平 成 1 0 年 1 1 月 2 7 日
対外経済協力関係閣僚会議
幹
事 会 申 合 せ
1.我が国政府開発援助(ODA)は、これまでも開発途上国の経済開発に貢献するとともに、貧困の撲滅や生活水準の向上にも大きな成果を上げてきたところである。
現在、世界では、情報通信の発展等によるグローバル化の急速な進展や、経済の相互依存関係がますます深化しつつあるとともに、通貨・金融面での不安に起因するアジア経済危機や開発から取り残されるアフリカ諸国の問題のように、新たな国際社会の支援を必要とする状況が生じている。また、地球環境問題、人口・エイズ問題、食料問題等のいわゆる地球規模問題も増加しており、21世紀に向けて国際社会の調和ある発展のため、途上国支援の必要性はますます高まってきている。
こうした中で、我が国は世界の平和と繁栄により最も恩恵を受けている国の一つであるため、今後とも積極的にODAに取り組み、政府開発援助大綱の基本理念や原則が他の援助国や国際機関の援助政策にも反映されるよう努めるなど、国際社会において指導的役割を担っていくことは、世界の平和で秩序ある繁栄を念願する我が国の重大な責務である。
2.このようにODAの必要性はますます高まる一方、我が国経済は近年低迷しており、財政事情も極めて厳しい状況にある。このような中で、今後もODAを積極的に実施し、国際社会における我が国の責務を果たしていくためには、これまで以上に国民の支持と理解を得ていくことが不可欠である。
そのためには、まず我が国ODAの実情を国民の前に明らかにし、その透明性を高めるとともに、援助対象国の真の実情・ニーズに則した弾力的・機動的な対応を行い、援助の効率性を高めていくことが緊要である。
以上のような状況の下、本年6月に出された対外経済協力審議会意見「今後の経済協力の推進方策について」も踏まえ、今後政府として一丸となってODAの透明性・効率性の向上に取り組むため、下記の措置を講ずることとする。
記
I.透明性の向上について
ODAの課題や国別の援助計画を明確にし、案件の選定から事業の実施、事後評価に至るまでのプロセスの透明性を高めるとともに、ODAに関する情報公開を促進する。
具体的には、以下の措置を講ずる。
1.案件の選定に係る透明性の向上
(1)ODA中期政策(仮称)の策定と公表
5年程度の期間を念頭に置き、ODAの基本的方向性、重点分野及び課題、地域毎の援助方針、目標とする成果、抜助実施に際しての留意事項、実施体制の改善方策等について、我が国としての方針を明確にする「ODA中期政策(仮称)」を、関係省庁の連携の下、平成11年の年央を目途に策定し、公表する。
(2)国別援助計画の策定
現在、我が国の主要援助対象国24ケ国について我が国のODA供与方針となる国別援助方針を策定しているところであるが、更に政府全体としての一体性・一貫性をもって効果的・効率的に実施するため、関係省庁の連携の下、より具体的な国別援助計画を順次策定し、公表する。なお、当面は、主要な援助対象国10ケ国程度について、平成11年のできるだけ早い時期に策定する。
国別援助計画は、5年程度の期間を念頭に置き、相手国の経済社会状況に応じた現地のニーズや優先順位を的確に反映した上で、他の援助国・援助機関との協調・連携や民間セクターとの連携も視野に入れながら、当該国の経済社会状況に関する認識、援助の重点課題・分野、活用すべき援助手法等を明確にし、案件選定に当たっての指針となるものとする。なお、国別援助計画は毎年見直しを行う。
また、作成に当たっては、相手国政府との政策対話を踏まえるとともに、実施機関や民間の有識者・専門家の有する専門的な知見を活用するものとする。
(3)円借款の候補案件の公表
経済的波及効果が大きく多年度にわたる計画的取組を必要とする円借款については、相手国の了解の下、国毎の多年度にわたる候補案件リスト(ロング・リスト)を作成し、公表することとする。なお、このようなリストの策定は、当該案件の実施を約束するものではないものの、中長期的な展望を明らかにすることにより援助の透明性の向上が図られるとともに、一貫性のある援助の実施、各種スキーム問の連携、他の援助国・国際機関や民間セクターとの連携が促進されるものと期待される。
2.評価システム等の充実
ODA事業の評価については、評価システムの充実に努め、可能な限り事後評価を実施し、その結果を公表するとともに、学識経験者、NGO等の第三者による評価の制度を充実する。また、実施段階でのモニタリングについても充実を図る。さらに、事業の性格に応じた効果的な評価手法の開発・導入に努める。
3.情報公開の促進
(1)ODAの入札プロセスの一層の情報公開
無償資金協力及び有償資金協力に係るプロジェクトの入札プロセスについては、国内の公共事業における情報公開の進展の状況を踏まえ、平成11年4月1日以降の案件につき一層の情報開示(応札企業名、応札額、受注企業名、契約額等の事後開示)を進める。
(2)事業実績、評価結果に関する各種報告の拡充
広く国民に対しODAに関する一層の情報提供を図るため、年次報告、白書、事業報告書等の援助実績に関する報告や各種評価に関する報告の一層の充実に努め、可能な限り公開する.
