しております。さらにこれらハード等の整備に加えて、今後は法制度を含む各種制度構築支援といった知的支援を重視すべきであると思っております。これらにつきましては政府原案においても指摘がありまして、その方向で政府の方針を固めていっていただきたいと思っております。
 次に指摘しておきたいのはODAの実施体制であります。冒頭申し上げました通り、国民の理解と共感と申し上げましたが、ODAが効果的、効率的に行われて、その結果が十分に国民に分かり易く説明する。要するに政府は政策の説明責任を果たすことが重要であると思っております。この点につきましては、まだまだ改善の余地がありまして、ご存知の通り日本では1府12省庁がODAに関与しており、関係の各省、政府と実施機関、実施機関同士の連携強化というのは是非とも必要だと思っております。
 最後に、私どもとして強調しておきたいのは、先ほどご説明がありました中期計画、国別援助計画なども含めて、ODAの企画、立案、評価、実施、これらの各段階において国民の多くがその過程に参画していくということが重要であると思っておりまして、当然そのためには政府だけではなく、企業、NGO、市民等、各界、各層がODAの重要な担い手として参画していく必要があろうかと思っております。
 今回の公聴会は、現在実施されておりますパブリックコメント、ODA大綱の見直しに対する意見募集に並んで重要な機会であると思いますが、政府においては、引き続き多くの機会において関係者の意見を聞きつつ、それを政策に反映させていただきたいと思っております。
 最後に質問をさせていただきます。先ほど大綱の政府原案のご説明の5ページ目の評価の実施というところで、須永課長から、政府の方では自前の評価はやっていないというご説明があったかと思います。言葉尻をとらえているつもりは毛頭ありませんが、先ほど申し上げた政府が自らの政策を評価し、国民に対して説明責任を果たすということは、2001年の中央省庁等の改革で導入された政策評価の考えであり、しかも、政策評価法では、ODAは、大規模公共事業、研究開発と並んで、事前の評価と公表が義務付けられている事項になっているかと思います。そこでお伺いしたいのは、2001年の中央省庁等改革、もしくは政策評価法の施行の前と後で、どのようにその評価の体制が変わって来ているのか、さらに政府原案では、評価の充実と書かれておりますが、今後そういった政策評価をどのように充実させていこうと考えておられるのか、その辺をお伺いしたいと思います。以上です。
(須磨) はい、分かりました。お3人の方から、まず口火を切っていただきましたが、とりあえず、この3人の方に対してのコメントも外務省からいただければと思います。
(須永) 3人の方々からご意見いただきましてありがとうございます。いくつかポイントがあると思います。今後もいろいろとご意見をお伺いしたいと思いますが、目的のところで、まず国益的なものというのが議論になりますね。高橋さんからは削除した方がいいと、国益ということはないんですが、我が国の安全とか、繁栄とか、国民の利益とか、そういう言葉はありますけれども、そういうのは削除した方がいいのではないかというお話ですし、それから、日本経団連の方からは、日本の国益を見据えた援助と申しますかODAと、そういう話がありました。これ2つの流れがありますね、私、1月からいろんな方々と議論し、それは与党の先生方も含めて、あるいはプレスの方とか、含めて随分議論をしてきましたけれども、この2つの流れはなかなか収斂しないと思いました。私はずーっと、ここをどうやって書いたらいいのかを悩んでまいりまして、結論としては今あるようなことになってきていますが、やはりODAの基本目的、実はODAの定義というのがありまして、これOECDというパリにある国際機関がありまして、これは先進国、ドナーが集まっている国の機関ですけれども、ここで定義が決まっておりまして、一番重要な定義というのは開発途上国の経済発展とか福祉の向上を目的とするのかODAだということになっています。私も外務省の人間ですので、そういう定義を知っていて、その定義から外れるようなODAの目的というのは書けないなと思ってやってきました。かたや、日本はこれだけ不景気で経済界だけじゃないんですよ、農業団体の方々とも話ましたが、近隣諸国から日本が援助をして、そのブーメラン効果というんですか、日本にいろいろ農作品が入って来たり、家電製品などの工業製品が入って来たり、繊維製品などもそうですが、非常に日本の工業界は打撃を受けていると、こういうのをきちんと配慮してくれ、これもまさに国益ですよと言われています。自民党の先生方も同じようなことを言われています。日本の地方は苦労されているという話を伺がっていまして、そこは税金を使ったうえで、それがODAの目的が人道的な目的とか地球的規模への問題を解決して、日本が国際的にきちんと信頼されて評価されるということが第一義的であると、私、これを書きましたけれども、とうのは、いろんな意味で日本の利益にもなっているだよということも書いておかないと、ちょっともたないなと、思って書きました。そこについてはAご意見をお伺いたいと思いますけれども、これでは国益的なものは書いてないという批判も強いです。かたや、そういうのは書かないでほしいという意見も強いです。随分議論してきましたけれども、いろいろ議論はあると思いますけれども、議論は尽きない点だと思います。私が全部書いたわけではないんですが、政府原案で示したのは、第一義的にはそういう国際的な努力をする、貢献することが目的であって、それがひいては日本のいろんな利益にあるんですよという説明を、目的ではしてあるということです。
 ドナー側の兵器の輸出とか、高橋さんから具体的な提案をいただきましたので、これは検討したいと思います。一つ下村先生に申し上げれば、日本は新聞でも報道されていますが、小型武器とか、ああいうものはジュネーブでは随分頑張っていらっしゃる猪口大使が案文をまとめているわけで、ODAの対象外の世界ではあるんですけれども、日本が平和の分野でいろいろな貢献をいてます。それはODAに限ったわけではないんですけれども、それをODAを対象とするODA大綱の中で、どれぐらい書けるのか、検討してみたいと思います。重要なご提案だと思いました。
 矛盾があるというお話が下村先生からありました。基本方針の(1)のところですね。これは、下村先生はODAの専門家ですので、ODAを行う国を選択的にやるか、あるいは、からり広めに満遍なくやるか、つまり困った人にはどこにもやるか、これも大きな議論なんです。アメリカは選択的にやろうとしているわけです。ご存知の方もあると思いますがODAの増額を要求しまして、今、アメリカも日本と同じぐらいで年間100億ドルぐらいやっておりますが、これを2006年までに50億ドル増やすと言っているんです。それをミレニアム・チャレンジ・アカウントと言っています。別の予算項目を作ったわけです。この運用というのは選択的にやりますよということを表明しています。その表明というのは実は、民主化とか、人権保障とか、が入ったいくつかの国で、いくつかの条件を決めて、それを満たしたらやりますよと言うことにしてあるんですけれども、日本は従来、英語で言うとセレクティビティイと言うんです、選択的にやるということなんですけれども、それにアメリカは反対して来たんですね。それは、下村先生が言われたことをきちんと理解していれば、要するに、悪い政府ですと困った人がたくさんいるじゃないかと、悪い政府のある国こそきちんと支援しないと、ますます悪くなるし、住んでる人も困るということを我々が言って、アメリカとの国際会議でいつも議論して、アメリカがセレクティブに、選択的にと国際文書に入れるとすると、これに反対して来たという経緯があるんです。その思想は、基本的には貧困削減という一番重要な、順番でいうと最初に掲げていますので、基本的には変わっていないですけれども、これも政府内の議論で、今、国際社会でいろんな中東の方の問題もあるし、北朝鮮の問題もあるのかも知れませんが、あるいは、アフリカの方で象牙海岸でも紛争があって、民主化とか人権は大きなテーマになっているんです。我々が議論した際に、民主化とか人権を、原則のところでは、そうことに十分注意を払うことになっていますけれども、十分注意を払うだけでは足りないという意見がつよくて、むしろ民主化とか人権の保護を促進するようなODAをやるべきだという強い意見がありました。これは与党の先生からもあったし、あるいはプレスを通じて、一般の世論だと思いますが、強い意見がありました。そこを何とかしなくちゃいけないと思ってこういう一文を入れたんです。これは確かに日本の援助とは矛盾するのナ方針とはちょっと変わっているかも知れません。ここのところは運用の仕方をきちんとやらないといけないと思います。これは具体的にどうやって運用するかというと、ODA大綱というのが日本の政策部所の中では一番上位にあるので、これは非常に抽象的な書き方で短い文章なんですけれども、この下に先ほど荒木先生がおっしゃっていた、高橋さんでしたか、中期政策をつくります。これは、おそらく来年ODA大綱と共に改正すると思いますが、これは60ページから70ページぐらいの分厚いものでして、そこに具体的なことを書かなくちゃいけないので、そこでさらに具体性をもたせて、実は、民主化とか貧困削減のバランスは国ごとに違うと思うので、それはまさに国別計画でつくっていかなければいけないと思います。国によってもいろいろ違う、アジアの国とアフリカの国ではいろいろと政治的、文化的、あるいは宗教的に違っている面があるでしょうから、それを踏まえてやらなくちゃいけないと思います。大綱があって、中期政策があって、さらに国別計画がある。全体的ODA大綱の体系の中で、それはだんだん具体化していく、国別の計画までいくと具体的なものになると。そこまで一緒にお示ししないといけないなと思っております。