(3)ODA関連情報の集約化とインターネットを通じた公表
我が国ODAに関する各種情報に対して国民が容易にアクセスできるよう、インターネットを活用し、情報内容を拡充するとともに、各種項目の検索や関係行政機関等のホームページヘのリンク等を可能とする総合的なホームページを構築する。なお、年次報告等の各種公表資料や各案件の評価結果についても本ホームページを通じ閲覧できるようにする。
II.効率性の向上について
相手国の実情・真のニーズに則した援助が可能となるよう計画的でかつ弾力的な対応を行うとともに、その実施体制の整備及び執行の効率化を促進する。
具体的には、以下の措置を講ずる。
1.効率的・効果的な援助のための対応
(1)計画的対応
政策対話の拡充により的確に援助ニーズを把握するとともに、ODA中期政策(前掲)や国別援助計画(前掲)に則して重点課題・分野、地域に対して重点的に援助を実施するなど、計画的な対応を行う。
(2)既得権益化の排除
我が国の援助が相手国にとって既得権のような受け取り方をされないように、援助の効率的・効果的な実施の確保や自助努力、「良い統治」の観点等を勘案しつつ、政府開発援助大網の諸原則を踏まえて、各国に対する援助のあり方を随時見直す。
(3)機動的かつ柔軟な対応援助の実施に当たっては、相手国の事情や我が国との関係等に応じ、例えば、先のアジア経済危機に際し、経済安定化等のために緊急の円借款、留学生支援等の緊急対策を実施した例のように、今後とも機動的かつ柔軟な対応を行うよう努める。
(4)事前調査・各種評価の充実援助の効率性を向上させるため、事前調査を適切に実施するとともに、可能な限り事後評価や実施段階のモニタリングを充実させ(上記1-2)、その結果をその後実施する事業に的確に活用するよう努める。
(5)プロジェクトのフォローアップの強化移転した技術や供与した施設・機材等が十分に活用されるよう、既に終了した案件等のフォローアップを着実に実施し、現地での対応の強化を図る。
2.援助の効率的な執行
(1)政府全体を通じた効率的な調整
ODA関係省庁間の連絡の場を拡充させるなど関係省庁間の情報の共有化、相互の意思疎通の円滑化を進めつつ、政府全体を通じた効果的・効率的な連携及び調整のシステムの確立を図る。
(2)事前調査の効率的実施
各省庁・実施機関が実施する事前調査に重複がある場合には必要な調整を行うこと等により、事業の効率化を図る。
(3)各種スキーム間の連携の強化
国別援助計画(前掲)の策定等による国別アプローチの強化、関係省庁間の連絡の緊密化等を通じて、(イ)資金協力と技術協力の連携、(ロ)ODAと輸銀融資や貿易保険との連携、(ハ)ODAと民間セクター、NGO活動との連携、(ニ)二国間援助と国際機関を通じた援助の連携、(ホ)他の援助国や国際機関との協調・連携の強化に努める。
また、技術協力については、国際協力事業団(JICA)を中心として実施するものとし、JICA及び各省庁の効果的・効率的な連携・調整に努める。
(4)国民参加型援助の推進
NGOや民間セクターの国際協力が経済協力の推進に大きく寄与していることを踏まえ、援助の効果的・効率的実施の観点から広く民間の人材を活用するため、NGOに対する支援の強化、専門家公募制度の拡充、青年海外協力隊員の帰国後対策の充実、地方自治体・NGO・大学等との連携の強化を図る。また、国際協力に従事し国際的に貢献しうる優秀な人材の育成を図る。
3.実施体制の整備
(1)JICAの機構改革
JICAにおいて、(イ)国別アプローチの抜本的強化、(ロ)評価から企画立案へのフイードバック強化、(ハ)自治体・NGO等との連携強化等を図るため、所要の機構改革を行う。
(2)無償資金協力及び有償資金協力の実施体制の改善
無償資金協力については、―層の適正かつ効率的な実施を確保するため、コンサルタントの業務をチェックする体制の強化を含む所要の改善措置を講ずる。有償資金協力については、引き続き海外経済協力基金における審査体制の強化等に努める。
(3)現地大使館及び実施機関の現地事務所の機能・体制の強化
途上国の実情・ニーズを最もよく把握しうる現地大使館や実施機関の現地事務所を積極的に活用し、その機能及び体制の強化に努める。
III.その他
これらの措置の着実な実行を確保するため、関係省庁は、本措置の実施状況について、内閣外政審議室の定めるところにより毎年度未に同室に報告するものとする。