 最後の政策評価のところは、私があまりにも簡単に説明してしまったので、誤解を与えました。5ページの3の(1)を見ていただくと、評価には2つあって、昔は1つだったんですが、ODA評価と言ってプロジェクトをやったり、あるいは国別の援助計画とか分野別の援助政策、例えばエイズ対策、あるいは青年海外協力隊というプログラムをやったりすると、それを評価していたんです。うまくいったかどうか、問題点はどうかとか、それはODA評価と言ってまして、これは昔からやっていて、これについては冒頭に言った通り、第三者に眼を全部入れて必ず評価するようにしましたけれども、先ほど政策評価というのが出まして、それはここにも書いてあるんですが、「第三者による評価を充実させるとともに」と、これはODA評価の部分で、その後に「政府自身による評価を実施する」と、これは政策評価の部分です。評価は政府がやる話で、これは川口さんがおっしゃっている通りです。これは事前評価もあるので、ここは法律で決まっていることですので、きちんとやって行きたいと思っております。政府自身で、外務省自身で評価して結果を公表するとともに、総務省の方に提出して、総務省からも、外務省がきちんと評価しているかどうかチェックしてもらうということになっています。それはやっていきたいと思います。とりあえず以上です。
(須磨) はい、ひとつお聞きしていいでしょうか。先ほどNGOの高橋さんから、今回の案の前文はあまりよくない。今ある大綱のほうが、良いという意見がありましたよね。つまり変えるなということだとすると、外務省としては立つ瀬がないかなあとおもったのですが。。。
(須永) という意見を踏まえて書いたということでありまして、私はこれ以上国益みたいなものを強調すべきでないと思っておりますけれども、それはある人から見れば、そういうのを入れたことによって、例えば、この文章を英語にして先進国とか途上国に説明するわけですから、あまり日本の繁栄とか強調すべきではないと思っております。それは、これぐらいが限界かなと思っております。かたや、日本語のままで、いろんな日本の方々に読んでもらう必要がありますので、そうすると、私が今、感じているのは、やはり日本の利益にもなるんですよと言っておかないと、なぜ税金使うのかという意見が出て来る、今でも出ているんですが、そうなのかと思っております。だから、今の大綱から比べると、少し日本の繁栄とかが書いてあって、確かに国内向けになっているかも知れません。そこは正直に申し上げます。
(須磨) 皆さんもっとおっしゃりたいことがたくさんおありかと思いますし、3人の方に発言していただいた答が須永さんの回答の中に全部あったかどうか、分かりませんが、今回はより多くの方々から意見を聞いて、よりよい新しい大綱をつくりたいということですので、一つのことに固執せずに多くの方のご意見を聞きたいと思っております。意見のある方は手をあげていただければ、マイクがそちらに伺いますのでよろしくお願いいたします。まず、順番にまいります。うしろの方からどうぞ。
(平山) 結核研究所の平山メグミです。いろいろあるんですが、大きく2点だけを、1つは評価の充実で、5ページのところですが、
(須磨) もう一回所属とお名前を、お願いします。
(平山) 結核研究所の平山メグミです。5ページ目の評価の充実のところなんですが、「ODAの成果を測定・分析し、客観的に判断すべく、第三者によう評価を充実させる」ここが大きな問題だと思います。第三者評価は誰がやっているかをずっと見ているんですが、ただ第三者であって、適切な第三者が必要だと思うんですね。今まで第三者が送られているんですが、ただ第三者で、学問分野をやって、ただ私は保健セクターなんですが、感染症などの問題に、ただ保健分野に外務省に近い人が来られたりしていることがあります。客観的に、これが問題で、客観的にというといいように思えるんですが、これは言い換えれば、人ごととして考える人もいるんですね。その問題がよく分かっている人が行かないといけない、客観的というのが非常に危ないことで、第三者に「適切な」と入れてくださいが1点。あと1点は、こちらの方が大きいんですけれども、同じページの「国民参加の拡大」のところ、開発教育ということが、JICAでも外務省さんでも旗として挙げていられるんですが、どうも開発教育の目的がおかしいなと思って、ここではっきり分かったんですが、(3)の開発教育とあるところに「開発教育はODAを含む国際協力への理解を促進するとともに」ここはいいんですが、「将来の国際協力の担い手を確保するためにも重要である」2つあるんですけれども、これは国際協力の次の専門家をつくるというところに重点があっていて、本当の問題、例えば先ほどの戦争の問題なんかがあったんですが、ドナー側の人々の考え方を変えるということが全然触れられていないんですね。そっちの方が大事なのに、これが問題、つまり発展途上国で何をやっているかを知るということだけが、問題化されて国民の態度の変容、大きな環境問題という一人一人の国民が関っていてごみをつくらないという、そういう問題が規模が大きいのに、それが全然併用になっていない。お金の出し方を見ても、本当にお金が使われているのは、開発のプロを育てるとか、それから例えば、評価もそうですが開発学会に頼むとか、開発の専門家、どうも欧米の風潮で学位を出すとか、そっちの方に動いて、本当に環境問題や平和問題に関っている人を育てるという気がないのかなというふうな気がします。そこをしっかりと目的を据える、その意味で高橋さんがおっしゃった何のためにODAをやるのかということをちゃんと考えていただきたいと思います。ありがたいことにいワ須永さんがドナー側の武器のことを考えるとおっしゃったので、まさにOECDの定義に背いてなくて、発展途上国の福祉の発展を妨げるところに武器の開発があったり、私たちの態度の問題がたくさんあるのですから、開発教育もそういう視点で考えていただきたいと思います。以上です。
(須磨) どうしましょう、一人ずつお聞きし答えていただくか、ある程度聞いてから答えていただくか、何人か聞いてからにしましょうか、ちょっと聞いてから、ちょっとお待ちいただけますか。はい、どうぞ。マイクがまいります。
(原) 女性と健康のネットワークの原ヒロコと申します。4月28日に3人ほどの女性たちが現代の視点に関して、もっとしっかりと入れていただきたいということをお話したんですが、今回の改定の案につきましては、一番初めに、理念のところの1.目的の3番目のパラグラフに「現在の国際社会は・・・・男女の格差など多くの問題が絡み合い、新たな様相を呈している」という男女の格差の表現と、その次は2の基本方針(3)公平性の確保というところに現在の視点というのが入っています。これが入らなかったのに比べれば入った方がいいわけですが、これじゃとても弱い、というのが今日いろんなことで外国に出かけている人やら、別の会に行っている人やら、仲間は人数が少ないですけれども、もう少し強調していただきたい。強調していただくためには、どういうことが可能なのかとうことを考えたんですが、その一つは理念のところの重点課題の(1)と(3)、高橋さんはどれか外せとおっしゃっていますが、ともかく、そこに重点課題の一つとして2番目ぐらいでもいい、私たちからすれば1番目なんですが世の中そうはいかないでしょうから、4番目ぐらいでジェンダー平等と女性の地位向上ということを入れていただきたい。ジェンダー平等と女性の地位向上は日本がこれまで積極的にJICAのプロジェクトなどでも推進してきたことですし、国全体として国内的にもやってきたことです。国連のミレニアム開発目標とする国際公約にも挙げられている重要な開発課題です。先般ユニセフの、さきおととい栃木県の国内委員会の10周年のとき、外務省の石川局長が現在の3つ大きな課題の中の1つだとおっしゃったんです。そこに500人ぐらいの人がいましたが、3つの課題の中の1つとおっしゃいました。強調されてないわね・・・と言っておりました。日本という国は女性の平均寿命、女性の就学率が世界の1,2を争ういい指標を示すんですが、女性の社会参加という点では、昨年まで世界の中のGM指標が33位だったのに、今年はGNPの計算では44位になった。これが国際的に見て、非常に日本ってだめじゃと、そういう日本の国が援助する。どうしてもジェンダーに視点に欠けた実施、現在のプロジェクトの企画、推進などにおいてジェンダー性のない、これは外務省の方々は調査、計画にお出でになるとき、それからJICAの方やプロ系、その他でお出でになるとき、コンサルタント会社の方たちが、今はジェンダー担当が付いてお出でになる。その方々が本当に現在の課題が、現在イシューがどういうものか、ご存知ないまま、とにかく、ちょこっとワンパラグラフぐらい、女性のことを報告書に書けばそれでいいじゃないかと、いうふうな感じで、本質的なことが分かっていない。現場に行って、地域を眺めているときに、そこにアンテナがおありにならないので抜けちゃうんですね、そうすると例えばユニフェムとかユネスコとかUNdPとか現場でプロジェクトをやっている人たちが外国で男の人を含めて、日本のプロジェクトの仕組みを見ながら「ええ、やっぱり」と、口先では時には言うけど、本当に分かっていない、そうことになります。それで、ジェンダーの平等と女性に地位の向上というのは、貧困の削減、持続的成長、地球規模の環境その他、ここにずらっと、今日に資料に入っている人口その他、地球規模の問題、平和の構築、こういうことを横断的に、どんな開発課題に取組む際にも必要不可欠な課題です。ODAの政策の過程、完成評価においても一貫してこのような視点に立つことを重視するということを、ある意味で高らかに表明していただきまして、そして重点課題に入ることによってインプリメンテーションのステージにおいても、しっかりとこの中期計画が入って行くのかな、そういう意味で日本は国際的にも貢献できるというふうになると、なるような文章に変るとよろしいなと思います。その他、II番目の援助実施の原則のところも、私らとすれば、(5)として開発への女性の積極的参加、あるいは開発による女性の地位の向上の確保に十分な注意を、というふうになるといいと思っています。今申しました文言は、以前の平成4年の大綱の原則にちょこっと書いてあるのを半分ちょっと変えております。いずれ文書でお出し申し上げますが。それから、その方のIII番目の援助政策の立案及び実施ところにも、現在の視点はいろいろ人材育成のところから内外の援助関係者の連携、開発教育、今どなたかおっしゃいました結核研究所の方がおっしゃったように、本当にそこに生活している人の視点に立って国際協力というのが私たちの納税者として、どういうことができるのか、ということを含めての開発教育が行われることは、とても必要なことだと思いますが、そういうものの中にジェンダーの視点を取り入れられるべきであるし、評価の充実に際しましても、ジェンダーの視点をもった的確な評価、ほとんど日本のプロジェクトの中で行われていて、ポツリ、ポツリと追加アップオて、こうだということはありますが、全体としてそれを見るというのは、行われておりませんで、JICAの改革の中で、今度女性に関する課として一つ独立させることはとても高く評価いたしますが、その方たちが、やはり分野横断的に業務が遂行できるような、ODA大綱の中にしっかりと書き込んでいただくことが、現場、JICAの各国のレベルでも、仕事がやり易くなるということであると思います。だから適切な手続きの確保は最後の6ページ目の一番上にありますが、ここに援助の実施に当たっては環境や社会面への影響、社会面の中にはジェンダー状況を含む社会面への影響、というのを十分配慮する。わざわざどうしてジェンダー、ジェンダーというんだというご意見が、きっと出てくると思いますが、事々左様に日本社会ではジェンダー状況をしっかり認識するという度合いが弱いので、貧困削減というと何かみなさんイメージが湧くようですが、ジェンダーというとなかなか分かり難いこともあるようで、そういう意味で私どもくどくこれを主張したいということです。
(須磨) ありがとうございます。ほかにどなたか。はい、女性の方が続いておりますので、ちょっとお待ちください、男性の方から、はい、どうぞ。
(長瀬) アジア太平洋司法センターの長瀬と申します。2点質問したいと思います。1点は先ほど須永課長は、基本方針の中でも貧困削減とか、国際社会における人道支援を第一義と考えるとおっしゃっていましたが、それと他のところとの矛盾があるんじゃないか、と言いますのは、先ほど貧困削減についてはミレニアム開発目標を引き合いに出されて説明さてたわけですが、そこで、もっともミレニアム開発目標を達成することに慣れている国が31か国ありまして、そのうちの25か国はサハラ以南のアフリカ諸国なんです。もし本当にそういったミレニアム開発目標達成には、貧困削減ではなくて先ほどおっしゃったジェンダーとか、環境とか、社会ハウスとか、いろんな90年代に国際社会で合意した議論に基づいて決められたものですが、これを本当に第一義的に達成するということを目標にやすのであれば、重点地域はアジア、東アジア、に置くというのはちょっと矛盾していると思います。
 もう1点は、先ほど平和構築のところで、とくに日本政府は去年の5月からアフガニスタンにおいて、「平和の定着、国づくり」という方針を発表されました。それ以降、スリランカ、インドネシアのアチェ、それからフィリピンのミンダナオと言った具合に、積極的に関っていらっしゃる、基本的に言えば、治安など今までODAを供与して来なかった分野にODAを積極的に投与して、それによって紛争が解決できるとう前提に立ってきているわけです。ところが残念ながら外務省の方は努力されていると思うわけですが、実際にアチェは残念ながらミンダナオでも、インドネシア、フィリピンでも政府側が対話路線から軍事路線に転換しまして、紛争が激化したという結果になっています。しかも治安部隊、とくに国軍や警察による一般市民への人権侵害が広範に出ているという、こういう状況の中で、例えば、平和構築を訴えるのは、文言自体はアレですけれども、人権侵害が起った時に、という場合にどういうような措置をとられるのか、そう言った抑制的な側面、そういった面をどうされるのか、お聞きしたいと思います。
(須磨) はい、ありがとうございます。いくつかの問題点が、質問も含め意見が出て着ましたけれども、その一つ一つについてお答いただけますか?
(須永) いろいろご意見、ありがとうございます。私以外の方もご意見があれば言っていただきたいと思います。とりあえず私の方から話ますと、順番に行きますと評価のところ、聞いておりまして、これもっともだと思いました。これ表現を何か考えたいと思います。評価やっている部所がありますので、客観的というのは、これ書いた時に、外務省がやるより第三者がやる方が客観的になるという意味で書いたんですけれども、いろんな問題点がある。第三者もそれは適切だという表現がよいかどうか分かりませんが、何かクオリフィケーションというか、もう少し文章を加えた方がいいと思いました。そこは検討させてください。その前に一般的なことを言いますと、パブリックコメントを8月8日までやりますけれども、今相当意見が来ておりますが、今日の意見、また昨日大阪でやって意見をまとめ、さらに福岡に行こうと思っていますけれども、それらの意見を全部きちんと整理して、漏れのないようにして、それに直す所はこういう理由で直しました、これについてはこういう理由で現状維持しましたと全部添えて公開したいと思っています。それが外務省で8月末を目指して決める予定で、この見直しをやっているわけですが、決める前にそういうことをやりたいと思っています。今言ったことも、今日記録に残って全部公開されると思いますので、検討すると言ったものはきちんと検討して、その結果をお示ししたいと思います。
 開発教育、これは昨日大阪でも意見が出まして、大阪で出た意見を紹介すると、政府がやっているODAの、これは成果が上がったとか、そんなことを教えたら返って逆効果ではと言われて、むしろ途上国が直面している問題だとか、それは環境問題を含めてODAというのを超えて開発の問題とか、そういうことをきちんと、あるいは先進国が資源を大量に消費していて、それが問題なんだと、それをきちんとするよう言われていますので、ここも昨日修正しなければいけないと思いましたが、今日も意見が出ましたので、おそらくかなり、これを読んだ方が多くの人が政府はちょっとおかしいじゃないかと思ってると感じてますので、ここも再検討したいと思っております。
 ジェンダーについては原ヒロコさんのご意見ですとジェンダーを20箇所ぐらい入れなくちゃいけない、ジェンダーは重要だと思っています。原稿の改稿はうしろの効果的、効率的実施という最後の方に12番か13番に15項目ぐらい並んでいる項目の中で、後ろの方に出てきているんですね。私はジェンダーが重要だと伺っておりましたので、目的からいれなくちゃいけないと思いますし、基本方針にも、基本方針は冒頭にご説明いたしましたが、ODAつまり政策を作る段階、実施する段階、環境問題とか、貧困削減をやる場合でも、横断的に重要なことを書いたんですね。そこにジェンダーというのを入れたんです。言葉で文書で入っていないので、これもいろいろな所から、もっと強調せよと言われておりますので、強調せよと言っても、環境を強調せよと言う人もいるし、人権を強調せよと言う人もいる、いろいろいるんで、それぞれのご関心を持っている分野がある人がいるので、どれぐらい出来るか分かりませんが、考えさせてください。すでにいろいろな人から意見をいただいております。
 次に長瀬さんから、既に議論したことがあるかと思いますが、貧困削減でアフリカということ、これは、ですから政府原案の目的に書いてある、目的の後ろから2番目の段落に書いてある「国際貿易の恩恵を享受し、資源・エネルギー、食料等」とか、こういういわゆる我が国の安全と繁栄的なものを持ち込まないで、NDDだけでODAをやったら、そういうことになるでしょう。しかしながら、冒頭で言いましたが、重点はアジアですけれども、アジアの重点というのは変わってくると思います。中国の援助なんて、今日これからご質問が出るかも知れませんけれども、私はパブリックコメントを100以上もらっていますが、過半数が中国援助です。これをやめろとか、削減しろとか、こういう意見ばかりですね。これは、かなり幅広い国民の方がそう思っているのではないか。一般に、ご存知の方も多いと思いますが、中国に対するODAは円借款がほとんどなんですが、円借款について言えば、一番多い時は年間2千億くらいやっていて、今は1千億になっています。これからも、おそらく減らしていくことになると思いますけれども、だからアジア重視と言ってもかなり金額的には東アジア、アセアンにはならないんじゃないかと私は思っています。これは私の個人的な考えです。記録には書いていただいていいんですが。そういう意味もあって東アジアは経済連携ですよ、と書いてあって、今出た重点地域で、例えば南西アジアについて言えば大きな貧困人口を排除するとか、アフリカについては多くの途上国が存在しとか、それなりに配慮して、そういう所にもODAが行くぞということを示したつもりですが、これについては異論があるかも知れません。
 平和の構築でありますが、平和の構築はODAで出来ることは限られていると思いますね、個人的に見て。ODAでいろんな国、さっき挙げられた国の平和がODAだけで構築できるとは、とても思っていませんし、日本というのは日本が国際社会でいろんな行動を起こしたり、働きかけをする場合に、軍事的手段は憲法上の制約があり、ODAというのは結構大きな手段であると思っています。だから活用するということですが、平和構築そのものはODA以外のいろんな活動が必要だと思いますね。ちなみに、さらに申し上げれば、途上国の開発だってODAの果たす役割はだんだん小さくなってくると私は思っています。いろんなお金の流れを見ても、投資に占める割合が圧倒的に多いんですからね。以前私はジュネーブでWTO(世界貿易機関)で仕事をやっていたことがあるんですが、あの制度を少し途上国に有利にするだけでも随分変わると思います。私は去年ヨハネスブルグでWSSD(持続的開発可能な首脳会議)に出ていたんですが、途上国が一番主張しているのが、自分たち貿易をやってお金が入ってくれば援助は要らないんだと、そういうふうに皆が言ってましたね。そういうことがあるので、ここにも重点課題の(2)の持続的成長のところにも書いたんですけれども、貿易投資というのは必要だなと、途上国が自前で、独力で貿易とかを出来るようにすることが重要で、ODAの力ではまったく出来ませんけれども、自分で、やはり貿易やってお金が入って来るようになある、これが一番インセンティブになるんだろうと思っています。話がちょっとずれちゃいましたけれども。
 人権侵害については原則のところで、原則の(4)で「基本的人権及び自由の保障状況に十分注意を払う。」ということで、例えば今ミャンマーで問題となっています。あれも日本だけでは人道的な援助、ミャンマーの中で困った人に対しては医療とか、そういう援助をやっているんですけれども、かたや、アメリカとか欧州諸国から批判されているんですけれども、あまりにも人権の侵害が激しくなれば、人道的支援すら止めざるを得ないと思っています。原則に基づいてやっているんですけれども、それはこの間、川口外務大臣が現地で明確に言っていたと思いますね。問題は原則の(1)から(4)までをきちんと運用すると、高橋さんも言っていましたが、どうして、どういう理由で止めたのかとか、そういうのは透明性を持たせて説明をするということかなと思っています。
(須磨) 人権侵害が起きた場合には、とりあえず援助を止めて、あらためて考えるということですか?また人権侵害がおきたら援助しないということを明言するという意味ですか。よく意味が分かりません。
(須永) そうです。上に総合的判断というのがあるんですよね。原則の運用の一番大きなところは、世界中にODAの対象となっている国がおそらく100以上あると思うんですけれども、一律に適用しないということが一番のみそです。これは明確に申し上げますが、日本から遠い国、近い国、政治的関係、歴史的関係、経済的に強い国、弱い国とかありますので、そういうのは二国間関係と書いてありますが、そういうことなんですけれども。私は一つの基準で世界中の国に一律に適用するというのは出来ないと思っていますけれども、そういう意味で、ただ近い国でも、例えば、中国が核実験をやった時には円借款を止めたんです。そういうこともやっていますので。そこは事の重大性とか、そういうことも考えて判断することだと思っています。<遠くでの発言、質問者の声続く>あっちは今援助は本格的にやっていないと思います。話ができない状態です。そうじゃないですね。東チモールはやっていますけれども。ミンダナオですか、ミンダナオはやろうとしても治安の状況でなかなか出来ない。そこはまさに治安の状況を見て、日本人が入れない所がありますから、そういうのはやっていないです。合目的に考えているんです、要するに、やることによって、そこの地域の人権保障状況が促進されろと思われる所はやりますし、反対勢力を強めるようなことはやらないし、そこはケースバイケースでやっていく以外にないです。
(須磨) より多くの意見をお聞きしたいんですが、まだまだ中途半端かも知れませんが、回答はその後にまとめていただいて、、、はい、マイクがまいります。どうぞ。
(目黒) 上智大学の目黒と申します。またジェンダー関係なんですが、そういう意味で原さんのすぐ後に追加コメントのような形で、出来れば一括してお答えいただいたかも知れませんが、いろいろご意見が着ているということですが、またかと言わないで聞いていただきたいと思います。それと30箇所にジェンダー、ジェンダーと入れなくとも、もしかしたら済むかも知れないということも考えながら発言します。私の発言の観点と言いますのは国際協力には実情の変化に応じて一定の流れが変化する形であると認識しておりますけれども、最近の注目すべき流れとしては、ジェンダーの主流化ということがあるかと思います。それは言葉としてはジェンダーという言葉以上にわけが分からないようで、これからその言葉の意味をもっと普及していきたいと思いますが、そのジェンダーの主流化ということは、ごく簡単に言いますと、ジェンダー平等を政策決定、正確予算そして意思決定プロセスの中の中心に据えること、という理解を国連を中心とする国際社会ではなっております。そういう観点から結局ミレニアムサミットでも、合意の中にジェンダーの主流化ということがきちんと組み込まれております。これをこの案の目的のところに入れるべきではないだろうか、というのが1点です。例えば、ジェンダーの主流化を通じてジェンダー平等を確保することは効果的な開発援助を実施するプロセスになると同時に開発援助の目的である。こういうことは国連の文書にもきちんと載っている合意文書なんです。したがって、この文書を入れるだけでも、全体をカバーする開発援助の目的、今必要であると挙げている国際的合意のある開発援助の目的にかなうものであるというふうに思います。開発の効果を上げるということは当然今までの議論にもありました日本の国益にも合致するわけです。つまり中、長期的に見た特別的でない日本の評価を上げる日本の国益に合致するという観点からも重要だと思います。さらに、援助事業として特別援助計画というものが外務省だけでなく、いろいろな省庁でありますが、ODA政策に基づいて作成されるのでODA政策の基になるジェンダーの視点が******もって、具体的には事業をそのまま大きく影響を与えるものと思いますので、この点は主張したいと思います。それから具体的な内容につきまして、例えば、ジェンダーの視点という言葉が入っている主なところですが、公平性の確保、そこの書き振りが受益者としてというところ 男女ともに開発の主体者という理解が今では普通になっているはずですので、受益者のところだけにジェンダーということが入るということは、今まで通りの女性はかわいそうであるというターゲットであるという発想が位置づいているといわざるを得ません。それから3番の重点課題のところも、貧困その他がありますが、例えば世界の貧困の貧困者の7割が女性であります。ですから貧困削減を目指すためには女性たちが主体者となって動いていかない限り、撲滅はかなわないということは2000年の会議で明らかにされていることですので、ここでもジェンダー平等です。女性のエンパワーメントが貧困の撲滅に需要である、不可欠であるというふうなことはぜひ入れるべきであると思います。それから、その次、2番目の持続的成長ですが、成長という言葉は使っていますので、持続可能な開発、ちょっとニュアンスが違いますけれども、やはりこれもジェンダー平等と女性のエンパワーメントの推進というのはミレニアム開発目標の一つで、きちんとあがっているわけです。重要課題として位置づけされていますので、これもスキップしないで、エトセトラのところにという扱いをしないで入れるべきではないかと思います。さらに4の紛争のところですが、実は、女性たちは紛争の第一番目の犠牲になる、女、子どもたちが、まず犠牲になるというのは、いつも事実です。したがって、女性はえてして犠牲者扱いにされそうですけれども、実は、復興への主体者であり、平和構築の主体者であり、紛争予防の主体者であるということが事実だと思います。したがって、そういう意味で、これらに関する役割について言及することは、特別にジェンダーを他のイシューとよりも重要視するということではなくて、過実のことだと思います。これも援助の効果という観点からしても当然有効なことだと思います。以上です。
(須磨) ありがとうございました。ちょっと私反省しました。続けて聞けば一番簡単だったですよね。なにか意見が出たら、それにまつわる他の意見を聞いて、そしてお答えいただいた方がいいかなと思っています。次の意見を聞かせていただきます。はい、どうぞ。
(細川) 名前は細川と言います。長い間サラリーマンをやっていましたが、今は経営コンサルをし、その後JICAの専門家として我が国に、JICAの関連だけで調査のビジネスのサイドからいろいろとずっと前からODAの議事録を拝見しております、よく見ております。質問と意見を含めて、今回の問題で大変ご苦労されたと思いますが、国益論議ですが私はあっていいと思います。ただ、言い方が我が国の安全と繁栄という非常に簡単な言い方をされています。ここでは先ほどもありましたように、我が国の長期的安全保障の強化なり、あるいは持続的経済連携の基盤を維持する、という言い方をしたら、なぜ国益かというと、今、貧困削減を前面に出していますが、我が国の中高年は昨年だけで3万2千人ぐらい貧困なんです、生活のために。それを考えれば当然、税金を払うわけですから、当たり前ではないかというふうに思います。それから一つ、こういったのはある理想主義があるのは当然ではありますが、基本的には我々としては外交というのは相互主義というのが原則であるわけで、基本方針で自助努力、援助というのがありますが、これは大変いいと思います。さらに積極的には、当然ながら国際秩序に貢献。例えば、貧困の問題の原因となる人口の家族計画をいろんな形でやっているのに、いっこうに実行しない、あるいは、債務を受けながら、私なんかいろいろな問題があるんですが、こういった債務返済に協力しない。アジアでは非常にいいんですがアフリカだとか、中南米ではそういう問題が出ているわけです。これは援助の原則に何らかの形で、いろいろな援助の仕方があると思います、そういった項目を入れてもいいんじゃないか、というように私は思います。とくに事業努力はよい政治をするか、しないかということであろうと思います。いま一つ、そういう意味では、これは逆の意見かも知れませんが、先ほどミャンマーにしてもアチェにしても、問題があると言いながら日本のそういった人権侵害よりも、より地域としてのマッチ性が日本の****がいろいろな意味があると思います。といった意味で重要である場合、日本はどういうふうに選択をして、重点と言い方がされていますが、最重要な事由については、そういった問題というのは、ある程度ネグリながら、あるいは日本独自の考え方で、そういった問題をトータルな利益を考えろという意味で独自なアジアの展開と、まあ、これはスリランカでも10億ドルをポンと出したのを知っているんです。結局そういった問題なんかはアメリカだとか人権で****一部の意見じゃなくてトータルな意見、考えてみればシンガポールにしても、マレーシアにしても、開発でかなり激しい人権侵害をやって来たんです。ある時期は劇的な課程である程度やむをえないとは言えいけど、そういった問題で、アジアにおいては、少なくとも、一時的には民族間紛争を含めながらも、それは援助してもいいのではないか。これがまさに重点という考え方で、私は明確にしていいのではないかと、とくにラテンアメリカとかアフリカこれを別視している。先ほど言いましたような人口問題、国際秩序の形成に違反している、国全体の努力がされているか、されていないかということによって。これは分野別援助の分野のパッケージという問題もある程度考えながら、すぐ出来るような形にして行くのかいいんじゃないかという考え方をしています。それから、もう一つ、これは評価の問題は非常に重要である。評価の前提となる国別援助計画、この問題は総合戦略会議でやって1年に5つか6つしかできないと言っている。そんなこと我々には考えられない。もっといろんなやり方があるんじゃないか、それが前提になって援助計画なり、援助の派遣なり、援助の中味をつめて行くべきだというふうに考えます。援助の仕方も我が国が全部貧困だとか、細かいものを丸まるやるんじゃなくて、国際機関と連携しながらやる。あるいはこれはNGOにお任せするとか、そういった部分の方針が将来この中に全部出すことは出来ない。そうした包括的な見方でそういうような多様な形態で進めるのが分かる感じにしていただくのがいいというふうに思います。あと*****を見てまいりますと、最後の国民参加の点で不正防止の性バイの防止だって、バイというのは両方の側が悪いので、これらの類は3の2の実施過程の問題の効率化、公正化という言い方で、まとめていいとか、細かい問題があります。援助計画とリンクする、それは行うといいじゃないか。あと、開発人材の育成がかなり強調されていますが、評価の人材をどのようにするかという問題もあり、評価の結果をJICAなんか見ておりますが、あんなのでいいかいな、と感想なんかを書いているぐらいな話で、こんなもの評価でもなんでもないという感じがいたしますが、そういった面の人間を******で詰めて、今回こういった形は大変いいと思います、大変ご苦労さまです。時間がかかってしゃべるのは大マなことだと思います。今日はそういう意識がありまして参加させていただきました。一番初めはもう少し、本音の建前も含めた形で、先ほどの****ダウンを含めて、言い方のテクニックはいろいろあるだろうと思いますが、全部出していただいた方がいいのではないかと思います。
(須磨) 国益評価、それに対する文言のご提案をいただいたんですが、同じような範疇のお話ですか。はい、ではよろしくお願いいたします。
(倉川) JVCの倉川ヒデアキといいます。私は今、海外の農業開発に関っています。国益に関係して、ODAを含めて海外協力、国際協力をするときに、何を主体にするかということが一番大事だと思いますが、その時には援助の対象になる地域の人々が本当に何を望んでいるか、どういう希望があるのか、何をしようとしているのか、それを一番の出発点にすべきだというふうに思っています。ですから私たちが援助する側、あるいは協力する側の都合であってはいけないわけです。私たちがこうしようと考えるよりも、それは彼らが望んでなければ結局は大きな過ちになっていく、そこを第一の出発点にして行こうと考えています。したがって、もし、そういうことを抜に、こちらの都合で、あるいは、こちらの利益で何かをした場合に、その結果として今までの経験から言うと、その地域の環境が大きく壊れてしまったり、あるいは、その地域の人々の生活のあり方がまったく変わってしまったり、それから依存体質になったり、本当に私たちの経験の中からたくさん出て来ているわけですね。絶対にくずしてはいけない一番の基本的な出発点だろうと思います。したがって、いくら税金で私たちがODAという形でお金を出そうと言った時に、私たちの利益だとか、繁栄だとかということをしている人は絶対にいけないと思います。それが第1点。第2点なんですけれども、たくさん大綱にはきれいな言葉が並んでおりまして、立派な言葉が連なっているわけですけれども、逆に言うと一般にチェックを受けたことがあるんですね、それから玉虫色と言った方がいいかも知れませんが、ということは実際にODAを実施するときに、如何ようにでもとれる。ここに書いてあるじゃないか、という解釈によって、どうにでもとれる。逆に言うと、実施の体制、実施の体制が一番大事だろうというふうに思います。そのために、やはり実施するときに、基本的な規定されるものがなければいけない、一本の柱がなければいけない、というふうに思います。ということは、ODAを規定する基本的な法律が必要だというふうに思います。それなしには、いくら実施の段階で、どう解釈しようとも、どうにでもなりますということになっては、元も子もないということですね。こういう大綱を作っても結局は何の効果もないと思いますので、その基本的なODAを実施する法律をつくるという文言をこの大綱の中に入れるべきではないかと思います。大きなIII番目に実施体制というのがありますね。そこにやはり、そういう基本的な法律をつくる文言を入れる、それが一番大事なことだと思います。この2点。
(須磨) 骨格となる理念のところが違うということですか?
(倉川) はい、ですから「我が国の繁栄と安全のために」を削除するということです。
(須磨) 同じ関連のご意見があれば一緒にお聞きしたいと思いますが、いっぱい手が上がりましたね。
(鶴田) 鶴田といいます。印刷工場で働いている者ですが、国益ということに関しては、本当に必要なことは何なのかということを考えなくちゃいけないと思います。須永さんが苦労されているのが表情でよく分かるんですが、現状で国益を主張されている人たちは、やはり、すごく短期的なペイバックを期待されていると思います。本当に余地を残すようなことはすべきではない、本当に必要なことは何なのかというところから、拒否するものは拒否するという姿勢が大切だと思います。本当に日本の繁栄だって言えないですよね、これ以上繁栄してどうするんだと思うんですよ。こういうことを言い出すのではなく、本当に必要なところに日本のODAが行くということを、日本が繁栄するんだったらODAは使わなくていい、ODAを入れなくても、ほかの経済政策があるでしょう。そこでやればいいわけで、何故ODAに入れなければいけないのか、その余地を残さなければいけないか、というと経済団体とかそういうところで短期的な還流みないなものが許されているから、こういう余地が残ってしまう。絶対そういう余地を残すような文言を入れるべきではないんじゃないかと思います。
 あと、評価のところに関して言えば、政府愛というところでつながっていくと思うんですが、50年の歴史の中でたくさん日本のODAが対応できたという実績があると思います。マルコスやスハルト以外の問題にODAが関っていることは間違いのない話で、近いところでは***の問題があるわけですが、過去50年にさかのぼった不正蓄財みたいなことをやっていく必要性が、そのことをもってして、これからのことが変わるという決意を示していく必要があるし、痛みを伴う事業で、まだ作っている人もいれば、大変なブームもあるかも知れないが、それをやった上で不正というのはこれから切って行くんだという態度を明確にしていくべきだと思います。
 どうODAを決めて行くかというところで、省庁間の調整という話が出てはいますが、本当に今のいろいろな省庁にまたがって実施されるという状況が、調整で何とかなるのかどうか、やはり援助庁のようなものがあって、必要になって来るかどうかという論議は廃止しなければならないし、その意味では基本法の制定というのが結びついていくのではないかと思います。実際、荒木さんもちらっとおっしゃっていましたが、違う次元のチェックという表に出ないチェックをし、何々省からこういう意見がありましたと、ちゃんと表にだしていくという公開性、目に見えない違う次元のチェックをちゃんと外に出していくということは必要なのではないか、そういうことで省益みたいなものを克服していく手立てとなっていくのではと思います。
 もう一つ、行政主義を超えていくという問題があるんですが、現状でプロポーザルコンファメーションというほとんどのプロポーザルは、企業がつくらずコンサルが作っている現状があって、それを超えていくと言ったとき、今の日本の外務省に本当に自分で調べて何が必要かというようなものを捜して行く人があるのか、あるいはNGOに対して、そういうことを求めていくという具体策があるのかどうか。そこで質問ですが、具体的に要請主義はどういうことなのかが質問です。以上です。
(須磨) はい、関連することですね?
(上田) 上田と申します。私は個人の立場で意見を述べさせていただきます。海外で話をしておりますと、ODAの与えられた相手国の代弁者の方々からは、「あなた方、なぜ要求しないの」というのは何のためにやっているのか、伝わっていなんですね。先ほど下村先生から、「並みの利益を追求すべきではない」ということを言われたんですけれども、現実には向こうの方々は目先のステップがないと次の理解につながらない。ですから目先だけ言われると、もう我々の利益をはっきり出すことによって、相手は本当に理解する。一番の目的は相手のことを理解してくれないと、長期的な利益につながらない。したがって、相手の理解は一番重要なわけなんですが、先ほどの評価の中にあるのです。相手の評価ということですね。ちょっと検討していただいたらどうかと思います。相手がありがたいと思うのか、もらい得という理解が非常に大きいと思います。その辺が一つ。それから、これは私の個人的な話で、希少生物の保護というのはあるかと思ったんですが、これは先ほどの中のどこかにちょっと別の形で述べられていたので、あまり細かいものを全部この中に入れていくと、話は短い方がいいので、そういうことだけです。
(須磨) はい、ありがとうございました。様々なお話が出てきましたが、では、一人区切りの前にもうひと方だけ、関連することですか?ちょっと待ってくださいね。はい、どうぞ。
(山中) 開発協力NGO草の根援助運動の山中エツコと申します。いろいろな方のいろいろなご発言の関連してますが、国益という観点で発言したいと思います。1の理念の2の基本方針の中の(4)番、我が国の経験と知見の活用というところなんですけれども、再三いろいろな方がご発言されておられますように、現地の方たちがどのような開発を望んでいるかということが、この4番からは、その視点が落ちているかなと思うんですね。下村先生のお話の中にもありましたように、ドナー側の都合による援助であって、先ほどの須永課長の最初のご説明の中で、この項は日本の顔が見える援助を意図している、日本の利益と言い換えることができる。国益に言い換えることができるとご発言したことから分かるように、本当に現地の人を無視した、こちら側の、ドナー側の都合の援助であることから、この項というのは大幅に修正するか、削除が必要であると思っています。NGOとしては現地のNGOが住民と一緒に展開している持続可能な開発をこちら側から資金的に援助して、共同プロジェクトを実施しているような活動をして来ているんですけれども、現地のNGOの人たちはその国のエリートなんですね。大学で専門的な知識を学んでいますけれども、*****でない人もおりますが、現地のNGOの人たちが大事にしている信条の中に、ちょっと紹介したいのがあります。父とともに生きる人々のところでともに生きよう、人々から学び、人々とともに考えよう、そして人々の知恵から出発しよう。というふうに現地のNGOの人たちも現地の生態系とか、暮らし方から学びながら地域の人たちと一緒に開発を考えている中で、日本の援助が、日本がもっているもので役に立つぞというふうに勝手に考えているのであって、人も、物も、技術も、製造も、現地の人たちが本当に必要としているかどうかは、そこの人たちが判断することであって、この4のような項目はこういうような文言で表現される大綱は無意味だと思います。
(須磨) あとお一人だけ、ごめんなさい。とりあえずここで切らせてください。
 日本工菅という開発コンサルタントなんですけれども、ベトナムやラオスで農業計画や供給プロジェクトに関って来ました。4点あるんですけれども、まず国益論ということで、コンサルタントですからどちらかというとバランスのある立場でいたいなと思っていまして、非常に国際開発ジャーナルと読ませていただいてますし、また経済協力室といろいろ提案さていて、時代も変わったなと、JICA、JBICも大変革していますけれども、そういう意味で、さっき高橋さんもおっしゃっていましたが、むしろバックアップするというか、バックアップするようなよりよき援助大綱を今回つくるという意図がありますから。ODAの目的に関して2点あるのではないかと思っています。一つは国際社会の平和と発展に貢献する。もう一つあるんではないかと、それが抜けているのではないかと思うんですけれども、もう一つは外交という視点我あると思います。その視点を入れるならば、いろいろな国益論の方もいらっしゃいますし、排除した方がいいという人もいますけれども、やはり経済状況を考えると、その中庸をいかないといけない。苦肉の策ではないですが、あると思うんですけれども、「国際社会の平和と発展に貢献し、これを通じ国際協調を前提に我が国の安全と繁栄に資することである」という文言にすれば、むしろメッセージ性ということも考えて、日本が諸外国に対してメッセージ性というものを考えると、非常に***入る地理的な余地、排除する一つの方策として、国際強調を前提にと入れるのは非常に大きな違いが出てきます。今、アジア各国が注目しているのは国益論をどこまで運用していくかですけれども、国内の心配もそこにあるんですね。収容する緩和剤として国際強調を前提にという文言を入れるだけで、外交と国際社会の平和と発展という二つの目的の基にこのODAを実施していくということになります。これが1点目です。別の箇所でもよろしいですか。
(須磨) あまりにも多岐にわたると、論点がぼけてしまう危険があるので、どうしましょう。何に関するものですか?
(長瀬) 人間の安全保障と重点課題の経済的成長、あとは平和構築なんです。
(須磨) とりあえず、お聞きします。どうぞ。
(長瀬) 人間の安全保障に関してですが、緒方さんが押していらっしゃるということで非常に先見的なものがあると思いますが、このため我が国はというのと、もう一つは制度づくりというのがあるんですけれども、これでよろしいのではないかと思います。経済的成長に関して、インフラというものに関しては、ODAには2つあって、現実主義と理想主義があると。現実主義というのは、むしろ途上国の中間層にたいして、理想主義というのは最貧困層に対して行うものと思いますけれども、日本社会の戦後の経済発展を見ても、この2つからのアプローチが確実に必要だと、これによって経済発展あるいは貧困の削減が本当に行われている。時代を振り返ってみると、やはり日本の統一に2つありますけれども、織田信長が日本の経済システムの根本をつくって行った、そこから日本の統一が始まったと思うんですけれども、その時の重点項目が経済インフラだったと。要するに流通の促進に寄与したがために、全国統一という戦国時代の中で一つの突破口を開かれた。彼は戦国武将として政策立案の立場から非常によく考えてたと思います。そのバランスをとるという意味で、経済的成長と社会基盤の整備も、理想主義から現実主義を入れないといけない。インフラの重点化もおこなっています。これを2つ並列するというのは非常によいことだと思いますが、一つより明記していただきたいことは、経済インフラに関してはやはり民間の資金が重要となって来ますので、最後の文書になります。このためには我が国ODAリスクテイクのための貿易保険や輸出入金融等、ODA以外の資金の流れと連携・強化するということで、リスクテイクのためという目的を明確にしておいた方がいいというような気がします。民間の資金が重要都、最後の、「民間の活力を十分に活用しつつ、PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)によるもん間経済協力の推進を図る」と。明確に線引きをする必要があると思います。
 最後になりますが、平和構築に関して、ここはすごく抽象的だなと思ったんですけれども、先ほど須永さんの方から、予防というところに重点を置いたんだという話をされておりましたけれども、具体的には予防というところで、平和研究の支援を一つ入れておいていただきたいなと思います。平和学というのが構築されたと思いますけれども、まだ発展段階かも知れませんが、具体的に例えば、平和研究の支援、和平プロセス促進のための支援、和平プロセス促進のための支援以下はすべて紛争後の処理になると、予防に関してはやはり、平和研究の支援を入れる必要があると思いました。以上です、ありがとうございます。
(須磨) 様々な意見があるんだなと、今、あらためて思っています。国益をもっと入れた方がいい、というご意見とか、国益は全部削除した方がいいと、法律もつくった方がいい、とか。それと明確化ですね。言葉を曖昧でなく、もっと明確に、運用のときに間違いのないようにすべきだという意見もけっこう出ていましたね。ジェンダーの方の意見もそうですよね。主体の問題か、受益者の問題か、ジェンダーという言葉をどこかにいれればいいということではなく、もっと明確に書けということですね。いろいろな意見が出て来ると、やはりどうしても須永さんの方へふってしまうんですけど、いかがでしょうか。
(須永) ありがとうございます。今日は私嬉しかったんですけれども、私よりご年配の方も含めて、一般の方々からご意見を伺い感激しました。こちらから出向いて各界の方々と話をしておりましたけれども、公聴会で、大阪でもなかったので、こういうふうにいろいろな方々からご意見をいただき、ありがとうございました。よかったと思っております。
 国益のことについて一つ、短期的な資金の還流とか、こういうのは経済界からもそういう意見がないんです。文書とか、言葉とかで、そういうのを書いてくれと言っているのはほとんどありません。そういう意見は与党でもあまりないですね。そこはどう読んでいただくかにもよりますが、短期的なものはあまり書いてないんです。むしろ日本と平和と安全を書く、これはODAだけではなく、外務省の外交の目的そのものなのです。さらに言えば、総理が、時の政権の一番基本的目的は我が国の平和と安全で、抽象的に書いているんですけれども、具体的に書くと急激におかしくなりますね。そこをどうしたらいいかというのは難しくなると思うんです。ここに今日いい意見を出していただきましたけれども、わずかな人数の集まりでも、これだけ違うので、これはODA大綱見直しについて、いろいろな方からご意見を聞いてよかったなと思いますけれども、外務省の仕事のやり方について、本当に真剣に考えていただいていると思います。こんなこと言っても答えになっているかどうかわからないので、基本的には国際的に貢献するのを第一義的に書いたつもりです。それが不十分であるとおっしゃる方もおりますが、一つだけはっきりするのは、何らかの形で我が国の平和と安全につながっていることは書きたいと、書かなくてはおさまらない人が日本にたくさんいるなと思っています。だから、削除することは出来ないと思います。書き方の問題でODAの目的は途上国の経済発展と福祉の向上に貢献するというのは国際的な定義ですので、それは外さないようにしたいと思っています。
(須磨) 出発点をもっと明確に書けということでしたよね。
(須永) それはよく理解しました。それから、自助努力が書いてありますが、民主的な政治であるとか、最近の英語の言葉で、グッドガバナンスよい統治と言うんですけれども、それは1ページの(1)に入れたつもりです。評価の前提、これは後からにします。荒木さんの方から話があるかもしれませんが、評価できるような国別援助計画をつくらなければいけないと私は思っています。従来から作ってきた金太郎飴みたいなものを作っても評価できないですね。私どもが総合戦略会議に期待しているのは、評価できるような目的とか、そういう手段が明確になったやつを作っていただきたいと、外務省の一緒に作るわけです。
(須磨) 作っていただきたいというのが、よくわからないんですが。
(須永) あれはODA総合戦略会議が作ることになっているんです。
(須磨) 荒木さんの方に向けていったわけですね。ちょっと確認したかったんですが。
(荒木) そうなんです。国別に非常にすくないという批判があって、こんなことやっていたら、1年間に何件できるか、これ聞いたら本当に考えなければならないことなんですが、今の話に戻しますと、最初から評価のことを前提にして計画を立案して行かないと、いざ評価するときに、今までは行き当たりばったりしてやっていたが、今までのプロジェクトは評価してもほとんど正確な評価にはならないんです。ですから、これからは国別援助計画をやる時に計画に基づいて、ちゃんとプログラムが出て来ますから、それによってどういう成果を上げたかが分かるような仕組みを評価の専門家が必ずその国別援助計画の作成には参加するということになっている。
(須磨) 評価ポイントを明確にするということですね。
(荒木) そうです。最初から評価ポイントを明確にするということです。
(須磨) そうすると評価がみんなに分かり易くなるということですか。
(須永) あと不正防止ですが、明示しない方がいいと理解しているんですが、これは自戒を込めて、過去に不正があったので防止する、反省の意味を含めて書いたんです。これを書かないともたないです。これは我々自身もやらないし、調達に参加する企業の方も何か不正があったら一定期間調達から排除する。これも日本経団連で私の同僚が明確に説明しました。これは明記せざるを得ないと思います。
 基本法の話と援助庁の話が出ましたが、我々行政にいる人間からすると、閣議決定というのは最高の意思決定の文章ですので、これを行政として責任をもってやって行きたいと思っていますけれども、時の政権とかあるいは立法府、国会もこれでは不十分だと、つまり政府はこれでは困る。これからいろいろな問題が生じて、これでは駄目だという判断があるかもしれませんね。私どもは大綱をきちんと実施してODAをよりよいものにしたいと思っていますけれども、これで不十分という意見が出れば、耳を傾けたいと思います。これは私の個人的な意見です。
 要請を超えていく、私はフィリピンに10年前ぐらいにいましてね、ほとんど日本の企業とか、そういう人が要請を作っていましたね。今も変わってないかも知れませんが、10年以上フィリピンに行っていないので実態は分かりませんが。他の国の状況は知りませんが、私がフィリピンで2年半経済班長をやってODAをやったときはそうだったですね。日本の企業の人とか、NGOの人とか、団体の人たちがこういうプロジェクトはいいんじゃないかとか、そういうのを相手の政府に提案することは何も悪いことではないと思っている。問題は途上国自身が自分で、先ほど石川さんが言われたように、その国に住んでいる人とかのことを考えて、そういういろんな提案を受けて、どう判断するかということが重要で、受けてさらに要請したものについて日本がどう判断するかが重要なので、日本のコンサルタントとか企業の人が要請を作って、お金を渡しちゃ駄目ですよ。それこそ、お金を渡すと不正になりますよ。それは駄目ですけど、日本の人、国際機関に人、NGOの人、みなそうですけど、政府にこういうのが本当にお宅の国に役に立つんですよ、この地域に役に立つんですよと提案をするのは、何ら悪いことではないと私は思っています。そのプロセスをきちんとする、公正なものにする。まさに住んでいる人のニーズを反映したものにするということが重要であって、私どもはこれで不十分かも知れませんが、一つ打ち出したのは現地機能の強化ということです。つまり、東京にいると分からないものですから、現地の人が現地のいろんな関係者とよく話合いをして、現地の経済状況を十分把握するということが大切だと思っております。
(荒木) 我が国の経験と知見の活用というところですが、そこのところについて、最初の2行、つまり「我が国経済社会の発展・・・」というところで、最後に「技術、知見、人材及び制度を活用する」さらに、というところはなかったような気がするんです。こういうふうに、一つずつ挙げるときりがないんですが、もっと前は純粋なんですよ。純粋といっていいか、相手の国のことを思って、相手の国のためになるものがあれば、それを皆なで出し合って使って行こうという話なんですけれども、後段の方は、よくよく文脈を見ると、ちょっと待ったがかかって、その政策実施に当たっては、俺たち各省がやるんだから、それとの関りでちゃんとやれよというところになって来ると、だんだん俗っぽくなって来るんですね。俗っぽくと言うか、つまり相手の国を考えないんじゃないかというふうなご意見につながって行くので、非常に微妙なことになって来て、こういう文書というのはあちこちあるんですよ。そこのところが、例えば、目的の、一番最後のパラグラフの7つ目ぐらいに「さらに相互依存関係が深まる」深まっていることは分かっていて、これからも深まって行く。だけど国際貿易というのは、当たり前の話で、貿易なくして日本はやって行けないんですから、それもあるし資源、エネルギー、食料の確保も当たり前なんですよ。何で当たり前のことを、つらつら何度も何度も書くのかということを、実は、私たちは問題にしてきたわけです。ですから、これはサラリと、いわゆる国民の利益を増進するということで流していった方がいいのではないかと言ったんですが、先ほど言ったように各人、各様いろんな勢力がいろんな意見を言うんです。まあ、生っぽくなった、というか臭みのある文書になった。高橋さんが言った前の第一次ODA大綱は教科書的なんですよ。非常に美しいんですよ。日本国憲法以上に美しいんですよ。ここは泥っぽく非常に生身の人間が考えた、どろっと、出てる感じですね。どっちがいいか、皆さんご判断いただきたい。
(須磨) 難しいところですね、理念だけきれいでも、実践につながらなければ駄目で、言葉だけのものでは、意味がないですからね。下村先生、手をあげていらっしゃいますね、最初に口火を切っていただいたこともあるので、手をあげていらっしゃる他の方には申し訳ないのですが、義理立てさせていただき、ご発言お願いします。
(下村) 法政大学の下村です。最初にコメントさせていただいたんですが、今日これまでいろいろなお話が出て、私自身も勉強になりましたけれども、2点コメントさせていただきます。一つは、あるいはこういう誤解があるのかな、と思うんですけれども、援助をちゃんとやっていると相手の人たちに理解されて、評価されると。私はそうなれば望ましいなと思うけれども、そういう想定は現実的ではないと思います。つい数日前、NHKのテレビで名神だか東名だかの高速道路の建設の番組をやっていて、世界銀行の支援が出ていると云っていた。非常に驚いたんですけれども、ああいうことが云われることは極めて少ないです。新幹線に乗るとき、私は少なくとも世界銀行から支援してもらって有難かったかなと思うことはありません。恩知らずですね。それから「黒部の太陽」の石原裕次郎に胸躍らせることがあっても、外国から支援してもらって有難かったなと思うことはありません。そういうものだと思うんですね。東京駅には「新幹線は日本人の汗と英知の結晶だ」と書いた銘版が打ってあるそうです。世界銀行の支援と書かない、そういうものなんですよ。でもね、世界銀行は、お金を出して意味は無かったかというと、少なくとも日本がこれだけ発展したわけですから、世界銀行のお金を出した価値はあったということなんですよ。そういうものなのではないでしょうか。ODAであっても、NGOの支援であっても。
(須磨) 直接的対価を求めるべきではないとおっしゃりたかったんですか。
(下村) 当然知られるはずだとか、というものではない。もう一つ、2つ目の点は、効果について厳しい眼があるのは当然のことだと思いますが、こういうことも事実としてあるということも我々認識しておいた方がいいのではないかと思うんですが。ODAで公共事業にお金を出すときに、事前にその審査を、かなりの程度やってきて、少なくとも1970年代から行われている。事後評価、終った後に評価することも、一応1980年代から体系的に行われている。これは、そんなことやったって何の意味もないんだ、何の効果も上げてないじゃないかと言われるかもしれないけれども、日本国内でこんなことやっているのは非常に珍しいんですよ。日本国内では。公共事業に関して全然やっていなかったんです、長い間。1990年代になってODA以外で、初めて先駆的な試みが始まったんです。まだ始まっていないところがいっぱいあります。ですからODAは、日本国内の公的部門の水準からいくと、かなり一生懸命やっていたと理解しないと不公平ではないかと。
(須磨) なるほど、客観的視点から見るということですね。はい、どんどん時間がなくなって、私は時間をいちばんあせっているところなんですが、どうしても言いたい、これを言わないと帰れないとう方だけ、申し訳ないんですが言っていただくということで。あとほんの2人だけで。どうぞ。
(永山) 杉並区の永山と言います。海外技術***というところに勤めています。今、下村先生が言われていたことですが、私も前に建設省にいたんですが、下村先生の部下であったんですよ。ジェービックに引っ越したとき。その時おもったんですが、評価は確かにジェービックとかジャイカは進んでいましたね。国内で私がいた頃から始まっていますので、この10ぐらいから評価ということで、大分うるさくなって、とくにマスコミはうるさくなって、
(須磨) 「うるさく」というのは、ちょっとひっかかりますので、ちゃんと見えるようになったといっていただければ・・・。
(永山) とても厳しくなったんで、やるようになったんですが、とくに自己評価なんかも最近、道路、ダム、いろいろな所でやるようになった。それは確かにその通りです。それが一つ。もう一つはやはり国益については個人的な意見ですが、今は厳しい時代ですから、日本が世界の役目を果たすためには、日本がこけちゃったら駄目なわけですから、やはり国益を意識してやらなければいけないじゃないかという意見を、会社も大分意識していますけれども、まあ、そう言う意見を言わせてください。ありがとうございました。
(須磨) もうひと方。ごめんなさいね。時間がなくて大変失礼しちゃって。はい、どうぞ。
   慶應義塾大学の*****と申します。また貢献のことでもうわけないんですけど、非常にシンプルなお願いです。須永さんが先ほどおっしゃっていたことは、「安全と繁栄という文言は削除できない」となると、第一義的な目的は国際社会の平和と発展であるということであったので、この目的の始めの文章で、「国際社会の平和と発展に貢献し、」と読点になっていますが、これを句点にしていただきたい。何故かというと、この文章においては今までは国際社会の平和と発展が主なので、我が国の安全と繁栄というのが目的だと解釈されかねない。須永さんははっきりと国際社会の平和と発展が第一義的な目的であるとおっしゃったので、ここで区切ることは何の問題もないと思います。玉虫色のお答ではなくて、はっきりとしたお答をお願いします。
(須磨) 厳しいご提案でした。確かに日本語の使い方はどっちにもとれる場合がありますので、須永さんにご検討いただいて、多分新たな提案文が出てくるのではないかと感じておりますが、もう時間が5時に近いので、いかがでしょうか。最後まで皆さんのご意見をきいて。今後どのように意見を活かすかというところをお聞きしたいと思います。
(須永) 記録は取っていると思いますので、いろいろ出た意見を検討して答を出したいと思っています。私一人で出すわけじゃなくて、政府全体として検討することなんですけれども、政府全体として一つの答を出すということでありますので、私がここで答えるわけにはいかない部分もあると思いますが、さっき学生さんからいい指摘をいただいて、私どもこの2行を、苦労した文章なんですね、私が言いたいことは、この2行の趣旨と言うのは、それ以下の段落に出ているというふうに見ているんですが。荒木さんからのお話は純、不純もないんですね、すべてのいろんな違憲を検討していくわけです。それから国際貿易の恩恵というのは別に、これは総合戦略会議の意見で入れた文書ですから、そういう意味では、資源も、エネルギーも、経験と知見のところは途上国のニーズと矛盾していると、国内の事情を言っているわけです。ここは明確に申し上げますが、批判もあると思います。押し付けるということではまったくありませんので、どうやって政策を作って実施するかというローマ数字のIIIに出ておりますが、一番重要なポイントは途上国の真の需要を反映した国づくり計画をつくるというのと、政策協議をしてその国の開発政策とか援助需要を把握することは不可欠ということで、ここも読み方の問題もあるかと思いますが、途上国の援助を立案して、一番重要なのは途上国の需要なんだということは明確に書いたつもりです。その需要に照らして我が国の技術とか、経験を活用して行く、活用できないものもありますが。例えば、エイズなんていうのをやっていますが、今JICAでエイズの事業をやっていますが、日本にはあまり専門家がいないので、アメリカの専門家にお願いしている部分もあります。国際機関と連携してやったこともあります。あくまで需要が前提で、それに合うような技術があれば活用するし、なければ他の国と連携して実施するとか、こういうふうにやっていますので、そこは今後もそういうふうにやって行きたいと思います。いずれにしてもご意見には理由をきちんと付して、きちんと回答します。まだ、私が言ったことについてコメントとかいろいろあると思いますから8月8日までは、ファクスまたはメールなど、口頭ですと対応に困りますので、文書でいただきたいと思います。
(須磨) ホームページを開いてメールを出す部分があると考えていいですか。
(須永) メールが出来ない人は書簡(手紙、ファックス)でお願いします。全部出来るようになっていますので、ご意見をいただければと思っています。
(須磨) 電話以外でお願いいたします。5時になりました。もっとご意見がおありかとおもいますが、また、全員の方からご意見を聞けなかったのは残念に思っておりますけれども、今、須永課長がおっしゃったように、いろんな方法で自分の意見を言うことができます。言うとその発言に対して回答が必ず説明責任であるんです。ここは日本は大分よくなったなと思いますが、ということは言った方がいいと思います。結果的に、これはどうにでも受取れるのではなくて、こう思ったんだけど、という言い訳がなくて、ちゃんと理解できるような案文をぜひ、皆さんの力で、そして外務省の方に頑張っていただいて、多分いろいろな戦いもあると思いますけれども、作っていっていただければ公聴会が意味のあるものになり、次の日本の新しい形の公聴会が他にも広まるのではないかと思いますので、こんな少人数ではなく、また人を呼んで多くの人に影響をして、意見を寄せていただければと思っております。ありがとうございました。これにて公聴会を終りにさせていただきます。(拍手)


(注)(***)はテープの状態により、聞き取りが不可能であった箇所を示します。

(以上)
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